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「これが欲しい!」という心はどこから来るのだろう?~人の購買意欲をかき立てるデザインについての探究~

 

今回の記事は、人々(消費者)の購買意欲に関する

メカニズムに関して関心のある

高校生たちの探究の物語。


彼女達の探究活動については、

今年度の2年生の探究プロジェクトについて

紹介させていただいたダイジェスト版の記事で

少し話題に出しているので、おさらいがてら、

ぜひこちらの記事もお読みください♪

前回のダイジェスト記事はこちらから

***


彼女たちはパッケージ及び、

商品におけるプロモーションの方法を考え、

実際に商品として販売することで、

売れ行きとそこに係る人の心理を

検証するといった取り組みをすることを決意。


前回の記事で、彼女達の取り組みに協力しようと

手を挙げてくださった網野町の

「にく屋さん 優」さんとの出会いを

紹介させていただきましたが、

その後、どんなことが

起こっていったのかについての

エピソードを今回の記事では紹介しましょう。


「にく屋さん 優」さんとのコラボが決まり、

まずは優さんとの顔合わせを、

ということで実際に店舗へお邪魔しました。

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初めに店長の清水さんからお店作りや

商品の拘りに関してお話しを伺います。


「最近は物価が上がってきているでしょう。

国産は外国産より高いっていう

イメージがあると思うけど、実は最近

そんなに大差がなくなってきているのよねぇ......。」


困ったものよ、というようにため息をつく清水さん。

店舗の壁にずらっと並ぶ商品の値段表を見て、

確かに、と思う。

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清水さんの拘りは、兎に角少しでも質の高いものを仕入れる、

ということ。

週4日は、上質なものを仕入れるのに

時間を費やしているといいます。


驚くのは、それだけではありません。

様々な種類のお肉は大きな塊で仕入れていて、

お客様の要望に合わせたカットをしてくださいます。

スーパーなどでは基本、均等な大きさに

切られたものがパック詰めされて売っていますが、

優さんのところでは調理法に合わせて、

どんな注文にも応えてくださるというのです。


極薄のスライスから、贅沢に分厚いカットまで何でもあり。

勿論、カットの腕前も一流。

どの部位をどう扱えばより美味しく

いただけるのかを熟知しているのは、

流石の地元が誇るお肉屋さん!!

丁寧に要望を聞き入れ、それに合わせた

量り売りをしてくれる

お店の存在はとても大きい。


さらにすごいのは、

お肉以外のお惣菜の数が

本当に豊富だということ。

お肉を加工したお惣菜はもちろん、

和え物や丹後ならではの納豆みそ、

ドーナツなどのスイーツ類まで揃っている。

そのどれもが、クオリティが高い。

コロッケに至っては、

毎月中身の具を変えるという拘りよう。

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清水さんの仕事との向き合い方には脱帽する。

「販売するからには、本気でやるよ!

 高校生のみんな、

気合い入れなさいよ!」

と熱意を見せてくれるこの人と

コラボ出来るなんて、高校生たちは幸せものだ。


そんなこんなで、ここからは商品化に向けた

本格的な打ち合わせがスタート。

最初にどこで売るのか、についてを決めていく。

少なくとも1回だけの出店では足りない。

1回目の検証結果を振り返り、

改善を取り入れたバージョンで

再度販売するという検証をすれば、

有力な情報が集まるはず。


清水さんは、これからたんちょす

への出店を決めているという。

よし、1つはそこに高校生たちとの

コラボ商品を出せるようにしよう。

そしてもう一つ。

出店するにはちょうど良い機会がありました。

そう、10月末に開催される丹後万博。


この2つのイベントでの出店を目指すことが決まったので、

ここからは、何を販売するのか、の話を詰めていきます。

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これまでの清水さんのお話から、

毎月具材を変えている拘りの、

そしてお店の中でも人気を誇っている商品の1つ、

コロッケをオリジナルで販売するのはどうか、

という意見でみんなの想いが一致!


高校生とお肉屋さんとのコラボ企画、

コロッケを売ろう!作戦が

ここから始まりました。


役割としては、どんなコロッケが良さそうかの

アイディアを出すのが高校生、

そのアイディアを形にし、

実際に商品化するのがお肉屋さん。

高校生たちは、その商品の

パッケージデザインも担当します。


どんなコロッケが人気がありそうか、

今世間で流行っているのは

どんな食べ物があるのか、

またみんながテンションの上がる料理の中で

コロッケの具に出来そうなものはないか......

といったところから、

アイディアを出していきます。


複数出てきたアイディアの中から、

いくつか清水さんがピックアップして、

次回の打ち合わせまでに

試作をしてきてくださることに。

それまでの間に高校生側は、

パッケージのデサイン案、商品名、

イベントまでの間に商品を

どう周知させるか(プロモーション)などについて

検討することに。


清水さんの話しに寄れば、

商品のPOP(商品を簡単に紹介するもの)は

PCを使用して作成したものよりも、

手書きで作ったものの方が

圧倒的にお客様の反応が良いという。

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デザインとしては、

綺麗に整って見えるものよりも

多少手作り感のあるものの方が

注目をしてもらいやすいのかもしれない、

という説もここで浮上してきた。


果たしてその根拠は何なのか。

本当に手作り感が感じられるデザインの方が

手に取ってもらいやすいのか、

それを今回のコラボで検証してみるのも

面白いかもしれない、と盛り上がる。


既にワクワクが感じられる

充実した時間となりました。

これからどんな商品が出来上がっていくのか、

すごく楽しみだなぁ♪

こうして、第1回目の打ち合わせは幕を閉じます。

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***

こんな風にして、この後から

高校生たちとお肉屋さんとの打ち合わせは、

幾度にも渡って繰り返されていきました。


ああでもない、こうでもない、

それ、いい! 

これをもっとこうしたらさらに良くなるのでは?


やるからには、お互い本気で挑みます。

だからこそ、少しも妥協を許しません。


彼女達の要望に合わせて、

清水さんもとことん納得がいくまで

何度も何度も試作を繰り返してくださる。

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試作品をみんなでいただいて、検討している図。


清水さんが、本気で向き合ってくださるからこそ、

高校生たちも中途半端は許されない。


そんなお互いを高め合う関係性が頼もしく、

プロジェクト自体の質も上がり

毎回の打ち合わせの時間が

とても楽しかったです。


そしてついに、商品が決定!
コロッケ写真.JPG

商品は3種類。

みんな大好き、クリームコロッケと

少し大人な味の牛タン塩コロッケ、

そして旬のさつまいもを使ったチーズボール。


付け合わせのソースにもとことん拘りました\(^o^)/


商品が決まれば、

覚えてもらいやすい名前やロゴ、

商品をイメージした

キャラクターなどのデザインを考えます。


優さん×パケデロゴ.JPG

ロゴに使用した色は、

「にく屋さん 優」さんのショップカードに

使われてる色で、コラボをすることから

優さんらしい色をチョイス。

コロッケファミリー.JPG



手がきの方がなぜか売れ行きも良い、

という最初の話しを元に

手がき感のある親しみやすいキャラクターを。


コロッケファミリー。

可愛いですね♪


そして丹後万博まで

残り一週間ほどになったタイミングで、

ラジオでPRすることに。


FMたんごのパーソナリティ

「キャッチー船戸」さんにご協力いただき、

番組のゲストとして出演させて頂きます。


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「キャッチー船戸」さんと高校生たちの掛け合いが

また素晴らしく、とっても良い収録ができました!!


イベントで、沢山売れたらいいなぁ。


今回の記事では、商品販売までの過程について

紹介させていただきましたが、あくまでこれはごく一部。


本当に多くの時間と労力をかけて作りあげてきました。

こうして挑めるのは、地域の方々の

ご厚意と協力体制があるから。


いつも高校生たちの学びを共に支えてくださり、

本当に感謝の気持ちでいっぱいです。


この後、丹後万博での様子をまた別の記事で

綴っていきたいと思います!


 

「eスポーツで丹後を盛り上げたい!」~eスポーツチームの取り組み

 

みなさん、こんにちは!
前回の記事から少し間が空いてしまいましたが、

また引き続き、探究活動の取り組みについて紹介していきたいと思います。


高校生達が今どんなことに興味を持ち、

何を考え、どのような取り組みをしているのかについて

少しでも知っていただければ幸いです。


この記事で紹介するのは、eスポーツで丹後を盛り上げたい、と

考える高校2年生の生徒たちの記録です。


****

そもそもeスポーツって、どんなものなのでしょう?

お恥ずかしながら、コーディネーターの能勢は

こういったゲーム関係の分野に疎く、高校生たちから

この世界の魅力について教えてもらいました。


eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、

広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す

言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦を

スポーツ競技として捉える際の名称らしい。


色々な種類のゲームがあり、参入障壁も低いので、

多くの人が魅了されているといいます。

とくにチーム戦での対戦ゲームは、相手に勝つための

戦略を練ったり、チームでの協力が必要なため言語能力が

求められることから、将来に役立つ問題解決能力や

コミュニケーション能力などを

鍛えられるという点も注目を浴びているようです。


そんな可能性のあるeスポーツですが、

これを活用して地域を盛り上げることができないか、と考えた

高校生達がいました。


彼らは1年生の時「地域の活性化の為に自分達が何が出来るのか」について

提案する発表を行っていました。

そこでeスポーツを使ったイベントを

地域で大々的に行い、eスポーツの魅力を広めるとともに

地域の独自性を打ち出すことで、京丹後内外から人を呼び込むきっかけ作りが

できないか、という提案をしてくれました。


そして、2年生になった今、今度はその提案を実際に実行しようと

動いてくれています。

そうやって1年生の時から熱量をもって取り組み、2年生でも継続して

更なるパワーアップを図りながら活動してくれている姿を見ると

とても嬉しく思います。


夏休み期間中は、10月末に行われる丹後万博で大会を実施することを

目標に今、どんな準備が必要なのか、また自分達だけでは実行が

難しいところを地域側の協力を募れるのか、協力を求める場合に

どのような手段で依頼をするのか、現在考えている大会規模で実施する際に

どのくらいのコストがかかるのか、等について洗い出し、今後の方針を

考えていくためのアイディア会議を行いました。

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彼らのプレゼンを聞き、フィードバックをしてくださったのは

青年会議所(JC)の方々。


実は昨年、JCの方々主催でeスポーツの1つである「フォートナイト」を

使った大会が開かれており、京丹後でeスポーツの大会が

行われたという事例があること、またJCの方々も「eスポーツで地域を

盛り上げたい」という、彼らと共通した想いを持たれていることなどから、

良きアドバイザーとして彼らの話を受け入れ、

親身になって聞いてくださったのです。


そこでは、JCさんの体験談を元に実際に実行に移していくための

具体的なアイディアについての話合いが行われました。

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大会を開催するにあたってかかってくるコスト問題をどう解決するのか、

eスポーツと丹後をどう絡めていくのか、などの課題に対して

どのように解決するかが彼らの腕の見せどころでしょう。


夏休みにJCさんとの話合いで出てきた今後解決すべき課題点を

踏まえて、どうすれば丹後万博で実現できるのかについての

取り組みにここから更に拍車をかけていきます。


2学期に入ると、自分たちのアイディアについての助言や

協力を求めるため、エッジソンマネジメント協会

という企業の理事長、樫原さまに向けてプレゼンをしたり、

どうすれば彼らが目標としている「だれも取り残さない」場を

その会場で作り出せるのか、についてなどを検討しました。

その気合いの入れよう、またその立ち止まらない姿勢に

彼らの本気さをひしひしと感じるのでした。

そして気がつけば、10月末。

いよいよ丹後万博、本番です。

イベントの事を知ってもらうためのSNSアカウントを作成し、

頻繁に更新したり、チラシを作って自ら地域のあらゆる場所に足を運んで、

掲示してもらうよう交渉をしたり、事前に会場へ複数回足を運んで

リハーサルを念入りにしたり...、と兎に角立ち止まることなく、

その時自分たちにできる最大限の努力をしていました。

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時間をかけて作ってきた、彼らにとっての大きなチャレンジが

どのような結末を迎えたのか。

物語はまだ続きます。

丹後万博での様子については、また別の記事でお伝えしますね!






 

いさなご探究Ⅱ 交流会を実施しました

 

 10月25日(水)に、2年生普通科生徒が履修している「いさなご探究Ⅱ」の交流会が行われました。

 いさなご探究Ⅱでは、生徒が自らの興味関心に応じて設定した課題をもとに、1年間をかけて調査を行い、研究レポートにまとめるという活動を行っています。

 今回の交流会は中間発表であり、テーマごとにブースに分かれ、研究の進捗と成果をまとめたポスターを掲示し、集まったそれぞれの聴衆に向けてプレゼンテーションを行いました。

 各会場には、1年生や教職員に加え、大学関係者や地域コーディネーター、京丹後市役所の皆様などにも御観覧をいただきました。各ブースで活発な質疑応答が交わされるなど、交流会はたいへん活気のあるものになりました。

 

忙しい夏休みだって、"探究"楽しみながら頑張るんです!~特産物を使ったスイーツを作りたい!!~

 

高校生って、本当に毎日忙しい。

朝からみっちり授業を受けて、とんでもない量の課題をこなし、

部活にも取り組んで、習い事など学校外の社会活動などに勤しんでいる

高校生達も多い。


それぞれのベクトルで、懸命に努力する高校生たちの姿に

私も日々励まされている訳であります。


そして驚くべき事に、夏休みでさえも忙しい。

いや、夏休みこそ、普段の授業がないからこそ、より忙しいのだろう。

本当に高校生達の忙しさには、毎度脱帽します。


そんな中でも、探究に時間を割き、

地域に出てフィールドワークに取組む生徒たちがたくさんいました。

これからの記事は、夏休み中に行った探究活動に関して、

できる限り紹介していきたいと考えています!

どうぞゆるりとお付き合いいただければ幸いです\(^o^)/


それでは、1つめのプロジェクトから。


********

◎製菓志望の高校生。丹後の食材を使った美味しいスイーツを作りたい!


お菓子作りが好きで、将来、製菓の世界に入ることを夢見ている高校生。


10月に開催される丹後万博にて、京丹後の特産品を使ったお菓子を

販売したい、という思いを胸に進路探究も兼ねて、峰山にある

洋菓子店「パティスリーK」さんを訪ねました。

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お話しを伺ったのは、オーナーの近藤さん。

実は近藤さん、元々製菓とは全く異なる業界に就職していましたが、

お菓子作りがしたい、という強い想いから会社を辞めて、

洋菓子店に飛び込み、修行を経て現在独立しているのです。


ここでお気づきでしょうか。

製菓の道に進む場合、必ずしも専門学校に入らなくても

お菓子職人を目指せる、ということを。


2年以上実践経験を踏むと、パティシエになるための試験を

受験する機会が与えられる。


近藤さんは、とにかく実戦経験を積むために2つのお店を掛け持ち

して働き、専門的な知識は学校へは行かずして、独学で

学んだといいます。


そんな近藤さんだからこそ、徹底して現場主義者。

製菓の世界は、なんと言っても実践の経験がものをいう。

どれだけ学校で専門的なことを学んだからといって、

その知識は現場では、ほとんど役に立たない。


とにかく手を沢山動かして、たくさん失敗して、

「これだ!!」と納得のいくものに仕上がるまで作り続ける。

そうすることで、自分の中の引き出しが豊かになって、

新しいお菓子のアイディアも生まれてくると言う。

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近藤さんは、そんなお話しをした後で、こうも付け足します。


「勿論、あくまでもこれは僕の考えだから、学校に行くことが

間違った選択な訳ではない。学校に行くメリットだってあるからね」


学校に行けば、お菓子の世界の専門用語などを一通り

学べるので、実践の場に立ったときも指示された時に何を

すればいいのか、すぐ理解できるだろう、ということ。


また、同じ志を持った人たちが集まるので、

一生の同志になるような出会いがある、ということ。


反面で、近藤さんの言うように実践経験は、ほとんど積めない。

自分で手を動かす努力ができないと、学校を卒業した後に

厳しい現実を突きつけられ、結局やめてしまう人が後を絶たないという。


結局は、学校に行く・行かない、どちらにせよ、

自分の努力次第。

「何としてでもこの世界で生きていくぞ」という強い意志と、

「やっぱりお菓子作りが好きだ」という情熱が鍵になる。


"自分は何がしたいのか"

を常に自問自答しながら、その意思に従ってやるべき事をこなしていくことが、

遠回りなようでいて、一番の近道なんだ、と近藤さんが教えてくださいました。

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次にアドバイスをいただいたのは、お菓子作りについて。

彼女は京丹後産のさつまいもを使ってマカロンを作りたい、と

考えています。


マカロンは、プロでも作るのが難しいとされるスイーツの1つ。

近藤さんは、これまでご自身で作ってきたマカロンの写真や、

録り溜めているているマカロンのオリジナルレシピなどを

私達に見せながら、丁寧にコツについてお話ししてくださいました。


その上で、イベント向けに大量に作る商品としては

マカロンが不向きな点も説明してくださり、野菜やフルーツを

使ったスイーツとして、他に作りやすく、イベント向きなものに

ついてもアドバイスをしてくださいました。


今回伺ったお話の内容を再度吟味して、最終的にどんなものを

作るのかについては、これから検討していくことになりそうです。


最後に製菓業界を目指す高校生に向けて、近藤さんがとても熱い

メッセージを届けてくださいました!!


「これはどんなことにも言えますが、まずはつべこべ言わず

手を動かしましょう。向き・不向きはそこから分かります。

やってみて楽しい、ワクワクする、と感じるなら続ければ良い。

そうでなかったら、辞めてもいい。

また新しい挑戦をどんどんしてください。

そして、失敗をたくさんしてください。

それを反省に終わらすのではなく、きちんと振り返りをした後に

"次どうするのか"まできちんと具体的に出して、取り組むこと。

嬉しいことも辛く苦しいこともたくさん経験することで、

人は成長できます。


あとは、たくさんのものを見て吸収することも大切です。

丹後のお店のみならず、どこか他地域へ出かける際には、

できるだけ気になるお店に足を運んで、しっかり観察するように

心がけてみてください。


空間の使い方、サービスの内容、接客する際の態度、スイーツの種類、

風味...。学べる材料は、私達の周りに豊富にあります。

百聞は一見にしかず。まずは自分の足で現場に出向いて、その場所の

空気感を五感で感じとってみてくださいね!」


*****


今回、近藤さんにお話を聞かせていただいて感じたことは、

やっぱり、何かの分野を突き詰めていくためには人生

ずっと学び続けなければいけない、ということ。


そんなこと当然だよ、とみんな頭では分かっていると思う。

だけど、その当然のことをただ息をするように続けることは

とても難しい。


例えばクッキー。

代表的な原材料は、卵、小麦粉、バター。

ですがこれ、メーカーが違えば味は微妙に異なるし、

産地によっても違うし、もちろん原材料の割合が異なれば、

工程が同じでも全く別物のクッキーに仕上がる。


近藤さんは、同じクッキーでも園材料のメーカー別に味を比較したり、

作る工程の中で、混ぜる順番を入れ替えたり、割合を変えたり、と

何度も試作を繰り返しながら、自分のベストな味のものを見極めているというのだ。



時代も変われば、消費者の行動や価値観も変化する。

正解はなく、どこまでいってもその時のベストを尽くしていくしかない。


それでも、その積みかさねた経験は間違いなくその人の財産になっていて、

新しいステップへの糧になる。


決して簡単な事では無いけれど、高校生たちにはその姿勢から

自分に活かせそうなやり方を見出してもらいたい、と思います。





 

最終学年での探究も地域活動がやっぱりパワーアップしています!~3年生〈その2〉

 

今回の記事も、前回の記事に引き続き3年生の探究プロジェクトについて

紹介したいと思います!


地域と積極的に繋がりを持ちながら、自分の探究テーマを

深めている高校生たちの奮闘記をご覧ください。


****


◎僕の知らない地域の魅力
~インタビューを通して、地元の魅力を探る~


ある高校生は、自分の知らない京丹後の魅力を知るべく、

地元出身者や移住者などに沢山インタビューをする、という行動に出ました。


でも、実はこれ、彼にとってはとても大きな挑戦だったんです。

彼は極度の人見知り。できることなら、知らない人との接触は

避けて通りたい。最初にお話しをしたときにこんな事を話していました。


それでも彼は、あえて探究コースを選んだ。

なぜその選択をしたのかについての具体的な理由は聞かなかったけれど、

きっと彼の中で「変わりたい」という気持ちがあったんだと思います。


インタビュー先に選んだのは、未来チャレンジ交流センター「roots」

ここに行けば、必ず1人~2人は相談員が常駐しているし、

地域の人の出入りもある。

インタビューをするには、絶好の場です。


ですが、初めての場でいきなり知らない人に対してインタビューをするのは

ハードルが高い。だから、1回目の訪問は、彼にまずrootsのことを

知ってもらうことと、知らない人と話しをする、という場に慣れてもらうことを

目的にしました。

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初対面の相談員を前にすると、初めは緊張して中々話しを切り出すことが

できなかったのですが、それでも時間をかけてゆっくりとぽつり、ぽつり、と

自分のことをお話ししてくれるようになりました。


「僕、中学の時は陸上部に入ってたんです。

別に運動が得意じゃなかったんですけど」


そんな風に話す彼に理由を尋ねてみると、

一番自分が苦手とするものだから、というのです。


苦手なものを克服するために、あえて得意なものを選ばなかった。

部活は大抵、関心のあるもの、好きなもの、得意なもので

選ぶと思っていたので、彼の答えを聞いたときに

目からウロコでした。そんな選び方もあったのか、と。


それを知ったときに、彼がなぜ苦手とする探究コースを選んだのかが、

少し理解出来た気がします。


そして、日をあけて2回目の訪問。

この日は、いよいよインタビュー。


東京から移住をして、まだ2ヶ月のroots相談員が一人目。

緊張して、ちょっと堅い雰囲気からスタートしたインタビュー。


「この地域の魅力は何だと思いますか?」


そう問う彼の質問に対して、相談員は


「地域にどんな人が住んでいるのか、ここにいれば顔まで分かること」


と答えました。


自分の生まれた地域には、そんな繋がりは無かったし、それが無かったから

地元と自分の距離はいつも遠かった。

だから高校生の頃は、自分の生まれた場所を自分ごととして考えた事なんて

無かったよ。


地元は、自然が豊かで静かなところが住み心地が良いと感じていた

彼にとって、「人との距離が近い」という回答は、少し衝撃的であったようです。


そして、3回目の訪問。

この日は、前回聞いた相談員とは別の相談員と、偶々rootsを訪れていた

地域の方へインタビュー。


3回目ともなり、彼の方も少し慣れてきたのか、前回に比べて

和やかな雰囲気でスタートしました。

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驚いたのは、彼自身の変化。

前回のインタビューの際は、準備してきた質問を読み上げることで

精一杯の様子であった彼が、何とこの日は自分から雑談をしたり、

準備をしてきた質問に関する回答に対して、また新たな質問を投げたり、と

最初の消極的な彼の姿からは考えられないほどの激変ぶり。


最後には、私に向かって「何だか自信がついたように思います」と

話してくれました\(^o^)/


こういう瞬間に出会う度に思うんです。

地域コーディネーターをやっていて良かったなぁ、と。


彼のことを知っていき、チャレンジしたいことをどのような形で

整えることが、彼にとって一番良いのか、

どんな風に背中を押してあげるのが、彼の成長に繋がるのか。


沢山考えて、アレンジして、場を整えて、人と繋ぐ。


勿論、上手くいくことばかりではないけれど、

ちょっとしたきっかけで成長する、顔つきが良くなる、

一生懸命チャレンジする高校生たちの姿が、何よりのエネルギーになる。


地域の人たちも、きっと同じですよね?

少しのきっかけでこうして変わっていく様子を隣りで感じることが

できるのは、本当に嬉しいんです。

だから、ありがとう。


彼が勇気を持って、一歩踏み出してくれたから

「社会」の入り口に立つことができました。


きっと怖かったでしょう。不安もあったと思います。

それでも、その恐怖心に抗って繋がった「社会」の中で

彼のこれからの糧になるようなものを何かしらつかみ取ってくれていたのなら、

こんなに嬉しいことはありません。


社会に出てみると、それはもう、急流の中にいるようで、

毎日何かに必死に捕まっていないと流されてしまいそうになります。


ですが、多様な価値に触れ、人を知り、己を知るということが、

社会の荒波に流されないようにするための土嚢(水の流れをせき止める道具)の

役割を果たしてくれるのではないか。


そして、その土嚢を社会に出る前になるべく多く備えておくことが

「自分らしく生きる」という選択肢の幅を広げてくれるのではないか。


私はそんな風に思います。

だから、きっかけの種をたくさん蒔きます。


高校生たちの日々の小さな変化をこうして大切にしながら、

また毎日を過ごしたいなぁ、と思うのです。






 

最終学年での探究も地域活動がやっぱりパワーアップしています!~3年生〈その1〉

 

みなさん、こんにちは!

夏休みも明け、いよいよ2学期がスタートしました\(^o^)/

夏休みはどんな思い出ができたでしょうか。

夏休み明けは文化祭。相も変わらず、また忙しい日々が始まりますが、

1つ1つ楽しみながら取り組めたら良いですね♪


さて、今回の記事はまた前回に引き続き、

各学年のハイライトをお届けします。


この記事は3年生。

峰山高校では3年生でも探究活動がありますが、こちらは

それぞれの進路に合わせてコース別になっています。


例えば、推薦入試や2年生での探究活動の内容をさらに深めたい人は、

継続して探究コースを選択します。


また2年生までの探究(プロジェクト活動)の体験を踏まえて、進路選択を

していく上で、自分がどんな分野により関心を持っているのか

見極めていくための学問コース。


さらに多様なジャンルの本を読み、それぞれの書評を書き

意見交流をしたり、自分だけのオリジナル本棚を作るといった

ユニークな書評コースがあります。


コーディネーターの私は、探究コースの担当をしているので、

探究コース選択者の活動についてピックアップさせていただきますね。


****

◎これまであまり触れたことのない楽器について知りたい

~作曲に活かせるエッセンスを、和楽器との出会い~


彼女は、音楽大学の作曲コースを志望している高校生。

小さい時からエレクトーンを習っていて、ジャズが基板となって

構成されているフィージョンというジャンルの音楽を好んでいる。


これまでに作曲経験もあり、軽音楽部でもキーボードを担当。

将来の夢は、音楽の魅力を伝えることの出来る素敵な先生。


そんな普段からどっぷり音楽に浸っている彼女は、

探究コースでは今までとはちょっと違った角度から音楽について

考えてみることにチャレンジしました。


これから本格的に作曲を学ぼうとしている彼女にとって大切なのは、

できる限り多くのジャンルの音楽に触れておくこと。

そうすることで、彼女の中の引き出しがより豊かになり、

新しい音楽を作る上でのアイディアの種になるはずです。


そこで着目したのが、和楽器。

西洋で生まれた音楽や楽器には多く触れてきた彼女も、

和のものには詳しくありません。

ぜひ詳しい人から楽器についてお話しを聞きたい、

そしてできれば体験もしてみたい、ということで

お繋ぎしたのは、網野町で三味線の講師を務めている

田中匡代先生。

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三味線の構造や音の響き方について、また種類や歴史的な

ことについてレクチャーを受けたあと、実際に

弾かせていただく機会もいただきました!


先生は、簡単に弾いているように見えるけど

実際にやってみるとすごく難しいことが分かります。

正しい姿勢を保ちながら正しい位置に楽器を固定すること自体が

まずとても難しく、漸くそれができても次にバチを持って狙った音を

鳴らすのが本当に大変で。

他の弦に触れてしまったり、ちょうど良い力加減が難しかったり、

弾いている間に姿勢が崩れてしまったり......と想像以上に簡単でないことが

分かったのです。

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それでも先生のご助言のもと、何度も繰り返していると数回に1回くらいは

綺麗に響く音が出る瞬間がある。

それを体験してしまうと、やっぱり気持ちいいんですよね。


ピアノやギターなどに比べると、習っている人の割合は

決して多くはないけれど、やはり日本人にはなじみ深い音。

どこか懐かしさを覚える美しい音色に触れて、

やっぱり和のものも良いなぁ、と改めて実感する時間となりました。


普段、日常的にはあまり触れない音楽の要素も

たっぷり取り入れて、さらに音楽に関する感性を豊かに磨いてくれたら

嬉しいな、と思ったのでした。


◎丹後の様々な伝承に出てくる「鬼」とは何か

~「鬼」を巡って歴史の謎に迫る~


彼女は、2年生の探究活動を3年生でも継続するという選択をしました。

丹後町にある竹野神社で行われてる「鬼祭り」にまつわる謎を

解き明かそうと、探究活動をしていました。


「鬼」というキーワードは、歴史上残されている様々な伝承を中心に

多く登場します。この「鬼」とは何だったのか、については

色々な場所で議論され、いつの時代も人々の心を魅了しています。


彼女もまさにその1人。

歴史や神社仏閣が好きな彼女にとって、

伝承や古くからの言い伝えは魅力そのもの!!


彼女はまず、地域の伝承に詳しいお二人にお話しを聞きに行きます。


一人は、峰山高校の近くにある金刀比羅神社の宮司 脇坂さん。

そしてもう一人は、ふとんのえびす屋店主の蒲田さん。


お二人とも丹後の歴史、とくに神々の話についてお詳しく、

神社に参拝したときのルールや神社の造り、その歴史などに関して

たっぷりと興味深いお話しをお聞かせ頂きました。

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最後には、やはり実際に現場に出向いてこそ感じ取れるものがある、

ということで、急遽フィールドワークを実施。


蒲田さんが大好きだという、比沼奈為神社へいざ出発!

比沼奈為神社は、やはりひと味違うのだ、と蒲田さん。


主祭神は、五穀豊穣を願う最高神である豊受大神。

豊受大神は、現在の峰山町五箇にある磯砂山に天降り、神社由緒には、

『遠き神代の昔、此の真名井原の地にて、田畑を耕し、米・麦・豆等の五穀を作り、

また蚕を飼って衣食の糧となる技を始められた』とあり、丹後地方にはじめて

稲作の指導をした神様なのだ。


「あそこに見えているのが、〈月の輪田〉で、ここが日本農業発祥の地とも

言われている。丹後七姫の一人である、羽衣天女との関係性があるという

諸説も残っていて、この知は歴史的観点から見てもすごく面白いんだよ」


そしていよいよ、私達は神社の鳥居の前に立つ。

足を踏み入れようとした高校生にストップの声がかかる。

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「鳥居をくぐる時は、まず神様に挨拶ね。こうして一礼してから入るように。

そして、参道は神様の通り道だから、邪魔にならないように

端っこを歩くようにしてね」


そして、中に入って参道を進んでいくと、何やら気になる物体が。

石が積み上がって、小さな山のようなものが沢山目につきます。

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「あれは何ですか?」


「あれは、立砂っていってね。神様が降り立つところなんだよ。

京都市にある上賀茂神社にもあるんだよ。

こんなに立砂が存在している神社は中々珍しいね。」


そんなことを話しながら、歩みを進めていると

本殿へと続く階段が目の前に現れます。

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不思議なことに、この階段のあたりから空気がガラッと変わりました。

何か霊的なものを感じ、自然と背筋がピンっと伸びます。


「何か人ならざるものがいる」


そう感じずにはいられない空気が漂っているのです。

気配と言ってもいい。


神秘的で凜と澄んだ空気の中、階段を上っていくと

美しい本殿が姿を現しました。

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思わず足を止めて、全員で本殿を見上げる。

すると、優しい風が私達の顔をそっとなでていきました。


「神様達が、私達を歓迎してくれているみたいだね。」


本当にそんな風に感じるくらい、ここの空気は気持ちが良い。

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伝説を辿りながら、その所以となっている場を実際に歩く。


ネットや本で調べただけでは感じられないことが、

現場を歩くと体感できる。


伝説との結びつきが強い丹後の地を練り歩く面白さを

歴史好きの地域の方と神社が大好きな高校生が教えてくれたのでした。



 

今年度の探究活動は、早い時期から地域での動きが活発!? ~〈2年生〉vol.2

 

こんにちは!!

前回の記事に引き続き、今回は2年生の探究の取組紹介を

させてください♪


2年生は、探究活動が最も活発になる学年。

自分達の関心の有るテーマを定め、それに関わる仮説を立てて、

検証するための実践を繰り返す。


調べて終わり、ではなく、自分達なりの実感を伴った「答え」を

導きだしてほしい。


そんな想いのもと、なるべく彼・彼女達の思考の幅、選択肢の数を

広げてるべく、学校を飛び出し「地域」へと学びの場を拡大していくのが

地域コーディネーターの仕事の1つ。


去年も沢山の高校生達が地域に出て活躍してくれたけれど、

今年はどんなプロジェクトが登場するかな?

それが、毎年の密かなる楽しみでもあるのです♪


今年度も出てくるテーマのどれをとっても興味深い。

やっぱり高校生たちの着眼点は面白いなぁ、と刺激をもらっています。


ではここからは、簡単にいくつかの探究活動を紹介します。


◎ロスになっている農産物を使って、アイスを作りたい!

このチームの高校生たちは、ロスになってしまっている農産物の

問題に目を付けました。


今やフードロスは、先進国を始めとする様々な国で

大きな問題となっています。


京丹後市は食がとても豊かな一方で、多くの農産物がロスに

なってしまっているという問題があります。


何とかそれを解決する糸口を見つけられないか、

と彼女達から出たアイディアが、農産物を加工してアイスクリームにすること。


そうと決まったら、まずは丹後の農家さんの事情や、生産者の方が抱えている問題、

今後繋がっていけそうな農家さんの情報などを知るべく、

京丹後市の農業振興課から田崎正浩さんにお越しいただきました!


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実際にお話を聞くと、やはり様々な農家さんが廃棄になってしまう

食材の使い道に上手く方法を見いだせず、困っているという

現状が見えてきました。


「君たちの取組には、とても価値がある!

ぜひそのまま活動を進めて行って欲しい」


という力強いお言葉をいただき、彼女たちの目も輝きます。

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その後、宮津にあるお米を中心に様々な食品を原料とした

ジェラートの製造販売をしているコメトテさんを訪問。


探究目的を説明し、自分たちの想いを伝えて、

コメトテさん(事業者)とコラボ出来ないか、交渉に臨みます。

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果たしてその結果は......? ドキドキ。。


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何とコメトテさん、彼女達の想いに共感してくださり、

快く協力を引き受けてくださいました!!

やったね\(^o^)/


実際にコメトテさんが製造されている無農薬のお米を

原料にしたジェラートを試食させていただきます。

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こ、これは、とっても美味しい!!

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これはお米だけれど、さつまいもと梨を使ったジェラート&アイスクリームを

作ること。完成形がどんな風になるのか、少しイメージもついたよう。


あとは、材料をどうやって調達するのか。

夏休みの間に農家さんと繋がっていく予定です。

地域と繋がりながら、このアイスに彼女達なりの「物語」という

付加価値をつけていってもらいたいな、と思います。


彼女達がどんなゴールに行き着くのか、とっても楽しみです♪


◎どんなデザインのパッケージが手に取られるのかが、知りたい!

「パッケージデザインについて考えたいんですが......。」


とrootsに相談に来てくれたこのチーム。

良くお話しを聞いていくと、どうやらデザインそのものよりも、

マーケティングの仕組みについてや、人の購買心理に関心が有ることが

分かってきました。


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そこで、まずは世の中のマーケティングの手法を知ろう、ということで

マーケティングについての研究や、様々な企業の実践事例などが

掲載されている広告/マーケティングに関する雑誌「ブレーン」や「宣伝会議」を

教材に調査を行うことに。


そこで気になった手法や、ロゴデザインについて

今後の自分達の活動に対して、参考になりそうな記事をピックアップ。

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その後、自分達で調査した情報を元にいくつかのプロトタイプ

(商品パッケージのデザイン案)を考えて、どのデザインであれば

最も購入したくなるのかを検証するためのアンケート調査を

実施してみよう!!という流れに。


どうせやるなら、地域に既存の商品のパッケージデザインを

考えたい、そうすることで地域の方とのコラボが生まれたり、

デザインで話題性を作ることができれば、今後その商品の売れ行きにも

貢献できるかもしれない。


そんな想いを言葉にして、発信したところ、何とすぐに

網野町にあるお肉屋さんからリアクションが!?


「ぜひうちで毎月出しているコロッケのパッケージデザインを

考えてください~!」


おおお、早速コラボが生まれそうです★

今後、「肉屋さん 優」さんへヒアリングのために訪問する予定です。


こちらも、今後が楽しみなプロジェクトの1つ!


◎一人一人が認められる、多様性に寛容な社会へ

こちらの問題もまた今社会で大きく取り上げられている話題ですね。

セクシュアルに関して、障害、少数民族や、宗教、言語などなど

「社会的少数者」と呼ばれる人々が存在していて、そういった人たちを

取り残さない、一人ひとりがいち個人として認められる世の中を築いていこう、

という風潮があらゆるところで出てきている一方で、まだまだ

色々なところに問題がはびこっているのも事実。


でもまずこの問題に向き合うに当たって、一番大事なことは

自分達が関心を持ち続ける事、そして当事者の人たちが、どんな

ことに困っていて、私達がどんな風に手を取り合って生きていくのか、

ということを知ったり、考え続けること。


そんな想いで、動き出してくれた4人の高校生たちがいます。


彼、彼女達は「マイノリティ」の中でも、

セクシュアリティ(LGBTQ)の問題に関心を持っていて、

それに関することをテーマに学びを深めていく予定です。


先日、実際に当事者の人の声を聞いてみよう、ということで

トランスジェンダーの方にヒアリングをさせて頂きました。


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自分たちでも仮説を立てて、どんな事で当事者の方が困っているのかを

考えていたのですが、やはり実際にお話を聞くことで、

ぐ~んと視野が広がり、新しい気づきを得られます。


これまでは、ぼやっとしたことしかイメージ出来ず、

テーマもざっくりしていたので、今後どのような方針で進めていけば

良いのか、迷っていたとこころもあったのですが、

ヒアリングをしたことで、これから自分達が何を目的に、どう動くべきなのか、

が見えてきたようで、やりとりが終わる頃には、とてもすっきりした

表情を見せてくれました!!


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これからは、先進的な取組をしている団体や企業、行政の取組などの

事例を調べつつ、多様性が認められる社会に近づくように

自分達には何ができるのかを考えていく流れになりそうです。


どんな風なアウトプットに行き着くのか、こちらも非常に楽しみ♪


*****


まだまだ紹介したいプロジェクトは山ほどあるのですが、

また長くなりそうなので、今回はこのあたりでとどめようと思います。


また順次、紹介記事を書いていくのでお楽しみにお待ちください。


次回の記事は、3年生の探究の様子を!

そちらもぜひお読み頂ければ幸いです。


面白がりながら、そして時に失敗しながら、でもそれを糧に成長する。

そんな探究活動を多くの高校生達に経験してほしいな、と願いながら

私も地域コーディネーターの仕事を精一杯頑張ります!



 

今年度の探究活動は、早い時期から地域での動きが活発!? ~〈1年生〉vol.1

 

みなさん、こんにちは!

梅雨が明けて、いよいよ本格的な夏の気候になってきましたね。


そして夏休みに突入しましたが、最近とても嬉しいなぁ、と

感じることがあるのでシェアさせてください\(^o^)/


探究の授業は、1年生~3年生まで普通科のクラスで行われていますが

1年生:探究の基礎 探究とは何か、学びを深めるための手法を知る

2年生:興味関心のあるテーマから問いを立て、

    1年間かけて様々な手法を使いながら自分なりの正解を導き出す

3年生:2年間で培ってきたものを次は自分の進路に活かすための準備

より良い社会の創造者を目指す


というようにカリキュラムが組まれており、

仮説を検証したり、チャレンジをするための学びのフィールドとして

地域というものを活用しています。


昨年あたりから、様々な地域活動の規制が徐々に緩和され、

学校のみならず、地域で活躍する高校生たちが沢山出てきたのですが、

その先輩たちの姿を見ていたからか、今年は2年生中心に早くから

積極的に動いてくれる高校生たちの割合が増え、夏休みに入った今、

休み期間中のフィールドワークの相談に来てくれる高校生たちが

とっても多いです。

(その分、コーディネートするのは大変(゚o゚;)嬉しい悲鳴......!!)


その様子をダイジェストでお伝えしますね!!
1つ1つのプロジェクトについては、時間はかかると思いますが、

また順番に記録していきたいと思います。


今回の記事では1年生の探究の紹介♪

・フードロスの課題を解決したい!

ロスになっている食材を使ったお弁当作りにチャレンジしたいプロジェクト

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自分達でプランを練って、rootsに相談に来てくれました!
すごい熱量!! これは驚きです。


何のためのプロジェクトなのか。

何を一番やりたいのか。

誰に協力を求めるとよいか。

実践に移すまでにどうやって情報収集するのか。


など、ヒアリングを通して、一緒にベストな方法を考えます。

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例えば、お弁当を作った後、どんな人をターゲットに配布するのか、

という話になったときに

孤独を感じている、孤立してしまってる独居の高齢者の方、

遅くまで働いていて、コンビニなどで食事を済ませている労働者、

といったような意見が出てきて、「それ、絶対需要があるね!!」と

盛り上がったのですが、最初彼女達はそれをボランティア活動として

実施する方針で考えていたのでした。

それを聞いたときに、もしこの活動を持続可能なものにする場合は、

ボランティアだと続かなくなってしまう可能性があることを話した上で、

事業化していく方法を提案。

社会には、様々な事業のモデルがありますが、シンプルなものを例に

事業モデルの勉強にまで発展。

アイディアがどんどん具体化されていくこと、

そしてその方法が様々有ること、実現できそうな未来が見えたこと。


彼女達の目が、キラキラ輝きます。

「やってみたい」のアイディアが、こうして形になっていく瞬間って

すっごく楽しくて、面白いよね。

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(事業モデルについて図解で説明)

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一番やってみたいことは何か。

大切にしたいことは何か。


付箋に書き出して、方向性を考える指標にします。

この後、彼女たちのチャレンジがどのように動き出すのか楽しみです♪


(おまけ)

この日、これから久美浜で量り売りに挑戦しようとしている

地域の方が来てくださったのですが、何と彼女達が自らその人に

コンタクトを取っていたのです!


フードロスの問題を少しでも解決の方向に持っていくために

必要な分だけ作って、必要な分だけ持ち帰ってもらう。


それを実現するための1つの手段として、量り売りが思い浮かんだ。

実は6月に地域の方に来ていただいて、「SDGs講演」なるのもの

実施したのですが、その時のゲストの一人が量り売りにチャレンジしたい、

とお話しをしてくださっていたのです。


その後、すぐに自分で連絡を取ったようです。

これから自分たちのプロジェクトを

進めるに当たって助言をもらったり、一緒に何かしらコラボができるなら、

そういった繋がりも作りたい。


ちゃんと行動(アクション)に移しているのがすごいですよね。

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(再会できてとっても嬉しそう)


自ら動き、チャンスをつかみ取っていく姿勢を

これからも持ち続けて欲しいと願っています。

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どんなものが量り売りされているのか、説明を聞いている高校生。

色々な可能性が見えてきて、これからの動きにワクワク!


 

「音楽で人を幸せにする」~ギタリスト八木雅彦さんへのヒアリング~

 


八丁浜からほど近く、

古い町並みが美しい通りをしばらく進むと、

立派な蔵が姿を現す。

この蔵、外観は立派な日本家屋であるが、

中に足を踏み入れてみると、

想像していたのとは異なる雰囲気の空間が広がっている。

 

レコーディングができるブースや、

作曲・編曲をするための機材、ギターなどの弦楽器。

この部屋の主は、本格的に音楽に携わっている人だ、

ということがすぐに分かる。

 

そう、この部屋の主こそが、今回のメイン。

ギタリストの八木 雅彦さんである。

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八木さんにお話しを聞くのは、

音楽大学の作曲コースを志望している高校生。

彼女は、幼い頃からエレクトーンを弾いており、

作曲の経験もあるという。

しかし、作曲をする際に

どうしても自分が好きな音楽の系統が似通ってしまい、

中々ブレイクスルー出来ないという理由から、

作曲や音楽そのものについて、少し異なる観点から考えるため、

八木さんへのインタビューに挑んだ。

 

〈インタビューの様子〉

 

―こんにちは! 初めまして。

 今日はお時間をいただき、ありがとうございます。

 実は、今日お話しを聞くことをとっても楽しみにしていました!!

 私は、音楽大学の作曲コースを目指しているんですが、

自分がこれまであまり触れてこなかったジャンルの音楽に触れたくて、

今回このような機会をいただきました。

これからの作曲活動に活かせるようにしたいと思いますので、

どうぞよろしくお願いいたします!

 

おお、すごいですね!

こちらこそよろしくお願いいたします。

何かの参考になれば嬉しいです。

 

―では、まず八木さんがここ丹後に移住されるまでの

ストーリーをお聞かせいただいてもいいですか。

 

生まれは京都府ですが、音楽活動をするのに

東京を拠点にして生活を送っていました。

ですが、東京といっても住んでいたところは調布市というところで、

緑が多く、ごみごみしたところではありませんでした。

元々自然肌で、キャンプや釣りなどアウトドアが好きで、

地方移住には関心を持っていたんです。

 

4年前に知り合いができた関係で丹後に来たのですが、

海の近くに住めるこの環境に一目惚れして。

なんと言っても海が大好きなので、そこから時間があれば、

丹後に通うようになりましたね。

そうしているうちに知り合いが沢山できて、

あぁ、もうこれは住んでも大丈夫だな、と。

2022年に網野町に移住をして、ここにスタジオを構えました。

月の半分以上は、ツアーなどのため丹後を離れていますが、

丹後にいる間は曲作りやレコーディングなどをしています。

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―こんなにすごいアーティストさんが、

普通にこうして丹後にいらっしゃることが、何だか信じられません......。

ツアー(ライブ)は、どれくらいの規模で行われるのですか?

 

(会場)によりますよ! 

ライブハウスのような小規模のところもあれば、

2万人規模の大きな会場でやることもあります。

 

―2万人!? 

ちょっと想像がつかないのですが、

そんな大勢の前でパフォーマンスをするってどんな感じなんでしょう? 

緊張はしないのですか?

 

そうだねぇ......。

規模が大きいと、人は米粒みたいだからそこまで大きな緊張はないかも。

逆に小さい会場の方が、観客の表情も分かるくらい距離が近いから、

また大きいところとは違った高揚感を感じたりするよ。

まぁ、規模の大小に関わらず、いつもライブが開始する直前は、一番緊張する。

色んな感情がこみ上げてきて、

苦しいとすら感じることもあるのだけれど、そ

れでも始まってしまえば、自然とその感情は消えているかな。

音楽に身をまかせて、後は全力で楽しむだけ。

 

―すごいなぁ。私も軽音楽部ですが、人前でパフォーマンスするときは

いつもすごく緊張します。

緊張したときの対処法はありますか。

 

深呼吸をして精神統一することかな。

ライブ直前のルーティーンを行うこと。

メンバーで最終確認を念入りにした後、

ステージ裏で準備体操をすることが、僕のルーティン。

でも「緊張をしなくなったら最後や」とも思っていて。

良い意味で緊張感を持ち続けられる人でありたい、って思っているよ。

 

―すごい。かっこいいですね。

それでは、ここから音楽に関することについて

具体的にご質問させていただきますね。

まずは作曲について。

八木さんは、作曲するのにどのくらい時間がかかりますか。

 

曲にもよりますが、平均すると僕は遅い方だと思います。

時々、ぱっと何か降ってくるように思いつくこともありますが......。

 

―そうねんですね。

八木さんは、どうして作曲をするようになったんですか。

 

僕はもともとB'zX Japanが好きで、

ギターに憧れて弾いてみたんだけど、

全然上手く弾けなくて。

それだったら、自分で弾ける曲を作ってしまおう、

というのが作曲するようになったきっかけ。

 

―うわぁ、何だかかっこいいですね! 

自分で作ってしまおう、という思考がすごいです。

 

いや、弾けなかったからね()

弾けたらかっこよかったんだけど......。

 

ー作曲する際のコツみたいなものはありますか?

 どんな風にして曲のアイディアが浮かぶのでしょうか?

 

そんなポンポン思いついたら苦労しないんだけどんね()

アイディアっていうのは、これまでどれだけ色々な

「音楽」に触れてきたか、だと思っていて。

とにかく多くのものに出会って、自分の中にストックしてきたものや、

好きな音楽、そういったもののエッセンスを組み合わせて、

アレンジし、新しい曲作りに活かす。

後は、散歩をしている時などにメロディーの1フレーズが

ぱっと浮かんでくることもあるので、

そんな時はすぐに携帯などに録音しておきます。

曲作りを進めていく上で、そういった引き出し(ストック)から

引っ張りでしてくることは多いので、

ちょっとしたフレーズでもすぐに記録をとっておくことを習慣にしています。

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―なるほど。すぐに記録することが大切なんですね。

あとは自分の引き出しを豊かにするために、色々な音楽に触れる経験を積むことも

必要だということが分かりました! 私もまずはたくさん聴こうと思います。

では、八木さんの音楽観についてお聴かせください。

八木さんにとって「音楽」とはどういうものでしょう?

 

音楽とは、普段中々伝えられない想いだったり、

どうしても伝えたいけれど上手く言語化できないことだったりを伝えるための、

「もう一つの言葉」だと思っています。

伝えたい想いがあるからこそ、曲を作っているんですよね。

後は、やっぱり音楽って、誰にとっても平等じゃないですか。

文化とか背景とか関係なく、沢山の人たちにHAPPYになってもらいたい。

その一心で、音楽やってますよ。

 

―うわぁ、かっこいいです!!

「もう一つの言葉」というのが良いですね。

本当にその通りだと思います。

 

人でも動物でも、「音楽」って初めのコミュニケーションツールでしょ。

人間も言葉を話す前は、「音」でコミュニケーションをとっていた。

音楽のルーツをたどっていくのも、すごく面白いと思います。

動物は音楽と共にあったことが分かりますから。

 

―確かにそうですね。

歴史などにも関心があるので、そういったこともまた調べてみたいです!

因みに八木さんは、丹後に来られてから携わった曲において、

特に印象に残っているエピソードはありますか?

 

そうですね。それぞれ思い入れはありますが、

1つ挙げるとしたら2022年に実施された

「DESIGN WEEK KYOTO in 丹後・中丹」のプロモーションビデオを

制作したときのエピソードかな。

企画のテーマが"ローカルから世界へ"ということだったので、

曲のベースは丹後らしい機織りの「ガチャン、ガチャン」という

リズムと音を入れて、その上にアフリカの民族音楽っぽいメロディーをのせました。

そういう意味では、自然界、生活環境の中で発生する"音"全てが、

音楽になるんですよね。

 

―すごい! とっても面白いです!

丹後は自然が豊かだから、例えば「海の波の音」や「鳥のさえずり」、

「木々の葉が風で揺れる音」なども作曲の要素になりそうですね!

ここからは、ちょっと部活の相談もしたいのですが、聴いていただけますか?

 

もちろん! 何でも聴いてください。部活動は何をしているのですか?

 

―ありがとうございます。軽音楽部に所属しています。

バンド練習をしていて、メンバー間の熱量が違うことがあるじゃないですか。

そのせいでぶつかったりとか......。

八木さんは、そんな時どのようにその問題を乗り越えてますか?

 

その問題は、バンドにつきものだよね(笑)

僕の場合は、相手へのリスペクトを大切にしているかな。

やっぱり、価値観は異なっても、

みんな「音楽」で繋がっている。

相手のことをどれだけリスペクトできるかどうかが、鍵になると思います。

音楽的な部分での考え方のズレは、必ずどこかで生じるので、

その場合は"とりあえず一回試してみる"ということを大切にしています。

一度、意見を取り入れて全員で試したあとで、

採用するかどうかや少しアレンジするなどの決断をする。

根気強く、みんなで対話をする、というのが大事ですね。

 

―なるほど。時間をかけてでも、全員が納得のいく形になるまで

落とし込んでいく過程が大事ということですね。

因みに八木さんがバンドを組む上で一番大事にしていることは何ですか。

 

やっぱり一番大事なのは「チームで何をしたいか」

「どんな音楽を目指したいのか」について明確な目標を掲げることかな。

そこに向かって仲間で音楽を作りあげていくものだと思っているから、

本気で一緒にやっていけると思ったやつとしか、バンドは組まない。

そこに絶対妥協しない。"こういう音楽をこいつらとやる!"と

心から思える人を死ぬ気で探す。

志を共にする人たちと組まなきゃ、多分続かない。

 

―仲間と共に同じ目標を目指す、それってすごく大事なことだと、

実感しました。

本気で取り組める仲間と音楽する、っていうのも素敵ですよね。

これから個人としても、バンドとしても

音楽の技術面を上げていくために何かオススメの方法はありますか?

 

方法自体は沢山あると思うけど、

僕のこれまでの経験から大切だな、と思うことを伝えさせてもらうと、

まずは「自分がどういうアーティストになりたいのか」という理想像を

イメージすること。

その上で、今の自分に足りていない部分を磨いていくことかな。

突き詰めていくと、結局同じところに行き着くよね(笑)

足りていないところを磨くには、もうできるまで練習するしかない。

 

―そうですよね(笑)

八木さんがプロデビューされたとき、苦労されましたか?

 

そりゃあ、しまくりですよ(笑)

初めてプロとして出演したライブのことは、今でも忘れられません。

勿論、僕たち以外の出場バンドはみんなプロ。

明らかに自分達のバンドが一番下手くそだった。

それが悔しくて、もうそこから毎日猛練習しました......。

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―そんなこともあったんですね......!! 

私達も気合い入れて、練習頑張ります!

では最後の質問をさせてください。

八木さんの考える「才能」とは、どんなものだと思いますか。

 

「人の気づかないところに気づけるかどうか」

これが才能だと思います。

きっと誰もが何かしら人より秀でている部分を持っていると思います。

そのことに自分、もしくは他者が少し早く気づいた、

ただそれだけの差だと思っています。

自分の才能に気づくために、常日頃から色々なところに

アンテナを張ることが大事。

 

このことは音楽だけじゃなくて、

どんなことでも同じことが言えると思います。

勉強や他の趣味なんかも、

自分はどんなことを得意としているのかについて考えたり、

周囲の人からよく言われることなどに着目しながら、

自分の才能を見極めていくといことも大切かもしれませんね。

 

ーなるほど!

自分と向き合うことって、結構辛い時間でもあったりするので、

怖かったりもするのですが、

「得意」を見極めることが才能の発掘に繋がるかもしれない、

というのは本当にそうかもしれない、と思いました!

とっても学びになるお話しをありがとうございます。

これから、自分だけの音楽を作れるよう、

より一層努力していきます!

 

その想いがあれば、きっと素敵な音楽家さんになれると思います。

頑張ってくださいね。応援しています!!

 


こうして夢のようなアーティストとの対談は幕を閉じたのであった。

 

 

 

〈コーディネーターより〉

 

いやぁ、今回もすごい方にお話しを聴くことができました。

まずプロのアーティストの仕事現場を直接見学できること。

こんなにすごいことが、この丹後の地域でできるということ。

このことに幸せを感じずにはいられませんでした。

 

なんと言ってもこの突き抜けた探究心。

これまで高校生を連れて、本当に様々な分野の方々に

お話しをお聞かせいただきましたが、どなたにお話しを聴いても

毎度感動で胸がいっぱいになります。

 

八木さんの「音楽」に対する熱い想い。

「音楽」を通して、沢山の人に幸せになってもらいたい。

誰かを救う、背中を押す、そんなアーティストになる。

 

八木さんは、どれだけ苦しい時があろうとも、

一切この理想、ゴールに対して妥協をしなかった。

それを叶えるための努力を惜しまなかった。

 

リズムを鍛えるのにダンスが良い、と聴けばダンスも習いにいった。

何も考えずともいつでも「自分の音楽」を奏でられるようになるまで、

練習をし続けた。納得のいく音楽ができるまで、考え続けた。

自分の音楽の引き出しを豊かにするために、

全く未知のジャンルの音楽や伝統文化に

触れるようになった。

 

「自分の音楽で楽しめるようになったのは、40代に入ってからです。

それまでは苦労もありました。

でも、これまでの全ての経験が今の僕を作っています。」

 

そうやって爽やかに話す八木さん。

笑顔で話すその背景には、きっととんでもない努力や多くの挫折がある。

 

「音楽で人を幸せにしたい」

 

音楽家としてプロデビューを果たし、

今や2万人規模の会場でライブを出来るようなアーティストであるが、

そこに慢心することなく、常に新しい音楽を生み出す努力や

世界へと飛び出すチャレンジを一切おしまない。

お話しを聴いていた高校生の背筋も、ピシッとのびる。

初めて触れる、プロの仕事。

きっと作曲を勉強しようとしている彼女にとって、大きな刺激となったはずだ。

 

これから沢山の音楽に出会って、知って、感じ、考え、悩み、歩んでいくこと。

そうすることで、彼女の見ている世界はぐんと広がり、豊かになる。

 

話しを聴いた後に

「俄然、音楽に対する学びのモチベーションが上がりました!」と

嬉しそうに話す彼女の姿を見て、

これからの成長がとても楽しみになったのである。

 

~人の「探究」に触れ、己の世界を豊かに、深める~ 〈万助楼料理人:大町英継さんへのヒアリング編〉

 


網野町浅茂川。八丁浜のほど近くに佇む旅館。

何と歴史を遡ると、百十余年にもなるらしい。

その名も「万助楼」

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趣のある正面玄関の前に立った高校生。扉を開ける前に1つ深呼吸。

少し緊張した面持ち。それも無理もない。

こういった格式張った雰囲気の場所に訪れたことは、あまりないはず。

 

意を決して、いざ扉を引く。

ガラガラ......。

 

「......っ!!??」

 

建物の中に入って、目の前に現れた光景に目を見張る。

ここはまるで竜宮城。

おとぎ話の中に紛れ込んでしまったかのような気分になる。

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思わず廊下に佇んでしまった高校生。

確かにこれはすごい。

 

目に映るもの全てが珍しくて、キョロキョロしながら案内係の方の後を追う。

そして案内された部屋に入って、広がった景色を見て、再び息をのむ。

 

「この部屋からの景色、綺麗でしょう。

今日はお天気が良いから、一層キラキラして見えますね。」

 

大きな窓からは、海が見下ろせるようになっており、

遠くの方で釣りを楽しんでいる

人々の姿も伺える。浦島太郎と乙姫様が祭ってある

「嶋児神社(しまこ神社)」も目の前だ。

穏やかで、心安らぐ時間が流れていく。

 

「失礼します。」

 

そこに入ってこられたのが、今回の主役。

万助楼の料理長、大町英継さんだ。

 

今回、大町さんにインタビューをするのは

和食や日本文化に関心のある3年生。

料理人の世界に触れ、日本食を通して

日本文化に対する知見をより広げるために

今回のインタビューが決まった。

 

ここからは、高校生と大町さんのインタビューの様子をお届けしましょう。

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―大町さん、今回は貴重なお時間を頂きありがとうございます。

 早速ですが、大町さんは"和食"というものを

どのように捉えられていますか。

 

いきなり難しいことから聞くね(笑)

その問いには、はっきり答えられないなぁ......。

料理には"起承転結"があって、それは始まりから終わりまでの1つの物語。

和食では、年中行事や節句などを大切にして四季を表現します。

普段の何気ない生活の中で、季節を感じてもらえるよう、

料理にも工夫を施す。

勿論、伝統や基礎は大事にしますが、

僕は常に"それを受け継ぐだけでは終わらせない"ための工夫や

遊びを料理に取り入れる様にしています。

料理は、もっと自由でいいんです。

正解はないと思っています。

 

―なるほど。料理の世界って、本当に奥深いですね。

 僕が和食を好きなのも、1つ1つのお皿がメイン、というか、

色とりどりで芸術的なところに惹かれるからです。

四季の話を聞いて、納得しました。

では、大町さんが料理人を目指すようになった頃から、

ここに至るまでのことをお伺いしたいと思います。

高校卒業後は、調理の専門学校に行かれたのですか?

 

そうですね。大阪の専門学校に行きました。

 

―専門学校では、どんなことを学ぶんですか? 

 

あらゆる調理法の基礎という基礎を学びます。

色々な先生がいるし、吸収できることが

沢山あるので楽しかったですよ。

学校の良いところは、多様な種類の料理を学べるところですね。

 

大町さんヒアリング④.jpg

―学校で学んだことは、今も活かされていますか?


勿論、基礎をたたき込まれたことでそれが今でも土台にはなっています。

だけど、学んだこと全てが正解ではない、ということにも

卒業してから気づかされました。

 

例えば、お吸い物1つとっても味付けの方法として教科書には

「だし、醤油(薄口)、塩」が使用するもの、

そして「だしをとった後、味付けは、さ・し・す・せ・その順番なので、

まず塩を加えて、醤油で味を調えていく」と書かれていますが、

僕はそのやり方では、自分の納得のいくお吸い物の味に辿り着くことが

出来ませんでした。

だから、教科書からは一旦離れて、

色々な方法を繰り返し試したところ、

だしを取った後、塩からではなく、

醤油からの順で味を調えた方が理にかなっている、

ということに気がつきました。

 

人によって、拘りがあるから、

そこを聞いていくのもとても面白いと思いますよ。

 

―確かに。その人なりの「正解」に行き着くまでの過程などを

聞いていくと面白そうです!

それでは次に大町さんの日課を教えて頂いても良いですか?

 

朝は、よく散歩出かけます。散歩のコースは、山も海も行きますね。

季節の草花を採取したり、料理に使用する山菜を摘みに行ったり、

朝市でその日に捕れた魚を買いに行ったり。

その日に手に入った材料で、献立を考えます。

丹後の良いところは、こうして外を出歩くことで食材が手に入ることですね。

 

―日常生活の中で、これは旬の物だ、と

意識することって中々難しいですよね。

 

今はスーパーで買い物をすることがほとんどだと思います。

だけどスーパーしか知らないと、旬の物を意識する感覚は薄れてしまうでしょう。

スーパーというのは、人間にとって都合の良いものしか並んでいません。

あの世界は自然の摂理からは、乖離しているんですよ。

自然の恵みを自然のままに頂く。

そこにちょっとした工夫を加えて、彩っていく。

料理って、そういうものだと思います。

 

―そうですよね。

では、大町さんが考える「おもてなし」についてお聞かせください。

大町さんは、何が「おもてなし」だとお考えですか?

 

一言で言うと「察する力」だと思います。

宿というのは、基本的に訪れるお客様の行動(アクション)は、

泊まりに来る、という行為であってそこはみんな共通しています。

ですが、その目的や背景はお客様によって異なります。

 

どういう目的で、今ここに来てくださったのか、

何を一番求められているのか、どんなことをすれば喜んでもらえるか。

 

お客様によって、アプローチの仕方を変えています。

わざわざこの場所を選んで来てくださっている目的を把握し、

察して、次に自分が何をすべきか考える。

その行為が「思いやり」であり、思いやりを形に変えたものが

「おもてなし」なのではないでしょうか。

 

―なるほど。すごく納得しました。

察する力かぁ......。難しいな。大町さん、すごいです。

因みに大町さんは、型にはまらない料理を常に生み出されていますが、

そのアイディアはどこから湧いてくるのですか?

 

過去から現在に至るまでに、経験したこと、思い出、

心動かされた体験、それら全てが今の料理に繋がってると思います。

料理のインスピレーションが生まれるのは、

「いかに感動したか」だと思っています。

心動かされる体験を沢山積みかさねていくことが大事ですね。

それは和食以外の料理は勿論、訪れた旅行先で感じたことや、

映画や音楽、異なる業界の人々との交流など、外に自分を開いて、

"良いもの"を吸収すること。

これが自分の引き出しを豊かにし、

次の新しい料理へと繋がっているのだと思います。

大町さんヒアリング.jpg

―たくさんの世界に出会うことが大事なのですね。

それでは大町さんの今後の目標を教えてください。

 

僕は、人の感情の中で最も幸せな感情は「嬉しい」だと思っています。

幸せはみんな最後には「嬉しい」になる。美味しいものを食べれて「嬉しい」

ぐっすり眠れて「嬉しい」 好きな人に出会えて「嬉しい」といったように。

 

ここを訪れる全てのお客様に「嬉しい」を

たくさん感じてもらえるようなおもてなしを考え続けること。

その「うれしい」体験の1つとして、拘っているのが

"丹後でしかできない体験"を作り出すこと。例えば、鮑の炭火焼き。

鮑まるまる1つを、豪快にかぶりついて頂く。

これは、僕が幼い頃に浜辺で遊んでいたとき、

そこで捕れた貝をその場で焼いてむしゃぶりついた思い出から

着想を得ています。

先ほどのインスピレーションを何から受けるか、

というお話しに繋がりますが、

子どもの頃に体験した強烈な記憶は、

「万助楼らしい料理」が生まれるきっかけに

なっています。

 

そうした「うれしい」体験を通して、普段の疲れをそぎ落としてもらって、

お帰りになられる時にはまた新たな気持ちで明日を迎えられるように。

この万助楼がそんな場所であり続けるために真摯にお客様と向き合うこと。

ここは浦島伝説の発祥の地と言われているので、

ここを竜宮城だと思って過ごしてもらいたい。

つまり、日常から非日常の体験を。

そしてポジティブな気持ちになって、また日常に戻れるように。

 

「また帰ってきたい」と思ってもらえるような場を

築いていくことが目標ですね。

 

―素敵なお話しをありがとうございました。

 まさに「探究」を突き詰めた先にあるお仕事の姿を見せてもらいました。

 料理の世界の奥深さにも触れることができ、大変有意義な時間を

過ごすことができました。

次はぜひ、実際に料理をされているところを見学させてください!

 

はい、もちろんです。

何かのお役に少しでも立てたのなら幸いです。

これからも色々なものに出会って、たくさん吸収して、

自分だけの道を歩んでいってくださいね。応援しています!

調理場にて(大町さん&こうたくん).jpg

~ヒアリングを終えて〈コーディネーターより〉~

 

「料理はもっと自由であっていい」

 

そう話す大町さんの言葉がずっと残っている。

 

大町さんは、昔からずっと料理人になりたい、

という志を持っていた訳ではない。

科学者や自衛隊に憧れた時期もあったそうだ。

 

だが、いつの間にか料理の道に進むことを決めていた。

その決断をした背景には「刷り込み」もあっただろう、と話す。

実家が宿屋であり、それを継ぐのが自然の流れだと、

勝手にそう思い込んでいた。

 

でも、だとしたら、大町さんはどの時点から

こんなにも料理の世界に没頭するようになったのだろう? 

大町さんの料理に向き合う姿勢はどこまでもまっすぐで、

真摯で、愛を感じる。

言ってしまえば、"熱量"だ。

 

大町さんのお話しを聞く中で、

彼が料理の世界にはまっていくきっかけになった起点が

いくつかあったことに気がつく。

その中でも、特に彼の世界の幅を広げるきっかけになった出来事が、

異なる分野の人々との交流だ。お茶事の習わしに触れたり、

器作家との交流を深めたり、

和食だけでなく他ジャンルの料理人達との勉強会をしたりと、

様々な物作りに携わる人々との親睦を深めていったこと。

これまでの自分の中にはなかった新しい世界と、

これまで自分が経験してきた"嬉しい"体験を融合させて、

初めて「自己流」の料理が生まれる。

料理って面白い。料理は自由だ。

こう感じた瞬間から、大町さんはどんどん料理の世界に

魅了されていったのだろう。

 

「未だ誰も見たことのない、あっと驚くような料理をつくりたい」

「口に含んだ瞬間、笑顔になるような料理を」

「自分の料理で、感動のその先の景色を見てみたい」

 

大町さんは、「自分がどうしたいのか」を常に意識している。

そして「自分がどうしたいのか」を叶える過程の中には

必ず葛藤(ジレンマ)が生まれる。

 

"やりたいこと"と"やらねばならないこと"の間に「ブレ」があって、

この「ブレ」がジレンマだという。

 

でも大町さんは、このジレンマさえも楽しんでいる。

 

「ジレンマが生まれるのは、「やりたいこと、実現したいこと」が

自分の中に明確にあるから。限られた時間、決められたルールの中でも、

最大限の試行錯誤、工夫を凝らして

少しずつ自分の目指すところに近づけていく。

常に自分の思考を止めないこと。

ジレンマをマイナスなものとしてでなく、

自分が目標に向かっていくための糧とすればいい。」

 

あぁ、こんな大人がいてくれて良かった、と心底思う。

 

大町さんの生き方、価値観、仕事と向き合う姿勢、言葉、

そして突き抜ける探究心......。

きっと高校生もそういうものの中から、

"大切なもの"を受け取ってくれたはずである。

だって、話しを聞く高校生の目が、とてもキラキラしているから。

 

子どもは、大人の背中を見て育つ。

 

私も見られている一人なのだ、と思うと背筋が伸びる。

私はまだまだだ......。もっと頑張ろう。

私は高校生に恥じない生き方をしよう、と改めて誓った。

 

 

 

 

【新入生向けオリエンテーション~あの時、伝えきれなかったこと~】

 

気がつけば、4月も後半戦に入ってきました。
皆さん、新生活はいかがお過ごしでしょうか?

私(地域コーディネーターの能勢)は毎日、

高校生と関わっているからか、

最近メディアで「高校生」が取り上げられていると、
ついつい見入ってしまい、
最後には何故か号泣するという
日々を送っています(笑)

涙腺がどんどん脆くなっているのは
年のせいでしょうか...(苦笑)

そんなことはさておき、
今回は高校生の皆さんにお伝えしたいことがあり、
この記事を書いています。
また少々長くなってしまうのですが、
最後までお付き合いいただけると幸いです。

先日、新入生向けのオリエンテーションがあり、
そこで探究の授業のことや

京丹後市未来チャレンジ交流センター"roots"について
お話をさせていただく機会を
10分ほどいただきました。

しかし、10分は余りにも短く
その場で全てを伝えきることができなかったので、
改めてこの場で伝えたかったことを
纏めておこうと思います。


本題に入る前に改めてrootsという施設について説明しておきます!

roots(正式名称:京丹後市未来チャレンジ交流センター)は

京丹後市の委託を受けて、民間で運営している公共の施設です。

峰山高校からほど近く、「丹海30番街」と呼ばれる茶色の建物の

1階にあります。前を通ると全面がガラス張りになっているので

すぐ分かると思います。


roots外観.JPG


そこは「高校生と地域の人々の交流拠点」となっており、

これまで峰山高校の生徒のみならず、丹後地域の他の高校に通う高校生、

そして日本各地から訪れる高校生に加えて、卒業生を含む多くの大学生や

地域の方々が訪れ、沢山のドラマが生まれました。


空き家チームの話合いシーン.jpeg


てつさんとちゃんなお企画MTG.jpeg


ななちゃんときあらちゃん.jpeg


今後、1年生のみなさんにも探究の授業や進路相談などで

この施設をバンバン使って欲しいと思います。

基本的に火~土:11時~20時

が営業時間となっているので、部活の帰りやバスの待ち時間など、

フラッと立ち寄ってみてください!


もし、気になっているけど入るのがハードル高いなぁ......、と

不安に感じてる場合は、探究企画部の地域コーディネーター

能勢までお声がけいただければと思います。

ぜひ一緒に行きましょう♪


では、ここからが本題です。


オリエンテーションでは、以下の3つのことに

焦点を当ててお話をさせていただきました。

①"偶然"を"必然"に変えよう
②読書は「自立の旅」への予行練習
③自分の中に「小さな資源」を蓄えよう!

どういうことなのか、
其々説明しますね。

まず①"偶然"を"必然"に


今後探究の授業や、rootsという場所など、
これからもしかすると
君が何か変わるきっかけになるかもしれない、
キッカケを私たちはできる限り多く
仕掛けていきます。
でもその"偶然"に出会ったことを"必然"、
言い換えれば「ホンモノ」に変えるのは、君次第。
沢山の人、物事に出会って、
それらと積極的に関わろう。

・やってみなきゃ、その面白さは分からない。

取り敢えず、手足を動かしてみる。
やってみて「違う」と感じたら、
また別の方法を探せばいい。
関心がなくてもやってみたら
案外面白いかもしれない。

・周りに発信すること

いつどこで協力者が現れるか分からない。
言葉にして発信することは、
やりたいことを実現する上でとっても大切。

rootsのやってみたい壁.jpeg

・夢や目標とはもっと楽に、柔軟に付き合おう

色々な人と出会い、対話をし、自己内省することを繰り返していると、

君の考え方はきっと変化していく。
変化してもいい。揺らいでいい。
その揺らぎは君の成長の一歩だから。

でもこれだけは忘れないで。
君の中にどんな変化が生まれようとも、
「自分はどうしたいのか」
「何を目指したいのか」
「どう在りたいのか」
これは常に意識しておこう。

②読書について

・本との対話は、自立の予行練習

本ってすごい。
もうこの世にいない先人たちとも、
文化も背景も異なる人とも、
聞いたこともないような職業に就いている人とも
対話をすることができるツール。
「この考え方、素敵だなぁ」
「私はこうは思わない」
そんな風に共感したり、反発したりする行為は、
君の本当の意味での自立を促す。

学校の図書館はもちろん、

rootsにも君たちの人生の先輩たちの渾身の想いが詰まった
本たちが、勢ぞろいしている。
これを機会にできるだけ多くの
価値観に触れてほしい。

・本は読み薬

辛い時、苦しい時、疲れた時。
本はいつも隣に寄り添ってくれた。
何度も救ってくれた。

本はきっと孤独から君を癒やしてくれる魔法の薬。
読書は「広い世界と繋がる扉」

rootsの本棚.jpeg

③自分のなかに資源を!

嬉しい!楽しい!面白い!
ワクワクすること、感動...。

そして悲しい、辛い、怒りといった
ネガティブの感情。

何かしらの事象から、君が受け取った感情で、
心が震えるとき。気持ちが揺れ動くとき。
この感情の動きに、どうか敏感でいてほしい。

「どうしてこんなにも揺さぶられるのだろう?」
「何がこんなにも私の思いを動かすのだろう?」

其々の感情を抱きとめて、
原因を深ぼる習慣をつけてほしい。

これは君が君自身のことを
理解していく手立てに繋がるだろう。

最後に。
人生は「生涯学習」
時代が変われば、「当たり前」も変化する。

今君の目の前に映っているものだけが全てではない。

常に世の中の動きにアンテナをはって、その時々の
「自分なりのベストな正解」を見出そう。

君がこれから進んでいく先に
溢れんばかりの希望があることを心から願って。

さぁ、これから一緒に
君の一歩を後押しする「何か」に出会うための旅に出かけよう。

私達は君たちの小さな一歩を
いつも応援しています。

 

「地域に対する若者の意識調査をしてみよう! ~アンケート調査の基礎に関して専門家から学ぶ」

 

みなさん、こんにちは!

今回、紹介する高校生たちの探究活動に関しては、

過去に何本も書いてきているのですが、

もう少しお伝えしたいことがあるので、今暫くお付き合いいただけますと幸いです。

 

***

【「京丹後市民の幸福度~このまちの魅力と可能性」チームの探究活動】

 

"人口減少"に歯止めをかける手立てとして、

「どうすれば京丹後市に人を呼び込めるのか」について

検討するところからチームの活動がスタート。

 

そして様々な人々からお話しを聞くことを通して、

段々と考え方に変化が生じていったメンバー。

「人口を増やす」ことに注力するのではなく、

既にこのまちで生活をしている

「市民の幸福度が高ければ」必然的にまちとしては、

とても良い状態なのではないか、という考え方に移っていきます。

 

地域の方への幸福度に関するヒアリングの様子については、

以下の記事にまとめておりますので未読の方は、

お時間のあるときにご一読ください。


※これまでの記事

vol.1 「ゆう薬局薬剤師/船戸さんへヒアリング」

vol.2 「Tangonian代表/長瀬さんへヒアリング」

vol.3 「丹後暮らし探求舎相談員/坂田さんへヒアリング」

vol.4 「Tsuchica代表/岡村さんへヒアリング」

vol.5 「京都府地域アートマネージャー/甲斐少夜子さんへのヒアリング」

 

 

 

〈幸福度に関する実態を調査するためのアンケートをとってみよう!〉

 

5人の方へのヒアリングを通して、

高校生たちの地元に対する印象は、

随分ポジティブなものとして受け止められるようになりましたが、

実際のところ、高校生の若い世代は、

京丹後というまちに対して、どのような印象を抱いているのか

大人が感じているまちに対する想いとは、

隔たり(ギャップ)があるのではないか。

もしあるのだとしたら、高校生たちは

"何に対してネガティブさを感じているのか"。

そういった実態を把握することが、

そのギャップを埋めていくための

手立てのアイディア出しに役立つのではないか。

 

そんな風に考えた高校生たちは、

峰山高校生対象にアンケート調査を実施することを決めました。

 

ここで相談したのが、同志社大学社会学部社会学科の准教授、

轡田竜蔵先生。

轡田先生は、地方に住む若者の幸福や意識に関して

専門に研究されており、

これから調査を進めるにあたって助言を仰ぐのに

先生に匹敵する人はいない!

ということで、早速相談してみることにしました。

 

〈轡田先生とのお話〉


あるとくんチーム×轡田先生③.JPG

 

轡田先生 「みなさん、こんにちは! 

      同志社大学の轡田 竜蔵といいます。

どうぞよろしくお願いいたします!」

 

―こんにちは! 本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 

 「事前にざっとみなさんの探究活動について話は聞いているんだけど、

  再度、これまでどんな取組をしてきたのか教えてください。」

 

―僕たちは、今後初め人口減少していく京丹後市に課題を感じ、

少しでも京丹後市に住む人や関わる人を増やすための解決策を

提案することを目的に活動をしていたのですが、

色々な人のお話を聞く中で、人口減少という問題を

避けては通れないという現実にぶち当たりました。

そこで発想を転換して、どうせ人口減少に歯止めを

かけられないのであれば、

ここに住む人たちの幸福度を上げていく方が、

結果的に持続可能で良いまちに繋がっていくのではないか、

と考えました。

そこでU・Iターンの5名の方にご協力いただき、

京丹後市に関する想いやここで暮らすにあたって

得られる幸福感についての聞き取り調査を行いました。」

 

「それはすごく面白い視点だね! 

そして5人に聞き取り調査をしたの?

大変だったでしょう。

丹後の人は、とても熱い方が多いから頭がパンクするくらい、

毎回情報のシャワーを浴びていたんじゃない?(笑)」

※轡田先生は、ご専門の研究に関わるフィールドワークを

よく丹後で実施されているため、

丹後のキーパーソンについてはよくご存じでいらっしゃいます。

 

―すごく大変でした(笑) 

毎回1時間~長い人で2時間程度、インタビューをしたので

話を聞き終わる頃には、ヘロヘロになっていました。

でも、話を聞くことで僕たちが気づかなかった丹後というまちの姿が

はっきり見えてきて、その過程がとても面白かったです。


「どんな話が出たの?」

 

―それぞれの方から色々なエピソードを聞いたのですが、

形は違えど共通することが大きく分けて2つ出てきました。

1つは、地元出身・そうでない人関係なく、

想像以上に強い繋がりがあり、

誰かのチャレンジややってみたいことをみんなで応援しよう!

という風土があるということ。

もう一つは、ものを生み出して楽しむ、

つまりクリエイター気質の人が多いということが

分かってきました。

 

「おお、良いところに気づいたね。

お話しを聞いた5人は、それぞれ異なるタイプのクリエイターだと思うから、

とくに印象に残っているエピソードをもとに丹後の特徴だと

捉えられそうなキーワードをあげていこうか。」

 

―岡村さんは、「音楽」を皮切りに分野を超えて様々なクリエイターが

集えるスタジオを作りたい、というお話しをされていました。

現に今、外部から訪れる様々なアーティストが

作品の制作期間中に滞在するためのスペースを

自宅の一部を開いて運営されたりしていました。」

 

「なるほど。岡村さんは所謂"現代のトキワ荘"を作りたいみたいだね。」

 

―"トキワ荘"って何ですか?

 

「あ、世代じゃないから知らないか。手塚治虫は知ってる?」

 

―あぁ、知ってます!「鉄腕アトム」の人だ!

 

「そうそう。トキワ荘っていうのは、手塚治虫を皮切りに藤子不二雄、

石ノ森章太郎、赤塚不二夫といった著名な漫画家が

居住していたアパートのことだよ。

今も語り継がれる名作がここから沢山生まれたのは、

お互いが刺激や影響を受け合う関係性にあったからだろうね。

新しい移住者の繋がりが豊かで、原住民との関係性も緩く広く

繋がっている丹後だからこそ、色々な分野の人が出入りできる場があれば、

さらに面白いまちになる、と岡村さんは考えられていそうだね。」

 

―クリエイトしていく、という意味では

「何もないからこそ、0から1にする楽しみがある」と、

お話しを聞いた多くの人が共通して仰っていました。

船戸さんは、ハロウィンパーティーをするために

クラブの代わりにアピアを会場にして企画されたとか(笑)

参加者それぞれが得意なことを持ち寄って、

みんなで披露しあったら本当に面白いパーティーになったと聞きました。

甲斐さんは、外部から訪れるアーティストさんのコーディネートをする中で、

何気ない日常の風景がアーティストの視点を通して見つめ直したときに

ガラッと変わる瞬間が楽しい、と仰っていて。

余白があるからこそ、何にでもなる、そんな可能性を秘めた地域、と

捉えていたところが、新鮮でした。

あるとくんチーム×轡田先生④.JPG

 

「いいね。これまでの話から、丹後を表す重要なキーワードとして

"クリエイト(ものづくり)の楽しさ" "余白"というのが出てきたね。

じゃあ、さっきもう一つ挙げてくれていた

"応援してくれる人が多い"ということについても掘り下げていこうか。」

 

―これは、坂田さんや長瀬さん、船戸さんが仰っていたのですが

とにかく丹後の人々は、誰かの新しい挑戦を応援してくれる、

後押しして支えてくれる人たちが多いとお伺いしました。

船戸さんのアピアでのハロウィンパーティーの話もそうですし、

坂田さんは移住者として丹後に来てから、

丹後内外の人々の交流、コミュニティ形成に挑戦されていますが、

これまで地域になかった新しい、よく分からないものを

地元の人が受け入れて背中を押してくれたから今の自分がある、と

お話しされていました。

長瀬さんも一度地元を出てから、様々なお仕事を経験されたあと

丹後に戻ってくる選択をし、起業をして、

今では「ローカルと世界(グローバル)の交差点」をコンセプトに

全く新しい観光業を展開されていますが、

何度も地元の人たちに助けられたからこそ、

今こうして面白い仕事ができているんだ、と。

これも長瀬さんが教えてくださったのですが、

主に人は3つのタイプ(テイカー、ギバー、マッチャー)に分かれるらしく、

統計的に見て「ギバー(giver)」タイプの人が成功を収めてるようなんです。

「ギバー(giver)」とは「与える人」と訳され、見返りを求めず、

他者に色々なものを与えることに喜びを見いだす人のことらしいです。

どうやら丹後は昔から、「お裾分け文化」が根付いているようで、

「ギバー(giver)」の人の割合が多い地域であると、

お話しを聞いた方々は口を揃えて仰っていました。

 

長瀬さんは、受け取った恩を次は時代を背負っていく若い世代に送りたい、

そんな想いでお仕事と向き合われていました。

好きな言葉は「恩送り」だそうです。

 

「おおお、すごいね。これで丹後の全貌が段々見えてきたんじゃない?

丹後の人々は、新たに外から入ってくる文化に対して寛容で、

応援してくれる気質があるということ。

これまでの話もまとめると、「クリエイターのまち」

「作っていく余白のあるまち」「応援・後押しをしてくれる人々が多い」

「施しの文化がある」といった特徴がありそうだね。

昔から職人が多く、"物作り""手仕事"といたものと密接な関係にあった丹後。

そういった環境のせいなのか、自分の手で暮らし・生活を作っていくことを

大事に考えている人が多いような印象を受けます。

このように考えていくと、ものを作り出していく、

所謂、"クリエイティブ・マインド"を一定持つことこそが、

この丹後という地域で暮らすことで得られる「幸せ」の手がかりに

なるかもしれませんね。

今回のヒアリングをしてみて、

自分達の中での新しい発見は何かありましたか?」

 

――僕たちは、この探究活動をするまでは「丹後には何もない」と

思ってたし、正直、卒業した後、一度ここを出たらもう戻ってくる、

という選択肢は考えていませんでした。

だけど、実際にここに暮らす人々のお話を聞いて、

「何もないからこそ、自分の手で何でも作り出せる可能性で溢れている」と

いうことや、チャレンジを応援してくださる人たちが

沢山いることに気づいて、

もっとこの地域と関わりを持ち続けられる方法を模索したい、と

考えるようになりました。

だけど、きっと僕たちと同じ年代の人たちは、

このことに気づいていないと思います。

丹後って、実は自分達が思っている以上に魅力がある場所なんだよ、と

いうことを伝えるような発表ができたら良いな、と思いました。

 

あるとくんチーム×轡田先生⑩.JPG

「それは素晴らしいね。

今の話を聞いていて、今後の活動の方向性として、

僕から助言できるとしたら、方法自体はいくつかあると思う。

あとは、君たちがどんな風に活動をまとめていきたいのか、

によってやり方を選んでもらう、という感じかな。

例えば、君たちは「人口減少に歯止めをかけるための方法」を

考えるところから、市民一人ひとりの「幸福」について

着目するようになったんだよね。

その「幸福」というのに着目するのであれば、

今我々がこれまでの活動を振り返って、キーワードを挙げていったように、

ヒアリングをしたことをもとに「この地で幸福に暮らすための条件」を

自分達なりに探し出す、ということを目指すのも1つ。

後は、最後に言ってくれていたように

ターゲットを若い世代にするのであれば、

若い世代がこの地域で暮らすにあたって今感じていることの実態を

調査する必要はあるよね。

そのとき、多くはアンケートやヒアリング、という形を取ると思うんだけど、

どう質問をするのかによって、得られるデータの内容が変わってくるから、

自分達が"何を明らかにしたいのか"を明確にする必要がある。

それがはっきり分かっていれば、どんな聞き方をすれば良いかを

考えることが出来るよね。」

 

―確かにそうですね。

僕たちは、この活動を通して、地域の人々と緩やかに繋がりを持つことが

大切だと思ったので、現状、若い世代の人たちは、

地域にそういった同世代以外の繋がりを持っているのか、ということを

知りたい、というのと、持っている人が少ないという仮説を前提にする場合、

どんな風にしたら、若い世代の人も地域と繋がっていけそうか、

というところを考えたい、と思っています。

 

「すごく良いね。

例えば、君たちは京丹後市で活躍する

クリエイターたちのお話しを聞くことで、

地域に対するイメージがアップしたんだよね。

ということは、もしかしたら、他の高校生でも自分の身の周りに

ロールモデルとなるような大人の存在があれば、

地域に対する想いはポジティブである可能性が高い、と過程できるよね。

ロールモデルの存在の有無が、その人のまちに対する想いに

どれほど影響を及ぼしているのか、を調べるのであれば

『あなたの周りにロールモデルとなる大人はいますか?』という、

質問をすればいい。」


―おおお、なるほど!

それはすごく面白そうですね。

 

「そんな風にして、現状の若者はどんなコミュニティを持っているのか、

それはどのような方法で繋がっているのか、

現状まちに対してどんな印象をいだいているのか、

既存の地域コミュニティと関わりを持ちたいと思っているのか、

どうしたらもっと多くの若者が地域コミュニティとの

関わりを持ちたいと思えるのか、

というようなことを問うような質問を検討したら良いと思います。

実は、過去に京丹後市が、市民の幸福度についての

アンケート調査をしており、

その質問事項と結果が、京丹後市のHPに掲載されているので、

そちらも参考にすると良いですよ。」

 

―すごく参考になります!

そんなものも有ったんですね。早速、調べてみます!!

 

rootsに行けば、僕が過去に広島県のとある地方で

若者の意識調査をした時の研究内容がまとまっている本があります。

以前、寄贈させてもらいました(笑)

そこにも、その時に使用した質問用紙を載せているので、

参考にしてもらえるのではないか、と思います。」

 

―ありがとうございます!

次に僕たちが、やるべきことが見えてきました。

これからのアンケート作成が少し楽しみになってきました。

今日、聞かせて頂いたお話しを参考に、質問事項をみんなで練ってみます。

 

「少しでもお役に立てたのであれば幸いです。

最終報告会は、直接聞きに伺う予定なので、発表を楽しみにしていますね!」

 

―何と! ちょっと緊張してきました......(苦笑)

良い発表が出来るように頑張ります。

 

あるとくんチーム×轡田先生⑧.JPG

****

 

〈コーディネーターより〉

 

このグループは、ヒアリング調査をするにあたって、

できる限りヒアリング対象者が活動するフィールドに出向き、

そして毎回1時間~2時間たっぷりと情報のシャワーを浴びて、

いつも頭がパンクしそうになりながら岐路につく、

という活動をしていました。

 

この膨大な情報をどのように整理するのか、というよりも

本当に纏めきることができるのか私も心配していたのですが、

轡田先生の問いかけによって、彼らが話しを聞いた中で

どんなことが印象に残っていたのか、そこから何を感じて、

丹後に対してどんなイメージを抱いたのか、ということが

みるみるうちに整理されていき、そのたびに彼らの表情も

すっきりしていくのが分かり、側で見守っていた私自身、

とても爽快な気分になりました!

 

面白かったのは、あれだけ沢山の人たちから様々なエピソードを聞いた中で、

高校生たちがどのエピソードがとくに興味深かったのか、という視点を知れたこと。

 

「そのお話しが、一番印象に残っているんだ!」

という新鮮な気づきがあり、聞いていてとても面白かったです。

 

轡田先生と彼らのやりとりを見ていて改めて気づいたことがあります。

それは、振り返る際の「問いかけのフレーズ」が

いかに重要な役割をしているのか、

ということについてです。

私も毎回、ヒアリング後に彼らとともに振り返りをしていましたが、

今回轡田先生にさらに深いところまで掘っていただいたお陰で、

乱雑していた情報が一本化されたことに加えて、

彼らがこれまでヒアリングしたエピソードをもとに自分達の言葉で、

「丹後というまちが持つポテンシャル」について

変換していく作業ができました。

 

どのような問いかけをしてあげれば、ベストなのか。

何を明らかにすれば、次のステップへ踏み切ることができるのか、

彼ら自身が現状を把握し、次に何をすべきなのか自分達で理解するためには、

今どんな問いを投げかけてあげたら良いのか。

 

轡田先生を前にした彼らの様子を見ていると、

その表情の変化から「学びスイッチ」が入った事が分かりました。

轡田先生の前では、構えを解いて武装解除ができるという安全性を

彼らが自然に感じ取ったのだと思います。

そこからは、「学び」のモードが入った彼らはどんどん吸収していくのみ。

彼らが今行っている、その行為そのものに

「学び」の本質が集約されていると感じました。

 

「学び」というのは、師から教えられたことを、自分なりに受け止め、

かみ砕き、整えて、付け加えるものがあれば付け加えて、

次の代に「繋ぐ」ということです。

 

自分達のこれまでの活動が、最終的にどこに行き着くのか、

よく分からないまま、何とか道なき道を歩んできた状態から、

轡田先生という先導者に出会って、

目の前が開けた、目指すべきところが見えた、

そんな時間になったと思います。

 

「僕たちが知った丹後というまちの姿を

同世代や後輩達にも伝えるような発表にしたい」

 

最後に彼らがそう宣言してくれたことが、

何よりもこれまでの「学び」を体現してくれたのだと、

これまでの彼らの長い活動が走馬灯のように蘇り、

感慨深い感情が溢れてきました。

 

「こうしたらいいんじゃない?」と言ってあげることは簡単です。

活動が行き詰まった時に生徒よりも経験を積んでいる大人から見れば、

「こうすればもっと良いのにな」とか

「こうした方が効率が良いのに」というようなことも

見えてしまうこともあります。

 

だけど、それは大人から見た「正解」であり、

彼らの「正解」ではありません。

彼ら自身が自分たちで気づく、自分達が何をしたいのか、

を明確にすること、

その上で何が自分達の「正解」なのかを見いだしていく、

見守る側はこの過程を大切にしながら、

彼ら自身が自分たちのゴールに向かって足を進められるように

促していく姿勢や忍耐強さが必要になります。

 

ですが、この作業が実に難しい。

「問い」の練習は、大人側も日々鍛錬する努力をしていかねばならない、と

実感する時間となったのでした。

 

地域の公民館の新しい活用方を提案!? 「ばら寿司を作ろう!」企画を実施しました!

 

今回の記事で紹介するのは、大宮町河辺区にある区民センターの

新たな活用法の提案に挑戦している高校生達の活動についてです。

なぜ区民センターの活用法を考えているのか、どういった経緯で

そういった活動になっていったのか、内容については、

以前別の記事で紹介しているので、ぜひそちらをご参照ください。

 

記事はこちらです。

 

***

 

彼女達の最初の探究のキーワードは「子育て世代が住みやすいまち」でした。

少子高齢化、人口減少が避けられない時代、果たしてどうすれば

まちは持続していくのだろう。

 

そういった課題意識を軸として、導き出した仮説が

「子育て世代に優しいまちは、これからも持続的な発展を遂げるのではないか」

ということ。

 

その考えのもと、河辺区の区長さんと話し合いを積みかさねてきました。

話合いを続けていく中で、彼女達の中にも変化が生まれてきます。

 

親子向けのイベントを開くのも良いが、

ただ単発のイベントで終わってしまう可能性が高いのではないか、ということ。

自分達の活動が一旦終わったとしても、

例えば後輩に引き継げるような形であった方が良いのではないか、と

いうことであったり、卒業後、たとえ自分たちがこのまちを出たとしても

何かしらの関わりを持ち続けられるような関係作りを

メインに考えるのが良いかもしれない、という心情の変化が生まれてきたのです。

 

それに加えて、区長さんもまずは若い世代に地域のことを知ってもらいたい、

河辺区の既存のコミュニティと

今までまちに関わりの無かった人々との新しい関わりを生みだしたい、と

いう想いをお持ちであったため、

今回の企画の趣旨は「親子」をターゲットとするのではなく、

高校生と河辺区住民との多世代間交流とし、

まずは高校生自身が河辺区というまちの成り立ちについて知ること、

河辺区で作られている作物に関してそれらはどんな人が、

どのような想いで作られているのか、生産者の方との繋がりを作ること、

公民館の新しい活用法としての事例を作ること、といったことを

目的とした企画作りをすることになりました。

 

そこで彼女達が考えたのが

「地元のおばあちゃんたちから、伝統的なばら寿司の作り方を教えてもらおう」

というもの。

 

ただ教えてもらうだけではなく、一緒に作るという体験を通して、

農家さんの昔ながらの伝統・文化について学ぶ要素を取り入れたり、

河辺区でとれた作物を使うのと合わせて、

生産者さんの想いをヒアリングするといった機会を設定したり、

区民センターの元館長の水野孝典さんをゲストにお招きし、

河辺区のこれまでの変遷と今後の展望等をお聞きする時間も設定しよう、

というような「楽しみながら学べる」要素を

プログラムの中に沢山盛り込むことになりました。

 

そして令和5325日。

いよいよ温めてきた企画の実施日がやってきました!!

 

告知がギリギリになってしまい、参加してくれる高校生がいるのか

少し不安ではありましたが、彼女達が最後まで粘り強く声かけをした結果、

参加者が集まりました!

高校生の参加が嬉しかったのはもちろん、

何と中学3年生(4月から峰高生)も来てくれました!!

二人の思いを話す(企画最初の挨拶).JPG

今回、伝統的なばら寿司の作り方を教えてくださるのは、

河辺区の「図書の会」のみなさん。

「図書の会」のメンバーの方は、普段は区民センターで週1

親子向けに絵本の貸出を行っていたり、

読み聞かせをされたりしている会です。

最年少の方で60代~最年長は何と80歳の方までいらっしゃいます!

 

挨拶を聞く図書の会メンバー.JPG

まず始めに本日の手順を丁寧に教えてくださいます。

素敵なレシピも用意してくださっていました!!

 

キッチンで説明を聞くメンバー.JPG

そしていよいよ実際に調理をします!

最初のミッションとしては、ばら寿司において重要なそぼろを作ること。

錦糸卵を作ること。

それぞれ二手に分かれて、地元のおばあちゃんたちから

アドバイスをもらいながら作っていきます。

 

「そぼろは焦げ付きやすいから、じっくり時間かけながら混ぜるんやで。

味も元々ついてるから、砂糖もあまりいれんでええよ。

少しずつ入れて味みながら、調整するんよ。」

 

そぼろアップ.JPG

にじかちゃんそぼろ①.JPG

「ちょっと味みてみ!」

そう言われて、一口、口に含んでみる。

あまりにも美味しくて、思わず笑顔がこぼれる。

「どうや? 美味しいか?」

「美味しすぎて、驚きました!!!」

にじかちゃんそぼろ味見.JPG

そんな風にレシピにはのっていないちょっとした豆知識も

随時教えてくださる図書の会の方々。

「これは大事!」というポイントが随所にあるので高校生たちも集中して、

先生方の声に耳を傾けます。

 

愛子ちゃん卵割る.JPG

和ちゃん卵手慣れた感じで割る.JPG

和ちゃん錦糸卵に挑戦.JPG

愛子ちゃん金糸卵①.JPG

ある程度、最初のミッションを完了させると

次はいよいよばら寿司を作る行程へ。

ほかほかに炊き上がったお米をまつ蓋に投入。

お米は、河辺区の農家さんで生産されたもの。

一粒一粒がつやつや光っていて、美しい。


炊飯器のお米(炊きたて).JPG


お米臼に移す.JPG

まつ蓋全体に平等にお米が行き渡るよう熱を冷ましながら広げていきます。

炊きたてのお米って、どうしてこんなにも良い匂いなんでしょう......!!

もうこの時点でみんなのお腹が、ぐぅぐぅ音を鳴らします。

 

愛子ちゃん妹うちわで仰ぐ.JPG

米まぜる.JPG

愛子ちゃん米広げる.JPG

全体にお米が行き渡ったあとは、順番に材料を乗せていきます。

時間をかけて炊いたそぼろ、錦糸卵、椎茸、紅ショウガ、にんじん......。

色とりどりの材料で彩られていく。

たまごとしいたけ.JPG


かまぼこちらす.JPG


紅ショウガちらす.JPG

参加者のみんなから、思わず感嘆の声が漏れる。

「わぁ~~、きれい!!」

ばら寿司作りの中で、この行程が最も楽しい。

 

「緑色に普段はグリーンピースを使うんだけど、

昨日スーパーに行ったときには売り切れていてなかったのよ。

だからその代わりに、これを見繕ってきたわ!」

 

と出して頂いたのは、「菜の花」とその葉っぱ。

ちょうど季節のものなので、これは嬉しい。

 

早速、それも全体に散らしてみる。

やはり、グリーンが入るだけで見た目がガラッと変わる。

それがアクセントになって、より見栄えが良くなり、

全員のテンションがまた上がります。


ばら寿司完成形アップ.JPG


まつ蓋を囲んで、みんなで笑顔。

この光景がとても素敵でした。

やっぱりみんなでご飯を作るって楽しいなぁ。

まつ蓋囲んで笑顔.JPG


全ての材料を乗せて、完成!

これから人数分に切り分けて、パックに詰めていきます。

ばら寿司パック詰め.JPG


ばら寿司隊が、盛り付けに勤しんでいる間に

付け合わせのお吸い物を作るメンバーも。


分量を慎重に計ります。

おいしくな~れ!

愛子ちゃん&にじかちゃん味噌汁作り.JPG


愛子ちゃん味噌汁作り.JPG

 お吸い物も良い感じに完成!

こちらもよそって、お楽しみのお食事タイム!

元気な声で「いただきます!」を全員で。


お食事タイム全員.JPG

 

さぁ、みんなで作ったばら寿司は果たしてどんな味なのでしょうか......?

それぞれが期待と不安を胸に、そっと口に含みます。

 

「......!!!!」

 

まず一斉に目を見開く一同。

そしてその後、次々に飛び交う「美味しいーーーーー!!」の言葉。

 

やさしい甘さと菜の花のちょっとした苦みがとても良い塩梅で、

自然とみんなの顔が綻ぶ。

人生の先輩にじっくり教えてもらいながら、

みんなで一生懸命作ったばら寿司は最高の味でした♪


頑張って企画をした二人も満面の笑顔でピース。

美味しく出来て良かったね!!

完成してにじかちゃんピース.JPG

 

面白かったのは、みんなでワイワイしながら食べる時間の中で生まれた雑談。

昔から河辺区で生まれ育ったおばあちゃんたちが、

子どものころのエピソードを沢山教えてくださいました。

 

「うちは農家やったんやけど、昔は時期ごとにお祭りごとがあってな。

まず田植えが終わったあとは"さなぼり(早苗餐)"っていう行事があるんや。

本来は、田植えが無事に済んで、田の神を送るための祭事の意味が

あったみたいやけど、私らのときは農家の休日やな。

お餅をついたり、まんじゅうを作ったりして、

ご近所に配りに行くんやけど、私はそれがすごく嫌でなぁ......。

さらにもう一回、10月に"亥の子(いのこ)"っていうお祭りもあったんや。

このときは収穫祭やな。

とれたお米を使って、それこそばら寿司を作って

お世話になった人とかご近所さんに配り歩いたよ。」

 

「うちは元々こちらに嫁いできたから、

それまではばら寿司自体知らなかったけど、

旦那さんのお母さんに作り方を教えてもらって、

そのレシピで今も作ってるわ。」

 

「今はスーパーでも手軽に買えちゃうけどね。」

 

するとすかざず、口を挟む高校生たち。

 

「いやいや、これまでスーパーのばら寿司も

美味しいと思って食べていたけど、

今日作ったこのばら寿司とやっぱり全然違う! 

おばあちゃんが作ってくれるばら寿司ともまたちょっと違うけど、

すっごくすっごく美味しいです!! 

自分で作ったから、というのもあると思うけど、

これまで食べてきたばら寿司の中でも12位を争うおいしさです!!」

 

それを聞いて、みんなが笑う。

 

「そう言ってもらえたら、こちらも教えた甲斐があったわぁ。

みんなで一生懸命つくったものをこうして囲んで

ワイワイしながら食べるのも良いわね。」


お食事タイム図書の会.JPG

 

そんな風にして、食事の時間は終始和やかに過ぎていきました。

 

そして企画の終盤。

最後の時間は、「大宮町河辺区について知り、未来を考えよう」という

テーマのもと特別ゲストにお越しいただきました!!

 

元区民センターの館長である、

水野孝典さんから学びます。

 

水野さん②.JPG

水野さん①.JPG

水野さんはこれからの河辺区のまちづくりにおいて必要なこととして

「祭りごとはまちが1つになるきっかけになる」と考えられています。

 

河辺区は、現在人口は増えています。

バイパスを境に新しく築かれたまちの方には

若い家族の居住により、子どもの数も増加傾向にあります。

しかしながら、旧市街地との交流はほとんどありません。

バイバスを境にきっぱりと壁が生まれてしまっている。

これは、これから河辺区が存続していくのに

大きな障壁となって立ち現れてくるといいます。

新旧のまち同士のふれあい、新しいコミュニティの形成が

急務になっているのです。

 

その解決策の手立てとして有効な手段の1つが「祭り」なのです。

そういった意味で、区民センターをいかに使うのか、

ということが今後問われてきます。

これまでは交流の無かった人々同士の関わりをつくるための

仕掛けを作っていくのに区民センターは非常に有効です。

 

今回、高校生たちはその小さな一歩目を作ったのではないでしょうか。

住民に訴えかけ、巻き込んで、こうした世代を超えたもの同士の

交流企画が実現しました。

1つ事例ができれば、次はもっとこんな形でできるかもしれない、

こうしたらさらに面白いかも......、といった話題が住民の中に生まれます。

「やってみよう」が区民センターの中で積み重なっていけば、

時間はかかるかもしれませんが、きっと新しいコミュニティ形成に

繋がっていくんだと思います。

 

探究の授業としては、2月に終了しましたが、

彼女達は有言実行すべく、

企画を実行までうつして最後までやりきりました。

この体験は、彼女達の財産となったはずです。

 

今後の彼女達の更なる活躍と河辺区の繁栄を祈って。

長期間にわたる探究活動、本当にお疲れ様でした!!

 

 

 

社会のグラデーションを知ることで、進路の幅を広げる ~助産師「律子さん」との出会い、そして「さつき園」への訪問を通して~

 

みなさん、こんにちは!

もう4月ですね。

お天気の良い日が増えて、とっても気持ちの良い季節。

いよいよ新年度が始まります。

ドキドキ、ワクワク。みなさんにとって良き出会いがありますように。

 

そして、年度は変わりますが、昨年度の探究活動において、

まだまだ紹介しきれていないものが沢山あるので、

少しずつですがそちらも更新していきたいと考えています。

ぜひ最後までお付き合いいただければ幸いです。

 

***

今回ご紹介するのは、医療・看護系統のコースを選択した生徒たちのお話しです。

彼女たちの探究のキーワードは「赤ちゃん」

 

なぜなら、メンバーの全員が助産師を目指しているから。

将来の夢にも繋がるようなテーマで何か探究活動をしたい、と集まりました。

 

まずは具体的に助産師という職業について知ろう、ということで

お話しを伺ったのは、京都府綾部市で助産院を運営している助産師、谷垣律子さん。

律子さんは、この助産院をオープンしたとき「あもがね助産院」と名付けました。

「あもがね」とは、『女性が大地に根を下ろし、情報に振りまわされず、

自分の思いを大事に、日々を重ねてほしい』という気持ちで名付けたそうです。

 

律子さんが日々の中で大切にしていることは

「女性が生きていく中で、悩んで立ち止まってしまったときに

寄り添える存在であること」

ちょっとしんどいなぁ、と感じたときに

「律子さんとお話がしたいなぁ」と思ってもらえるように

一人一人と向き合いたい、とお話しをしてくださいました。

 

講義の様子.jpg

助産師というと、まず思いつくのは病院で働く姿ではないでしょうか。

産婦人科に所属し、出産時のサポートをしたり、

赤ちゃんや出産後のお母さんのケアをしたりする仕事であると

想像する人が多いでしょう。

 

ですが、律子さんを見ていると助産師としての働き方は、

もっと多様であることが分かります。

例えば、律子さんのように独立して、助産院を開くこと。

助産院は、病院とは異なりお家のようなアットホームな雰囲気。

母子の健康相談や、お産に向けての準備、

赤ちゃんが生まれた後のお世話について等、

知っておきたい事柄に関して教えてくださったり、

一人ひとりのお悩みをじっくりヒアリングした後、

どのような生活を送れば良いのか、等について丁寧に助言してくださいます。

病院でも同じように母子健康診断等はありますが、

それに比べて助産院(サロン)はゆったりとしているため、

対話をする時間が長く取れるというのが特徴です。

助産院を実際に利用した妊婦さんによると、

産院の検診と併せて律子さんの妊婦健康相談も受診することで、

お産に向けてとても良い準備の時間を持てたとのこと。

安産のための体操や日常生活の中で気をつけるべきことなど

「聞いておいて良かった」と

いうお話を沢山聞くことができたのが良かったということです。

ゆったりとした時間の中で、丁寧に身体を見てもらえること、

悩みや不安に寄り添いながら話を聞いてもらえる時間が

何よりも妊婦さんにとって安心できる時間となり、

こういった体験を作り出す役割を担っているのが助産師なのです。

 

律子さんとお母様.jpg

実際に律子さんに相談したことがある、というお母さんも

来てくださいました!

ここでもお母さんの子育てに関するお悩みに親身に

耳を傾ける律子さん。

赤ちゃんができてから、生まれるまでの間、ゆっくり時間をかけて

親になる準備のサポートをすること、

一人ひとりの悩みや不安に寄り添うこと。

アットホームな環境、安心できる場を整えること。


本.jpg

オススメの本も沢山ご紹介いただきました!

 

お話しを聞いてみてどうだったか高校生に尋ねてみると、

想像以上に助産師が担っている役割が多様であり驚いたとともに、

自分はどういうスタイルで妊婦さんやそのご家族と向き合いたいかを

考えるきっかけになった、と話してくれました。

学びになったようで良かった!!

 

実は彼女達は、もう一件別の角度から

とある人たちにヒアリングを行いました。

それは、社会福祉法人みねやま福祉会が運営している、

児童発達相談支援事業所「さつき園」の職員さんたちです。 

 

この探究活動を進めるにあたって、彼女たちがずっと関心を持っていたのが

「赤ちゃんの障害の有無」について。

 

新しい命がこの世に産み落とされる、ということは

多くの場合素晴らしく喜ばしいこととして受け止められますが、

時にそのようにポジティブなこととして受け止める事が

難しいようなケースも起こります。

その一つが「障害」です。

 

赤ちゃんが障害を持って生まれたとき、

誰も悪くないのにお母さんが自分のことを責めてしまったり、

子どものことを「かわいそうだ」とか「恥ずかしい」と

考えてしまうことなどがあると言います。

 

「誰にも相談できない」

「周りに理解してもらえないかもしれない、という孤独」

「周囲の子どもたちと何かが違う、と言う焦り」

こういった不安から内に閉じこもってしまって、

しんどくなってしまう問題が起こっていることも事実。

 

子育てや子どもの成長について不安を抱えている保護者の方たちが

相談できる施設が京丹後市には唯一1つだけ存在します。

それがさつき園さんという訳です。

                    

さつき園では発達に遅れやつまずきのある子ども一人一人に寄り添い

「今どんな支援が必要か」を保護者と一緒に考えながら見つけだし、

乳幼児には個別の療育指導や療育相談を、 

学童児には集団を活用した表現活動を通して、

積極的に子育て支援をされています。

 

障害を持つお子様を実際に育てている当事者である保護者の方や

そのお子様を支える立場にある人々は、どのような思いを持って

そこに関わっているのか知るために高校生たちがインタビューを実施しました。

 

今回インタビューをした職員さんは2名。

松本さん......京丹後出身、さつき園に着任してから4年目。

保育士になることを夢みて、

みねやま福祉会に入ったが、最初に配属されたのがさつき園であった。

 

岸田さん......さつき園1年目。

学生時代、実習でさつき園に配属されたことをきっかけに

児童発達障害相談事業に関心を持つようになる。

 

〈インタビューの様子〉

助産師チーム×さつき園(インタビュー②).JPG

―今日はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございます!

 私達は将来助産師を目指していて、赤ちゃんに関することや妊婦さん、

また産後のお母さん(お父さんも)の状態などを調べる中で、

とくに「障害」をもっているお子さんの子育てにおいて

保護者の方々がどのような思いを持たれているのか、

何を課題に感じていて、逆にどんなことに喜びを見いだしているのかなどが

気になり、このような機会を設定させて頂きました。

本日はどうぞよろしくお願いいたします。


松本さん「よろしくお願いします。せっかくなので、みなさん自身のことも

もう少しお聞きしても良いですか?」

 

―はい、勿論です。

 

松本さん「みなさんはどうして助産師を目指しているのですか?」

 

―私の場合は、中学校の時に助産師の方が来て「いのちの授業」を

してくださったのですが、

生命が誕生すること、そのものが奇跡なんだってことを実感して。

すごく感動したので、そういった現場で

私もお産をサポートできるような人になりたい、と

思ったことがきっかけです。

 

岸田さん「わぁ。すごくしっかりしているね。素敵な理由だね! 

 因みに障害というものには、どんな印象を持っているんだろう?」

 

―実は私の叔父が障害を持っているので、

"障害"とは割と身近なものとして受け止めています。

ただ土地柄、地域性なのかあまり周りに知られたくない、

というような雰囲気を感じることはあります。

 

岸田さん「なるほど。そうだったんだね」

 

―それでは、早速お聞きしたいのですが、

松本さんや岸田さんがお仕事をする上で、日々心がけていることは何ですか?

 

松本さん「心がけていることかぁ。

そうだね、施設を利用している子どもたち一人ひとりに合わせた丁寧な対応を

心がけているかな。とくに言葉遣いには注意しているかも。

理解度も違ってくるから、ちゃんとその子が分かる言葉や

表現を使うよう意識しているよ」

 

岸田さん「子どもたちともそうだけど、その保護者の方々とも

ゆっくり時間をかけて良い関係性を作っていくことを心がけています。」

 

―なるほど。ありがとうございます。

とくに保護者の方への対応は、助産師を目指す上でも参考になると思います。

保護者の方との関係性を作るのに時間をかける、という話も出てきましたが、

具体的にどのようなことに注意しているのか、などについて

詳しく教えて頂けますか。

 

岸田さん「私の場合、まずは兎に角保護者さんのお話しに

耳を傾けることを意識しています。

基本的にここに来られる保護者の方々は、不安を抱えてやってきます。

"自分の子どもが何か周りと違うんじゃないか"とか

"あまり外と繋がりたくない"などといった思いを持っているケースが多い。

だから、まずはそういった不安を受け止める、ということを第1に考えます。

あとは、関わる子どもに好かれるように努力することですかね(笑)

私達が子どもと真剣に向き合う姿を見て、保護者の方は安心されます。

この人は、子どものことをちゃんと知ろうとしてくれているんだ、と。

それが信頼関係に繋がっていきます。」

 

松本さん「確かにまず受け止める姿勢は、すごく大事にしているよね。

助言をするときは、その後から。

施設に来たからといって、子どもの成長ペースは異なるので、

すぐ何かが出来るようになる訳ではなかったりもします。

今まで出来なかったことが、何かできるようになるかもしれない、

という期待と期待とは裏腹に、

思うように上手くいかなかった時に感じる焦りとで、

また不安にかられる保護者の方はいらっしゃるので、

注意深く様子をうかがいながら時間をかけて関係性を編むようにしています。

そのあたりはとてもデリケートな問題ですね。」

 

助産師チーム×さつき園(インタビュー④).JPG

―保護者の方に声をかけることによって、生まれた変化等はありましたか?

 

岸田さん「子どもたちが、学んで出来ることが少しずつ増えていく姿を見て、

保護者の方が、勇気が出た、安心した、

また同じような悩みを持つ人との繋がりができた、といったことを

話てくれた利用者さんがいました。」

 

松本さん「私はここに配属されてから1~2年の間は、

自分自身にも余裕が無くて、とにかく日々を必死に生きていました。

3年目あたりから、保護者さんから反応が返ってくるようになりましたね。

うちの子、こんな事ができるようになったよ! 

松本さん、ありがとう。

そんな風に言われることがモチベーションに繋がっています。」

 

―ありがとうございます。とてもよく分かりました。

 それでは、今後施設にとってどんなことが必要だとお考えですか。

 

岸田さん「事業所について知ってもらうことが、最優先事項だと思います。

障害、というものがまだまだオープンにしにくい、という空気もある中で

大々的にPRしていくことは、難しいという現状があります。

ただそれでも、知ってもらわないことには、社会と繋がれず、

ずっと不安を抱えながら一人で悩んでしまうお母さん、

お父さんたちが減ることはないでしょう。」

 

松本さん「同時に子どもたちについても知ってもらう必要があるよね。

今でこそ多様性、とかインクルーシブ教育とったような動きが

少しずつ出てきてはいるけれど、世の中全体を見渡してみると、

まだまだ健常者と障害者の間には壁がある。

こんな子どもたちがいるよ、と気づいてもらうためのきっかけ作りを

していく必要性を感じています」

 

―なるほど!! とても大切な事ですよね。

 では最後になりますが、私達高校生に何か伝えたいメッセージがありますか?

 

松本さん「こうして、現場まで足を運んで知らないことを知ろうとする姿勢や

何かチャレンジしてみよう、という行動力は本当に大事だと思います。

このことは、どんな仕事をするにしても役立つものですので、

これからもアンテナを張って、

沢山の"原体験"を積んでいくようにしてください。 

助産師になられたあかつきには、ぜひ連携を取りながら一緒に働きましょう♪」

 

岸田さん「私もまだ1年目で、まだまだ分からないことが沢山あります。

ですが、場数、経験を積むことで少しずつ

自分の役割が分かるようになってきました。

トライ&エラーを繰り返し、学び続ける事で

何物にも代えがたい財産を得られると思っています。

探究、という授業はそういう意味で、チャレンジできるチャンスが

沢山転がっていると思います。

ぜひ積極的に授業に取り組んで、楽しみながら多くの人に出会って、

吸収して、行動するようにしてみてください!

応援しています!!」

 

松本さん、岸田さん、ありがとうございました!!

 

***


インタビューのあと、施設内も案内してくださったお二人。

広いホールには沢山の種類の遊具が置いてあり、

子供たちの成長速度に合わせて使い方もアレンジされているそう。

小さな「できる」を積みかさねていくこと、ちょっとした成功体験の連続が

子供たちの自信に繋がり、親の安心感にも繋がっている。

 

さつき園ホール③.JPG

助産師チームさつき園内見学①.JPG

今回のことを高校生たちに感想を聞いてみると

「本当に今回お話しを聞けて良かった」との返事をもらいました。

 

良い意味で想像していた"発達障害支援事業"とは違った、との感想を持ったようです。

もし自分たちが、夢を叶えて助産師になれたとき、

こういった施設が地域内にあることや

保護者の方の不安や悩みに寄り添ってくれる人たちがいることなどを

知っているのとそうでないのとでは、

できることの幅が全く変わってくると思ったそう。

 

社会は、様々な分野の人たちのグラデーションの上で成り立ています。

子どもを支える、その保護者をケアするといった仕事1つをとっても

本当に沢山の種類があります。

 

自分がどのようにそこに関わりたいのか、を選択するためには

まず関わり方やその分野の課題、可能性などを知る必要があります。

 

選択肢が1つではない、ということを

できる限り多くのみなさんに知って頂きたく、

私はこのコーディネーターという仕事をしているんだ、と

改めて実感した時間となりました。

 

みなさんも、多様な人たちとの出会いを通して社会と繋がっていく中で、

自分の関わり白を模索していって欲しいな、と思います。

 

                 

 

【京丹後市民の幸福度~このまちの魅力と可能性~vol.5〈甲斐少夜子さんへのヒアリングと、これまでの振り返り〉】

 


みなさん、こんにちは!

あっという間に3月も半ばが過ぎました。

 

段々、暖かくて気持ちの良い日が増えてきましたね。

春の訪れは、目の前!

また新しい出会いの季節がやってきます。

それを楽しみに年度末、最後まで元気いっぱい駆け抜けましょう!

 

さて、前回の記事から間があいてしましましたが、探究のお話の続きです。

この記事は、これまでたくさんのシリーズで綴ってきた

「市民の幸福度から京丹後市の未来を考える」グループの取組についての

お話しです。


最後までお付き合いいただけますと幸いです。


※これまでの記事

vol.1 「ゆう薬局薬剤師/船戸さんへヒアリング」

vol.2 「Tangonian代表/長瀬さんへヒアリング」

vol.3 「丹後暮らし探求舎相談員/坂田さんへヒアリング」

vol.4 「Tsuchica代表/岡村さんへヒアリング」

 

これまで、地域で活躍する4名の方のお話を聞く中で、

徐々に彼らの知らなかった京丹後という「まち」の姿が見えてきました。

この地域には何もない、いずれ出てしまったら恐らく戻ることはないだろう。

メンバーの中にはそんな風に考えている人もいました。

ですが、少しずつこのまちの「可能性」や「魅力」、

「面白さ」が見えてきて、彼らのまちに対する想いに

変化が生じてきていたのもまた事実。

 

そしていよいよ、最後の5人目の方へのヒアリングです。

高校生たちが最後にお話しを聞かせて頂いたのは、

京都府地域アートマネージャーの甲斐少夜子さん。

広島県出身の甲斐さんが京丹後市に移住したのは20195月。

京都府アーティスト・イン・レジデンス事業の地域コーディネート、

アート企画の運営をメインに活動されています。

 

今回の記事は、これまでヒアリングしてきたことについての総まとめとして、

高校生たちの振り返りの様子を中心にまとめていきましょう。

 

***

 

高校生1「僕たちは今まで5人の地域の方にお話しを聞いてきたけど、

最後に甲斐さんから聞いた話で、今まで聞いてきた丹後の話が

全て繋がった気がしたよね。」

 

能勢「繋がったっていうのはどういうこと? 何が繋がったんだろう?」

 

高校生1「丹後という地域の全体像が見えてきたというか。

例えば甲斐さんは、移住者として丹後に来られた、ということだったけど、

移住のきっかけとなったのは、織物の産地であったから、

というお話しをしてくださいました。

これを聞いたときに長瀬さんから聞いたお話しを思い出したんですよね。

長瀬さんは丹後の歴史のお話をしてくださいましたが、

昔からこのあたりではものづくりが発展していて、

"手仕事"によってまちが支えられていたんだって。」

 

能勢「なるほど! 文化的に丹後が"ものづくりに強いまち"なのではないか、

という仮説の裏付けが出来たわけだね。」

 

さよ子さんへ⑦.JPG

高校生2「実際、僕の祖母も昔機織りをしていて、

織機が奏でる音・リズムを日常の中で当たり前に聞いていました。」

 

能勢「ものづくりが常に隣りにあった訳だ。」

 

高校生3「これまで色々な方にお話しを聞いていて、

みなさんが丹後を住む場所として選んだ理由にも共通点がありました。

まちとして不十分、足りていないからこそ、

作っていく面白さを感じるということ。

"足りないとは、裏を返せば"余白"のことで、

それはまちのポテンシャルとも言える。

皆さんはそれぞれの分野でクリエイティブな活動をされていたのですが、

地域自体に昔から脈々と受け継がれてきたクリエイティブな要素が元々あって、

そこに魅力を感じた人が、またこの場所でクリエイティブな活動を起こしてる。

地元の僕たちは地域を今までそんな風に見たことは無かったけど、

これはとても面白い発見だったよね。」

 

さよ子さんへ②.JPG

※ここから先は、高校生1を「K1」高校生2を「K2」高校生3を「K3

能勢を「N」と表記させていただきます。

 

K2「そうだね。そもそも丹後にこんなに

色々な分野の人たちが集まっているんだ、ということにも驚いた。

確かに自然は豊かであると思っていたけど、

それ以外の特徴があるのかなんて考えたこともなかったし。」

 

N「そういえば今回、みんながお話しを聞いた人たちも

職業や立場は異なったけど、

何か共通していることがなかった?」

 

K1「船戸さんは薬剤師でDJもしている面白い人だったね。

見学させていただいた薬局も"いわゆる薬局"って感じの場所ではなく、

オープンな雰囲気だった。"地域の人たちと緩やかに繋がっていける場所" 

"病院だと出向くこと自体にハードルを感じるけど、

健康相談等に気軽に訪ねていける場として、地域に開いた薬局作り"に

力を入れている、と話されていたね」

 

IMG_20221101_171157.jpg

K2「長瀬さんは、地域内外の人たちの関係を結ぶためのツアー企画なんかを

されていたね。」

 

あるとくんチーム×長瀬さん②全体(ヒアリング場面).JPG

K3「岡村さんは、プログラミングと英語教室を子どもたちのために

開いていたね! 

今後の展望として音楽スタジオを作って、

分野を超えたアーティスト達の拠点となるような場を生み出したい、

というお話も面白かった!」



あるとくんチーム×岡村さん(岡村さんサイド②).JPG

K1「坂田さんは、元々地域に住んでいた人も移住者も

分け隔て無く関わり合えるような場の運営をしていたよね。

まちまち案内所は、それぞれの得意分野で

自己表現できるような設計になっていた。」


IMG_2091.JPG

 

K2「甲斐さんは、外から来るアーティストと地元の人を繋ぐお仕事をされていたよ」

 

さよ子さんへ⑩.JPG

N「おっ! 何だか共通点が見えてこない...?」

 

K3「もしかして、みんな誰かと誰かを繋げてる...?」

 

N「そう!まさに。分野は異なるけれど、

どの人も何かしら偶発的な出会いが生まれるための何かしらの"場"を

地域に開いているよね。」

 

K1「確かに"場"というのが、キーワードになっていますね!」

 

K2「地域においてとくに今、"場"の設計はとても重要な意味を持っていそうだね。」

 

N「でも"場"といっても、とりあえず開けば良いって言うわけでもなくて、

大切なのはそこが"どんな場であるのか"誰のための、

何のための場所なのかについて、運営する側もそこを利用する側も

共通認識を持っておく必要がありそうだね。」

 

K1「誰もが気軽にふらっと寄れて、

居場所となる場が地域にあると良いよね、という話は

実は〈つくまち〉のワークショップの中でも、他の参加者の方々と一緒に話しました。

老若男女問わず、その場を訪れる人が好きなように使っていて、

時々そこで出会った人たちが繋がって何か新しいことが生まれていく...

というような場所が地域にあると、そこが中心となって

まちが活気づいていくよね、という話をしました。」

 

N「なるほどね。因みに峰山高校の近くにrootsという施設があるけど、

そこは〈高校生と地域の方の交流拠点〉というのが

コンセプトになってるよね。

そこはみんなにとっては"誰もが気軽にふらっと"寄れる場には、

なってないということかな?」

 

K2「正直、一人で入るにはかなり勇気がいりますね...。

ハードルが高いというか。

 よっぽど積極的な性格であるか、本当に相談したいことがある、

などでなければ、ふらっとは立ち寄りにくいです...。」

 

K3「僕も同感です。外から見ていて、何か起こっているんだろうなぁ、

何だかすごいな、と気にはなるのですが、そこに入っていくまでの勇気はないです。」

 

N「そうか、みんなの目にはそんな風に見えていたのね!

 rootsは寧ろ"場の目的を掲げない"ことを売りにしていて、

そこを使う人にどう利用するのかについての判断を委ねているんだよね。

その人が"主体的"であることを最も重要視しているから、

その人がその人らしくいれる過ごし方をしてもらいたい。

ただ何もせず座っているだけでも良いし、友達や地域の人とおしゃべりをして

過ごしてもいい。

図書館代わりに使ったり、自習するためのスペースとして利用してもらってもOK

もちろん、何か地域の人たちと一緒にプロジェクト活動をしたい、

何かに挑戦したい、という理由で使ってくれている人もいるよ。

う~ん。でも、"ふらっと気軽に"入れない感じがあるんやろな。

それはどうしてだろう?」

 

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ポールWS⑭.JPG

K1「何だかどうしても、入ったら何かにチャレンジしないといけないのかな、

という風に構えちゃうからかもしれません。

外から見てると高校生も大人も混じって話合いをしていたりして、

自分には及びじゃないや、って思っちゃうのかな。」

 

K2「確かにそれは思うかも。一人やったらなおさら入りづらいな。」

 

N「じゃあ、友だちとなら入れる?」

 

K3「はい、それなら大丈夫です。」

 

K1「そうですね。やっぱりその場所のことを知っている友達が一緒だと、

安心感があります。僕も探究の関連で、何度かrootsに足を運びましたが、

一度入ってしまえばすごくアットホームな場所だったので、驚きました。

多分、それを知れば2回目からは大分ハードルが下がると思います。

でもとくに理由が無ければ、どうしても構えてしまうので、

やっぱり友達と行く、っていうのが一番行きやすいかな。」

 

Nrootsとしても、発信がどうしてもプロジェクト活動をしている様子を

取り上げることが多いから、そんなことばかりしている訳じゃない、

プロジェクトをするためだけの場所じゃないということを

定期的かつ継続的に伝えていかないといけないね。」

 

K3「でもこのヒアリング調査を通して、

たくさんの大人の方が僕たちのことを応援してくださっている、

ということも分かった。

自分が考えていることを思い切って発することさえできれば、

応援してくれる人が現れて、物事が進んで行きやすくなる、

丹後ではその可能性が高い、ということも知れたので、

自分達から発信することや地域に出て歩み寄る努力をすることも

必要なんだと思う。」

 

N「そうだね。多世代間の"ゆるやかな関係性"が、

多様にできてくると良いね。

きっと地域はもっと面白くなるよ。

何はともあれ、5人分のヒアリングお疲れ様!

すごい情報量だから、これからまとめていくのが大変だと思うけど、

最後まで頑張ろう。」

 

K2「正直に言うと、初めは授業のための情報収集というのが

この活動の目的だったけど、ヒアリングをするうちに、

次はどんな話が聞けるのだろう...!?と段々楽しくなりました。

普段出会うことのない人たちとの出会いによって、

地元に対する見方もポジティブな意味で変わりました。」

 

K1「高校を卒業したあと、地元に帰ってくるという選択肢は

自分の中でなかったのですが、

戻ってきても案外楽しく暮らせるのかもしれないな、

という可能性を見せてもらった気がします。

沢山の人と出会い、自分の意見や考えを伝え、

改めて自分のことや地元について見直した体験は

何よりも価値があったと感じました。」

 

K3「丹後には何もなくて、面白みのない地域であると考えていたけど、

それは自分達が地元のことを知らなかったから、

そういう風に感じていただけだということが分かりました。

勿論、高校生の自分達にとっては行動範囲も限られてしまうし、

そうでなくても学校や部活、習い事などで、忙しない日々を過ごしてるので

地元の事を知るって結構難しい事だと思います。

これは、他の高校生たちにも同じ事が言えるのではないか、と思います。

だからこそ、今回自分達が知った今まで知らなかった

丹後の魅力や可能性について、

友達や後輩たちに伝えられるような発表にしたいな、と考えています!」


あるとくんチーム×岡村さん(高校生のみ②).JPG

 

***

 

さぁ、ヒアリングの後の全体の振り返りはいかがでしたでしょうか。

丹後のことを少しずつ知る度に、

高校生たちの心情に少しずつ変化が生じていることが分かります。

 

実際にフィールド(地域)に出かけ、人に出会い、価値に触れ、

歴史や文化、生きた知恵を受け取る。

 

今回、高校生たちの身に起きたことは、

彼らにとっては不本意であったかもしれません。

授業のための探究だと思って始めた活動が、思いがけず23転し、

新たな出会いをもたらしてくれたことによって、

少しずつ彼らの考え方が変わっていきました。

 

この"思いがけず"とか"予想外の"出来事に出会えることが、

探究の面白さだと思います。

所謂「バイ・アクシデント」というものです。

 

考えてみれば、人生というのも「バイ・アクシデント」の連続。

自分では予測できない出来事や、

偶然の出会いによって想いもしなかった道が出現し、

自分の生き方そのものが問われることになる。

 

その分、揺らいだり、戸惑ったりすることも出てくるでしょう。

でもそれは、あなたの成長。

 

これからも、皆さんには社会に対して怖がらずに

開いていてほしいと願います。

そして、色々なものを見て、感じてください。

その中で、あなたの心が最も震えるものを選び取ってください。

 

心が震えたら、自然と手足は動きます。

それがあなたの最初のチャレンジ。初めの一歩。

探究が「自分ごと」になる瞬間です。

 

「バイ・アクシデント」が豊富な探究を、ぜひ一緒に楽しみましょう!

 

【京丹後市民の幸福度~この地域で生きていくということ、そしてそこから見える可能性~〈岡村芳広さんへヒアリング〉vol.4

 



「京丹後市民の幸福度」から未来の京丹後市の在り方について

考える活動をしている高校生たちのお話も

まだまだ続いていきます。


※これまでのヒアリング調査の様子は以下の記事をご覧下さい。

~VOL.1

~VOL.2

~VOL.3

 

今回お話を伺ったのは、一般社団法人Tsuchica代表理事の岡村芳広さん。

岡村さんは世界の動向を見つめ、これから世界で活躍出来る人材を

輩出するためのプログラミング教室や英語教育を

子どもたちに向けて行われていらっしゃいます。

 

丹後というローカルな場所で、最先端の事業に取り組む岡村さんとは

一体どのような人なのでしょうか。

そしてどんな想いを持ってここで暮らしていらっしゃるのでしょうか。

岡村さんを通して見えてくる丹後という地域は、

一体どんな姿をしているのかを探るべく、

今回もじっくりヒアリングをしていきます。

 

****

あるとくんチーム×岡村さん(岡村さんサイド①).JPG

――僕たちは、もともと人口減少の問題に歯止めをかけるべく、

どうすれば京丹後市に住みたい、住み続けたいと思ってもらえるのか、

その方法や仕組みを考えていましたが、

将来的に人口減少をしていくことは明らかであり、

その事実はどうやっても変えられないということから、

テーマの方向性を少し変えて「人口が減っても持続可能な地域の在り方」を

考えることにしました。


そこで現在、地域の中で独自の軸を持って活躍されている方々から

「丹後で生活することで得られる幸福感」についてお話をお聞かせいただき、

僕たちなりにこれから京丹後市がどんなまちづくりを

目指していくべきなのか、提案したいと思っています。

 

それ、めちゃくちゃ面白いテーマだね!

人口減少していくことを前提として、地域の在り方を見直していく、

また今後の住民の幸福について考えていくことは、

先端の研究だと思います。

だって、まだその状況を誰も経験していませんから。

君たちがどんな答えを導き出すのか、僕自身もとっても興味があります!


 

――そう仰っていただけて幸いです。

これまで、ゆう薬局の船戸さん、Tangonianの長瀬さん、

そして丹後暮らし探求舎の坂田さんにお話を伺ってきました。

それぞれ異なる分野の方々ですが、丹後での生活を楽しまれている様子が

伝わってきて、少しずつですが丹後地域の面白さが

分かってきたような気がします。

 

とても濃いメンバーにお話しを聞いているね()

その人たちにお話しを聞こうと思ったのはどうして? 

自分達で選んだの?

 

――地域コーディネーターの方に、地域で楽しく・面白く

暮らしている人たちの情報をもらいました。

30人近く教えてもらったのですが、プロフィールを読ませて頂いて、

その中からお話しを聞いてみたいな、と思った方を5人選びました。

岡村さんもその一人です。

僕たちはまずI・Uターンの人たちに注目しました。

仮説として、その方達は一度地元を出た、

もしくは別の場所で生活をしていたのに

丹後での生活を選択されたということは、

この地域に魅力を感じていらっしゃるからだと考えました。

そういう方たちにお話を聞くことで、

丹後地域の可能性を見いだせるのではないか、と思ったのです。

 

なるほど。その一人に選んでくれて光栄です。

とても面白い考え方をするね! これまで3人の方にお話しを聞いて、

何か気づいた事はあった?

 

――みなさん共通していたのは、

「丹後は新しいチャレンジを応援してくれる人が多い」ということ。

また「外から来た人も寛容に受け入れて、一緒に面白がる雰囲気がある」と

皆さんが話されていました。

 

いい気づきがあったね! 

僕もまた後で詳しくお話をしますが、京丹後市に移住を決めた一番の理由は

「人の良さ」だったんだよね。

 

――そうだったんですね! 

これから色々なお話をお聞きするのが楽しみです。

それではまず、岡村さんの経歴を簡単に教えていただいてもよろしいでしょうか。

 

僕の生まれは北海道だけど、その後すぐに亀岡の方に引っ越しをしました。

だから育ちは亀岡です。その後、東京やボストン、シンガポールなど

様々な場所を転々とし、子どもが生まれたのを機に

家族とともに京丹後に移住しました。

海外歴8年というのを活かして、プログラミング×英語を

地域の子どもたちと実践しています。

また外の人が京丹後市での移住生活を体験できる施設

「オカモノヤシキ」も運営しています。

国内外問わず丹後を訪れる旅行者と地域との橋渡し役となる

「案内人」も勤めます。

あるとくんチーム×岡村さん(高校生のみ①).JPG

――わぁ、何だか情報量がいっぱい!(笑)

日本の都市部や海外などでの暮らしも経験された後に京丹後に来られたのですね。

京丹後市のことは、以前からご存じだったのでしょうか。

 

はい。

16歳の時に丹後を初めて訪れたのですが、すぐに好きになりました。

そこから大学生になって、頻繁に遊びに来ていましたね。

ですから元々すごく良い地域だな、ということは知っていたんです。

 

――そうでしたか。京丹後への移住はどのタイミングで決意されたのですか。

 

子どもが生まれて、自分が子育てに携わるようになった時にこの環境下で育てたいと思って移住を決めました。

 

――それは子どもたちにとってとても環境が良かったということですか。

 

そうです。

まず人がすごく良かった。

この人たちと一緒に過ごすことが出来れば、僕自身の人生も豊かになるし、

大人が楽しんでいる、その姿を子どもたちにも見てもらいたかった。

まず自分が「一緒に仕事をしたい人がいるかどうか」というのは、

その町に住みたいという

大きなモチベーションに繋がると思います。

そして子育てをする環境としてもベストだと思いました。

自然豊かで家から海岸まで徒歩で行ける。自然が「遊び場」ってすごく良いな、と。

 

――なるほど。確かに僕たちも子どもの頃は外に出て遊んでいました。

何だかそれがすごく楽しかったという記憶は残っています。

実際に丹後に移住されて、ここで生活をしてみてどのように感じましたか。

 

いやぁ、すごく良いですよ!

実際にここに来てみて、想像以上に外から来ている人も多いことに気づきました。

僕がここに来た頃あたりから、SNSなどで色んな分野で活動している人たちが

繋がっていって、何が起こっているのかが「見える化」されてきたんですよね。

まちがどんどん動いていっている様子が分かって、とても面白く感じました。

あ、この地域の未来は明るいな、って思いましたよ。

 

――色々な人たちが繋がって面白いことが起きている、

というお話は他の方からのヒアリングでもよく耳にしました。

僕たちは普段そういった方々と繋がる機会がほとんどなかったので、

自分達が住んでいる地域でそんな動きがあったのだ、

ということに驚きを感じています。

 

そうだよね。

こういう地域と繋がるような授業などがないと、中々気づけないよね。

だからこそ、探究の授業はとても重要だと思うよ。

こういった機会を上手く使って、地域の魅力を知って欲しいと思うし、

色々な考え方の人たちに出会って欲しい。

 

――では、丹後にいて不便だな、と感じることはありますか。

 

うーん、生活に関しては今のところ思いつかないな()

少し前までだと交通網が発達していなくて、

どこへ行くのにもすごく不便だったけど、今はそこまで負担にならない。

それに物流も発達したから、どこにいてもネット環境さえあれば

大抵欲しいものは手に入る。とくに困ってることはないかな。

 

あ、あと物価も安い!

この前(昨年9月~10月にかけて,

シンガポールから5人の方がホームステイされたんだけど、

みんな「圧倒的に物価が安い!」と驚いていました。

 

――へぇ! そうなんですね。

因みにこの地域の好きなところや好きなことを教えてください。

 

そうだね、やっぱりまずは子どもたちと海辺で遊ぶ時間が好きです。

都会から移住してきた家族からよく耳にするのは、

「子どもを遊ばせる場所がない」ということ。

癒しの環境が目の前にあること。これは本当にいい。

 

――やはり子どもたちがのびのび育つ環境としては、

すごく良い条件が揃っているのかもしれませんね。

そう言えば岡村さんは、子どもたちに英語やプログラミングも

教えられているということでしたが、

なぜその教育に力を入れているのでしょう?

 

これからの時代に必ず必要になると確信しているからです。

とくに将来はITの時代になっていくでしょう。

日本にいながら海外の仕事をどんどん受注する、

という働き方が当然のように増えていくと思います。

とくにコロナが流行してから、急速にネット社会が発達しました。

 

今までは世界の限られた人たちだけがシェアしていた「どこでもドア」を

漸く世界中の人々が持つようになった、という状況が

ここ数年で起こっている。

誰もが「どこでもドア」を扱える環境が整ってきた。

 

そんな世界で武器になるのは、英語とプログラミングなんです。

あるとくんチーム×岡村さん(岡村さんサイド②).JPG

――なるほど。とても説得力がありますね。

僕たちがこれから身につけておくべきスキルは何だと思われますか。

 

この流れで言うと、やっぱり英語とITについての知識はつけておいた方が良いよね。

あとは、常に世の中に対して好奇心を持ち続けること。

ここ23年という短いスパンだけで見ても分かるとおり、

世の中はすごいスピードで変化します。

新しい"常識"がどんどん入ってくる。

そういったことに敏感になって、常に自分の知識を

アップデートする習慣をつけておかないと時代の流れから取り残されてしまうよ。

 

――お話を聞いていて、英語やメディアリテラシーといったものを

身につけなければいけない理由が身にしみて分かりました。

正直、英語の授業が難しく、課題も多いし、やる気が出ないなぁ......、

と思うことがあったのですが、今のお話を聞いてちょっと英語頑張ってみよう、

と思えました!

 

そうだよね。

何でもそうなんだけど、今時間をかけて一生懸命学んでいることが、

どんなことに役に立つのか、その知識はどのように活用できるのか、

何のために学ぶ必要があるのか。

自分の中できちんと理解できていれば、

必然的にモチベーションに繋がると思うんだよね。

「やらされている」と思ってしまった瞬間、それは身につきませんから。

考え方としては、小さい積み重ねでいいから、

1つやれば今の自分より1つレベルが上がっている、

続けていけば"最強"になる、スキルアップする、という風に捉えたら良いかも。

ゲーム感覚で楽しみながら続けていたら、

何だか知らないけど力がついていた、というのが理想だよね。

 

「人生、ドラクエだ!」というのが僕の格言でもあるんだけど、

一つ一つクリアしていった先に見える景色はきっと素晴らしいものだと思います。

 

――「人生、ドラクエ!」

それ、とても面白いですね。

ゲーム感覚で知識を身につけて自分のスキルアップを図る。

学ぶ意義を自分の中でちゃんと理解していたら、

今までつまらないと感じていたものも見え方が変わってくる気がします!

 

そうそう。本来「学び」というのは、とても面白いものですから。

 

――では、岡村さんのこれからの展望をお聞かせいただけますか。

 

基本的には、丹後の中に様々な「場」を作っていくことに

チャレンジしたいんだけど、

1つは子どもたちの身近な場所にモノづくりができる場所を作りたいですね。

後は子ども、大人関係なく学びの場を設けたい。

そして新しい仕事もつくっていきたいね。

 

新しい産業に携わる人が地域に参入すると、「まち」ができる。

事例として調べてみてほしいんだけど、

例えば徳島県の神山町というところは、

ITのまちとして環境、設備を整えたことによって、

まず仕事ができ、その仕事が人を呼び、

さらにその人が別の人を呼ぶという理想的な循環が生まれました。

 

神山町の事例を見ていて分かるのは、

「地域に何があるかではなく、どんな人が集まるか、

そして、クリエイティブな人が集まる場をつくることが重要」ってこと。

 

――この活動をしていく中で、色々な方からお話しを聞いてきましたが、

「場づくり」というのは"よい地域づくり"において

とても重要なキーワードであると分かってきました。

「誰かを応援できる場」「偶発的な出会いを生む場」

「面白いことが生まれる場」

こういった環境を地域の中にどう仕掛けるのか、

ということを考えている人たちが地域の前線で

チャレンジしていることが見えてきました。

 

まさに! そういった意味で京丹後はとても面白い地域だと思います。

人を魅せるものが地域にあれば、人は自然と集まります。

 

そうそう、場づくりで思い出したけど、もう一つ作っていきたい場があるんだ。

実は、最近京丹後を「音楽のまち」にしたいと考えているんです。

 

――え!?音楽ですか!?

僕、軽音楽部に入っていて音楽がとても好きなのですごく興味があります。

 

おおお! それだったらぜひこれから一緒に作りましょう!

音楽をしているアーティストがちょくちょく移住してきているので、

作曲やライブなどが気軽にできたり、

色々なアーティストたちのコラボレーションが生まれるような

スタジオづくりにも挑戦していきたいですね。

 

――とっても面白そうです!!

関われそうなところがあれば、ぜひお手伝いさせてください。

 

それはとても嬉しいですね。一緒にワクワクすることをやっていきましょう!

 

****

 

時代の変化に柔軟に対応し、世界の前線で戦える人材になるために

英語とプログラミングの重要さを教えてくださった岡村さん。

 

そんな岡村さんには、密かな夢があります。

それは、今岡村さんが教室(英語やプログラミング)で

教えている子どもたちが、将来成長し、

身につけた知識を次の世代に伝えていってくれるような

構造を地域の中に作ること。

 

だからこそ今、長期的な教育・育成を心掛けて奮闘されています。

 

どうすれば子どもたちの好奇心を育てられるのか。

子どもたちにとって理想的な教育環境とは、どんなものなのか。

ワクワクの先にある学びの重要性に如何にして気づいてもらうのか。

 

岡村さんは言います。

「もしかしたら今こうしてチャレンジしていることは、

ドット(点)を作っている最中なのかもしれない。

このドットは、きっといつか必ずどこかに繋がっていると信じて、歩み続けるんだ」と。

あるとくんチーム×岡村さん(高校生のみ②).JPG

最後に岡村さんが、高校生たちに教えてくれたアフリカのことわざを

引用してこの記事を締めたいと思います。

 

「早く行きたければ一人で進め。

遠くまで行きたければ、みんなで進め。」

 

一人だと目的地に早く着くことが出来る。

でも、仲間と一緒ならもっと遠くまで行くことが出来る。

一人だと行動は早くできますが、自分だけで行ける距離には限界があります。

仲間と行けば、みんなで足並みを揃えなければいけないので

煩わしさが生じたり、

スピード感をもって進むことは難しいかもしれません。

しかし、個人の限界を乗り越え、まだ見ぬ場所まで行くことができます。

 

そのような、個人の限界を突破する仲間の存在の大切さを説いた言葉ですが、

今京丹後の中で「みんなが仲間を作ろうとしている」という動きが

起こっている最中なのかもしれません。

 

これからこの地域が、どのように変容していくのか

とても楽しみになるような時間となりました。

 

岡村さん、貴重なお時間をありがとうございました!

 

区民センターを活用して、地域に新しい風を!~大宮町河辺区を活気あるまちに~

 

みなさんは、大宮町河辺区にある区民センターが

リニューアルされたことをご存じだろうか。

広いホールに開放的な座敷、

子どもたちへの読み聞かせができるスペースや

キッチンまでが完備されている。

 

地域の人々の交流の場、そして憩いの場になれば......という想いで

設計されたのがよく分かる。

しかしリニューアル直後、悲劇が私たちを襲うことになる。

そう、コロナウイルスの流行である。

 

人が集う企画や、飲食を伴うイベントが

ここ2年の間にことごとく規制されてきた。

区民センターのリニューアル後、実施を予定していたイベントは

立て続けに中止に追い込まれることになる......。

 

だが、今年度に入り「withコロナ」の風潮が定着してきた昨今、

少しずつではあるが、また人が集う機会が様々なところで

設けられるようになってきて、徐々に地域に活気が戻りつつある。

 

河辺区でもこの1年の間に地元民による手作り・野菜市や

運動会などを実施してきた。

河辺区長である西村さんには、夢がある。

 

「各自治組織(地域住人によるサークル活動のようなもの)の枠組を超えた

新たなコラボが生まれる拠点を作ること」

 

河辺自治会は複数の小さな自治組織が集まって構成されており、

基本的にはボランティアや趣味の集まりだ。

例えば読み聞かせなどを行う図書の会、ハンドメイド好きが集うコミュニティ、

輪投げの会なんかも存在する。

これらの組織は、それぞれ独立しており、

何かを共に取り組むということはほとんどないという。

新たな繋がり方を模索したいというのだ。

 

夢や理想のまちづくりを実現させるための一歩として、

この区民センターを有効に活用したいという想いでリニューアルをされた。

 

この記事は、そんな区長さんのチャレンジの一歩を応援すべく

立ち上がった高校生たちのお話しだ。

 

***

今回の高校生たちのミッションは、

区民センターを使って何かイベントを企画することだ。

企画の条件として、区長さんの夢である

「自治組織の枠を超えた内容にすること」


そしてもう一つは

「地域の文化やそこで暮らす人々の活動に関して

地域住民に知ってもらう機会とすること」

 

まずはリニューアルした区民センターの見学と

区長の西村さんの思いをヒアリングし、

どういったことができそうか企画提案をするため、

現場を訪問した二人の高校生。

最初に新しく生まれ変わった施設内を歩いて見て回る。

愛子ちゃんチーム談話室全体.jpg 愛子ちゃんチーム区民センターの本棚.jpg

 

「あ、この部屋は絵本がたくさんある!

子どもたちもゆったり過ごせそうでいいね」

「お母さんたちが繋がれるきっかけにもなりそうだね」

 

愛子ちゃんチーム図書・談話室.jpg

「見てみて! ここの部屋はめっちゃ広いよ!

 日当たりも良いし、ひなたぼっこしたら気持ち良さそう()

 

「ホールは結構広々してるね。演奏会とかもできそう。

しかもほら、ここ見て!

キッチンと繋がってるからご飯を作って

ここからそのままホールに配膳できる。

これを上手く使えないかな?」

愛子ちゃんチームホール.jpg 愛子ちゃんチームキッチン②.jpg

 

というように真剣に現場を観察する高校生たち。

実際に見ることによって、この場所をどのように使えば面白そうか、

どんな内容の企画が実現できそうかアイディアが湧いてくる。

 

一通り見て回った後に区長さんへ自分達が考えた企画の

アイディアを提案し、

区長さんの意見とすり合わせの作業をすることに。

 

【区長の西村さんとのお話】

――まず私達は、子育て層の人たちがどのような地域であれば

暮らしやすいのか、ということをテーマにこの探究活動を始めました。

その中で西村さんと出会い、

地域住民の新たな交流のきっかけになるような機会として

区民センターを有効活用してもらいたい、というお話しをいただいたので、

私達なりに考えた企画についてご提案させていただこうと思います。

私達の考えた企画に対して、フィードバックをいただければ幸いです。

 

「考えてくれるのはすごく嬉しいなぁ。

子育て世代、とくに若い世代の繋がりはまだまだ少なく、

河辺区としても今後子育て層のコミュニティを温めていきたいと

考えていたところだから、楽しみだ」

 

――よろしくお願いします。

まず先ほど実際に施設内を見せていただいて感じたことが、

キッチンの設備が整っていることと

大きなホールを有効活用できたらいいな、ということです。

今回の企画のコンセプトが「地域のことを知っていただくこと」と

「地域住民同士の新たな出会いのきっかけ作り」ということなので、

"地域の伝統料理をみんなで作って、一緒に味わおう"という体験を

してもらいたいと考えました。

 

おお。それはとても面白いね。

親子対象にすれば、子どもたちにも文化の継承ができるし、

親御さんにレシピを知ってもらうことで

お家でもまた作ってもらう機会にもなりそうですね。

 

――はい。私達は「ばらずし」作りの体験をしてもらいたいと考えています。

私自身、祖母が作ってくれるばらずしが今でも大好きで、

スーパーで売っているものも時々食べますが、

やっぱり一番美味しいと感じるのは

「おばあちゃんのばらずし」。

できれば、イベント当日に地域からバラずし作りが得意な方を

講師としてお招きして、教えていただきたいな、と思います。

 

ばらずしは良いですね。

各家庭で使っている材料が異なることもあって面白いですし、

地域の方から教えてもらうというのも良い。

おばあちゃんのばらずしが美味しいとのことだけど、

ばらずしを作られる時に"まつぶた"など伝統的な道具を

使っていらっしゃるのかな?

 

――はい、お家にまつぶた(木製の浅い木箱)などの伝統的な道具があります!

特に高齢の方などは、ご家庭にそういった道具を持っていらっしゃることが

多いのではないか、と思うので、もしばらずしの作り方を教えてくださる

おばあさんなどが地域にいらっしゃいましたら、教えていただきたいです!

 

もちろんいらっしゃると思いますよ。

うちによく来てくださる高齢の方にも聞いてみますね。

そういえば、この前来てくださったおばあさんは、

こんにゃくを手作りされた、ということでここに持ってこられました。

家庭で手作りで色々なものを作っている方はいらっしゃると思います。

 

――本当ですか!? ばらずしに使う材料はできるだけ、

この地域でとれたお野菜などを使用したいと考えているので、

農家さんなどとお繋ぎいただけるとありがたいです。


もちろん、できる限り協力させてもらいますよ。

とくにここ、河辺区は大きな水田があって稲作が中心に行われています。

とくにお米作りについては面白いエピソードなどが

お聞きできると思いますよ。

みなさんの想いを伝えてもらったら、

お米なども提供していただけると思います。

 

――それはとてもありがたいです。

河辺区が農業を基軸にしたまちづくりを目指されているという

お話しも伺ったので、農家さんと地域の方が交流できる機会としても

このイベントを実施できたら、と思っています。

 

それはこちらとしてもありがたいよ。

中々生産者の想いや農業の楽しさ、

厳しさを知ってもらえる機会は少ないからね。


愛子ちゃんチーム・区長さん①.jpg

 

――またもう一つやってみたいのは、音楽のミニコンサートです。

今回、対象を親子向けにしているため、

子どもも大人も楽しめる内容として

親しみのある音楽の演奏を聴いてもらう時間を作ると

面白いかもしれない、と思いました。

私は吹奏楽部に所属しているので、

他の高校生にも協力してもらえるかもしれません。

 

音楽は良いですね!

河辺区にも実はジャズを中心に音楽をされている方がいらっしゃって、

時々コンサートを実施していたのですが、コロナ渦の状況下、

ここ2年は開催できておりません。

もしみなさんが良ければ、地域の音楽をしている方と

コラボレーションしてみるのも面白いのではないでしょうか。

 

――そうなんですね! 

それはぜひとも一緒に出来ないか相談してみたいです。

 

私としては、そのイベントが

「ただ一緒に楽しい時間を過ごしました」というものではなく、

その後に地域の中に新たな交流関係が継続していくためのきっかけと

なってほしいと考えています。

ですので、今までは交流する機会の無かったグループ同士のコラボなどが

生まれると面白いですね。

その組み合わせなどをぜひとも皆さんにアイディアを出していただきたい。

 

――なるほど。他にはどんな地域の方がいらっしゃるのですか?

 

色々な方がいらっしゃいますよ()

手先が器用な方々の集まりは、

時々ハンドメイドのワークショップなども開催されています。

そういった方々に協力してもらって物作りを体験してもらう時間を作る、

といったこともできるかもしれません。

また、歴史や文化に詳しい方達のグループ「探訪会」というのもあります。

地域の文化のことなどを知ってもらうには、

その方たちに協力をお願いしてみるのも良いかもしれませんね。

 

――色んな方たちがいらっしゃるんですね!!

今お話しを聞かせていただいて思いついたのが、

歴史に詳しい方に来ていただいて戦時中の河辺区の様子について

お話をお聞かせいただくのも良いかもしれない、と思いました。

ここは兵士の訓練のための飛行場があったとも聞いております。

今後も受け継がれるべき、忘れて欲しくない歴史についても

学べる時間があっても良さそうです!

 

確かにそうですね。とても良いアイディアだと思いますよ。

イベントがどんな内容になるのか、楽しみにしていますね!

愛子ちゃんチーム・区長さん②.jpg

****

 

こうして最初の区長さんとの話し合いは、終始和やかな様子で幕を閉じた。

高校生達が出したアイディアに対して、随時「地域にこんな人がいるよ!」

「それであれば、こういう風にすればもっと面白くなるかも知れない」といったような

助言をしてくださり、彼女達もアイディアが固まってきたようだ。

 

イベントは今年の3月中に実施することを目標にこれからアイディアを具体的な

企画書に落とし込んでいくことになった。

 

地域、とくに大宮町河辺区に新しい風を吹かすため、

どんな企画を高校生達が考えてくれるのかワクワクする。

このプロジェクトがどのようなゴールを迎えるのか、引き続き見守っていきたい。

 

それでは次回記事をお楽しみに。

 

 

 

 

「京丹後市の移住政策に必要な要素って何だろう?」 ~実際に移住相談にのっている相談員さんに聞いてみた~

 

さて、引き続き2年生の探究活動の紹介です。

今回はまた新しいチームの活動の取組を取り上げましょう。

 

このチームのメインの探究テーマは

「京丹後市の経済を発展させるためには」というもの。

チームのメンバーたちは、経済が縮小していく地方の未来に課題を感じ、

今後少しでも地域経済が発展していくには

どんな施策を講ずる必要があるのか意見を出し合います。

その結果、「京丹後市に関わる人が増えることで経済発展に繋がる」

という考えに至り、関わる人を増やすための手段として

"移住"に力を入れていくべきだと考えました。

 

そこで、京丹後市の移住に関する取組の実態が

どのようになっているのかをまず知るために

地域の移住相談所である「丹後暮らし探求舎」と

「まちまち案内所」を訪問しました!

****

お話を伺ったのは、移住相談員の小林朝子さん。

京丹後市への移住を検討している多くの人々はまず、

この人に相談をします。

まさに「地域の顔」である小林さんから、

リアルな移住の現状についてのお話を聞いてみましょう。

志村君×朝子さん(ヒアリング①).jpg

 

――小林さんは、京丹後市で生まれ育ったのですか。

 

いいえ。実は私も移住者です。出身は北海道の旭川市。

京丹後市に来たのは2015年だから、かれこれ7年が経っていますね。

 

――移住される前はどんな生活を送られていたのですか。

 

ここに来る前は、京都市内で土木関係の会社に勤めていました。

やりがいもありとても楽しかったのですが、

今思えば所謂「社畜」生活で......。

ほとんど毎日が仕事と家の往復で、

仕事関係以外の交友はほとんどありませんでした。

休みの日はもっぱら買い物で消費する。

お気に入りのお店も沢山あって、それなりに楽しい生活を送っていました。


――ではどうして移住を決意されたのですか。

 

30歳を迎えるタイミングで、これからの人生を考えるようになったんです。

決して充実していない訳ではないけれど、

私の人生から仕事を取り除いたらほとんど何も残らないな、と。


今後、自分の人生の中で大切にしていきたいものは何だろう、

と考えていた矢先、

友達から京丹後に遊びに行かないか、と誘われたんです。


そこである食事会に参加したのですが、

目に飛び込んできた光景は今でも忘れられません。

そこには地元の人も移住者も沢山いて。

みんな年齢も職業も異なる。

そんな人たちが隔たりを超えて、楽しそうに過ごしている。

温かいコミュニティ。

仕事とか趣味の関係性以外にこんなにも居心地のよい居場所があるのか、

と衝撃を受けました。

私の生活に足りないものは、

まさにこういう「豊かさ」だって気づいたときには、

きっともう移住を決意していたと思います。

志村君×朝子さん(ヒアリング②).jpg

――確かにみんなでご飯持ち寄って食べよう、みたいな文化は

地方に根付いている気がします。

小林さんは、都市部と田舎(地方)の違いには何があると思いますか。

 

都市部は、お金さえ払えば様々なサービスを

受けることができるというメリットがあると思います。

一方で田舎は、都市部に比べるとサービスは

充実していないかもしれないけれど、不足しているからこそ、

それを面白がって自分達で作ろう、

という動きが出てくるところが魅力だと思います。

 

――なるほど。それぞれに良さがあるのですね。

では次に移住の実態についてお聞きしたいのですが、

実際に移住を検討されている方はどういった相談に来られるのでしょうか。

 

色々なケースがありますが、大きく分けると

主に2つの目的で丹後移住を検討されている方が多いです。

1つは、自力で何とかしたい、チャレンジしてみたいと考えている人たち。

もう一つは、リタイア後やオフの日に自然豊かな場所で

充実した時間を過ごしたいと考えている人たち。

 

丹後を含め、日本海側への移住は都市圏に住んでいる人からすると

かなりハードルが高いんです。

例えば仕事は都市部で続けたままの状態で、

住む場所だけ環境を変えたいと考えた場合、

京都府の中では亀岡などが移住先として人気です。

自然が豊かでありながら都市部にもすぐに出られる。

つまり、ライトな移住先としてはベターな訳です。

逆にわざわざ京丹後への移住を考える人たちは、

それなりの覚悟を持っています。

都市部に住んでいる人は、今ある環境を全て変える必要がありますから。

 

――なるほど。因みに相談に来られる方は、

どれくらいの年齢層の方が多いのでしょうか。

 

幅広い年代の方が来られますよ。

20代~70代くらいまでの方々がいらっしゃいました。

志村君×朝子さん(ヒアリング③).jpg

――移住を考えている人は、どんな想いをもって

相談に来られるのでしょうか。

 

移住を考える理由がポジティブな人は

「今の生活もそれなりに楽しいけど、もっと良くしたい」と考えていて、

ネガティブな人は「都会での生活が辛すぎるから、

何とかして環境を変えたい」と考えていることが多いです。

いずれにせよ共有していることとしては

「今よりも少しでも暮らしを良くしたい」ということ。

 

――移住相談にのる上で気をつけていることはありますか。

 

私達がしていることは

「京丹後市の人口を増やすための移住相談」ではありません。

まずは相談者の話にじっくり耳を傾けるところから始めます。

 

移住してやってみたいこと、希望していることなどをヒアリングして、

次に繋ぐ先を作ります。

例えば相談者がやってみたい職業に就いている人であったり、

同じような趣味を持っている人、その人と同世代の人などを紹介します。

 

この地域のことが好きで通っていても、実際に住み始めたらギャップを感じて

「そんなはずじゃなかった」と思うこともある。

だからこそ、移住を決断する前の段階で「この地域で生活する自分」を

なるべく具体的に描けるように、選択肢をできるだけ多く提示してあげる。

 

「今よりも少しでも良い生活をしたい」との想いで

移住を考えてくださっているのに、

移住したことで後悔する、というような思いはして欲しくないので。

 

――「人口を増やすための移住支援ではない」のですね。

確かに移住して一時的に地域に関わる人口が増えても、

結局定住してもらえなかったら本末転倒ですもんね。

 

そうだね。

「この地域、良いな」と思ってくださる人がどれだけ長く住んでくれるか、

ということを重視しながら相談にのっています。

 

――小林さんは、移住希望者の方々の相談にのるだけではなく、

地域住民の関係性作りにも力を入れているという記事を読んだのですが、

それはどうしてですか?

 

地元の人が「この町、良いよね」と思える地域は外から見ても、

何だかこの地域は居心地がよさそうだな、と自然と思ってもらえると考えています。

だからこそ、地元の人の暮らしの満足度を上げる支援も大切にしています。

 

――確かにそうですね。

地元の人が自分の地域を誇れたら、Uターン率も上がると思います。

では実際に丹後に移住された人たちの反応はどういったものなのでしょうか。

 

移住者に対して、とても寛容だと感じている方が多いようです。

何かにチャレンジしたくて移住してくる人たちにとっては、

新しい環境で一から関係を作りながら生活の基盤を築いていくことは、

やはり不安がつきまといます。

そんな中、地元の人も先に移住をした人も一緒になって

挑戦を面白がってくれる、

温かく受け入れて応援してくれる地域で居心地が良いと

話してくださる方が多いですね。

 

――それは移住者にとってとても心強いですね。

小林さんは、丹後のどういったところに惹かれたのですか。

 

この地域で生きている人たちは、ひかれたレールをたどる人生ではなく、

"自分で選ぶ"ことをして、暮らしを楽しんでいるように感じました。

私が昔から他の人からの評価を気にして、

自分で自分の人生を選んでいるという感覚を

あまり感じられなかったせいかもしれません。

こんな風に私も自分自身の人生を歩みたい、と強く思ったんですよね。

 

――なるほど。だから先ほどお話しされていたように、

移住を検討している相談者に対して

その人のその先の人生まで考えて相談にのるようにされているんですね。

 

そうですね。移住は目的ではなく、あくまで手段。

「移住者を増やす」を掲げるのは違うと考えています。

相談者の話にしっかり耳を傾け、

その時点で「あなたの考えていることをこの地域で実現するのは難しい」とか

「あなたの想像している生活とこの地域での生活は

ちょっとギャップがあるかもしれない」ということも

しっかり伝えるようにしていますね。

 

――それはとても大事なことですよね。

ただ現状の課題として、そもそも京丹後市の認知度が

低いということもあるのではないか、と思っています。

移住を検討されている人たちに、

移住先の選択肢として京丹後市を加えてもらうには、

どんなPRが必要だとお考えですか。

 

まず大事なのは、地元の人がこの地域に可能性を感じていること。

さっきも話したけど、地元民が地域に対してネガティブな感情を

抱いているところに魅力は感じないよね。


後は、思いっきりこの地域の魅力を語れる、熱弁できる人がいることも大事。

そんな人の存在は、移住者から見るととても支えになる。

こんな人がいる地域であれば、楽しいに違いない、って思えるんだよね。


そして、私は高校生のあなたも含めて

地域住民の誰もが移住の窓口になると考えています。

例えば、旅行で遊びに来たときに高校生から笑顔で元気に挨拶されたら

「あ、この地域すごく良いな」って思うでしょう。


その地域ですごく親切にしてもらったとか、

楽しく過ごせた体験は後々移住に繋がっていることが多い。

実際、移住者の多くは一回以上京丹後に足を運んだ経験があります。

遊びに来たときの良い思い出がその後の選択に大きく影響しているんですよね。

志村君×朝子さん(ヒアリング④).jpg

――今のお話を聞いて僕も外から見られているかもしれない、と

意識を改めようと思いました! 

因みにですが、現状の行政(京丹後市)の移住政策においては

どうお考えでしょうか。

 

もちろん、市としては移住者を増やしたいわけだから

色々と移住者にとってメリットのある施策を出しているとは思います。

ただ、支援金や補助金といった制度はあくまで一過性のもの。

それよりも、この地域でいかに満足してもらえるか、

長く定住してもらえるか、ということの方が大切なのではないでしょうか。

 

――そうですね。

では、今後京丹後市はどのようなまちづくりを目指していくべきだと思いますか。

 

まず一つは「Uターンの人が気持ちよく帰ってこられる町作り」を

するのが良いと思います。


繰り返しになりますが、地元に関わる人が自分の故郷を

誇りに思えないというのはとても寂しいことです。

地元の人はやむを得ない事情によって

こちらに帰ってこなくてはならない場合も生じます。

そのときにできる限りポジティブな思いを持っていて欲しい。

昔は何もない地域だと思っていたとしても、

何だか最近の丹後面白そうな動きがあるな、とか

応援してくれる人がいそう、とか楽しそうな仕事ができそう、とか

思ってもらえるような土壌づくりとそんな空気感が伝わる発信を

していくことが必要だと感じます。


あとは特色のある人が、

ちゃんと特色を活かせるようまちづくりも大切ですね。

この地域だったら自分の魅力が最大限活かせそうだ、と

確信を持ってもらえるような仕組み作りと地域連携が必要だと思います。

最後に楽しいことをどんどん積み上げていく、という姿勢。

これが一番大事だと思います。


まちづくりとか社会課題をどうこう......みたいな話題って、

どうしてもネガティブなところから入ると思うんですよ。

現状の行き届いていない部分ばかりに目がいってしまって、

結果関わっている人も気が滅入ってくる、というか。

そうではなくて、自分の生活の手の届く範囲で良いから、

この地域で楽しく暮らすためにはどんな仕掛けがあったら良いだろう、

ということを面白がりながらみんなで考えていけるような

場の形成が出来れば良いな、と。


「課題解決」というと疲弊してしまうけど、

「楽しい、とか面白い」ことであれば持続可能でしょ。

地元の人も移住者も世代も分野も色んな枠を取っ払って

みんなで手を取り合いながら、丹後良いよね、って

分かち合えるような場作りを頑張りたいと思います。

 

――お話しをお聞かせいただいて、益々地元の人同士の繋がりが

大切なことに気がつきました。

今の自分に出来そうなこととしては、

親や先生以外の大人達と交流の機会を持つことだ、と思います。

 

うんうん。すごく良いと思う。

本当に若い人たちのエネルギーって

大人達を無条件で元気づけてくれるんだよね。

うちの案内所(まちまち案内所)は人の出入りは多いけど

高校生からの認知度はまだまだ低いから、

ぜひその筆頭に立って交流の場を作っていってくれると私達も嬉しいです。

若い人が頑張っている姿を見ると、地域の大人達は何とか応援したい、と考える。

そういうところに支援をしたり、投資をしたい、という人は沢山いるから、

若い世代と大人同士の顔の見える関係性作り、

その仕組化も今後チャレンジしていきたいです。

 

****


京丹後市の移住状況や、今後の地域の在り方が見えてきた、

そんな時間になりました。

小林さん、貴重なお時間を本当にありがとうございました!


ヒアリングが終わった後は、まちまち案内所を案内していただきました。

地域の人々がそれぞれの得意分野で自己表現出来るような工夫や仕掛けが

盛りだくさん。


スペース中央にはシェアキッチン。

ここでは地域の料理好きの方たちが日替わりでランチを提供したり、

飲食を伴うイベントなどを開催する際にみんなで協力したり、

楽しみながら食事を作るために使われています。


またWi-Fi完備の広い作業スペースがあり、仕事のうち合わせや

ワーケーションで利用している人たちも沢山いるとのこと。

志村くん×あさこさん(本棚).jpg 志村君×朝子さん(本の説明).jpg 

まちまち本棚②(志村くん).jpg

奥には本棚が設けられており、私設図書館として利用できます。

各本棚には"本棚オーナー"が自由に厳選した本を並べています。

本棚オーナーとは、本好きの地域の人たち。

棚を自己表現の場所として使っているんですね。

一目見るだけで、直接会ったことがなくてもその人が何を大切にしていて、

どんな価値観を持っているのか、並んでいる本から連想できるので

とっても楽しい。

本を介して新しい繋がり方ができるのも魅力です。


その他、子どもの遊び場があったり、物作り(DIYなど)ができる部屋が

あったりと、目的と用途に合わせて柔軟な使い方ができる素敵な場所と

なっていました。


地域の中にこうした多様な人たちの緩やかな関係を築ける場があることが

如何に重要なのかが分かった気がします。

 

京丹後市が経済発展していくために、ここから高校生たちがどんな提言、

アイディアを出してくれるのかが楽しみです♪

 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             

 

 

【京丹後市民の幸福度~この地域で生きていくということ、そしてそこから見える可能性~〈坂田真慶さんへヒアリング〉vol.3

 

京丹後市民の幸福度について調査をしている高校生たちの活動はまだまだ続きます。

今回は、丹後暮らし探求舎の坂田真慶さんにお話しを伺います。

 

坂田さんは2017年に京丹後市に移住をし、

丹後で生活する人たちが楽しく暮らし、働けるように

様々な形で伴走支援を行なわれています。

最近は、地域と関係人口をつなげる「まちまち案内所」

運営や地域での場作りが主な仕事。

町歩きと温泉に入ることが趣味という、

どっぷりローカルに浸かった坂田さんから、

どんなお話しが聞けるのでしょうか。

 

※これまでの記事は以下からチェックしてみてください。

~vol.1

~vol.2

 

****

あるとくんチーム×坂田さん(全体).JPG

――これから坂田さん自身のこの地域で暮らすにあたって感じている

"幸福感"について聞いていきたいのですが、

その前に経歴を教えていただいても良いですか。

実は僕たち、ここに来る前に坂田さんのプロフィールに

目を通してきたのですが、

情報量が多すぎてちょっと混乱しています......(笑)

一時は海外での生活のご経験もあるようですが。

 

そうですね。色々なところに住みました()

僕は東京都荒川区の下町で生まれ育ちました。

コミュニケーションが多く生まれる下町で育ったからか、

昔から人との関わりとか

ローカルな部分に深く潜り込んでいくことが好きで。

国際関係に目を向けるようになったのは、15歳くらいの頃かな。

当時は国際連合に入って、世界の様々な問題を

解決出来るような人になることが夢でしたね。

でも大学で国際関係とか国際政治を学んでみると、

僕のやりたいことと国際連合などがやっていることに

大きなギャップがあることに気がついて......。

僕は自分の手の届く範囲の中で起こっている社会課題や地域課題に

向き合いたかったのですが、国連の組織はやはり官僚世界。

見ているところが違ったんですよね。

それでどうしよう、ってなって20代は進路迷子でした。

途中で中国やインドネシアでの生活も経て、

紆余曲折ありながらもひょんなことから京丹後市と繋がって。

何だか分からないけど、この地域であれば色々とチャレンジできて面白そうだ、と

思って気がつけば移住していました()

 

――いや、本当に面白いですね。

海外にも出て、でも結局丹後に留まっちゃったという(笑)

 

本当に人生何があるか分からないよ()

 

――でもそれだけ丹後には魅力を感じられた、ということでしょうか。

 

そうだね。今でこそ、徐々に丹後の中で地元民や移住者が集って

何か一緒にやったり、面白い活動をしている人が増えてきたけど、

僕がここに来た5年前くらいはまだ地域活動があまり活発でなかったり、

独自で動いている人もいたけど地域全体でその繋がりはよく見えなかった。

目立った動きが無かったからこそ、新しい挑戦ができる余地だったり、

地域のポテンシャルを感じてここに移住することに決めました。

それで色々してたら、もう5年が経つんだね......。

あっという間だわぁ。

 

――特に縁のない場所で、全く新しいことを始めようとするのは

結構勇気のいることだと思うのですが、ご不安などはなかったんですか。

 

そんなに感じなかったね()

やっぱりそこは下町育ちだからか、ローカルに入り込んでいく、

ということ自体がすごく面白くて。

地元の人たちと時間をかけてコミュニケーションを取りながら

関係性を作っていく。

そうしているうちにいつの間にか地域に溶け込んでいる。

関係性がしっかりできていると、何か新しいことに取り組みたい時でも

協力してくれる人が出てくる。

地域との相性も良かったんだろうね。

あるとくんチーム×坂田さん(坂田さんピン笑顔).JPG

――なるほど。

では丹後の好きなところを教えてもらってもいいですか?

 

やっぱり、老若男女関係なく繋がれるところかな。

外から来た者に対してもすごく寛容で受け入れてくれる人が多いと感じますね。

 

――丹後に寛容な人が多い、という話はこれまで別の方へのヒアリングでも

出てきました。

それはなぜだと思われますか?


でもこうして地元の人や移住者関係なく色々出来るようになったのは、

ここ5年くらいの間かな。

過去にはそんなに雰囲気が良くない時代もあったと聞きます。

特に丹後は地場産業としてちりめんで経済を盛り上げてきた背景があって、

それが段々廃れてきてからは地域全体が低迷してしまって。

それでもここ10年くらいの間に移住者、

またUターンで戻ってきた20代、30代の若手中心に少しずつ地域を盛り上げよう、

という動きが出てきたように感じます。

それが今になって見える化されてきた。

点であったのがそれぞれ結びついて線になっていく感じ。

それをさらに強化(面に)するために地元民も巻き込んでみんなで何とかしよう、

と動き出したのが最近だね。

 

――なるほど。そうだったんですね。

では丹後にあったらいいな、と思うことは何でしょうか。

 

やっぱり映画館などの文化的施設は欲しいかな、と思うね。

あとは"良い仕事"かな。

丹後は雰囲気は令和だけど、仕事環境としては昭和だと思うのね。

恐らく進学等で、高校を卒業したら大部分の若者が一度はここを出ると思う。

でもこれから人生を過ごしていく中で、

例えば子どもができたタイミングで子育ては

のびのび出来そうな丹後でしたいな、とか

家庭の事情などでやむを得ずこちらに戻って

来なければならない時があるかもしれない。

そうなった時に良い職場、良い仕事が見つからない、となると

やっぱり魅力は半減しちゃうよね。

あとはせっかく面白いことをやっていてもそれを継ぐ人が出てこなかったら、

なくなってしまうこともあるかもしれないよね。

継続できるシステムみたいなものはどこかのタイミングで

構築しなきゃいけないのかな、って考えたりはしています。

 

――確かに。

魅力的な仕事ができそう、何だか面白そうなことが起こっていると分かれば

ワクワクしながら地元に帰って来れそうです!

 

因みに今の段階で、将来的に丹後に戻ってきたいな、という考えはあるの??

 

――あ、とりあえずまず進学を考えているので丹後から出ることは確実なのですが、

戻ってくるかどうかはまだ分かりません(笑)

 

そうなんや()

でも一回外の世界に出ることは、必要でとても大切なことだと思います。

外に出ることで初めてじっくり自分の地元のことが理解できると思います。

他の地と比較することによって、

丹後のこんなところが良いな、好きだな、とか

こういうところは足りてないな......とか。

色んな世界を見て、視野と選択肢を広げてください!

 

――ありがとうございます。頑張ります!!

では、この地域で暮らしていて坂田さんが幸せだと感じるのはどんな時ですか?

 

まずは食べ物とお酒が楽しめて、温泉があることかな。

あとは最近町歩き(散歩)が好きなんだけど、

町を歩く度に何か新しい発見があるところが面白いよね。

程よい余白と可能性を感じるのもこの地域の魅力だと思います。

先ほども話したように一時は、この地域も暗い時代があって、

可能性がないな、何もないな、と思われていました。

だけど今は、色んな分野の人たちがその枠組を取っ払って繋がれるようになって、

アイデア一つで可能性が広がっていく感覚を実感値として

味わえるようになってきた。

どういう繋がり方をすればもっと面白くなるかな、と

考える余白があるところもこの地域で暮らす楽しさだと思っています。

あるとくんチーム×坂田さん(3人チラシ).JPG

――僕たちは、この地域に住んでいて正直何もないところだと思いながら

この探究を始めたのですが、今まで色々な人にお話を聞いてきて、

ここで今すごくワクワクするようなことが起こっているんだと気づきました。

そうやって地域を面白くするぞ、と動いている人たちの存在は

未来を明るくしてくれているように感じます。

 

もちろん、地域に「余地がある」ということは

まだまだ足りていない部分もあるということで。

でも見方を変えれば、それはこれからどんなものにでも変容できるという

ポジティブな捉え方が出来ると思います。

多様な人たちが集って、アイデアを出し合って面白いものが生み出されていく......

こういう場を地域に設計していくことが大事だと思います。

こういう環境がある地域は、

「幸せ」という一つの条件が満たされていることになるのかもね。


――なるほど。とても興味深いです!

では、坂田さんの今後の展望をお伺いしてもよろしいですか?

 

やっぱり僕は「場を作る」ことが好きで。

全然異なる分野の人たちがアイデアを出し合って出てくるものを

形にしていく過程に面白さを感じています。

普通に暮らしていたら出会わなかったような人たちが出会える「場」を

地域に設けておくこと。

面白い出会いが偶発的に生まれるような環境を設計し、関係を繋いでいくこと。

そして何かチャレンジしたい、一歩踏み出したい、と考えている人たちを

寛容に受け入れ、応援できる環境を整えること。

そういうまちづくりをこれからもしていきたいと考えています。

そのためにもともと長く丹後で暮らしている人たちのコミュニティ、

受け皿となる地域側を温めておく必要があると考えています。

色々な人たちとより良い未来を作っていくための

「共デザイン」を実現していきたいですね!

 

****

 

坂田さん、素敵なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

地域の暮らしを全力で楽しむ坂田さんのお話は、

高校生たちにとってもとても刺激あるものとして伝わったと思います。

 

「丹後で暮らすこと」でどんな幸せを感じるのか。

未来の丹後はどういう姿になっているのか......。

「課題」を深刻なものと捉えず、

どうすればもっと面白くなるのかを考える坂田さんの考え方は、

高校生たちが人生をより面白く、豊かに生きるのにとても役に立ちそうです。

 

この調査が最終的にどのようなゴールを迎えるのかはまだ分かりませんが、

楽しみに見守ってきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

【京丹後市民の幸福度~この地域で生きていくということ、そしてそこから見える可能性~〈長瀬啓二さんへヒアリング〉vol.2

 

遅ればせながら新年明けましておめでとうございます!

昨年は皆様にとってどんな年だったでしょうか。

 

世間はまだまだ安心して過ごせる状況にはなっておりませんが、

withコロナ」で少しずつ規制がかかっていたものが緩和されて、

一昨年と比較すると比較的地域活動が活発に出来るようになりました。

 

今年はどんな1年になるでしょうか。

チャレンジしながら毎日を面白く過ごしたいものです。

皆様にとっても実りある1年になりますように。

今年も高校生たちの探究活動をなるべく多くの人たちに伝えるべく、

頑張って記事を更新する所存ですので、何卒よろしくお願いいたします。

 

それでは本題に参りましょう。

前回の記事で、京丹後市民の幸福度から未来のこの町のあり方を考えるという

目的で探究活動に取り組んでいる高校生たちの紹介をしましたが、

今回の記事はその続きになります。

この取組についてもかなり記事が多くなりそうなのですが、

最後までお付き合いいただけますと幸いです...。

 

前回の記事はこちらからご覧ください!

vol.1

****

今回高校生たちがヒアリング対象に選んだのは、

一般社団法人Tangonianの長瀬啓二さん。

長瀬さんは網野町出身なので、Uターン者として

京丹後市で暮らしておられます。

 

長瀬さんが考える幸福とは一体どういったものなのでしょうか。

せっかくの機会であるので、ぜひオフィスでお話をしましょう、

というご提案をいただいたので、網野町浅茂川にある事務所まで足を伸ばしました。

 

まず、Tangonianのオフィスに到着した瞬間、

高校生たちは感嘆の声を上げました。

ひょっこりと動物たちが顔を出しそうな鬱蒼とした森の中に

突如現れた立派な古民家。


長い歴史を感じさせるとともにそれを生かしながら

現代風にリノベーションされた美しい空間。

オフィスと自宅が合わさっており、

「良い仕事は豊かな暮らしから」をモットーにしているというこの建物では、

至る所に長瀬さんの拘りを見ることができます。

 

まずはオフィスを案内していただきました。

ゲスト用の部屋もあり、宿泊も可能なため全国各地から

丹後を訪れる人々をここでもてなすそうです。

同時に地元の人もこの場所に集うため、ここは丹後と他地域の交流拠点。

あるとくんチーム×長瀬さん⑧素敵なリビング2.JPG あるとくんチーム×長瀬さん⑦お家探検2素敵なリビング.JPG

あるとくんチーム×長瀬さん⑥お家探検.JPG あるとくんチーム×長瀬さん⑨本コレクション.JPG

面白そうなものがたくさん置いてあり、

もっとじっくり見せて頂きたいところでしたが、

そろそろ本題のヒアリングに入りました。

 

〈長瀬さんへのヒアリング〉

――僕たちは、元々京丹後市の人口がどうすれば

増加するのかに視点を当てて探究活動を進めていたのですが、

調べていくうちに将来的に人口減少していくことは

避けられない事実であることが分かりました。

そこで視点を変えて、人口減少をしても続いていく

この地域の在り方について考えてみようと思ったんです。

もし京丹後市民の幸福度が高ければ、必然的にこの地域に住み続けたい、

と感じるのではないか。

それが結果的に持続可能な地域としてあり続けるのではないか。

そのように考え、まずは主観的なデータを得るために

京丹後市民の何人かの方にヒアリングをし、

この地域で暮らすことで得られる幸福感について調査することにしました。

 

とっても面白いテーマですね!お話をするのが楽しみです。

 

――では早速ですが、長瀬さんのご出身は京丹後市ということですが、

ざっと経歴を教えて頂いてもよろしいでしょうか。

 

はい。僕は京丹後市網野町で生まれて、

高校は福知山の学校に通っていました。

大学では京都市内に出ましたね。

大学の時に休学をして、オーストラリアにワーキングホリデーに

出た体験や自閉症の高校生の外出ボランティアなどに関わった経験が

僕の価値観を大きく変えるきっかけになりました。

また素晴らしい恩師との出会いもあり、

教員になろうという想いが強まります。

卒業後は暫く中学校の英語教員として働いていたのですが、

忙殺されて心と身体を壊して、帰郷します。

そこからいくつか仕事を転々とした後、

今のTangonianという会社を立ち上げました。

 

――Tangonianとはどんな会社なのですか?

 

「暮らしと旅」「Local×Global」の交差点を共創することで、

生き方や暮らし方を再発見し、地域に誇りが持てる人材を育てたり、

持続可能で異なる文化や価値観を受け入れる地域作りをすることが

目的の会社です。


簡単に言うと、旅行会社で丹後地域を中心に京都北部のエリアの

魅力を発信すべく、ツアーを組んで外から来る人たちを

案内しているのですが、ただその場限りの繋がりで終わるのではなく、

地元の人にとってもこの地域に来てくれた人にとっても

出会って良かったな、という体験を持ち帰ってもらいたい。

お互いが出会うことによってポジティブに影響し会う関係性を

編むことが僕たちの使命です。


その体験がきっかけで地域側が新しい仕事を受注できるようになったり、

新たな人がこの地域を訪れてくれるようになったりするための

きっかけ作りをしようとしている感じかな。

 

――なるほど。その場限りのツアーで終わらせない、

地域密着型の旅プランということですね。

それにしてもとても立派なオフィス(古民家)ですね。

このお家は長瀬さんがご購入されたのですか?

 

とても幸運な話なんだけど、ここは前に僕の親族が住んでいて。

元々家族の持ち家だから、家を空けるタイミングで

僕が使わせてもらうことになりました。

 

丹後に戻ってきた当初は、別の場所でオフィスを構えていたんですけど、

そこを出ないといけなくなって次どうしよう...

と思っていたタイミングでご縁があって。

あるとくんチーム×長瀬さん②全体(ヒアリング場面).JPG

――それは幸運でしたね。では早速本題に入っていきたいと思いますが、

先ほどのお話の中で長瀬さんは先生をされていて、

身体を壊してこちらに帰って来られたと仰っていました。

その時のお話をもう少し詳しく伺っても良いですか?

 

はい。大学を卒業してから中学校の英語の教員として

暫く働いていたのですが、兎に角毎日忙しくて......。

部活もかなり気合いを入れて見ていたので朝練のため早朝に学校へ出勤し、

勿論夕方もがっつり練習を見た後で、次の日の授業準備や雑用をこなす日々。

ここに生徒相談やクラス運営なども重なって、自分のことは常に後回し。


そんなある日、これはさすがにやばいな、という出来事があって。

テニス部の練習を見ていた際、何気なくコートの隅に目を落とすと

沢山の蟻が巣に向かって一生懸命食べ物を運んでいる光景が

飛び込んできました。

何だかそれを見て涙が溢れてきてしまって......。

蟻を見ておまえらも一生懸命生きてるんだな、って。

無意識にボロボロ泣きながら感じました。あぁ、限界だなって。

そこで一度地元に戻って自分自身の生活を取り戻そうと思いました。

 

――なるほど。それは大変でしたね。

今の生活はその当時と比べて変化はありますか。

 

正直、こちらに帰ってきたばかりのころは何とか立て直さなきゃ、

という焦りもあったりして結局仕事をガツガツしてしまったりしていました。

自分の暮らしを見直すようになったのは、

それこそコロナがきっかけですね。


ローカルな暮らしの豊かさをPRする仕事をしているはずなのに、

自分の生活は"豊かさ"とはかけ離れている。

地元の人とも外から来る人ともゆっくりと関係を

編み直していったのがこの数年です。

でもそうしてみて改めて思いましたよ、丹後って良いところだなぁ、と。

 

――そうだったんですね。丹後のどんなところが好きですか?

 

まずはなんと言っても食べ物が美味しいところでしょう。

きっと皆さんも一度地元を出たら気づくと思いますが、

やっぱりお米が美味しいんですよ。

旬の物を季節ごとに楽しめるのもいい。

海鮮も新鮮だし、お酒だって最高ですよ()

あとはチャレンジを面白がって応援してくれる環境がある、

というのもこの地域の特徴として上げられると思います。

あるとくんチーム×長瀬さん⑩長瀬さんの笑顔.JPG

――あ、それ船戸さんも仰っていました! 

丹後の人は挑戦を応援してくれるって。

 

そうなんですよ。

僕が独立して会社を起ち上げた当初、本当にお金がなくて。

そんな時地元のおっちゃん達が僕を連れ出してくれて。

ご飯屋さんに連れて行ってくれて、

「とにかく食べーや」って。


そして悩んでいることとか、これからやってみたいと思っていることとか

全部聞いてくれた上で、心から応援してくれたんですよね。

「そりゃおもろいわ。楽しみにしてるで」って背中を押してくれて、

ご馳走までしてくれた。

新しい仕事が軌道に乗るまで、そうやって何度も救ってくれました。

 

――新しいチャレンジを応援してくれる人が沢山いると心強いですね。

 

本当にそう思います。

古い映画やけど「ペイフォワード」っていう作品があって。

日本語でいったら「恩送り」っていうのが近いかな。


小学生の男の子が主人公なんだけど、

社会科の授業中に世界を変えるアイディアを思いつく。

それは、人から施しを受けたら別の3人に返すというもの。

慈善の波がどんどん広がっていって......という物語なんだけど、

僕はこの考え方がすごく好きで。


僕が苦しい時におっちゃん達が僕を救ってくれたからこそ、

今の僕がここにいる。じゃあ、次は僕が誰かの支えとなる番。

受け取った恩を別の誰かに繋いでいく。

そういう風に生きていきたいな、って思います。

 

――「恩送り」 素敵な言葉ですね。

丹後の人はチャレンジを面白がって

応援してくれる人が多いとのことですが、それはなぜだと思われますか。

 

それについては僕なりの仮説があって。

みんなも学校で習ってると思うけど、

丹後地域には大きな古墳が沢山あるよね。

古墳の規模の大きさや出土しているものから、

この地域は大きな力を持っていたこと、

また海外(朝鮮半島など)から渡ってくる人々の玄関口に

なっていたとされています。


遙か古代から文化交流が盛んに行われていて、

ある意味この丹後半島の地域はとてもグローバルであったのではないか、

と推測されているわけです。


その当時から、外のものを寛容に受け入れていた、という人々の気質、

DNAが現在にも受け継がれているんじゃないか、と僕は思うわけです。


「よく分からないけど、何か面白そう」


丹後の人は、そういったものに敏感に反応して一緒に面白がって、

応援してくれる。そんな気がしています。


あくまでこれは仮説だけど、あながち間違っていないのではないか、

と考えさせられる本もあるので、興味があればぜひこの本を読んでみて!

 

そう言って長瀬さんが、本棚から取り出したのは

『「海の民」の日本神話―古代やポネシア表通りをゆくー』(新潮選書)

という本。

古代日本、とくに「裏日本」と言われる日本海側の地の見方が

がらっと変わる1冊になっているという。

高校生たちも面白そうだ、と早速メモを取ります。

あるとくんチーム×長瀬さん①本を見ながら.JPG

 

――ここまで大変興味深いお話をお聞かせいただいたのですが、

長瀬さんの今後の展望についてもお聞きしてよろしいでしょうか。

 

Tangonianという地域密着型の会社を起ち上げて、

色々なプログラム作りに励んでいますが、

今後取り組みたいと考えていることの一つは

この地域の中で内外関係なく、様々な文化や背景を持っている人々同士が

自然と交流できる企画を作っていきたいです。


今まで当たり前だと思っていたことが良い意味で揺らいでいく、

その揺らぎがきっかけとなって自分の大切にしてきたものや、

大切にしていきたいものを見直していく、考えるきっかけ作りをしたい。

あともう一つは、海外の大学生と日本の学生を繋ぐプログラムを

構築していくことも目標です。


僕、仕事で海外の学生さんとよく出会うのですが本当にいつも驚くんです。

その意欲の高さに。論理的に物事を伝えられるのは勿論のこと、

自国のことをきちんと学んで理解している。

そこまでできる学生は残念ながら日本には少ない。


やっぱり、比較をしなければ自分の立ち位置って見えてこないんですよね。

だからこそ、そういった世界を知り、

自分や自国を理解するような場を設けたい。


――それ、すごく良いですね。そんな交流の場が地域にできればもっと丹後は面白くなると思います! 

では最後になりますが、長瀬さんの考える「幸せ」とは何だと思いますか。

 

「幸せ」かぁ。いやぁ、改めて言葉にすると難しいよね()

でも僕も海外を含めて色々な場所で生活したことや

様々な分野の仕事に携わった経験を経て、今こうして丹後に戻ってきて

事業を立ち上げている訳だけど、毎日すごく充実しているな、

今日も頑張ったな、と思って一日を終えられるのは

今の生活を始めてからなんだよね。

 

自分で選んで、納得しているかどうか。

これが幸せの軸になっていると思います。

どんな暮らしをしたいのか、どんな人と一緒に働きたいのか。

特にこの2つは幸せの指標と捉えています。

 

自分の理想とする「豊かな」暮らし、そして「豊かな」人間関係。

この2つが今丹後で生活をする中で叶えられています。

あるとくんチーム×長瀬さん③長瀬さんピン.JPG

〈ヒアリングを終えて〉

 

今回も情報量がとても多いので、頭はパンク寸前、おなかはいっぱい状態。

それでも彼らの満足そうな表情を見ていると、豊かな時間が過ごせたのだな、と分かります。

長瀬さん、素敵なお話をありがとうございました。

 

最後にみんなで感想を言い合ったので、

そちらを記録して記事を締めたいと思います。

 

高校生の感想

「お話を聞かせていただいて、改めて僕たちは丹後のことを知らなさすぎる、と感じました。

知れば知るほどこの地域の面白さが分かってきた。

この感動の気持ちを他の人にも伝えられるように

自分の言葉でまとめていきたいです。」

 

「前回の船戸さんと共通するお話も聞けました。

それも踏まえると、丹後地域の人々は

人に与えることの豊かさを知っている(ギバー)人が多いのではないか、

と思いました。」

 

「知らなかったことを知る、とても良い機会になりました。

人生にも活かせるお話を沢山聞くことができ、学びにもなりました。

とても面白かったです。」

 

長瀬さんより高校生へメッセージ

「今回お話をしていて、みんなの目が輝く瞬間に出会えたことが

僕にとっての喜びです。

人が"いい顔"をする時は、面白い!ワクワクする!好きだ!といった

ポジティブな感情が働いています。

これは学びの原動力であり、人生を豊かにする種でもあります。

ぜひその気持ちを忘れずにこれからも大事に育てていってくださいね」

 

あるとくんチーム×長瀬さん④ヒアリング場面2.JPG

 
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