京都大学化学研究所

 

横尾俊信 教授 研究室

テーマ:ガラスの作製を通して化学物質にふれ、遷移金属酸化物による着色の原理を体験的に学ぶ 

  訪問研修の最初に、横尾先生を含めて先生方からガラスの着色に関する講義をしていただきました。その後、とんぼ玉を作製してガラスに触れ、実験の基本操作を身につけました。かんざしや装飾品などに使われるとんぼ玉を作るのにやや苦戦をしていたようですが、出来上がったものの美しさや作る楽しさを充分味わったのではないかと思います。翌日より、いよいよホウ酸塩ガラスの作製が始まりました。訪問研修前の事前学習での原材料物質の計算方法に基づき、各自で成分の異なる着色ガラスの作製です。Na2CO3、H3BO3をベースにして、Co2+やMn2+などの不純物を混ぜ、高温の電気炉を用いて自らの手で作業を行いました。電気炉の扉を開けるとあまりの輻射熱の強さに驚いたようですが、作業も進んでいくと慣れた手つきで行っていました。作製した着色ガラスの評価を行うため、分光光度計で吸光度を測定しました。最初は、ガラス表面の凹凸が激しく、予想通りのチャートが得られなかったのですが、表面を磨き液体を付けて滑らかにし、余分な散乱を防ぐことでよりよい結果が得られました。最終日は、今回の研修の成果をパワーポイントにまとめて発表し、先生方から御助言をいただきました。着色のメカニズムは難しかったようですが、今回のような体験を通して着色の原理を学べる機会が得られたことは、大いなる財産となったと思います。

梅田真郷 教授 研究室

テーマ:「Temperature - Size Rule」を検証する

 大航海と探検の時代から間もなく、生物学者は「近縁種間で比較すると,寒いところに生息する生物ほど体のサイズが大きい」という経験則を見出しました。それはヒトからハエにいたる広範な動物に当てはまる傾向なのですが,なんということか,現在に至ってもそれはなぜなのか,あるいは本当なのか確かめられていません。その謎の解明を目指して,洛北高校生は酵母菌をモデル生物とした培養実験に取り組みました。酵母を飼って大きさ測って終了,楽そうだ。と思ったら大間違い。梅田チームでは,さまざまな実験操作を習うだけでなく,いつでも考えることを求められるのです。酵母のサイズを「どうやって」「いつ」測る?そもそも「サイズ」ってどう決める?サイズが「どのように」「どれだけ」変動していたら「検証できる」?それぞれに決まった解答はあるのかないのか?生徒達は連日かなり疲れた様子でしたから,終わってヤレヤレだったでしょうか。いやそれどころか,追試のために再び梅田研究室に押し掛けたいそうです。

金谷利治 教授 研究室

テーマ:鉄より強い高分子 -高分子の高次構造-

 初日の開講式では金谷先生から、三大材料の一つとして高分子材料があり、他のセラミック材料や金属材料と比べると歴史が新しく、まだまだ多くの可能性を秘めた魅力的な素材であることや、高分子の高次構造についての詳細な講義を受けました。午後からの実習では、針金(鉄)、釣り糸(ナイロン)、合成繊維(ザイロン)の3種類の材料の破断強度を測定し、「鉄より強い高分子」であるザイロンの驚異的な強さに一段と興味関心も強くなりました。その強さの秘密はどこにあるのか?の問いに答えるため、「配向性」をキーワードとして様々な実験を行いました。最初にレーザー光による回折実験を通して原理を学び、偏光板を用いた光の偏光と高分子材料による複屈折を調べる実験、さらには波長の短いX線による回折実験等から高分子材料がどのような方向に配向しているかを知ることができることを学習しました。最後に高分子の結晶化実験として、生分解性プラスチックでもあるPHB(ポリヒドロキシブチレート)を用いて、溶融状態から種々の温度にジャンプさせ、結晶化の様子を顕微鏡により観察・撮影して分析し、温度と結晶化速度の関係を考察しました。結晶化する様子は大変美しく芸術的であり、神秘的でもありました。最終日には、研修の成果を互いに発表し合いました。短時間ではありましたが、各自が理解した範囲で説明を行い、多くの質問や改善点もご指摘いただき全日程を終えました。大変お忙しい中、実験だけでなく近隣の施設なども案内していただき、研究者の方と直接ふれあう機会を多くとっていただくなど生徒にとっては大学での研究がより身近に感じられ有意義な研修になったと思います。

 
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