サイエンスⅡ理系(数学)

 

 自分が興味を持った内容について自由に学習、また他者に向けて発表、共有します。京都大学大学院理学研究科から講師をお呼びし、最先端の数学研究についても教えていただきます。学習する中で自分で研究テーマを設定し、研究を進めていきます。

 

5月21日(木)

 

 5月21日(木)6,7限に京都大学大学院理学研究科数学・数理解析専攻数学系 大倉健吾氏による特別講義「"穴"ってなんだろう?」を実施しました。
大倉先生の講義は、はじめにティッシュ箱とコップを見て「ティッシュ箱には穴は開いているか」「コップには穴は開いているか」を生徒が議論するところから始まりました。議論はかなり白熱し、講師の先生も唸るほどのアイディアも出されました。
その後は大倉先生に、位相幾何学において"穴"がどのように定義されているかについての講義を受けました。空間全体を大局的に見るのが位相幾何学の基本姿勢であること、紐を用意して空間を歩き回り元の場所に戻ったあと紐をたぐり寄せることができなければ穴が開いていると判断するということなどを教えていただき、数学への興味を深めました。

 

5月7日(木)

 

 5月7日(木)6限に京都大学大学院理学研究科数学・数理解析専攻数学系 森本真弘氏による特別講義「最短ネットワーク問題」を実施しました。
森本先生の講義では、まず4つの家が正方形の各頂点上にあるとし、これらを結ぶ最短の道路の形は何か、という問題を考えました。生徒が実際に図を描き、試行錯誤しながら最短となる形を求めた後、それが最短であることの幾何学的証明を、より簡単な場合を例にとって説明していただきました。
その後、石鹸水を用いた実験を行い、先程得られた最短経路の形が、石鹸膜によって瞬時に構成される様子を見せていただきました。結果は一目瞭然で、数学と自然現象との不思議な関わりを知ることができました。最後に、石鹸膜の性質を数学的に証明した論文を見せていただき、実験で得られる結果を厳密に証明することの難しさを実感しました。

 5月7日(木)7限に京都大学大学院理学研究科数学・数理解析専攻数理解析系 荒武永史氏による特別講義「ゲーデルの不完全性定理と数学」を実施しました。
荒武先生の講義は、ゲーデルの不完全性定理という有名な定理について、「定理の内容を正しく理解する」ことをひとつの目標としました。数学そのものを対象として扱う数学、いわゆる「メタ数学」という分野のさわりとして項・論理式・証明図・述語論理などのさまざまな用語について解説をいただき、その用語を使って第一不完全性定理と第二不完全性定理の内容、また第二不完全性定理の帰結として得られる数学の体系の"強さ"の概念に触れました。さらに不完全性定理が現代の数学に与えた影響についても教えていただきました。
ゲーデルの不完全性定理は内容の誤解をしやすく、よく誤った使い方をされる定理です。講義では、なぜ誤解されやすいのか、どんな誤った使い方をされているのかも説明をいただきました。

 

サイエンスⅡ理系(理科)

 

 京都大学化学研究所・京都工芸繊維大学・京都府立大学の各研究室の先生方から研究内容に関する講義を受け(4月~5月)、興味のある研究室を選択します。夏休みに各研究室を訪問し、グループごとにテーマ別の研究を進めていきます。

 

5月21日(木)

 

物理・化学分野

 5月21日(木)6限に京都大学化学研究所 寺西利治教授による特別講義「小さな世界の金属」を実施しました。「なぜ夕焼けが赤く見え、昼間の空は青く見えるのか?」という、生徒が先月の事前学習で学んだ内容から始まり、生徒たちにとっては自身の理解を再確認しながらのスタートとなりました。ローマ時代の名品であるリュクルゴスカップが光を通すことで色が変わって見えることも夕焼けと同様の理屈であることを説明し、「金を微粒子にすることで異なった色を呈するようになる」という話に展開していきました。金の微粒子が形成される演示実験も実際にその場で見せて頂きました。溶液が赤く色づいた瞬間はあちこちで歓声が上がっていました。夏の研修では、この興味深い金の微粒子について学んでいくこととなります。



 5月21日(木)7限に京都大学化学研究所 辻井敬亘教授による特別講義「高分子の魅力―新しい構造が生み出す革新機能―」を実施しました。合成高分子の歴史から始まり、「高分子化合物は表面の構造を変えるだけで性質が変化する」という特徴があり、その表面構造の重要性を具体的な例を挙げながら解説されました。講義の最後は「自分は将来どうなりたいか、そのために何をすればいいかをイメージしておくと良い」といった、大学生活やその先の将来まで結びつく話で締めくくりとされました。夏の研修では、次世代ポリマー薄膜を利用したバイオミメティック発色材について実習を行う予定です。


生物・化学分野

 5月21日(木)6限に京都工芸繊維大学 柄谷肇教授による特別講義「発光生物の光を再現して調べてみよう」を実施しました。ルミノール反応の青白い光の演示で始まった講義では、「光る生物は、なぜ光るのか?」について、光る生物の種類、光るしくみ、光る理由などについて、トリニダード・トバゴの光る浜辺やコロンブスが遭遇した「外洋表層大規模発光現象」など、様々な話題を取り混ぜながら、生物が「光る」ことに対する様々なアプローチについて紹介していただきました。柄谷先生の研修は毎年違った観点からの実験が行われています。今年はどんな研修になるのか楽しみです。

 

5月14日(木)

 

物理・化学分野

 5月14日(木)の6限に、京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科の今野勉教授による特別講義を実施しました。テーマは「有機フッ素化合物の特徴とその利用例」について。フッ素というと、フライパンの表面に施されたテフロン加工や、歯磨き粉の歯質強化・再石灰化促進剤として身近になっています。他にも、医薬品や工業製品の表面加工など、その用途は多岐に渡ります。その有機フッ素化合物は、全てが人工物と言ってもよく、原子半径は水素原子と近いものの、有機分子に取り込むのは意外に難しいとのことです。では、どのような手法で有益な有機フッ素化合物を作り出すのか。あるいは、まだ見ぬ新たな可能性を秘めた分子を生み出すにはどうすればよいのか。夏の研究室訪問では、このような課題に取り組む予定です。

 5月14日(木)の7限には、京都大学化学研究所附属元素科学国際研究センターの島川祐一教授に、「無機機能性材料の合成と評価」という題目で特別講義をしていただきました。鉱石や宝石は、多彩な特性を持つ結晶であり、この特性をうまく利用すれば社会の利便性を高める機能性材料として役立つそうです。その鉱石や宝石を、用途に応じて自由に、かつ安価に人工物として作成する研究は、急速に発展するIT社会を支える基盤技術となります。研究室訪問に先立ち、ルビーやスピネルという結晶はどういう材料なのか、また、どのようにして結晶であることを確認できるかという課題もいただきました。夏には、人工宝石の合成を皮切りに、今まで誰もやったことのない、できるかできないか分からないことにチャレンジします。


生物・化学分野

 5月14日(木)6限に京都府立大学 織田昌幸准教授による特別講義「10万分の1mm程度の蛋白質分子の形や働きを見る」を実施しました。まず、オリガミでDNA模型を作製することから始まり、タンパク質などの「かたち」を知ることが、生命現象を理解する上で欠かせないことなどを教えていただきました。加えて、「今の子どもたちは映像を見せるだけでは驚いてくれない」と、3Dプリンタで作られたシリコン製のタンパク質模型も登場し、全員の驚きを誘ってくれました。夏の研修では、小さなタンパク質の「かたち」や「はたらき」をどのようにして調べるのか、その方法を体験します。

 5月14日(木)7限に京都府立大学 武田征士助教による特別講義「花から学ぶ遺伝子とDNA」を実施しました。武田先生の専門は「植物のかたち」。庭園や花屋の店先を飾る様々な「花のかたち」がどのように作られるのか、そのしくみについて研究しておられます。講義では、花の形を決める遺伝子のはたらきが解明されてきた過程を、変異体の映像を示しながら、詳しく説明していただきました。さらには、花の形態を自分の都合で変えてしまう「ファイトプラズマ」や、それが園芸品種として、人間によって利用されていることなど、大変興味深いお話を伺うことができました。研究室では、遺伝子DNAのたった一箇所の違いで、「異常な花」ができるしくみについて、形態の観察とDNAの解析から学んでいきます。

 

5月7日(木)

 

物理・化学分野

 5月7日(木)6限に京都工芸繊維大学 浦川宏教授による特別講義「染織の伝統工芸と先端技術」を実施しました。人間と色の歴史について触れ、「色は、昔、庶民の手の届かなかったもの。身分が高い一部の人が、鮮やかな色の衣類をまとっていた。」という話を皮切りに、「天然染料の研究から化学染料の普及」に話題が展開されました。美しく染色するには、繊維の構造と染料の化学的性質にある密接な関係を探ることが重要だ、と強調されました。夏休みの研究室訪問では多層膜法による拡散実験について行う予定です。



 5月7日(木)7限に京都府立大学 細矢憲教授による特別講義「和紙の底力 その可能性を調べる」を実施しました。理系女子にある9つの特徴など、ユニークな話題が盛りだくさんで、笑いのある和やかな雰囲気の中、講義が進みました。知らず知らずのうちに、本題へ引き込まれ、水とは不思議なもの、体内や自然界での水の循環、世界の水不足、最近の河川の水質汚濁、へと話題が展開されていきました。その中で、和紙繊維の吸着能や抗菌性の高さに触れ、夏の研究室訪問では、「和紙 黒谷の和紙を調べる」をテーマに、和紙の魅力を探る予定です。京都府無形文化財指定「黒谷の和紙」について、現地の職人さんをお招きし、紙漉もおこなう計画で、夏の研究室訪問が楽しみです。

生物・化学分野

 5月7日(木)7限に京都府立大学 池田武文教授による特別講義「森林の衰退と環境変動~樹木の生理生態から」を実施しました。サイエンスⅡでのご指導は3年目になりますが、本年度は、研究テーマこそ変わらないものの、これまでとは違ったアプローチでの研修になるというお話がありました。樹木の生育が地球の環境と密接な関わりがあると言うことを、これまでは、樹木の道管を水が上昇する力について測定することで考察していたのですが、昨年度お世話になった生徒が、課題研究で葉からの蒸散を測定・考察していたことに感心され、今年はそのアプローチを広げてみる方向で計画をしていただいたそうです。夏の研修では府立植物園の様々な樹木について測定を行う予定だということで、その後の課題研究でも成果が期待できそうです。

 

4月23日(木)

 

物理・化学分野

 4月23日(木)6限に京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科バイオバースマテリアル学専攻教授 櫻井伸一先生による特別講義「身のまわりの高分子化合物の不思議な性質」を実施しました。
櫻井先生の講義では、CDケースやセロハンテープなど日用品を素材にして、高分子でできた物質の不思議な性質を体験させていただきました。偏光フィルムを通して見ると、CDケースは色とりどりの模様が見え、それが高分子の経験した"履歴書"になっているのには驚きました。また、スライムの演示実験では"液体"を切ってみたり、回転する棒を這い上がっていく様を見せていただきました。キーワードは"絡み合い"。夏の研究室訪問では高分子物質の性質の奥深さに魅了されるに違いありません。今から楽しみです。



 4月23日(木)7限に京都工芸繊維大学工芸科学研究科電子システム工学専攻教授 大柴小枝子先生による特別講義「色を識別して制御するライントレースカー ‐デジタルシステムと光センサ‐」を実施しました。
大柴先生の講義は、デジタルシステム(制御)とセンサのお話でした。デジタルシステムの「記憶する」「制御する」「処理する」という働きは人間の脳の働きに対応し、温度センサや光センサは人間の五感に対応します。センサでとらえた情報は電気信号としてデジタルシステムに送られる。人間の五感でとらえた外界の情報は電気信号となって神経を通って脳に伝えられる。通信という観点では同じなんですね。ただちょっと違うのは脳の情報処理が相対的であること。実際に周囲の状況によって人間の脳は違った色として認識していることを体験させていただきました。夏の研究室訪問では、ライントレースカーとコースを作製するそうですが、錯視を利用すると我々には不思議な動きをすると感じるものが作れそうです。

生物・化学分野

 4月23日(木)6限に京都大学化学研究所教授 平竹潤先生による特別講義「ハバネロからのカプサイシンの抽出と精製-辛み成分と町おこしの鍵物質の同定」を実施しました。
特別講義の冒頭で「今日はパワーポイントは使わないぞ、あれで皆が寝てしまうからね」と平竹先生は仰いました。そして特別講義は触ったり味わったり考えたりしながら進行したのですが、生徒たちの目がきらきらと輝き全身が熱を帯び始めたのは、ハバネロの強烈な魔力のせいばかりではなかったに違いありません。「いいかい、参加者はハバネロを窓辺でしっかり干すんだぞ」と言う先生の最後の指示に、目を涙で潤ませながら肯いた一同でした。



 
洛北SSH 洛北高校
カテゴリ・リスト
クリックで子カテゴリが表示されます。
COPYRIGHT (C) 京都府立洛北高等学校・洛北高等学校附属中学校