学校生活School Life
今回の記事も、前回の記事に引き続き3年生の探究プロジェクトについて
紹介したいと思います!
地域と積極的に繋がりを持ちながら、自分の探究テーマを
深めている高校生たちの奮闘記をご覧ください。
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◎僕の知らない地域の魅力
~インタビューを通して、地元の魅力を探る~
ある高校生は、自分の知らない京丹後の魅力を知るべく、
地元出身者や移住者などに沢山インタビューをする、という行動に出ました。
でも、実はこれ、彼にとってはとても大きな挑戦だったんです。
彼は極度の人見知り。できることなら、知らない人との接触は
避けて通りたい。最初にお話しをしたときにこんな事を話していました。
それでも彼は、あえて探究コースを選んだ。
なぜその選択をしたのかについての具体的な理由は聞かなかったけれど、
きっと彼の中で「変わりたい」という気持ちがあったんだと思います。
インタビュー先に選んだのは、未来チャレンジ交流センター「roots」
ここに行けば、必ず1人~2人は相談員が常駐しているし、
地域の人の出入りもある。
インタビューをするには、絶好の場です。
ですが、初めての場でいきなり知らない人に対してインタビューをするのは
ハードルが高い。だから、1回目の訪問は、彼にまずrootsのことを
知ってもらうことと、知らない人と話しをする、という場に慣れてもらうことを
目的にしました。
初対面の相談員を前にすると、初めは緊張して中々話しを切り出すことが
できなかったのですが、それでも時間をかけてゆっくりとぽつり、ぽつり、と
自分のことをお話ししてくれるようになりました。
「僕、中学の時は陸上部に入ってたんです。
別に運動が得意じゃなかったんですけど」
そんな風に話す彼に理由を尋ねてみると、
一番自分が苦手とするものだから、というのです。
苦手なものを克服するために、あえて得意なものを選ばなかった。
部活は大抵、関心のあるもの、好きなもの、得意なもので
選ぶと思っていたので、彼の答えを聞いたときに
目からウロコでした。そんな選び方もあったのか、と。
それを知ったときに、彼がなぜ苦手とする探究コースを選んだのかが、
少し理解出来た気がします。
そして、日をあけて2回目の訪問。
この日は、いよいよインタビュー。
東京から移住をして、まだ2ヶ月のroots相談員が一人目。
緊張して、ちょっと堅い雰囲気からスタートしたインタビュー。
「この地域の魅力は何だと思いますか?」
そう問う彼の質問に対して、相談員は
「地域にどんな人が住んでいるのか、ここにいれば顔まで分かること」
と答えました。
自分の生まれた地域には、そんな繋がりは無かったし、それが無かったから
地元と自分の距離はいつも遠かった。
だから高校生の頃は、自分の生まれた場所を自分ごととして考えた事なんて
無かったよ。
地元は、自然が豊かで静かなところが住み心地が良いと感じていた
彼にとって、「人との距離が近い」という回答は、少し衝撃的であったようです。
そして、3回目の訪問。
この日は、前回聞いた相談員とは別の相談員と、偶々rootsを訪れていた
地域の方へインタビュー。
3回目ともなり、彼の方も少し慣れてきたのか、前回に比べて
和やかな雰囲気でスタートしました。
驚いたのは、彼自身の変化。
前回のインタビューの際は、準備してきた質問を読み上げることで
精一杯の様子であった彼が、何とこの日は自分から雑談をしたり、
準備をしてきた質問に関する回答に対して、また新たな質問を投げたり、と
最初の消極的な彼の姿からは考えられないほどの激変ぶり。
最後には、私に向かって「何だか自信がついたように思います」と
話してくれました\(^o^)/
こういう瞬間に出会う度に思うんです。
地域コーディネーターをやっていて良かったなぁ、と。
彼のことを知っていき、チャレンジしたいことをどのような形で
整えることが、彼にとって一番良いのか、
どんな風に背中を押してあげるのが、彼の成長に繋がるのか。
沢山考えて、アレンジして、場を整えて、人と繋ぐ。
勿論、上手くいくことばかりではないけれど、
ちょっとしたきっかけで成長する、顔つきが良くなる、
一生懸命チャレンジする高校生たちの姿が、何よりのエネルギーになる。
地域の人たちも、きっと同じですよね?
少しのきっかけでこうして変わっていく様子を隣りで感じることが
できるのは、本当に嬉しいんです。
だから、ありがとう。
彼が勇気を持って、一歩踏み出してくれたから
「社会」の入り口に立つことができました。
きっと怖かったでしょう。不安もあったと思います。
それでも、その恐怖心に抗って繋がった「社会」の中で
彼のこれからの糧になるようなものを何かしらつかみ取ってくれていたのなら、
こんなに嬉しいことはありません。
社会に出てみると、それはもう、急流の中にいるようで、
毎日何かに必死に捕まっていないと流されてしまいそうになります。
ですが、多様な価値に触れ、人を知り、己を知るということが、
社会の荒波に流されないようにするための土嚢(水の流れをせき止める道具)の
役割を果たしてくれるのではないか。
そして、その土嚢を社会に出る前になるべく多く備えておくことが
「自分らしく生きる」という選択肢の幅を広げてくれるのではないか。
私はそんな風に思います。
だから、きっかけの種をたくさん蒔きます。
高校生たちの日々の小さな変化をこうして大切にしながら、
また毎日を過ごしたいなぁ、と思うのです。