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【京丹後市民の幸福度~この地域で生きていくということ、そしてそこから見える可能性~〈岡村芳広さんへヒアリング〉vol.4

 



「京丹後市民の幸福度」から未来の京丹後市の在り方について

考える活動をしている高校生たちのお話も

まだまだ続いていきます。


※これまでのヒアリング調査の様子は以下の記事をご覧下さい。

~VOL.1

~VOL.2

~VOL.3

 

今回お話を伺ったのは、一般社団法人Tsuchica代表理事の岡村芳広さん。

岡村さんは世界の動向を見つめ、これから世界で活躍出来る人材を

輩出するためのプログラミング教室や英語教育を

子どもたちに向けて行われていらっしゃいます。

 

丹後というローカルな場所で、最先端の事業に取り組む岡村さんとは

一体どのような人なのでしょうか。

そしてどんな想いを持ってここで暮らしていらっしゃるのでしょうか。

岡村さんを通して見えてくる丹後という地域は、

一体どんな姿をしているのかを探るべく、

今回もじっくりヒアリングをしていきます。

 

****

あるとくんチーム×岡村さん(岡村さんサイド①).JPG

――僕たちは、もともと人口減少の問題に歯止めをかけるべく、

どうすれば京丹後市に住みたい、住み続けたいと思ってもらえるのか、

その方法や仕組みを考えていましたが、

将来的に人口減少をしていくことは明らかであり、

その事実はどうやっても変えられないということから、

テーマの方向性を少し変えて「人口が減っても持続可能な地域の在り方」を

考えることにしました。


そこで現在、地域の中で独自の軸を持って活躍されている方々から

「丹後で生活することで得られる幸福感」についてお話をお聞かせいただき、

僕たちなりにこれから京丹後市がどんなまちづくりを

目指していくべきなのか、提案したいと思っています。

 

それ、めちゃくちゃ面白いテーマだね!

人口減少していくことを前提として、地域の在り方を見直していく、

また今後の住民の幸福について考えていくことは、

先端の研究だと思います。

だって、まだその状況を誰も経験していませんから。

君たちがどんな答えを導き出すのか、僕自身もとっても興味があります!


 

――そう仰っていただけて幸いです。

これまで、ゆう薬局の船戸さん、Tangonianの長瀬さん、

そして丹後暮らし探求舎の坂田さんにお話を伺ってきました。

それぞれ異なる分野の方々ですが、丹後での生活を楽しまれている様子が

伝わってきて、少しずつですが丹後地域の面白さが

分かってきたような気がします。

 

とても濃いメンバーにお話しを聞いているね()

その人たちにお話しを聞こうと思ったのはどうして? 

自分達で選んだの?

 

――地域コーディネーターの方に、地域で楽しく・面白く

暮らしている人たちの情報をもらいました。

30人近く教えてもらったのですが、プロフィールを読ませて頂いて、

その中からお話しを聞いてみたいな、と思った方を5人選びました。

岡村さんもその一人です。

僕たちはまずI・Uターンの人たちに注目しました。

仮説として、その方達は一度地元を出た、

もしくは別の場所で生活をしていたのに

丹後での生活を選択されたということは、

この地域に魅力を感じていらっしゃるからだと考えました。

そういう方たちにお話を聞くことで、

丹後地域の可能性を見いだせるのではないか、と思ったのです。

 

なるほど。その一人に選んでくれて光栄です。

とても面白い考え方をするね! これまで3人の方にお話しを聞いて、

何か気づいた事はあった?

 

――みなさん共通していたのは、

「丹後は新しいチャレンジを応援してくれる人が多い」ということ。

また「外から来た人も寛容に受け入れて、一緒に面白がる雰囲気がある」と

皆さんが話されていました。

 

いい気づきがあったね! 

僕もまた後で詳しくお話をしますが、京丹後市に移住を決めた一番の理由は

「人の良さ」だったんだよね。

 

――そうだったんですね! 

これから色々なお話をお聞きするのが楽しみです。

それではまず、岡村さんの経歴を簡単に教えていただいてもよろしいでしょうか。

 

僕の生まれは北海道だけど、その後すぐに亀岡の方に引っ越しをしました。

だから育ちは亀岡です。その後、東京やボストン、シンガポールなど

様々な場所を転々とし、子どもが生まれたのを機に

家族とともに京丹後に移住しました。

海外歴8年というのを活かして、プログラミング×英語を

地域の子どもたちと実践しています。

また外の人が京丹後市での移住生活を体験できる施設

「オカモノヤシキ」も運営しています。

国内外問わず丹後を訪れる旅行者と地域との橋渡し役となる

「案内人」も勤めます。

あるとくんチーム×岡村さん(高校生のみ①).JPG

――わぁ、何だか情報量がいっぱい!(笑)

日本の都市部や海外などでの暮らしも経験された後に京丹後に来られたのですね。

京丹後市のことは、以前からご存じだったのでしょうか。

 

はい。

16歳の時に丹後を初めて訪れたのですが、すぐに好きになりました。

そこから大学生になって、頻繁に遊びに来ていましたね。

ですから元々すごく良い地域だな、ということは知っていたんです。

 

――そうでしたか。京丹後への移住はどのタイミングで決意されたのですか。

 

子どもが生まれて、自分が子育てに携わるようになった時にこの環境下で育てたいと思って移住を決めました。

 

――それは子どもたちにとってとても環境が良かったということですか。

 

そうです。

まず人がすごく良かった。

この人たちと一緒に過ごすことが出来れば、僕自身の人生も豊かになるし、

大人が楽しんでいる、その姿を子どもたちにも見てもらいたかった。

まず自分が「一緒に仕事をしたい人がいるかどうか」というのは、

その町に住みたいという

大きなモチベーションに繋がると思います。

そして子育てをする環境としてもベストだと思いました。

自然豊かで家から海岸まで徒歩で行ける。自然が「遊び場」ってすごく良いな、と。

 

――なるほど。確かに僕たちも子どもの頃は外に出て遊んでいました。

何だかそれがすごく楽しかったという記憶は残っています。

実際に丹後に移住されて、ここで生活をしてみてどのように感じましたか。

 

いやぁ、すごく良いですよ!

実際にここに来てみて、想像以上に外から来ている人も多いことに気づきました。

僕がここに来た頃あたりから、SNSなどで色んな分野で活動している人たちが

繋がっていって、何が起こっているのかが「見える化」されてきたんですよね。

まちがどんどん動いていっている様子が分かって、とても面白く感じました。

あ、この地域の未来は明るいな、って思いましたよ。

 

――色々な人たちが繋がって面白いことが起きている、

というお話は他の方からのヒアリングでもよく耳にしました。

僕たちは普段そういった方々と繋がる機会がほとんどなかったので、

自分達が住んでいる地域でそんな動きがあったのだ、

ということに驚きを感じています。

 

そうだよね。

こういう地域と繋がるような授業などがないと、中々気づけないよね。

だからこそ、探究の授業はとても重要だと思うよ。

こういった機会を上手く使って、地域の魅力を知って欲しいと思うし、

色々な考え方の人たちに出会って欲しい。

 

――では、丹後にいて不便だな、と感じることはありますか。

 

うーん、生活に関しては今のところ思いつかないな()

少し前までだと交通網が発達していなくて、

どこへ行くのにもすごく不便だったけど、今はそこまで負担にならない。

それに物流も発達したから、どこにいてもネット環境さえあれば

大抵欲しいものは手に入る。とくに困ってることはないかな。

 

あ、あと物価も安い!

この前(昨年9月~10月にかけて,

シンガポールから5人の方がホームステイされたんだけど、

みんな「圧倒的に物価が安い!」と驚いていました。

 

――へぇ! そうなんですね。

因みにこの地域の好きなところや好きなことを教えてください。

 

そうだね、やっぱりまずは子どもたちと海辺で遊ぶ時間が好きです。

都会から移住してきた家族からよく耳にするのは、

「子どもを遊ばせる場所がない」ということ。

癒しの環境が目の前にあること。これは本当にいい。

 

――やはり子どもたちがのびのび育つ環境としては、

すごく良い条件が揃っているのかもしれませんね。

そう言えば岡村さんは、子どもたちに英語やプログラミングも

教えられているということでしたが、

なぜその教育に力を入れているのでしょう?

 

これからの時代に必ず必要になると確信しているからです。

とくに将来はITの時代になっていくでしょう。

日本にいながら海外の仕事をどんどん受注する、

という働き方が当然のように増えていくと思います。

とくにコロナが流行してから、急速にネット社会が発達しました。

 

今までは世界の限られた人たちだけがシェアしていた「どこでもドア」を

漸く世界中の人々が持つようになった、という状況が

ここ数年で起こっている。

誰もが「どこでもドア」を扱える環境が整ってきた。

 

そんな世界で武器になるのは、英語とプログラミングなんです。

あるとくんチーム×岡村さん(岡村さんサイド②).JPG

――なるほど。とても説得力がありますね。

僕たちがこれから身につけておくべきスキルは何だと思われますか。

 

この流れで言うと、やっぱり英語とITについての知識はつけておいた方が良いよね。

あとは、常に世の中に対して好奇心を持ち続けること。

ここ23年という短いスパンだけで見ても分かるとおり、

世の中はすごいスピードで変化します。

新しい"常識"がどんどん入ってくる。

そういったことに敏感になって、常に自分の知識を

アップデートする習慣をつけておかないと時代の流れから取り残されてしまうよ。

 

――お話を聞いていて、英語やメディアリテラシーといったものを

身につけなければいけない理由が身にしみて分かりました。

正直、英語の授業が難しく、課題も多いし、やる気が出ないなぁ......、

と思うことがあったのですが、今のお話を聞いてちょっと英語頑張ってみよう、

と思えました!

 

そうだよね。

何でもそうなんだけど、今時間をかけて一生懸命学んでいることが、

どんなことに役に立つのか、その知識はどのように活用できるのか、

何のために学ぶ必要があるのか。

自分の中できちんと理解できていれば、

必然的にモチベーションに繋がると思うんだよね。

「やらされている」と思ってしまった瞬間、それは身につきませんから。

考え方としては、小さい積み重ねでいいから、

1つやれば今の自分より1つレベルが上がっている、

続けていけば"最強"になる、スキルアップする、という風に捉えたら良いかも。

ゲーム感覚で楽しみながら続けていたら、

何だか知らないけど力がついていた、というのが理想だよね。

 

「人生、ドラクエだ!」というのが僕の格言でもあるんだけど、

一つ一つクリアしていった先に見える景色はきっと素晴らしいものだと思います。

 

――「人生、ドラクエ!」

それ、とても面白いですね。

ゲーム感覚で知識を身につけて自分のスキルアップを図る。

学ぶ意義を自分の中でちゃんと理解していたら、

今までつまらないと感じていたものも見え方が変わってくる気がします!

 

そうそう。本来「学び」というのは、とても面白いものですから。

 

――では、岡村さんのこれからの展望をお聞かせいただけますか。

 

基本的には、丹後の中に様々な「場」を作っていくことに

チャレンジしたいんだけど、

1つは子どもたちの身近な場所にモノづくりができる場所を作りたいですね。

後は子ども、大人関係なく学びの場を設けたい。

そして新しい仕事もつくっていきたいね。

 

新しい産業に携わる人が地域に参入すると、「まち」ができる。

事例として調べてみてほしいんだけど、

例えば徳島県の神山町というところは、

ITのまちとして環境、設備を整えたことによって、

まず仕事ができ、その仕事が人を呼び、

さらにその人が別の人を呼ぶという理想的な循環が生まれました。

 

神山町の事例を見ていて分かるのは、

「地域に何があるかではなく、どんな人が集まるか、

そして、クリエイティブな人が集まる場をつくることが重要」ってこと。

 

――この活動をしていく中で、色々な方からお話しを聞いてきましたが、

「場づくり」というのは"よい地域づくり"において

とても重要なキーワードであると分かってきました。

「誰かを応援できる場」「偶発的な出会いを生む場」

「面白いことが生まれる場」

こういった環境を地域の中にどう仕掛けるのか、

ということを考えている人たちが地域の前線で

チャレンジしていることが見えてきました。

 

まさに! そういった意味で京丹後はとても面白い地域だと思います。

人を魅せるものが地域にあれば、人は自然と集まります。

 

そうそう、場づくりで思い出したけど、もう一つ作っていきたい場があるんだ。

実は、最近京丹後を「音楽のまち」にしたいと考えているんです。

 

――え!?音楽ですか!?

僕、軽音楽部に入っていて音楽がとても好きなのですごく興味があります。

 

おおお! それだったらぜひこれから一緒に作りましょう!

音楽をしているアーティストがちょくちょく移住してきているので、

作曲やライブなどが気軽にできたり、

色々なアーティストたちのコラボレーションが生まれるような

スタジオづくりにも挑戦していきたいですね。

 

――とっても面白そうです!!

関われそうなところがあれば、ぜひお手伝いさせてください。

 

それはとても嬉しいですね。一緒にワクワクすることをやっていきましょう!

 

****

 

時代の変化に柔軟に対応し、世界の前線で戦える人材になるために

英語とプログラミングの重要さを教えてくださった岡村さん。

 

そんな岡村さんには、密かな夢があります。

それは、今岡村さんが教室(英語やプログラミング)で

教えている子どもたちが、将来成長し、

身につけた知識を次の世代に伝えていってくれるような

構造を地域の中に作ること。

 

だからこそ今、長期的な教育・育成を心掛けて奮闘されています。

 

どうすれば子どもたちの好奇心を育てられるのか。

子どもたちにとって理想的な教育環境とは、どんなものなのか。

ワクワクの先にある学びの重要性に如何にして気づいてもらうのか。

 

岡村さんは言います。

「もしかしたら今こうしてチャレンジしていることは、

ドット(点)を作っている最中なのかもしれない。

このドットは、きっといつか必ずどこかに繋がっていると信じて、歩み続けるんだ」と。

あるとくんチーム×岡村さん(高校生のみ②).JPG

最後に岡村さんが、高校生たちに教えてくれたアフリカのことわざを

引用してこの記事を締めたいと思います。

 

「早く行きたければ一人で進め。

遠くまで行きたければ、みんなで進め。」

 

一人だと目的地に早く着くことが出来る。

でも、仲間と一緒ならもっと遠くまで行くことが出来る。

一人だと行動は早くできますが、自分だけで行ける距離には限界があります。

仲間と行けば、みんなで足並みを揃えなければいけないので

煩わしさが生じたり、

スピード感をもって進むことは難しいかもしれません。

しかし、個人の限界を乗り越え、まだ見ぬ場所まで行くことができます。

 

そのような、個人の限界を突破する仲間の存在の大切さを説いた言葉ですが、

今京丹後の中で「みんなが仲間を作ろうとしている」という動きが

起こっている最中なのかもしれません。

 

これからこの地域が、どのように変容していくのか

とても楽しみになるような時間となりました。

 

岡村さん、貴重なお時間をありがとうございました!

 
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