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【京丹後市民の幸福度~この地域で生きていくということ、そしてそこから見える可能性~vol.1~】

 

こんにちは!

 

いよいよ本格的な冬がやってきましたね。

京丹後に来てから3回目の冬を迎えることになりますが、

いまだに"うらにし"の気候に

慣れません...。今年も沢山雪が降るのでしょうか...。

今ドキドキ毎日を過ごしています。

 

さて、今回の記事は2年生の探究で

「京丹後市民の声からこの地域の今後の可能性を探る」ことを

目的に活動に取り組んでいる生徒たちについて紹介します。

 

***

 

「僕たちは元々京丹後市の人口を将来的に増やすためには?という

テーマで活動を始めたんです。

そのために外から来る人を増やすためにどうしたら良いか、

ということに焦点を当てていました。」

 

そう話してくれたのは、このチームを率いるリーダー。

京丹後市の人口は減り続けている。

このまま高齢化が進み、若者が出ていくという流れに

歯止めをかけることが出来なければいつか町が

消滅してしまうかもしれない...。

そんな危機感を同じように抱いた高校生たちが集い、活動が始まりました。

 

ところが、実際に活動を始めてみると少し方向性が変わっていきます。

"人口減少"

それは京丹後市だけが抱える問題ではないことが分かってきます。

 

「そこで発想を転換して、人口減少していくことは前提として、

京丹後市の外側ではなく、内側に視点を当ててみることにしたんです。

市民の幸福度が高ければ、必然的にこの町に住み続けたい、と思う。

それって結果的にこの地域の持続可能性に繋がっていると思うんですよ。」

 

そして彼らはさらに考えます。

今京丹後市で生活することが幸せだ、と感じている人たちが

なぜそう考えているのか、その人の「幸福感」を探ることで

この地域における可能性を見い出せるのではないか、と。

 

彼らは京丹後市で暮らすことで得られる幸福とは何かを調査するため、

実際に複数の人々にヒアリングをすることにしました。

目を向けたのは、IUターンの人です。

京丹後出身で一度外へ出たけれど、

戻ってきて今ここで生活を営んでいる人、

色々な選択肢があった中で京丹後市を選んで移り住んできた人。

こういった人たちは、何か京丹後に魅力を感じているからこそ

ここで暮らしているはず。

 

まず始めにお話を伺ったのは、

株式会社ゆうホールディングスゆう薬局グループで

京都北部の店舗をとりまとめている船戸一晴さん。

何と船戸さんは本業が薬剤師でありながら、

趣味が高じてDJやラジオパーソナリティも務めるタレント性に溢れた存在。

肩書きがありすぎて、この方は一体何者なのだろう!?と

話を聞く前から興奮する高校生たち。

弥栄ゆう薬局内観.jpg

ゆう薬局弥栄店の様子。

 

〈船戸さんへのヒアリング〉

船戸さんへヒアリング.jpg

 

「船戸さんは、京丹後ご出身なんですね。

しかも峰山高校の卒業生!先輩だ。」

 

「そうそう。峰高の軽音楽部出身です。当時から音楽や文学が好きでした。」

 

船戸さんは、大学進学を機に京丹後市を出て卒業後は

薬剤師としてゆう薬局に就職。

京都市内の店舗で数年間働いておられました。

 

「いずれ地元に戻ろうと考えておられましたか?」

 

「実は僕の場合、色々と事情があってどこかのタイミングでは

地元に戻らないといけなくなることが初めから分かっていたんです。

正直ネガティブな気持ちを抱いていましたね。

都市部に出ると地方にはない尖った本屋があったり、

時間を気にせずご飯や屋さんを巡ったり、

お気に入りの映画を沢山放映してくれる

センスの良い映画館があったり...と、やっぱり楽しくて。

いずれこの生活を手放さなければいけないのか...、と

気持ちが落ち込む時はありありました()

 

ゆう薬局が新たに京丹後市に店舗を出すタイミングで

船戸さんは地元に戻ってこられました。

初めこそマイナスな思いを抱えての帰郷だったようですが、

ある出来事が転機のきっかけになったそうです。

船戸さんへヒアリング②.jpg船戸さんへヒアリング④.jpg

「高校時代の友人がFMたんごで働いていたのですが、

文化紹介のコーナーで音楽や本についておすすめのものを

紹介してくれないか、と頼まれたんです。

カルチャーが好きだとは話していましたが、まさかこんな風に

ラジオで話すことになるとは思ってもいませんでした。

さらにこれがきっかけとなって、新しい繋がりが生まれることになるんです。

ラジオを聞いてくれていたとある書店のオーナーが

僕の話を面白がってくれて、ぜひお店の一角に

僕のオススメ本のコーナーを作ろう、と持ちかけてくれて。

都市部だったらきっとこんなことは起きなかった」

 

「それはすごいですね!ではこちらに戻って来られてから、

徐々に地元が楽しいな、と思うようになったのですね。

因みに船戸さんは丹後のどんなところが好きだと感じますか?」

 

「そうですね。この地域は、何か新しいことに挑戦したいと

思ったときにその想いを寛容に受け入れて、一緒に面白がり、

応援してくれる気質があると感じています。

僕も気がつけばこうして色々と好きなことを自由に

やらせてもらってるんですけど、こんなことが好きだ、とか、

あんなこと出来たら楽しそう、みたいなことを話していたら、

それ面白そうだから一緒にやろう!とか、それやったら○○さん紹介するよ!という風にどんどん繋がっていく。

広い心で受け入れてくれる人が地域に沢山いることで

救われている部分が多くあるな、と思います」

 

また船戸さんは、都会ほどに充実していないところが

逆にこの地域の良いところでもあると捉えています。

 

「今はご時世的に難しいですけど、こんな状況になる前までは

地元の何人かの人たちが中心になって大々的に

ハロウィンパーティーなんかを開催していたんです。あの、アピアで。

都会みたいにクラブのような施設がないから、

ないんやったら自分達で作っちゃおう、と。

物理的に存在しないからこそ、自分達で考えて

好きなように工夫出来る余地がある。僕はそこでDJをしました() 

それぞれの得意分野を持ち寄って、作り上げていく過程が

とても楽しかったです。

それに何か一つでも得意分野があるとその見せ場は地域の方が

圧倒的に多いんじゃないかな。人が少ないからこそ競争率も低い。

活躍できる機会が沢山あるよ!」

 

無いからこそ、作る。この発想は確かに面白い。

船戸さんへヒアリング⑤(遠目).jpg

「では逆に京丹後市が不便だな、と感じる部分はどんなところでしょうか?」

「そうですねー、やっぱりちょっとマニアックアな書籍や映画が

好きな者としては都市部では手に入るものがこちらでは入らない、というところはちょっと不便に思うかな。

後はお酒を飲むと帰れない問題() 

奥さんと交代で運転するようにしています」

 

「なるほど。では京丹後市にあったら良いな、と思うものはありますか?」

 

「映画館や本屋、楽器店なんかは欲しいと思うね。

文化的なものを継承していくことも大切ですよね。

スポーツとかもそうですけど、そういうものって人生を

豊かにしてくれるものだから。

だけど音楽やスポーツをする人口が縮小すれば、

文化的施設が地域に定着するのは中々難しい...。

少ない人数でもどうやって維持していくのか、という体制を

考えていく必要はあるかもしれないね」

 

「確かに。僕もテニス部なんですが、人数がすごく少ないんです。

廃部と背中合わせな訳ですから、常に危機意識があります...。」

 

そうだね、少子化問題を最も深刻に感じるのは

自分が取り組んでいるものをやっている人口が格段に少ないと

実感する時かもしれないね。

 

さぁ、ここからが高校生達が一番聞きたいと思っている質問。

そう、幸福感について。

 

「船戸さんの生きがいや、幸せに感じることについて教えてください。

実際に京丹後市で生活をされていてどうですか?」

 

「まずはこうして仕事ができて、好きなことができる環境に

幸せを感じています。実は僕は幼い頃、小児喘息に悩まされてきました。

それが原因でよく入退院を繰り返していて、自然に医療従事者の方に

目がいくようになりました。その時の自分は、まさかこんなにどっぷり

地域医療に関わることなど想像していなかったのですが、

進路を考える際に一番に浮かんだのは、自分がしんどかった時に

支えてくれた医療従事者の人たちの姿。

そして丹後に戻ってきて、こうして地域医療に関わることでその可能性、

面白さを理解するようになりました。

薬局がもっと開いた場所であったなら、例えば気軽に買い物に行く、

映画館に行くのと同じような感覚で薬局に通ってもらう。

気軽に健康相談ができたり、何気なく不安な気持ちを吐き出せたり、

特に身体の不調がなくてもちょっとあの人の顔見に行こかな、という

関係性が地域の中にできると何かあった時に異変に早く気づきやすくなる。

あれ、あの人最近見ないなぁ、というように。

後は最近、DJとして福祉のイベントに参加させてもらったんですけど、

すごく面白かった。普段はあまり交わらない線が

音楽を通して新たな関係性が編まれていく瞬間に立ち会えた。

地域にがっつり浸かっているからこそ、

日々新しい出会いと発見があって毎日が新鮮です」

 

「素敵ですね。毎日充実しているのが伝わってきます。

人が少ないからこそ顔の見える関係作りができるんですね。

好きなことで新しい出会いを引き寄せているのも良いな、と思います!」

 

「ありがとうございます! 毎日楽しいですよ!」

 

「では、最後に何か船戸さんから高校生に伝えたいことはありますか?」

 

「好きだな、これをしているときは自分らしくいれるな、心地良いな。

そう思えるものを大事にしてほしい。自分が大事にしていることを大切に。

目の前の課題をこなしたりすることで忙しい日々を送っていると思うけど、

自分自身がどうありたいか、どう過ごしたいのかを一度考える時間を

持てたら良いね。

 

どんなことでも良い。好きなものや楽しい、面白いと思えるものが

一つでもあれば、大丈夫なんじゃないかって僕は思います。

いつの時代も好きなものを語っている人の姿は生き生きしていて、

かっこいい。

 

そしてそういったことを語らい合えたり、

共有できる関係性が地域にあること。

これからも京丹後市には緩やかに誰かが繋がっているという地域で

あってほしいと思っています。

多世代の人たちが緩やかに繋がれる場所や環境、

機会がある地域は健全ですから。

だから、いま皆さんがやっている探究の授業はすごく良い時間ですよ。

応援しています、頑張って下さいね!」

 

何と素敵な応援メッセージ。

高校生たちも身を乗り出して、夢中になって聞いていました。

 

このあと、せっかく薬局まで足を運んでくれたから、と

現場案内までしてくださいました。

貴重な社会見学。

薬剤師仕事場見学①.jpg薬剤師仕事場見学②.jpg

薬局に新しく導入されている機械のことや、薬剤師の仕事、

地域医療における薬局の役割など様々なお話をお聞かせ頂きました。

薬剤師仕事場見学③.jpg

濃厚な1時間はあっという間に過ぎ去ったのでした。

船戸さん、本当にありがとうございました!!

 
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