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【京丹後市民の幸福度~このまちの魅力と可能性~vol.5〈甲斐少夜子さんへのヒアリングと、これまでの振り返り〉】

 


みなさん、こんにちは!

あっという間に3月も半ばが過ぎました。

 

段々、暖かくて気持ちの良い日が増えてきましたね。

春の訪れは、目の前!

また新しい出会いの季節がやってきます。

それを楽しみに年度末、最後まで元気いっぱい駆け抜けましょう!

 

さて、前回の記事から間があいてしましましたが、探究のお話の続きです。

この記事は、これまでたくさんのシリーズで綴ってきた

「市民の幸福度から京丹後市の未来を考える」グループの取組についての

お話しです。


最後までお付き合いいただけますと幸いです。


※これまでの記事

vol.1 「ゆう薬局薬剤師/船戸さんへヒアリング」

vol.2 「Tangonian代表/長瀬さんへヒアリング」

vol.3 「丹後暮らし探求舎相談員/坂田さんへヒアリング」

vol.4 「Tsuchica代表/岡村さんへヒアリング」

 

これまで、地域で活躍する4名の方のお話を聞く中で、

徐々に彼らの知らなかった京丹後という「まち」の姿が見えてきました。

この地域には何もない、いずれ出てしまったら恐らく戻ることはないだろう。

メンバーの中にはそんな風に考えている人もいました。

ですが、少しずつこのまちの「可能性」や「魅力」、

「面白さ」が見えてきて、彼らのまちに対する想いに

変化が生じてきていたのもまた事実。

 

そしていよいよ、最後の5人目の方へのヒアリングです。

高校生たちが最後にお話しを聞かせて頂いたのは、

京都府地域アートマネージャーの甲斐少夜子さん。

広島県出身の甲斐さんが京丹後市に移住したのは20195月。

京都府アーティスト・イン・レジデンス事業の地域コーディネート、

アート企画の運営をメインに活動されています。

 

今回の記事は、これまでヒアリングしてきたことについての総まとめとして、

高校生たちの振り返りの様子を中心にまとめていきましょう。

 

***

 

高校生1「僕たちは今まで5人の地域の方にお話しを聞いてきたけど、

最後に甲斐さんから聞いた話で、今まで聞いてきた丹後の話が

全て繋がった気がしたよね。」

 

能勢「繋がったっていうのはどういうこと? 何が繋がったんだろう?」

 

高校生1「丹後という地域の全体像が見えてきたというか。

例えば甲斐さんは、移住者として丹後に来られた、ということだったけど、

移住のきっかけとなったのは、織物の産地であったから、

というお話しをしてくださいました。

これを聞いたときに長瀬さんから聞いたお話しを思い出したんですよね。

長瀬さんは丹後の歴史のお話をしてくださいましたが、

昔からこのあたりではものづくりが発展していて、

"手仕事"によってまちが支えられていたんだって。」

 

能勢「なるほど! 文化的に丹後が"ものづくりに強いまち"なのではないか、

という仮説の裏付けが出来たわけだね。」

 

さよ子さんへ⑦.JPG

高校生2「実際、僕の祖母も昔機織りをしていて、

織機が奏でる音・リズムを日常の中で当たり前に聞いていました。」

 

能勢「ものづくりが常に隣りにあった訳だ。」

 

高校生3「これまで色々な方にお話しを聞いていて、

みなさんが丹後を住む場所として選んだ理由にも共通点がありました。

まちとして不十分、足りていないからこそ、

作っていく面白さを感じるということ。

"足りないとは、裏を返せば"余白"のことで、

それはまちのポテンシャルとも言える。

皆さんはそれぞれの分野でクリエイティブな活動をされていたのですが、

地域自体に昔から脈々と受け継がれてきたクリエイティブな要素が元々あって、

そこに魅力を感じた人が、またこの場所でクリエイティブな活動を起こしてる。

地元の僕たちは地域を今までそんな風に見たことは無かったけど、

これはとても面白い発見だったよね。」

 

さよ子さんへ②.JPG

※ここから先は、高校生1を「K1」高校生2を「K2」高校生3を「K3

能勢を「N」と表記させていただきます。

 

K2「そうだね。そもそも丹後にこんなに

色々な分野の人たちが集まっているんだ、ということにも驚いた。

確かに自然は豊かであると思っていたけど、

それ以外の特徴があるのかなんて考えたこともなかったし。」

 

N「そういえば今回、みんながお話しを聞いた人たちも

職業や立場は異なったけど、

何か共通していることがなかった?」

 

K1「船戸さんは薬剤師でDJもしている面白い人だったね。

見学させていただいた薬局も"いわゆる薬局"って感じの場所ではなく、

オープンな雰囲気だった。"地域の人たちと緩やかに繋がっていける場所" 

"病院だと出向くこと自体にハードルを感じるけど、

健康相談等に気軽に訪ねていける場として、地域に開いた薬局作り"に

力を入れている、と話されていたね」

 

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K2「長瀬さんは、地域内外の人たちの関係を結ぶためのツアー企画なんかを

されていたね。」

 

あるとくんチーム×長瀬さん②全体(ヒアリング場面).JPG

K3「岡村さんは、プログラミングと英語教室を子どもたちのために

開いていたね! 

今後の展望として音楽スタジオを作って、

分野を超えたアーティスト達の拠点となるような場を生み出したい、

というお話も面白かった!」



あるとくんチーム×岡村さん(岡村さんサイド②).JPG

K1「坂田さんは、元々地域に住んでいた人も移住者も

分け隔て無く関わり合えるような場の運営をしていたよね。

まちまち案内所は、それぞれの得意分野で

自己表現できるような設計になっていた。」


IMG_2091.JPG

 

K2「甲斐さんは、外から来るアーティストと地元の人を繋ぐお仕事をされていたよ」

 

さよ子さんへ⑩.JPG

N「おっ! 何だか共通点が見えてこない...?」

 

K3「もしかして、みんな誰かと誰かを繋げてる...?」

 

N「そう!まさに。分野は異なるけれど、

どの人も何かしら偶発的な出会いが生まれるための何かしらの"場"を

地域に開いているよね。」

 

K1「確かに"場"というのが、キーワードになっていますね!」

 

K2「地域においてとくに今、"場"の設計はとても重要な意味を持っていそうだね。」

 

N「でも"場"といっても、とりあえず開けば良いって言うわけでもなくて、

大切なのはそこが"どんな場であるのか"誰のための、

何のための場所なのかについて、運営する側もそこを利用する側も

共通認識を持っておく必要がありそうだね。」

 

K1「誰もが気軽にふらっと寄れて、

居場所となる場が地域にあると良いよね、という話は

実は〈つくまち〉のワークショップの中でも、他の参加者の方々と一緒に話しました。

老若男女問わず、その場を訪れる人が好きなように使っていて、

時々そこで出会った人たちが繋がって何か新しいことが生まれていく...

というような場所が地域にあると、そこが中心となって

まちが活気づいていくよね、という話をしました。」

 

N「なるほどね。因みに峰山高校の近くにrootsという施設があるけど、

そこは〈高校生と地域の方の交流拠点〉というのが

コンセプトになってるよね。

そこはみんなにとっては"誰もが気軽にふらっと"寄れる場には、

なってないということかな?」

 

K2「正直、一人で入るにはかなり勇気がいりますね...。

ハードルが高いというか。

 よっぽど積極的な性格であるか、本当に相談したいことがある、

などでなければ、ふらっとは立ち寄りにくいです...。」

 

K3「僕も同感です。外から見ていて、何か起こっているんだろうなぁ、

何だかすごいな、と気にはなるのですが、そこに入っていくまでの勇気はないです。」

 

N「そうか、みんなの目にはそんな風に見えていたのね!

 rootsは寧ろ"場の目的を掲げない"ことを売りにしていて、

そこを使う人にどう利用するのかについての判断を委ねているんだよね。

その人が"主体的"であることを最も重要視しているから、

その人がその人らしくいれる過ごし方をしてもらいたい。

ただ何もせず座っているだけでも良いし、友達や地域の人とおしゃべりをして

過ごしてもいい。

図書館代わりに使ったり、自習するためのスペースとして利用してもらってもOK

もちろん、何か地域の人たちと一緒にプロジェクト活動をしたい、

何かに挑戦したい、という理由で使ってくれている人もいるよ。

う~ん。でも、"ふらっと気軽に"入れない感じがあるんやろな。

それはどうしてだろう?」

 

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ポールWS⑭.JPG

K1「何だかどうしても、入ったら何かにチャレンジしないといけないのかな、

という風に構えちゃうからかもしれません。

外から見てると高校生も大人も混じって話合いをしていたりして、

自分には及びじゃないや、って思っちゃうのかな。」

 

K2「確かにそれは思うかも。一人やったらなおさら入りづらいな。」

 

N「じゃあ、友だちとなら入れる?」

 

K3「はい、それなら大丈夫です。」

 

K1「そうですね。やっぱりその場所のことを知っている友達が一緒だと、

安心感があります。僕も探究の関連で、何度かrootsに足を運びましたが、

一度入ってしまえばすごくアットホームな場所だったので、驚きました。

多分、それを知れば2回目からは大分ハードルが下がると思います。

でもとくに理由が無ければ、どうしても構えてしまうので、

やっぱり友達と行く、っていうのが一番行きやすいかな。」

 

Nrootsとしても、発信がどうしてもプロジェクト活動をしている様子を

取り上げることが多いから、そんなことばかりしている訳じゃない、

プロジェクトをするためだけの場所じゃないということを

定期的かつ継続的に伝えていかないといけないね。」

 

K3「でもこのヒアリング調査を通して、

たくさんの大人の方が僕たちのことを応援してくださっている、

ということも分かった。

自分が考えていることを思い切って発することさえできれば、

応援してくれる人が現れて、物事が進んで行きやすくなる、

丹後ではその可能性が高い、ということも知れたので、

自分達から発信することや地域に出て歩み寄る努力をすることも

必要なんだと思う。」

 

N「そうだね。多世代間の"ゆるやかな関係性"が、

多様にできてくると良いね。

きっと地域はもっと面白くなるよ。

何はともあれ、5人分のヒアリングお疲れ様!

すごい情報量だから、これからまとめていくのが大変だと思うけど、

最後まで頑張ろう。」

 

K2「正直に言うと、初めは授業のための情報収集というのが

この活動の目的だったけど、ヒアリングをするうちに、

次はどんな話が聞けるのだろう...!?と段々楽しくなりました。

普段出会うことのない人たちとの出会いによって、

地元に対する見方もポジティブな意味で変わりました。」

 

K1「高校を卒業したあと、地元に帰ってくるという選択肢は

自分の中でなかったのですが、

戻ってきても案外楽しく暮らせるのかもしれないな、

という可能性を見せてもらった気がします。

沢山の人と出会い、自分の意見や考えを伝え、

改めて自分のことや地元について見直した体験は

何よりも価値があったと感じました。」

 

K3「丹後には何もなくて、面白みのない地域であると考えていたけど、

それは自分達が地元のことを知らなかったから、

そういう風に感じていただけだということが分かりました。

勿論、高校生の自分達にとっては行動範囲も限られてしまうし、

そうでなくても学校や部活、習い事などで、忙しない日々を過ごしてるので

地元の事を知るって結構難しい事だと思います。

これは、他の高校生たちにも同じ事が言えるのではないか、と思います。

だからこそ、今回自分達が知った今まで知らなかった

丹後の魅力や可能性について、

友達や後輩たちに伝えられるような発表にしたいな、と考えています!」


あるとくんチーム×岡村さん(高校生のみ②).JPG

 

***

 

さぁ、ヒアリングの後の全体の振り返りはいかがでしたでしょうか。

丹後のことを少しずつ知る度に、

高校生たちの心情に少しずつ変化が生じていることが分かります。

 

実際にフィールド(地域)に出かけ、人に出会い、価値に触れ、

歴史や文化、生きた知恵を受け取る。

 

今回、高校生たちの身に起きたことは、

彼らにとっては不本意であったかもしれません。

授業のための探究だと思って始めた活動が、思いがけず23転し、

新たな出会いをもたらしてくれたことによって、

少しずつ彼らの考え方が変わっていきました。

 

この"思いがけず"とか"予想外の"出来事に出会えることが、

探究の面白さだと思います。

所謂「バイ・アクシデント」というものです。

 

考えてみれば、人生というのも「バイ・アクシデント」の連続。

自分では予測できない出来事や、

偶然の出会いによって想いもしなかった道が出現し、

自分の生き方そのものが問われることになる。

 

その分、揺らいだり、戸惑ったりすることも出てくるでしょう。

でもそれは、あなたの成長。

 

これからも、皆さんには社会に対して怖がらずに

開いていてほしいと願います。

そして、色々なものを見て、感じてください。

その中で、あなたの心が最も震えるものを選び取ってください。

 

心が震えたら、自然と手足は動きます。

それがあなたの最初のチャレンジ。初めの一歩。

探究が「自分ごと」になる瞬間です。

 

「バイ・アクシデント」が豊富な探究を、ぜひ一緒に楽しみましょう!

 
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