学校生活School Life
10月30日の中間報告会で得た気づきや改善点をもとに、試行錯誤した結果をポスターにまとめ発表しました。
特に、丹後万博で自分たちで考案した食品を提供できなかったグループは校内で試食会を開催したり、修学旅行先の沖縄でインタビューをしているグループもありました。
うまくいかなかったグループもありましたが、何かをしようとして失敗してもそこから何を学び、今後どう生かしていくかは自分次第です。今年の3年生から後輩へのメッセージを紹介します。
「いさなご探究で得た知識や経験はとても将来に活かせることばかりです。実際私は、2年生での探究のおかげで面接の際に話す内容に困ることなく、自分のことをアピールする材料として使うことができました。また、面接の時だけでなく、自分の進路で迷っていることがあった時も、探究で得た学部の知識が役に立つこともありました。このように将来にとても役立つ知識や経験ができるいさなご探究に真剣に取り組んでもらいたいです」
2年生の探究学習の時間も残りわずかです。しっかり取り組んでほしいです。
~お知らせ~
2月21日(金)22日(土)の「峰高展」にて、2年生が最終報告会で作成したポスターを掲示します。ぜひ、ご覧ください。
12月21日(土)に京都府立高校と京都市立高校合同の探究交流会がありました。
高校生400名以上、中学生とその保護者200名以上、大学や企業、地域の方も参加する他府県に例を見ない探究エキスポです。
機械創造科から「三輪車レースプロデュース大作戦!!」を、普通科から「トウテイランの増やし方」と「自分たちの力でprecious plastic商品から地域を活性化できるのか」を出展しました。
原稿を見ずに相手の目を見て「伝わるように」プレゼンするのは難しかったかもしれません。質疑応答では、「それは考えていなかったので調べたい・活かしたい」と答える姿が見られました。新しい探究サイクルへのヒントをたくさん得られた交流会になりました。
【講演1】
午前の発表後、京都大学の谷口忠大教授からご講評がありました。その中で特に大事だと感じたことを3つ紹介します。まず、サイエンスは仮説(予測)と検証、そして他の人と共有をして、みんなで賢くなることが大切であること。また、興味のあるテーマに関連する本を10冊読んで先人の知恵を活かすことが探究や研究で重要なこと。最後に、発表に際し、先人の知恵である先行文献を必ず入れることです。
現在は過去の積み重ねの上に成り立っています。新しいものが生まれた経緯を知り、さらなる発展に教職員も生徒と一緒に挑戦していきます。
【講演2とパネルディスカッション】
午後から東京大学の松尾豊教授の講演や松尾豊教授と鈴木寛教授と実行委員の生徒によるパネルディスカッションがありました。
特に印象に残っているメッセージが4つあります。1つ目は、AIによって仕事が奪われると思うのではなく、新しい仕事を作るというワクワクを大切にしてほしいこと。2つ目は、どんな仕事も変化に対して変わらない側に立つと徐々に苦しくなっていくので、変わる側の立場に立ってチャレンジすること。3つ目は、AIは下流の仕事はできるが、上流のより抽象的な考える仕事は人間が頑張ること。4つ目は、非言語としてのコミュニケーションの大切さは変わらないことです。
高校生活の間に、変わり続ける社会に自分が必要だと思う変化を起こし、失敗に寛容に試行錯誤し続け、それを周りの人と共有し育んでいく体験を積み重ねていきましょう。
講師として近畿大学経営学部山縣ゼミの山縣教授と学生4名に来ていただき、3日間のワークショップに1年生の希望者が参加しました。
今回のワークショップは山縣ゼミ様から「京丹後市に住む高校生から市外に9割出ていくが、高校在学中に市外に出る機会や大学が近くにないことを聞きました。高校生と大学生と共にアイデア創出からシナリオ作成までの一連の流れを実践的に体験し、柔軟な発想力と大学での学びを経験してほしい」と企画提案され実現しました。
1日目は、山縣教授による「サービスデザイン」についての概要説明から始まりました。そして、KJ法の実践として京丹後市の特徴を付箋に書き出し京丹後市の「良いところ」や「改善したいところ」を分類していきました。
2日目は、1日目のKJ法でまとめた分類をもとに、山縣ゼミ生に「欲求」×「お題」をかけ合わせて発想するための京丹後版「かけあいカード」を作成していただき、それを活用してアイデアを発想し「思いつきシート」を作成しました。
3日目は、2日目の思いつきシートをもとに、そのアイデアがどのような人にどんな価値を与えていくのかというシナリオを考え、四コマ漫画を作成しました。最後に、四コマ漫画のストーリーを発表し講評していただきました。
1日45分という短い時間の中で、丁寧に大学生にファシリテートしてもらいながら、サービスデザインを行う目的やそのための様々なプロセスの説明と実践をしました。受講した1年生は、3学期から2年生の探究学習に向けてテーマを設定していきます。今回体験し学んだことを活かし、実生活にも役立ててほしいと思います。
【生徒の感想】
1日目
・今回はサービスデザインについて簡潔にまとめてあり、とてもわかりやすく学ぶことができました。また、ワークショップの際に近大生の方々と楽しく、近畿大学がある大阪の地域のことや自分の地元の京丹後市のことについて十分に話すことができたのでとても楽しかったです。真っ先に思いついたワードを付箋にメモして、後からカテゴリーごとにまとめることによって、考えが見やすくかつ思考力や判断力の向上にも役立てると改めて実感しました。
・高校生になって初めてこのようなワークショップに参加したので、初めは上手くできるか不安だったけど、実際に参加してみて大学のことについて知ることができたり、気軽に質問することができて、とても楽しかったです。
2日目
・サービスデザインはいろんなことを縛られずに考えることが大切だとわかった。人生もそんなふうに過ごしたいです。
・ネガティブなアイデアでもポジティブに考えたらもっとアイデアが広がった。
・今回は具体的なことから抽象的なものへブラッシュアップさせていく過程を楽しく学べた。また、今回も自分の考えを近大生の方々に見てもらって違った観点でもアドバイスをもらえたからまた新しい考えに発展することができた。
・大学生の方々にアイデアをたくさんもらって、固い頭に緑が広がった。普段考えないことを考えるから、面白くて時間が足早に過ぎていった。人生もそんなふうに過ごしたい。
3日目
・今回のワークショップでサービスデザインの考え方を学べたので、いさなご探究で企画を考える時に活かしていきたいと思った。
12月9日(月)京都大学が高大接続・高大連携活動の一環として、全国的に展開している学びコーディネーター事業を利用した出前授業、「くらしの中の生態学 ーその虫問題、解決できますー」を、3年希望生徒が受講しました。講師として農学研究科地球環境学専攻・博士後期課程1回生の金藤栞様にお越しいただきました。
峰山高校は山と田んぼが近くにある自然豊かな土地柄です。そのため虫は身近な存在です。昨年はカメムシの大発生を経験しました。
今回、虫と上手に付き合っていく術についてわかりやすい具体例を通して教えてもいました。また、大学受験から現在の研究生活などのお話も聞くことができました。自分が興味のあることについて仮説検証する研究の面白さや好きな部活に没頭していることを聞くことができ、これからの大学生活を前向きに取り組もうとしている生徒も見られました。
【生徒の感想】
・私は虫が苦手なため、わざわざ虫の生態を知り生活に役立てようと考えたことは今までありませんでした。虫の生態を知ることで農業に役立ったり過ごしやすくなることを今回の講義で実感しました。ただひたすらにカメムシを取るのではなく、カメムシが好む環境を作らないようにしたいと思います。
・特に印象に残ったのは、虫は赤い光が見えないということです。それを見つけることもすごいと思ったけれど、それを生かした照明や虫対策など、生態を理解することで虫にとっても人間にとってもプラスに働かせられることが生態学の魅力だと感じました。
・「まずは目下の課題から取り組んでいったら、あとから大義名分がついてくる」という言葉が印象に残っています。「ただ好きだから」や「少し気になったから」などの小さな気持でも良いのだとわかりました。
11月8日と15日の2日に分けて普通科4クラス40グループの発表を行いました。
発表内容は、10年後・20年後「よりよい丹後」にするために、今できる(と思う)アクションプランです。
グループ毎に自分たちが考える京丹後の課題をあげ、自分たちの企画内容(解決策)とアピールポイント、先行事例の紹介とその分析結果、自分たちの企画の改善点などを発表し、他のクラスの生徒や先生、京丹後市役所の方にも来ていただきアドバイスをいただきました。
今日の交流をもとにどんな企画に発展するのか楽しみです。
「いさなご探究」とは、本校における「総合的な探究の時間」の科目名です。
今年は51グループに分かれ、それぞれの探究テーマに沿って活動してきました。
大きく分けると教育、まちづくり、リサイクル、食、心理、運動、音楽、医療などのテーマがあります。
いさなご探究の目標は「社会的な課題を解決すること」と「よりよい社会の創造者になること」。
言い換えるとSDGsやウェルビーイングの実現を目指して取り組んできました。
夏休みまでに仮説を立て地域に出てフィールドワークしたり、インタビューをして検証するグループもいれば、10月27日に開催された丹後万博に出展するグループもいました。
それらの結果を踏まえた今回の中間報告会では1年生をはじめ、京丹後市役所や大学の先生、地域の方々にもたくさん参加していただきました。
発表や質疑応答する中で多くの気づきや改善点を得られたと思います。
残りのいさなご探究の時間を通して自分達のテーマをどのように広げ深めていくのか楽しみです。
最終報告会を1月22日(水)に予定しています。
丹後地域における「伝統継承」についてを
テーマに探究してきたグループがどのような
集大成を迎えたのかについて綴りたいと思う。
※これまでの記事についてはこちら
伝統継承するとはどういうことだろう??~活動の過程で揺らぐ定義~vol.1
*****
これまで「継承」とは何かについて探究を続けていく中で、
自分たちの中で揺らいでいった「継承」の定義。
彼女達が探究活動の中で迷いながらも導き出した答えを
ぜひ地域の方々にも聞いたいただきたい、と思い、
地域向けのミニ報告会を開催することに
前回の記事で紹介した2年生の伝統継承チームの
その後の活動について。
(前回の記事はこちらをご覧ください!)
*****
「丹後の伝統を次世代にも継承していきたい!」
そんな想いで始まった彼女たちの探究。
「継承する」とは一体どういうことを示すのか、
定義づけするところからこの旅は始まった。
「私達が考える"継承"とは、伝統をできる限り
そのままの状態で保存し、次に受け渡すことだと思っています」
彼女達の考えでは、「継承すること」は
守るべきもの、形を変えずできる限り過去の人の想いを
そのまま未来へ繋げる、というものだった。
それが、Kaicoのワークショップで出会った甲斐さんのお話や
提灯屋の小嶋さんとの対話がきっかけで、「継承すること」の
定義が揺らいでいく。
自分たちはどこに向かっているのか、
果たして向かう先にはどんなことが待ち受けているのか、
不透明のまま、それでも前に進まなければならず、
模索しながら歩みを進める。
この過程が如何にも「探究」であり、
彼女を見ていると私の中の「探究欲」も湧いてくる。
ぜひ最後にみんながどんな景色を見るのか、一緒に
見届けたくなったのである。
彼女達は、甲斐さんや小嶋さんと話したことで、
「継承」とは決して"そのままの状態を守る"必要はないと
考えに変化が生じるとともに今現在、伝統に携わる人々の
想いを伝えることを何かしらの形で成し遂げたいと決意する。
ではそれを誰に伝えるか。
伝えたい人を具体的にイメージしていく。
「やっぱり、自分たちと同じ年代くらいの若い人にも
関心を持ってもらいたいよね」
「観光客の人に知ってもらうのもいいんだけど、
どちらかというと地元の人が地元の伝統の魅力に気づいたり、
地域に"新しい伝統継承の在り方"を考え広めようとしている人が
いるんだってことを知ってもらえるようなものがいいよね」
そんな風な話し合いの末に彼女達は、自分たちが出会った人や
実際に足を運んだ場所で感じたことを伝える為のパンフレットを
作ろうという考えに至る。
「パンフレットの表紙は、できればちりめんを使いたいよね。
手に取ってくれる人が実際に触れられるものにしたい」
そんなアイディアも出てきて、
すでにパンフレットの出来上がりが楽しみになる。
ちりめんといえば、このチームの中の一人が
着物好きで元々伝統継承について探究をしようと決めたのも
それが理由であったという。
彼女の祖父は機屋を営んでおり、幼い時から美しい着物が
身近にあって物心ついたころには自然と好きになっていたそうだ。
「着物バザーなんかにもよく行くのですが、
そういった企画をよく請け負っている機関が
"丹後織物工業組合"さんなんですよね。
機屋さんのとりまとめ役のようなことをされていたりするのかな、
と思うんですけど、ここに見学に行くことはできますか?」
高校生自らがこうして情報を集め、自分の意志で
ここに行きたい!と選べるのはとても喜ばしいことである。
早速工業組合さんにアポイントをとって
見学に行くことに。
見学は工業組合さんの組織や
どういった役割を担う施設であるのかについての説明、
また丹後ちりめんの歴史の変遷について話を聞くことから始まった。
工業組合さんの主なサービスの1つは「加工」作業を
担っていること。
各機屋さんから織り上がってきた絹織物などの繊維に
含まれる不純物を取り除いてシルク本来の美しさと
光沢を発揮させるための加工だ。
また薬品メーカーや研究機関等、様々な組織との連携をはかっているため、
生地加工や研究開発が可能な体制となっている。
生地の製造は丹後に広がるそれぞれの機屋さん、
そして精錬・加工・染色は工業組合さんが担う、といったように
産地内で全てが完結するワンストップ生産体制が整っていることが
丹後ちりめんのブランド化に一躍買っている。
また実際に丹後地域にある機屋さんで織られる生地の
特徴を実際に商品を見たり、触ったりしながら学ぶ。
「この生地は貝殻が織り込まれていて、見る角度よって
違って見えるんですよ!」
と担当の方が見せてくれた生地は大層美しく、高校生たちも
その技法に魅了されているようだった。
「中々着物など着られなくなった今、新しい取り組みなどは
されているのですか?」
「現在は化粧ポーチや財布、鞄、パジャマやマスクなど
時代に合わせて手に取りやすい商品が様々生まれていますね。
インテリアとして洒落た空間演出なんかに使われることもあり、
最近では海外でも展示会を行ったりして、人気がありますよ!」
伝統産業の分野は変化が少ないと思われがちだが、
長い歴史を紡ぐ中で守るべき箇所は押さえながら、
常に柔軟に変化してきたことが伺える。
そしていよいよ工場見学へ!
見せていただいたのは、生地の入荷から出荷に至るまでの
一連の作業場の様子。
最初に目にしたのは、各メーカーさんから
織り上がった大量の布!!
この大量の布にメーカーの要望に合わせた加工を加えていく。
汚れ落とし、精錬加工(不純物を落として絹本来の美しさを出す加工)、
生地加工...。
驚くべきは、その加工作業に人の力が大いに働いているということ。
勿論加工には優れた機械を使用する。
だが、汚れが本当に綺麗に落ちているのか、
生地の長さが正確であるのかの確認作業は目視と手作業である。
特に織物には水が欠かせないが、天候や季節によって
室内の湿気の度合いも変化するため、微妙な調整が常に必要な
繊細な仕事であるが、それも勿論人の五感が頼り。
熟練された技術を持つ職人が時間をかけて1つ1つの織物と向き合っているのだ。
「ここは精錬加工をする場所です。
この作業を一手に引き受けるここ、織物工業組合では
工場から70メートルほど西にある竹野川から水を汲み上げて、
利用しています。この川の水は軟水で量も豊富。
この水をさらに良質なものに加工することで、しなやかで
柔らかい風合いのシルクになります。
昔から、精錬工場は豊かで美しい水があるところに作られることが多く、
つまりは自然環境が良いところ、ということ。
良い絹は良い水のあるところで生まれるんですよ」
織物と向き合う職人さんは「水を読む」人だ。
晴れの日。雨の日。四季の移り変わり。
自然に左右される水は当然のことながらその質が日によって変わる。
精錬職人たちは、その一定でない水の質を正確に読み取り、
コントロールするのが最大の仕事。
どんな日でも、同じ質の織物を仕上げることができるのが、
一流の職人の証でもある。
ここにもまた奥深い「伝統」があった。
工場見学を一通り終えて最後に向かったのは、
展示場で使ったという建物の中。
最近では海外向けのイベントも多く開いているようで、
イベント時は広いスペースを織物などを使いながら空間を区切り、
ブースを設けて、様々なメーカーの商品が楽しめる洒落た空間に
様変わりしたようだ。
ここでもまた守るべきものは守りつつも、
時代の変容に合わせて伝統が変化していく様を見た。
高校生たちが最終的に「継承」について
どういった答えを出すのか。
もう少し隣りで見守ろうと思う。
その相談は突然舞い込んだのだ。
「『ザ!鉄腕!!DASH!!!』っていう番組の中に
「0円食堂」という企画があるじゃないですか?
あれを丹後でできないか、と思ったのですが
農家さんなどと繋いでもらうことって出来ますか?」
日本テレビが放送している番組に「0円食堂」という企画が
あったのをご存じだろうか。
日本全国の地方でロスになっている食材を集め、
その「0円食材」を使って真心込めて料理を作る、という
内容なのだが、どうやら食材が豊かである丹後なら
0円食堂の実現が可能なのではないか、と考えたようだ。
これは面白い!
繋ぐ先ならいくらでもある。
相談に来た高校生たちの様子を見ても、
「あれこれ考えるより先にまずは動いてみよう!」と
フットワークの軽さを感じたので、取り急ぎまずはrootsへ
行ってきな、と促す。
rootsに行けば、地域の情報はある程度手に入る上、
現在、農家さんで働いている相談員もいる。
手っ取り早く当事者から話しを聞くのが良いだろう。
rootsへと足を運んだ高校生たちは、
0円食堂が丹後でできるのではないか、という仮説をもとに
どんなものがこの地域で作られているのかを相談員の方から
情報収集していく。
すると驚くべき事が発覚!!
何と多様な食材だけにとどまらず、塩や味噌、醤油といった
調味料類まで作られていることが分かったのだ。
「これって、絶対できるやん!!」
そう確信した彼らは、次にrootsで得た情報をもとに
実際に作り手さんのところへ足を運んでみることに。
今回ご協力いただいたのは、
さつまいも農家の 竹田農園さん。
梅本農場では、季節ごとに様々な有機野菜が栽培される。
「美味しい野菜は、良い土から」という考えから、
何と土を作るところから始まったというのだから
この拘りようからどれだけ品質に力を注いでいるのかが分かるだろう。
畑も広大で、全国各地から研修生を募り、農業についての
ノウハウを伝えている。
この時期はキャベツやレタス、にんじん、小松菜、大根等が
獲れるということで、収穫のお手伝いをするため畑へと出向く。
スタッフさんに収穫の仕方を伝授してもらって、早速チャレンジ!
土に埋まっているものは想像以上に深いところにあって
掘り起こすのに一苦労。野菜たちはずっしりと重く、それら1つ1つを
掘り出してから丁寧にかごに入れていく作業も自分たちが考えていたよりも
ずっと時間がかかる。
実際に自らの手で収穫の体験をすることで、普段の生活の中で
当たり前のように食卓に並んでいる食材たちは、こうして
1つ1つ手間暇かけて作られたこと、農業に携わる人々の重労働の上に
届けられたものである、ということ肌で知ることになった。
また梅本農場で働いているスタッフさんたちにもインタビューを実施。
どのような想いで仕事に向き合われているのか、
またフードロスなどに関する課題についてのご意見を聞いた。
「自然の恵みは全て土に凝縮されています。
豊かな土はどこから作られるのかを辿っていくと森の落ち葉から
生まれるんです。雨や風を受けて森に溜まった落ち葉は、
虫や微生物たちによってゆっくり時間をかけながら分解され、
やがて栄養素をたっぷり含んだ土へと生まれ変わります。
これらの豊かな土が1センチできるのに、
何と100年かかると言われているんですよ」
話しを聞いていた高校生たちの顔に驚きの表情が浮かぶ。
改めて自然の偉大さや、それを守らねばならない理由について
気がついたようであった。
「うちの農場では、その森の豊かな土をこの畑で再現しているんです」
豊かな土の中には多様な種類の落ち葉や虫、微生物の栄養が
豊富に満ちていて、野菜たちのエネルギーになる。
土においしさの秘訣あり。
ここでフードロスに関する話題についても尋ねてみる。
「フードロスの問題、確かに難しいですよね。
でも実はうちの農場では、そんなにロスが出ていないんですよ。
ロスがなるべく出ないようにする仕組みを考えている、と言えば
分かりやすいかな。例えば、うちの野菜が欲しい人に直接売るのも1つ。
スーパーなどで不特定多数の商品を卸すのではなく、必要な人へ必要な分だけ
届ける。するとロスは出にくくなります。
また形が悪くて、商品にできないものについてはうちの畑のスタッフ内で
分けたり、収穫が忙しい時期などに地域から畑体験も兼ねたお手伝いで
関わってくださる方を募って、その対価に持ち帰っていただくといった
工夫もしています。さらにカフェも運営していて、ここで獲れた旬のものを
使用したメニューを提供し、いつでも新鮮な状態で食べてもらえるような
仕組みも作りました。なので、この農場内で循環ができていて、
皆さんが想像しているよりもうちではロスが少ないかもしれません」
食品ロスという問題に対して、どうすれば課題を軽減できるのか、
について、様々な手段を駆使しながら仕組化する努力を重ねる
梅本農場さんの取り組みには感服する。
高校生たちは、農家さんの想いやこういった裏側の取り組みについても
ぜひ沢山の人たちに知ってもらいたい、と意気込んでいた。
続いて足を運んだのは、峰山町の五箇にある竹田農園さん。
ここではさつまいもを中心にキャベツやさといもなど
季節ごとに数種類の野菜を育てている。
高校生らが畑を訪れた際には、ちょうど数種類のさつまいもが
旬を迎える時期であり、とくに「紅いもはるか」が良い感じに
出来上がっているという。
では早速、収穫のお手伝いに行こうではないか!
畑はかなり広大な範囲に広がっていて、
全て人力で掘り起こすのは非効率かつ重労働のため、
トラクターのような機械を使って地表に出していく。
でもこれがまたすごい量で。
今度はこれらのさつまいもをツタから切り離し、
大きさが同じくらいのものを集めて、それぞれのかごに回収していく。
初めは意気揚々と作業に取り組んでいた高校生たちも
段々と疲れを見せ始める。
さつまいもをツタから切り離すのに想像以上に力が必要なこと。
常にしゃがんでの作業となるので足腰に痛みが出てくること。
収穫したさつまいもでいっぱいになったかごの運搬は
体力を大きく消耗する作業であること。
こうして実際に体験することで、身にしみて分かる
農作業の厳しさ。
そして同時に自分たちが毎日享受している恵みは
美味しいものを人々に食べてもらいたい、と
懸命に大変な仕事に向き合う人々の想いの上に成り立っているのだ、
ということに気がつく。
自然に湧き上がってくる感謝の思い。
「実際にこうしてお手伝いをさせていただいて、気づくことが
たくさんありました。ぜひ農家さんたちの想いも僕たちの企画の中で
伝えられるような取り組みにしたいと思います!」
そして竹田さんにもフードロスに関する考えを聞いてみる。
「うーん。それは本当に難しい問題ですよね。
確かにうちでも全てのさつまいもが売れるわけではありません。
形の悪いものや傷んでいるもの、商品としての基準を
満たしておらず、どうしてもいくらかはロスになってしまいます。
うちはそういったものを少しでも減らしていくために、
最近無人販売所を設置しました。
形などが悪くとも、味は確かであるので、そういうものを
安価で買える仕組みを導入したんです。
また加工して新たな商品として世に送り出す、という企業さんも
あるので、そういったところとの連携を取っていくといったことも
今後できたらいいな、と思ってます」
こうして生産者さんのお話をお聞かせいただくことで、
見えてきた現実や今後の展望のお話しなど
全てをまるっとひっくるめて自分たちなりの「0円食堂」を
実現したいと、高校生達は改めて胸に決めたのであった。
このあとの展開はまた次回へと続く...。
福祉業界って、大変だって聞くけど実際どうなの?
そもそもどんな仕事があるの?
福祉と医療の違いって......?
保育に関心はあるけど、現場で働いている保育士の人たちは
どんな想いでそこに携わっているんだろう?
高校生たちのそんな疑問にお答えすべく、
みねやま福祉会からゲストを招いて福祉業界のリアル知るための
特別授業、「人文科学の教室」にて「Be Real フクシ」を
実施しました!
※「人文科学の授業」とは...1年に数回、放課後に開催している
特別授業。様々な分野について、より深く掘り下げるため、
その分野の専門家である講師を招いて行われる講座式の授業。
これまでの例として「美術」「心理学」「文学」等
多様な切り口でテーマをふかぼる興味深い授業が展開されている。
*****
今回の授業は、これまでやってきたものと少し違う。
それはワークショップ型であるということ。
そしてゲスト(講師)が複数人いるということ。
(普通講師は一人であるが、今回は何と7名来ていただいた!)
前半は参加者を5つのグループに分け、各グループに一人ずつ
ゲストに入ってもらう。
ゲストは、現役大学生や福祉会の若手職員ら。
なるべく高校生たちと近い年齢の人々と交流することで、
高校生らが進路の選び方(何に迷い、どう考え、どうやって決断したのか等)の
ヒントを得られたり、同じ福祉業でも働き方は多種多様で、
若い世代の人々にどんな活躍の場があるのか等
知ることができる。
若手職員のみなさんが高校時代にどんなことを考え、
どのように進路を選び、実際働いている現在はどのような想いでいるのか。
当事者の人々の「リアル」な話しは、きっと高校生らにより
「リアル」に響くはずだ。
初めに全体へ向けて、講師陣たちの自己紹介を聞く。
保育士、ケアワーカー、介護士、企画開発担当、場作りをしている人、
そして大学生......。
社会人のみなさんの職種は本当に多種多様に渡っていて、
これが全部福祉事業に関わることなの?と、参加者達は
驚きを隠せない様子。
また大学生メンバーも2名来てくれていたのだが、
一人はみねやま福祉会の内定者、またもう一人は現在福祉会で
インターンをしているとのことだが、二人ともどうやら
福祉を専門に学んでいるわけでもなさそうだ。
何となく、今回のゲストがどんな人たちなのかを把握したところで
次はグループごとに自己紹介!
今どんなことに興味をもってるのか、推しは何か、今の気持ちなどを
みんなでシェアしていく。各テーブルごとにとても盛り上がっており、
幸先の良いスタート。
場の空気が和らいだところで、講師陣のお話しを聞くターンに。
保育士、ケアワーカー、介護士の方々のクロストーク。
同じみねやま福祉会に所属していても、それぞれ働く場所が
異なるため、仕事内容ややりがいもそれぞれによって違ってくる。
介護施設では100歳になるおばあちゃんの誕生日会をしたという
エピソードがとても印象的で。
ご本人はもちろん、ご家族やその人と関わってこられた方々へ
ヒアリングをし、100年間を振り返って、思い出に残っている事柄を
年表に纏める。するとその人の人生がまるまる浮き上がってくるわけだ。
「あのときの丹後はああだった」
「このときとてもしんどかった」
「このときが人生における転機だった」
おばあちゃんが歩んできた100年間。
おばあちゃんの喜怒哀楽を隣で一緒に感じ取る。
「誰かの人生にここまで深く関わる仕事があるでしょうか。
人はみな等しく年老いていく。でも最後まで自分らしくありたい。
日常の何気ない幸せを感じたい。その人の思いを大事に、
安らぐ時間を過ごせるように日々仕事と向き合っています」
また保育士の方は子どもたちの成長を間近に
感じられることが何よりもやりがいだ、と語った。
「初めはお母さんと離れて、知らないところに連れてこられて
不安ですごく泣き叫ぶんですよね。
だけど毎日会って、大丈夫だよ~!ってコミュニケーションを
とり続けていると、ある日心を開いてくれる瞬間があるんですよ。
初め泣き叫んでいた子が、私を見て一生懸命腕を伸ばしてくる姿
何て見ると、もう溜まらないですよね(笑)」
ケアワーカーの方は、自分の存在が関わっている子どもたちにとって
とても大きいものなのだ、と感じる瞬間が一番やり甲斐を感じるようだ。
「障害のある、ないに関わらず、その子自身が何をしたいのか。
やりたいことが実現できる機会を僕たちは提供できるように
日々仕事に取り組んでいます。勿論、ハードルはあります。
上手くいかないことも沢山あります。それでも、その子にとっての
"できた"という体験はすごく大切なんですよね。
チャレンジしてみたい、こんなことがやってみたい、とその子自身から
出てくること自体が、僕の存在を認めて"この人だったら大丈夫だ"と
安心してくれているからこそ、だと思っています。
心を開いて自分自身のことを話してくれる瞬間や、
あまり笑ってくれなかった子が笑顔をみせてくれるようになったりすると
本当に嬉しいですね」
福祉のお仕事って本当に幅が広いんだなぁ、と感じると同時に
人の人生の全ての段階に関わっていることも分かる。
そして、それぞれの人々の"しあわせ"をとことん考えること、
"しあわせ"に生きるために人に寄り添うことを
大事にされているのだと実感した。
そしてワークは後半戦。
ここからはテーマに分かれて、それを話題に
ゲストと参加者が交流する時間。
① 大学生活のこと
② 福祉と医療
③ 福祉とまちづくり
④ 仕事と福祉
こんな風に4つのセクションに分かれて、自分の聞きに行きたい
テーマのテーブルに集まる。
集合したら、それぞれがゲストに質問したいことを紙に記入して
1つの袋の中に入れる。
後は時間になるまでひたすら袋の中の質問をゲストが引き、
出た質問についてゲストが答え、またその話題をさらに
その場で掘り下げていくというもの。
必然的にゲストと高校生らが対話する機会となるし、
自ら関心のある話題(テーマ)を選んでいるので、
みな関心を持って人の話を聞ける。
真剣に話しを聞いたり、疑問に思ったことを問うたり、
時々笑いが起こったり、楽しそうに交流している姿を見て、
この場にいるみんなが"自分ごと"としてこのワークショップに
参加しているからこそ、この光景を見ることができたのだ。
みんながこうも積極的に参加してくれる放課後の「特別教室」
とても素敵だな~と感じた。
今回のこの取り組みをきっかけに人数を絞った形での
分野別ワークショップ型の"人文科学の教室"はニーズが
あるかもしれないな、と密かに思ったのであった...。
過去の記事で紹介したことがありましたが、
「高齢者の健康維持」について探究しているチームの
経過報告をしていきましょう。
****
これまで「高齢者の健康維持」のためには、
どんなことが必要なのか、またどんな仕組みがあればよいか、
地域がどうなっていたら良いのか、などについて考えてきた高校生ら。
関心のある進路先として"福祉"というのがキーワードに
上がっていたため、そもそも福祉とはどういうものなのかについての
概念的な部分を社会福祉士の資格をもち、労働支援をしている
地域の方にお話を伺ったり、地域医療という観点から薬剤師、言語聴覚士といった
地域の方を囲んで地域福祉の在り方、現状、そして未来について考えてきた。
自分で調べるだけでは分からないことを地域に出向いて、
現場で動いている人たちの生の声を聞くことで、今ある課題や
今後必要なこと、地域にとって大切なものは何かについて
自分たちの実感を持って知ることに繋がった。
そういった中で高校生が「高齢者の健康維持に必要なこと」として
導き出した答えは"生活の中で、人との繋がりを感じられる"かどうかが
重要であるということ。
そこでそれが人にどれほどの影響を与えるのかについて
検証するための企画を実施する運びとなった。
探究が始まったばかりの頃は、どう進めていくのかかなり
迷っていたこと、どちらかと言えば地域で活発に動いて
進めていくというよりは、ネットや書籍等から自分たちで調べて
進めていくスタイルを好んでいるような感じがあったので、
こうして地域に出向き、最終的には自分たちから企画をしたい、と
声を上げてくれるようになるなんてまさか想像もしていなかったので
その分、喜びは大きい。
「企画をするのに地域で行われている高齢者サロンについての
情報が欲しい。そういった取り組みをしている人たちと
繋がりたいのですが......。」と彼・彼女達から相談を受けたとき、
とても嬉しかったのを今でも覚えている。
そういった流れの中で、これまでの学びの最終アウトプットとして
社会福祉協議会さんにお世話になって、高齢者サロンで高校生主体の
企画を開催させていただくことが決まった。
企画を実施するにあたって、コンセプトをどうするのか、
どんな体験を提供するのか、どれくらいの規模で何を行うのか、
検証したいことを明らかにするためのアンケートはどんな問いを
用意すれば良いのか、当日の進行、他にボランティアで高校生が
どれくらい必要なのか、広報はどうするのか、誰に何をお願いするのか等、
社協さんも含めて打ち合わせを重ねる。
そして冬休み明け。いよいよサロン当日。
実施を決めてから、当日までにあまり時間が無かったことや、
冬休みを挟んだことから高校生側にも広くアプローチが出来ず、
本当に人が集まるのかどうか不安な面持ちで会場にやってくる高校生。
最終打ち合わせをして、そろそろ開始予定時刻になろうとしている、
当にその時、会場の扉が開いて続々と高齢者の方が入ってこられるではないか!
10人参加者を集まることを目標にしていたのだが、何と20名近くの人が
集まり、高齢者との交流に関心のある高校生や将来介護士を目指している
といった高校生も来てくれた。
今回、このサロン開催に協力してくださった区長さんの挨拶から
いよいよスタート。
マイクを渡された高校生たちは、最初緊張で少し声は震えていたが
会場にいる人たちは皆親身に耳を傾けてくださり、最初の挨拶を終えると
温かい拍手を送ってくださって、高校生たちも安心したのか、
プログラムに入る頃には普段の様子に戻っていた。
プログラムは2部制に分かれており、前半は
座ったままでもできるエアロビクス(運動)、
後半は「思い出の写真、お気に入りの写真」を持ち寄って、
それらについてプレゼンと意見交流をする(対話を楽しむ)時間として
企画を組んでいた。
エアロビクスは動画を流しながら、それを見本に
みんなで身体を動かす。
座ったままといいつつも、手足を中心に身体の色々な場所を
使うエクササイズとなっており、途中ちょっと休憩を挟まなければ
最後までもたない運動量だ。
身体もぽかぽかしてきて、最後は会場のみんなが
笑顔になる。
「これはええ運動やな」
「ほどよい疲れが気持ちええわぁ」
なんて声が彼方此方から上がって大成功。
これで一気に会場の空気が柔らかくなった。
みんなの緊張がほぐれたところで、後半戦。
2チームに分かれて、自己紹介とお気に入り写真についてのお話タイム。
ここで面白かったのは、自己紹介が終わらないこと(笑)
・お名前
・年齢
・趣味
・最近あった楽しかったこと
この4つをそれぞれからお話ししてもらうことにしていたのだが、
趣味の時点で話が盛り上がる、盛り上がる(笑)
趣味が同じ人がいれば、そこから話が膨らんだり、
「え、それ何!?」となれば、解説タイムが始まる。
想定していた時間を大幅に超えてしまったが、
これはこれで、交流を楽しめているので目的がそれてしまっている訳ではない。
様子を見つつではあるが、ちょっとこの場の空気感を楽しもうか、と
急遽自己紹介の時間を延ばしてみる。
これが良かったのか、こちらでとくに写真の話に切り替えなくても、
自己紹介の流れの中で、自分のお気に入りのものや思い出話に
持ってきてもらった写真を取り出す人たちもいて、
非常に良い交流の時間が持てていたと思う。
最後の感想で、参加した高校生たちからは
「想像以上にお年寄りの方々が元気であることに驚いたこと。
その元気の秘訣が趣味、それも多くの場合が一人で完結するものではなく、
色々な人たちと取り組むものであること、そして私達高校生や
若い世代のとの交流が高齢者の方々に元気を与えられるということにも
気づいた。自分たちにできることもあるんだな、と実感でいたことが、
とても良かったし、すごく楽しい一時でした!」
という感想が出てきたこと、
また高齢者の方々からは
「こうして自分たちのことを気にかけて、わざわざ地域に出向いてきてくれる
若者の存在がどれだけ有り難いことか。
これを機にぜひ色々な場所で実施されているサロンに参加してみてほしい。
たくさんの元気をありがとう」
と感謝を語ってくれる方々が沢山いた。
企画をしてくれた高校生らは、終わった後に本当に清々しい顔をしており、
最後までやりきってくれて本当に良かった、と心から感じた。
この経験が、やりきったという達成感が、
きっと今後の彼・彼女らの人生を豊かにしてくれるだろう。
「建物の余っているスペースを有効活用して、地域の人々にとってもう少し
使いやすいようなアイディアを出してもらえたりしないかな?」
そんな相談があったのは、今から約10ヶ月ほど前に遡る。
京丹後市役所峰山庁舎の近くにNTT西日本が所有する建物が存在しているが、
建物の一部は現在、地域の方々の交流の場として使用されている。
但し、基本的に昼間しかオープンしておらず、小・中・高の児童、生徒は勿論、
仕事をしている社会人などは利用しづらいのが現状だ。
もう少し、幅広い地域の人々に利用してもらうために、
より地域の人々のニーズに沿った形を考えたいが、
そのアイディアを地域の若者たちに出してもらえないだろうか、
という声がNTTさんから上がってきたのだ。
その相談に協力すると手を挙げた二人の高校生がいた。
彼らは3年生。
2年生の時に「丹後の20年後が持続可能であるためには」というテーマで
探究活動に取り組み、当時UIターンの人々にインタビュー調査を
実施したことがきっかけで、丹後地域の新たな魅力を再発見し、
地域活性のためには「地域内での繋がり」が重要だ、
という結論を出してくれた。
今回の「地域にとってより有益な建物活用を検討してもらいたい」という相談は、
彼らの行っていた探究活動の延長線で実施できそうだ。
さらに言えば、彼らが導き出した地域活性の鍵となる「地域内の繋がり」が、
実際活性にどれほどの影響を及ぼすのかについての検証もできる可能性が高い。
とても嬉しいことに、3年生の二人は地域と関わることにとても積極的で、
こちらが何も言わずとも自分たちで次の動きを考え、準備をしてきてくれる。
2年生の時の探究での成長がこういうところで見られるのだから、とても感慨深い。
そんな風にしてスタートしたプロジェクト。
まずは、活用方法のイメージを膨らませるため、
実際に現場に足を運ぶところから始まった。
使ってもよい、と提示されているスペースは
建物の入り口を入ってすぐの広い部屋1つ分。
実際に現場を見てみると、想像していたよりも奥行きがあり、
上手く活用できれば、色々な用途での使い方ができそうだ。
「スペースが広いから机並べたら、結構な人数入りそうやな。
自習室として使い勝手が良さそう」
「案外、防音がしっかりしてそうやから、
楽器の練習場所として使うのもありかも!!」
「自習や仕事場として使える日と、イベントなんかをやる日と、
用途に合わせて使い方を変えるのもありかも」
「そもそも中高生とか社会人が使えるようにするには、開館時間を変えてもらう
必要があるけど、そういうことも提案できるんかな?」
こんな風に直接見ることで、アイディアが広がっていく。
NTTの担当の方も、まずは実現可能性の事は考えず、
一度理想的な活用法の提案をしてもらいたい、と言う。
そこで、次にコンセプトを決める。
「やっぱり、高校生視点で考える"交流拠点"を作りたいよね」
話合いをした結果、ここに行き着く。
そうと決まれば、高校生のニーズ調査をしなければならない。
「ひとまず峰高生にアンケートを取ってみよう!」
自分たちとしての意見もあるが、「地域の場」を作るには、高校生たちが
現状、どんな場を求めているのかを把握しておく必要がある。
その後に峰高生対象に実施したアンケート調査の結果、今の高校生たちが
切実に求めているものが何であるのか、が見えてきた。
「学校に自習室はあるけど、先輩が使っていると後輩はどうしても遠慮する。
それに下校時間があるから、塾に通っていない生徒は学校から出た後、
行き場がない。自習出来る場所があったらいいっていう意見がすごく多い」
「お、自習室として使うのにちょっとした飲食が出来るスペースや
自販機なんかがおいてあったらいい、っていう意見も結構あるで!」
「部活の練習スペースとして使えても良いんじゃない、って話しを自分たちも
していたけど、やっぱりそういう意見もちらほら見受けられるな」
「自習スペースと多目的で使えるスペースの共存は流石に難しそうだから、
例えば曜日によって使用目的を変えられる、といったような工夫も必要かも」
「社会人の人との交流などをするなら、やっぱりある程度夜遅くまで
営業できる体制が求められるよね」
このようにアンケートを取ることによって、
今高校生が切実に求めているものが浮かび上がってくる。
NTTさん側からは、一旦実現可能性などを抜きにして、
まず高校生視点から、一番理想的だと思えるスペースの環境を提案してほしい、
と言われているため、自分たちの理想やアンケート結果を基にプレゼンを作成する。
そして、いよいよNTTさんへ向けて建物活用に関するアイディアを発表する段階に。
「高校生が中心となって働きかけ、地域と繋がっていく場所」を
コンセプトにこれまで自分たちが考えてきたアイディアについてや、
現状高校生たちが何を求めているのかについて、
アンケート調査の結果を基に示していく。
それらを実現するための現状の課題点も挙げ、
その課題点をクリアしていくために企業側にも
協力してもらう必要がある点なども伝えた。
プレゼン後、NTTの担当の方からフィードバックをもらう。
「まず初めに、時間の無い中できっちり提案書を仕上げてきてくれてありがとう。
驚いたのがこのアンケート。
回答者が400人近くいるけど、よくこんなに回答者集められたね。
アンケート調査って呼びかけても中々回答が集まりにくいのに......。」
「より多くの回答を得るために学年団の先生やそれぞれのクラスの担任の先生方に
協力をお願いしたんです。アンケートに回答してもらう時間を取ってもらったことで、
多くの回答を集めることができました!」
これまでも高校生の探究活動において、
調査の一環としてアンケート調査への協力を求める事例は多くあった。
だが、Teamsに流す程度であったため、回答率は良くなかった。
今回、できる限り多くの高校生の意見を自分たちの活動に反映させたい、
という彼らの強い想いと、行動力が
探究活動に新たな決まりを作ることにも貢献した。
「校内アンケートを採る際には、探究の授業の一部を使って、
そこで回答してもらうようにする」
授業中にアンケートに回答してもらうよう呼びかければ、
必然的にその時間はアンケートへの調査協力のために使われる。
つまり回答率がぐんと上がる、ということだ。
彼らが積極的に動いたことが、こうして後輩達の探究の授業を
より進行いやすいような決まりを定めることに繋がった。
私は4年間、この峰山高校の探究に携わってきたが、
少しずつであるがこうした変化が年々見受けられ、
着実にパワーアップしてきているのを実感している。
道なきところには、道を作れ。
きっとこの先も探究を積み重ねていく限り、先輩から後輩へと、
思いは受け継がれていく。文化ができ、物語は紡がれていく。
今回、この建物活用のプロジェクトに関わってる3年生の彼らには、
リミットがある。受験を控えていること、そしてその先に待つ卒業。
でも彼らの表情はとても清々しいものであった。
「僕らが何をやってきたのかをちゃんと伝えることができれば、
場所の活用や地域活性、まちづくりに興味のある後輩たちが
ちゃんと引き継いでくれると思うんですよね。
2年生の時から継続して探究をやってきて感じたのは、
もちろん大変なこともあるけど、それ以上に地域に出ると面白いことが
沢山あるんだな、ということに気づけたこと。
僕たちが考えているよりも、丹後って結構良いところなんだな、
ということが分かったんです。
だからそういうことも含めて、
後輩たちにバトンを渡せたらいいな、って思います」
何と頼もしいことか。
そして彼らは、驚くべき事にこの「後輩にバトンを繋いでいくこと」を
有言実行するのである。
彼らは自分たちが卒業することを見越して、
この活動を学年や学校を越えた形でプロジェクト化することに決める。
メンバーを集めるためにプロモーション動画を作成、
これまでの経緯や今後の取り組みについての構想を盛り込み拡散。
1年生の探究でまちづくりなどをテーマにしている高校生を中心に
声掛けなども行った結果、1年生数名と清新高校に通う3年生が
プロジェクトに参加してくれることに!
学校や学年の枠を越えてメンバーを集めて実施するプロジェクトは
3年前の卒業生が有志でアニメーション動画を作った時以来になる。
ここまで探究活動を続けてくれるだけでもすごいのだか、
その先のことまでを見越して活動してくれるとは、
本当に頼もしい高校生たちだな、と心から感心したのであった。
このプロジェクトが今後どのように動いていくのか、とても楽しみである。
1年生の探究学習のカリキュラムの軸は「SDGs」
2030年までにSDGsの17項目あるゴールが世界で全て達成されていることが
持続可能な社会を目指す上で重要なことである、と定められている。
指標であるが、1年生の探究ではこの17項目のゴールの中から1つ、
「達成したいゴール」
「将来の理想的なまちや社会を想像したとき、達成できていたら良い」
と考えるゴールを選ぶ。
そして同じゴールを選んだ人同士でチームを組み、
「理想な状態」→「世界/地域の現状把握」→
「現在行われている課題解決のための対応策の調査」→
「高校生の自分たちにできること、解決策のアイディアを出す」
ところまでをまとめてプレゼンをしてもらう、というのが
ミッションだ。
今回紹介するのは、ゴール②「飢餓をなくそう」を選んだ
ある高校生たちの物語である。
***
彼女たちの想いは、初め「独居の高齢者の方に栄養のある料理を提供したい」
というところから始まった。
その想いを深掘っていくと、1つは彼女達が育ってきた環境が
影響していることが分かってきた。
彼女達の祖父母は、自営業で小さな農家を営んでおり、
毎回どうしてもロスが出てしまうのだという。
たとえ商品として店頭に並ばないものであったとしても
質は変わらないし、食べられる。
できる限り多くの人にフードロスの現状を知ってもらいたいし、
それらを食べてもらいたい。
まずは、そういった身近な生活から見えている課題に
関心をもってたこと。
そして次に「誰に食べてもらいたいのか」について。
地域の課題を色々と調べている中で、京丹後市の現状として
少子高齢化が進み、お年寄りのみで暮らしている家庭が多いという事実。
しかも一人暮らし率も高いようなのだ。
彼女達は「飢餓」というものを
「栄養状態が悪く、きちんとバランスの取れた食事ができていない」という
意味で捉え、独居の高齢者の方々は毎日の献立を考えることも大変であること、
また生活の中で対話をする機会が少ないとぼけてしまうリスクも高まると
考えられること。そして高校生側は、お年寄りとの交流する機会が少ない
といったようなことから、「地域の中に若者とお年寄りが交流できる機会を
生み出せば、お年寄りにとっては生きがいが生まれ、若者にとっては
自分の存在が誰かの役に立っているという実感を持つことができる。
その手段として、若者(自分たち)が栄養の整った食事を届ける、
というのはどうか。そしてその食事にロスになってしまう食材を使えば、
食品ロスを減らす為の糸口にもなる」と考えたのであった。
だがここで、1つ問題が発生。
第三者への食事の提供となると、衛生面のことなどから
ハードルがぐん、と上がる。
最終的には地域と繋がっていく形を考えたいけれど、
まずは身近なところで実験的に料理を振る舞えそうなところは
ないだろうか?
そんな時、先生からこんな話を聞く。
「学校の先生は毎日とても遅くまで仕事をしていて、
特に若手の独身の先生は、家に帰ってからまともなご飯を作る
気力や余裕などは中々ない。だから毎日栄養バランスの取れた
食事をできている人って、案外少ないと思うよ」
この話がきっかけとなり、彼女達はターゲットを
「独居の高齢者の方」から「若手の独身である教員」に変更。
これでコンセプトが固まった。
ここからプロジェクトが動き出すのだ。
企画のコンセプトが決まれば、次に何を提供するかを考える必要がある。
調べてみると過去にも似たようなコンセプトのプロジェクトがあったり、
社会貢献を目的とした企業での取り組みで参考になるような事例が
たくさん出てくる。
そういったものを元にしながらレシピを考えていく。
最終的に"野菜のたっぷり入った栄養満点の豚汁とさつまいもご飯"に決定。
汁物に拘ったのは、ロスの問題を減らすことにも繋がると考えたから。
汁物であれば、食べる人が好きな分量をお椀によそうことが可能だ。
「食べる人自身が自己判断で、食べれる分量を受け取る」
これもレシピの裏に込めた想いだ。
レシピが決まったところで、いよいよ食材の調達へ。
フードロスを減らすことを目的としているため、
野菜農家さんやお肉屋さん、お米農家さんなどに
今回の企画趣旨を説明し、余っている食材、売ることのできない
B品の提供にご協力いただけないかどうかを交渉する。
この時間のかかる作業を全部自分たちで役割分担をし、
放課後の時間なども使いながら懸命に取り組んでいる姿を見て
どれほど感動しただろう。
彼女達の本気さが伝わってくる。
交渉は話をするだけではない。
実際に生産者の方のフィールドに出向き、畑仕事のお手伝いや
生産者の方々の思いなどをヒアリングさせてもらったりした。
食べてもらうことの先に、誰かの思いがある。
作り手さんの想いを知り、それを伝えていくことが
自分たちのミッションである。
少しでも誰かの関心に引っかかれば、
身近に豊かな食材があることに気づいてくれる人が一人でも増えたら、
食を通して地域での新たな繋がりを生み出せたら...。
そんな想いを持って懸命に動いたことが、きっと
地域の方々にも伝わったのだろう。
関わる人々が本当に親身にお話しを聞いてくださり、
企画への協力にも快諾してくださった。
このプロジェクトに関わらず、これまでも地域の沢山の人々の
サポートによって、多くのプロジェクトが実現してきた。
温かい気持ちの上にこの探究の授業が成り立っているのだと、
高校生たちが地域に出る度に実感するのである。
こうして食材も無事に調達することができ、
いよいよ企画本番。
2学期の期末テスト最終日、お昼までに学校は終わるので、
お昼過ぎから家庭科室にて調理を開始。
何と30人前を用意する、ということで、大量の野菜を
刻む作業から始める。同時にブロック状になっているすじ肉を
解凍し、煮込んで柔らかくする。
ここで使用したのは、牛すじだ。
ご協力頂いたお肉屋さん(にく屋さん 優)で、余っていたのが
このタイプのお肉であったのだ。豚汁ならぬ、牛すじ煮込み汁、と
何やらグレードアップしたものを提供出来そうだ。
大量の野菜、肉を刻んだ後はお米を炊く。
軽量カップがなかったため、はかりで計って必要分の米を研ぐ。
30人分ということもあり、かなりの量である。
全ての下ごしらえの工程を終え、あとはお米が炊き上がるのと
お味噌汁を時間をかけて煮込んで、完成するのを待つのみ。
ここまでで2時間ほど。テスト後、疲れているというのに
すごい集中力である。
暫く経って、お米が炊ける。
目分量の部分もあったが、良い感じに仕上がっている。
とても美味しそうなさつまいもご飯だ。
だがすごいのは、ここからが本番だと言うこと。
何とこれからさつまいもご飯で30人前以上分のおにぎりを握るという。
「日々私達のために遅くまで働かれている先生方に
少しでもほっこりできる時間を提供したいんです。
栄養満点、ボリューム満点のご飯を喜んで食べてもらえたら、
こちらも嬉しいので!」
なんと頼もしいのだろう。
彼女達の愛情の深さに驚く。
自分たちも相当疲れているはずであるのに、
そんなことはおくびにも出さず、寧ろとても楽しそうに調理をする
彼女達の姿にこの子達はこれからどこまで成長するのだろうか、
どんなところを目指していくのだろう、と未来までもが
楽しみになったのである。
そしていよいよ提供の時間に。
とくに告知することもなく、ゲリラ的に行ったので
どれくらいの先生が食べに来てくださるか多少の不安はあったが、
続々と多くの先生方が入って来られるではないか......!
大鍋に入った豚汁、もとい牛すじ煮込み汁を見て、
先生方から歓声が上がる。
「これ自分らで作ったん?すごい良い匂いしてる!」
「具だくさんやなぁ......!!これは食べごたえありそうや!」
さつまいもごはんの特大おにぎりも配ると
その場にいる人たちはみんな目を輝かせた。
「うわぁ!おにぎりまで握ってくれたんか!美味しそうやなぁ」
いよいよ試食タイム。
一口お汁を啜った先生方から感嘆の声が。
「あぁ......。これは旨いわぁ。野菜のだしがよう出てんなぁ。
こんな野菜って甘かったんやなぁ」
「お腹が満たされて幸せですね」
「おにぎりも食べ応えがあるし、さつまいもご飯が美味しいわ」
沢山の先生方からお褒めの言葉をもらって、
少し硬い表情であった彼女達の顔にも笑顔が浮かぶ。
また今回は材料の提供にご協力頂いた生産者の方々にも
お礼の想いを込めて、牛すじ煮込み汁定食を食べてもらいたい、
ということから協力していただいた地域の方々にも
集まってもらっており、そこにも届けにいく。
ボリュームたっぷりの豚汁を見て、地域の方々からも喜びの声が。
「うわぁ!とっても美味しそうにできてる!」
「うちで獲れたニンジンがすごい入ってる(笑)」
「おにぎりもおっきい!これは仕事終わりに嬉しいなぁ」
配膳が終わり、席についたらみんなで一緒に
「いただきます!」
美味しい、美味しいとみんなが喜び、
終始和やかな時間が流れていた。
企画を立て、交渉をし、生産者さんへのヒアリングや
農作業体験を経て、材料調達、そして「疲れている先生方をねぎらいたい」
という想いのもと調理し、提供するところまでを自分たちでやりきった。
これだけのことをやるのにもちろん探究の授業の時間だけでは、
到底足りない。放課後の時間や休みの日も使って、進めてきた結果である。
ここまでやるのに本当に大変だっただろう。
ただでさえ多くの課題をこなさなければならなかったり、
部活があったり、習い事に通っていたりと、高校生らは本当に
めまぐるしい毎日を送っている。
その中でまずこの企画を実施まできちんと持っていったことに
賞賛の拍手を送りたい。
またごはんというものを通して、新たな出会いが生まれ、
たくさんの人たちが幸福感で満たされた。
この体験は、これからも彼女たちの支えにきっとなるはずだ。
色々な人々との出会いの中で、自分が大切にしたいものや
新たな自分の一面、挑戦してみたいことなどを
発見していってもらいたいな、と切に願う。
みなさん、こんにちは!
急にとても寒くなりましたね。
寒暖差が激しい昨今、体調を崩す人も
多く出ているとのことなので、十分に気をつけていきたいですね。
さて、それでは本題に参りましょう。
今回紹介するのは、2年生の「看護医療・福祉」チームに
所属する高校生チームのこと。
彼女たちは少子高齢化が叫ばれる地域の
今後の医療体制の在り方を検討したいと考え、
探究活動を進めていました。
そして他地域の取り組みを色々と調べる中で、
何とまちの本屋さんが地域住民の健康相談にのっている、
という情報を得ます。
それは、お隣の兵庫県豊岡市にある本屋さん。
お店が大開通りに面していることから
「だいかい文庫」という名称で知られているらしい。
お店の運営についてさらに調べていくと、
経営者はお医者さん。
お医者さんが在中している本屋さん......?
ますます気になるので、実際に見学に
行ってみることにしました。
実際にお店の前に辿り着くと、
扉は全部ガラス張り。
外から中の様子が伺えます。
「この設計、ちょっとrootsにも似てるね!」
何て言いながら、「お邪魔しま~す!」と
扉を開けていざ中へ。
「こんにちは~!」
私達を元気に明るく迎えてくれたのは、
その日お店番をしていたみきさん。
「初めてのご来店ですか?」
「初めて来ました~!」
「ではまずはお店の案内をしますね。」
みきさんの案内で、お店の中を
巡回します。
最初に案内してくださったのは
お店の中でも一際目を引く本棚について。
お店の半分以上は本棚が占めており、
ぱっと見ただけでも色々な種類の
本が並んでいるのが分かります。
しかも本だけではなく、ある棚にはこけしなどの
民芸品、またある棚にはプラモデルなどが置かれ、
棚ごとに雰囲気が全然違って面白い。
「こちらは一箱本棚、と呼ばれるもので。
各本棚ごとにオーナーさんがいます。
こちらの棚にある本は全て貸し出しが可能なのですが、
貸出している本は、すべて本棚オーナ-さんによる
オススメ本なの。
だいかい文庫では、一箱本棚オーナー制度という制度があって、
オーナーさんになるとだいかい文庫に
自分だけの本棚を持つことができます。
自分の気に入っている本や、人におすすめしたい本など
自由に置くことができ、本を通しての交流や棚を使っての
自己表現ができるんですよ!
オーナーさんは、行政職員や医療従事者、アーティストに
学校の先生など、様々な方がいらっしゃいます。」
なるほど。
本棚はそれぞれの個性が表現されていて、
会ったことがない人でも親近感を覚えたり、
この人と話してみたいなぁ、という思いが湧いてくる。
棚には、オーナーさんの名刺も置かれていて、
気軽にご本人に連絡も取れるシステムになっているようだ。
ちょっとした飲み物も提供しており、
ちょっとまったり飲みながら本でも読もうか、と
落ち着けるスペースがあったり、新刊本コーナーも
あったりして、こちらは本屋として利用ができる。
図書館としても本屋としてもカフェとしても
利用できる多目的な場。
自分の使いたい用途によって使い分けすることができ、
緩やかに人々が繋がっている感じが心地よい。
「みきさんは、いつからだいかい文庫の
お店番をされているのですか?」
「私は今年から入ってから、まだそんなに
経ってないんだ。」
みきさんは、ここに来られる前は看護師として
働いていました。
大きな病院で毎日無我夢中に働いていたある日、
ぽつん、と自分一人だけが取り残されて
しまったような感覚に陥ったと言います。
「患者さんのケアをする毎日。確かにやりがいもあったけど、
自分のケアが全然できてなくって。ある時、ぷつん、と
自分の中の何かが切れちゃったんだよね。
どうにか自分を保っていた糸が、ついに私自身を支えきれなくなって
限界でちぎれた、って感じかな。
あれ、私何のために働いてるんだっけ?
何が好きなんだったっけ?って。
それで、あ、これはやばいなぁ、と思って、
ここに来たんです。一回社会から離脱しちゃったから、
ここでこうして人と接することは、私にとって、
もう一度社会復帰するためのリハビリでもあるんだぁ。」
そう朗らかに笑うみきさん。
きっと想像に絶する苦しみを体験したのだろう。
「元々珈琲と本が大好きで。
この環境は私にぴったりなんです。
何かワクワクすることを見つけたくて、
お店番しています!
こうして高校生が関心を持ってくれて、実際に
足を運んでくれるなんて、本当に嬉しいです♪」
看護師に興味を持っているという高校生たちは、
お店を案内してもらいながら、みきさんの看護師時代の
お話しも色々と聞かせてもらっていました。
そしてここからは、インタビューの時間。
インタビューからは、みきさんとバトンタッチして
だいかい文庫のスタッフ兼居場所の相談員もしている
はるおさんこと、佐藤さんに担当していただくことに。
佐藤さんは秋田県出身。秋田の看護学校を卒業後、
東京で看護師として「看取り」と「終末期医療」に
触れる中で、"生の最期"に向き合う重要性に気づきます。
その後、京都府綾部市にて「コミュニティナース」
(地域の中で住民とパートナーシップを築きながら
地域の健康増進を図る新しい看護師の働き方)、
京都府で地域づくりに関する仕事、東京都内で
訪問看護を経験。
そして現在、だいかい文庫のスタッフとして
地域の人々の健康を見守り、ケアをすること、
居場所の相談を受ける仕事をしています。
「佐藤さん、今日はお時間をいただき
ありがとうございます!
私達は学校の探究の授業で、地域医療をテーマに
活動に取り組んでいます。
これから少子高齢化が進む地域では、
気軽に健康相談などができる仕組みが
必要だと考え、色々と他地域の取り組みについて
調べている中で、だいかい文庫さんのことを知りました。
ここは、お医者さんが起ち上げた、という記事を見ましたが
どうして医療従事者の方が本屋を運営しているのでしょうか?」
「このだいかい文庫を起ち上げたのは、豊岡の病院に
勤める医師、守本さんという方です。
守本さんは、病院の中だけでは解決できない課題が
沢山あることをいつも問題視されていました。
孤独、生きがい、役割、過疎地域での医療、
地域共生共同社会の実現......。
そんな中、医師や医療従事者が白衣を脱いで、町に
繰り出すことでできることが有るんじゃないか、
と始まった活動が起点になっています。」
何と面白い視点でしょう。
だいかい文庫を運営する守本さんは、
事業を起ち上げるにあたって、「ケアと暮らしの編集社」
という会社を創られたのですが、この会社のコンセプトは
「ケアするまちをデザインする」
つまりは街に暮らすことで健康になっていく社会の実現を
目指すということです。
そしてこの社会を実現するためには、医療介護者のみならず
街に住む人々もみんな主体を持って関わってもらうことが
大切なことだといいます。
そのためには、まちづくりやアート、デザインといった
一見医療とはかけ離れた分野の人々とのコラボが
まちに明るさをもたらし、ポップで楽しい社会実現の
第一歩。だから、だいかい文庫の本棚もスタッフさんも
本当に多様で、面白い背景を持っている方々ばかりなんだなぁ。
「なるほど。だいかい文庫ができるまでの経緯や
目指していることなどが分かってきました!
佐藤さんは、ここでどんなお仕事をされているんですか?」
「私はリンクワーカーという仕事をしています。
リンクワーカーって聞いたことある?」
この質問に首をかしげる高校生ら。
「リンクワーカーって最近出てきた職業だし、
まだそこまで認知されていないんだよね。」
リンクワーカーとは、その名の通り
"人とコミュニティを繋げる役割を果たす人"のこと。
リンクワーカーのことを知るには、まず「社会的処方」に
ついて知る必要がある、と佐藤さん。
社会的処方とは、イギリス発祥の言葉。
"身体的・精神的のみならず、
その背後にある社会的健康要因に対して、
様々な支援や地域の取り組みに繋げ、
Well-beingの向上を目指すアプローチ"という定義で説明されます。
Well-beingとは、"幸福"を指す言葉。
孤立が引き起こす生活習慣病などの社会課題を、
医療機関と地域コミュニティが連携することによって
解決を目指します。
つまり、医療機関は患者に対して
薬ではなく「人と人との繋がり」を処方するのです。
「私はここでリンクワーカーとして、
様々な悩みを抱えた人たちの相談にのったり、
然るべき専門機関と繋ぐお仕事をしています。」
病院は、明らかに身体が不調でないと
行きにくい雰囲気があります。
だけど、こうして何気なく入った書店で
何気なく話しを聞き、相談に乗ってくれる人がいたら
人々の安心材料になるのではないでしょうか。
薬は物理的に身体の不調を治すものかもしれないが、
人の心はそうはいきません。
時間はかかるもしれませんが、自分を認めてくれる人の存在、
自分を表現できる場所、ワクワクする物事、
そういう要素が人が前向きに生きていくためには必要です。
結局、一番人に効く薬は、人なのかもしれません。
「少子高齢化が進んでいく地域では
なおのこと、地域での繋がりが健康に大きな影響を
与えます。地域住人のみなさんの暮らしが
明るくポップなものになるよう、
私もその人の人生に少しでも関われたら、と
思って今ここで色んな事を学びながら
働いています。」
佐藤さんの言葉を聞いて、
すごい......と、感銘を受けた様子の高校生たち。
「健康とはどういう状態のことを指すのか」
そもそもの定義から捉えなおしてみる必要が
あるのではないか。
そしてその「健康」の状態を一人でも多くの人が
実現できるようにするには、地域にどういった仕組みや
取り組みがあればいいのか。
きっと今回の見学とインタビューを経て、
何かヒントを掴んだと思います。
今後、高校生たちがどんな答えを出すのか
楽しみですね!
突然ですが、皆さんが
「福祉」から思い浮かべることは
どんなことがありますか?
介護?ボランティア?
身体的に不自由がある人を介助すること?
それはどれも間違ってはいません。
ですが「福祉」の世界はもっと広いのです。
今回紹介するのは、
「高齢者の健康維持に欠かせないこと」を
テーマに探究活動をしている高校2年生の物語。
彼・彼女らが探究活動を通して
「福祉」とどのように向き合うようになったのか。
また活動自体は現在進行形で続いているので、
今どんな風に動いているのかについて綴ろうと思う。
***
私が初め、このチームの高校生たちと接点を持ったのは
彼らの方からとある相談を受けたことがきっかけだった。
「高齢者の方々と交流をしたいのですが、
そういった場所に繋いでもらえませんか?」
ふむ。なるほど。
高齢者と関わりたいか。
だがそれだけでは、情報としては不十分だ。
なぜ関わりたいのか。何に興味を持っているのか。
これまでの取り組みで何をしてきたのか。
今どのような状況なのか...。
知りたいことは山ほどあるので、まずはじっくり
高校生達へヒアリングをしてみることに。
そこで分かってきたのは、一人は進路の選択肢として
言語聴覚士に関心を持っているということ。
そしてもう一人は、まだ具体的な進路は定まっていないが
何となく福祉分野に興味をいだいているということ。
そこで尋ねてみる。
「進路のことも含めて、二人が福祉という分野に興味を
持っているとうことは分かったんだけど、
そもそも福祉の概念であったり、今地域でどんな取り組みが
行われているのか、どんなことが課題とされているのか、
などについて調べてみたりしたのかな?」
すると一旦、互いに顔を見合わせた後、
首を横に振る二人。
そうか。それならまずは、問いの焦点を絞っていくこと、
すなわちどこに目を向けて深ぼっていくのか、を
考えるところから始めた方が良さそうだ。
そんな訳で、まず二人に紹介したのは、
社会福祉士の資格を持ち、ハローワークで就労支援を
している野村さん。
そもそも福祉とは何か、どんな職種があるのか、
その人達はどのような連携体制を取っているのかなど、
福祉の基礎となる知識について
丁寧に解説してくださる方だ。
野村さんはご親切にも
「高校生のための福祉基礎講座」なるものを
開催してくださった。
たっぷりと解説を聞かせていただいた後、
情報量の洪水を浴びて恐らくまだ混乱状態に
陥っているであろう高校生たちに質問してみる。
「野村さんのお話しを通して、何か新たな気づきや
学びがあったかな?」
すると二人とも大きく頷いて見せた。
「これまでただ漠然と福祉=高齢者や障害を持った方を
介助することに携わること、というイメージを漠然と
持っていましたが、もっと幅広い関わり方、職種があり、
選択肢も多くあることに気づけました。」
「福祉の概要について知ることができたので、
次はこの中から改めて自分たちがどの点に着目すべきなのかを
整理し、今後何をしていくのかについて検討する必要が
あると思いました。次にすべきことが見えてきたので、
今回お話しを聞けてとても良かったです!」
福祉について、理解が深まる機会になったようで
良かった。
そして次に提供した情報は、この丹後地域の中で
福祉の中のとくに「地域医療」という分野で
ご活躍されている二人の人物について。
一人は、京都全域に展開しているゆう薬局
の薬剤師である船戸さん。
京都北部のエリアのとりまとめ役をされており、
薬剤師として地域でのケア活動に力を入れる。
もう一人は、シャルコー・マリー・トゥース病という
神経難病を抱えながらも、言語聴覚士として
日々奮闘している笠井さん。
薬剤師と言語聴覚士。
職種は違うが二人に共通しているのは、その仕事への向き合い方。
「目の前にいる対象者の方、そしてその人を取り巻く
人々の幸せを願うこと。この仕事は、人を幸せにする力がある」
そういう信念と覚悟を持って、人々と、そして地域と
向き合われているのがこの二人なのだ。
高齢者福祉についてテーマに調べている高校生達には
ぜひとも会わせたい人たちであった。
これまでにお二人が取り上げられている記事は
たくさんあったので、それらをシェアし、
お二人の活動についてまずは調べられるだけ調べて、
印象に残った点や疑問に思ったこと、聞いてみたいことなどを
纏めるよう話した。
その上で、10月の中旬。
そのお二人をゲストに招き、「これからの地域医療」を
考える対談イベントを実施!!
お二人が揃うことなど滅多にないので、
これはすごい、と大人側も興奮!!
なぜ今、薬剤師が地域に出るのか、
地域医療の体制は今どのような状況にあるのか、
そして今後高齢化社会が進んでいく中で求められる
地域社会の在り方とはいったいどんなものなのか、
最期まで人間らしくあるように、話すことや食べることに
携わる言語聴覚士の覚悟ややり甲斐、
お二人のご経験に基づいた様々なエピソードを
聞かせていただいた。
しかもこの日はゆう薬局さんの若手職員(新人)向けの
研修も同時に行われたため、新入社員(1年目)の人々も
見学に来てくれて。
大学を卒業したばかりなので、高校生とも距離が近く
ワークショップでも悩み相談を聞いてくれたりなど、
とても充実した時間になったのだった。
最初の相談は「高齢者の方と交流したい」
そこから、気がつけばこんな風な出来事を通して
地域と繋がっていった高校生。
最初の想像とは違ったかも知れない。
思いもよらない方向に探究が進んでいったかもしれない。
それでも、交流の後の二人の顔はいつだって
充実感に満ちあふれていたから、こういう機会を
作って良かったなぁ、と心から思う。
探究は偶発性の連続だ。
このアクシデントをどう捉えるのか、で
学びの質も変わってくる。
きっとこれまでの取り組みを通して、
高校生たちの「探究する目的」はより具体的に
なったのではないか、と思う。
その上で、「高齢者の方々との関わり方」について
再度検討してくれたら、最初に思っていたよりも
より深い関わり方ができるんじゃないか、って。
「自分で気づくこと」
「地域の面白さを知ること」
「関わり方、考え方は様々であること」
「"交流"ひとつとっても、目的によって手段を検討する必要があること」
「福祉をちょっと違う場所から見つめてみること」
学校を飛び出して、地域と繋がっていくことで
もしかしたら新たな自分に出会えるかも知れない。
興味深いことが見つかるかも知れない。
代わり映えのしない日常に、少しの光が差すかも知れない。
高校時代になるべくそういう経験をしてもらえたら
いいなぁ、と思いながら今日も高校生達の探究を
隣で見守っている。
こんにちは!
地域コーディネーターの能勢です。
本日紹介するのは、2年生の
とある探究プロジェクトのチームについて。
彼女達は「伝統を継承するためには何ができるか」を
テーマに探究活動を進めています。
****
このチームは3人のメンバーで
構成されているのだが、
まずそれぞれが異なる点に関心を持っている、
という点がユニークだ。
一人は「古い町並みや建物」に魅力を感じてるという。
もう一人は「ちりめん」が好きで、
特に着物を愛してやまず、
さらにもう一人は「伝統」そのものにも
関心をいだいているが、
どちらかと言えばそれらを
"どのようにして分かりやすく伝えるか"に
着目しており、複雑なものを可視化させる、
つまりデザインに落とし込むことに
興味を持っている。
それぞれの興味関心は違えど、
「伝統をどう残し、次に繋ぐのか」という点に共通点があり、
チームになったという訳である。
一番初め、彼女達は「伝統継承とは何か」について
自分たちなりに定義づけしてみることから始めた。
話合いのもと定まったのが
「古くから受け継がれる技術や技法を残し、
それを後生にも出来る限り
保存した状態で伝えていくこと」
その定義のもと、では自分たちの考える
「伝統継承」がどのような手段であれば
実現が可能なのかを検討していく。
その時出てきたのは「パンフレット」を作ること。
彼女たちはどうしてパンフレットを
作ることに行き着いたのか。
まず1つにパンフレットは
丹後を訪れる人の多くが気軽に
手に取りやすい、と考えたから。
またパンフレットには、手に取ってもらったときに
伝統的なものに実際に触れてもらう機会にするため、
素材としてちりめんを使用したい、と話していた。
そんな訳で、ひとまずパンフレットに掲載したい情報を
整理し、実際に現場に訪問する日取りを決めていく。
ここの情報は是非とも載せたい!
実際にここには自分たちで足を運んでみたい!
そうやって出てきた場所は、
網野町八丁浜にお店を構える提灯屋さん「小嶋庵」さん
平成15年1月に文化財に登録された久美浜にある豪商稲葉本家
丹後ちりめんの文化を様々な形で継承するための活動を行っている
丹後織物工業組合さん
これらの場所に
ヒアリングも兼ねて訪問することが決まったが、
その前にrootsで何やら彼女たちの探究に
関連しそうな興味深いイベントが開催されるとのことで、
コーディネーターから訪問前にぜひ参加してみるよう、持ちかけた。
ワークショップの企画者は、丹後広域振興局で
アートマネージャーをしている甲斐さん。
実は甲斐さんも地域の人々にアートを身近に感じてほしい、
という想いからまちづくり×アート、
伝統×アートといったように
アートと様々なものを掛け合わせて
人々を巻き込んでいく形の参加型ワークショップを
これまでも数多く企画されている。
きっと彼女達の良きアドバイザーに
なってくださるに違いない、と思ったのだ。
ワークショップの内容は、地域の方々の家に眠っている
要らなくなった着物やネクタイなどの布製の小物類を
使って、町のあらゆる場所に存在している「色々な形」を
切り取り、端切れに縫っていくというものだ。
「色々な形」というのは、町の中にある何気ない日常の風景、
屋根の瓦や道端のポスト、窓の模様に思い出のある景色など。
参加者は、町を歩き、自分の感性で面白いと感じたものを
写真に収め、その写真に写った「形」を布(地域に眠っていた
布製品、つまりはその多くが着物であり、伝統的なちりめん)に
型取り、切り取る。その切り取られた布を端切れに縫い付けていく。
縫う、という行為はその人を一定時間同じ場所に留める
拘束力を持つ。
それがある意味、このワークショップの
主の目的なんだと思う。
必然的に参加者たちは縫う行為を通して、
交流をすることになる。
そう、対話だ。
彼女達もチクチクと手を動かしながら、同時に
言葉も紡いでいく。
自分たちがどうしてこの探究を始めたのか、
何に興味を持っているのか、悩みなどについて。
ワークショップ終了後には、
みんなとてもすっきりした
表情を浮かべていた。
甲斐さんや偶然居合わせた他の参加者の方との交流や
現代アートと伝統の掛け合わせといった
新しい形の体験は、彼女達に何らかの
インスピレーションを与えたらしい。
「私達は伝統継承を
"原型や昔から受け継がれる想いや
技術をできる限りそのままの状態を保ったまま、
その良さを伝えること"と考えてきたけれど、
それだけが正解じゃないのかもしれないね」
まだ自分たちの答えは見えていないが、
ワークショップでの体験は
少し自分たちの問いや定義に
揺らぎが生じた出来事となった。
そのワークショップの後に出向いたのは、
網野町の提灯屋「小嶋庵」さん。
江戸時代から続く老舗の提灯屋「小嶋商店」
京都の祇園南座前に行くと掲げられている
あの真っ赤な提灯に皆さんも見覚えがあるのでは
ないだろうか。
あの提灯を手掛けているのも実は「小嶋商店」
寺社仏閣などの歴史的建造物につきものの伝統的な提灯は勿論、
ショップのインテリアとしての現代的でお洒落な提灯まで
幅広く手掛けている。
その10代目となる兄弟の兄である小嶋俊さんが
2021年に網野町に移住して起ち上げた新たな工房が
「小嶋庵」なのだ。
ご家族での移住を決意したのは、コロナ禍の世の中に
なったことがきっかけ。
先が見えない中、世界中が塞ぎ込んでいたあの時期、
都市部から離れて遊びに来た八丁浜。
目の前に広がる景色に子供たちの目が輝いたという。
「自分が見たかった光景が今実現している。
ここが好きや。子どもたちにも伸び伸びと育って欲しい。
家族が笑顔になれる場所に拠点を持とう」
移住を決断した一番の理由は、家族の幸せを願ったこと。
そしてもう一つ、小嶋さん自身が感じていたこと。
「先が見えないことが、逆に僕にとってはワクワクすることに
感じた。"どうなるかわからないこと"に挑むことが
出来ていなかったここ最近。環境をガラッと変えて、
新しい土地で新しい挑戦をしている自分を想像する方が
圧倒的に楽しい気分になったので。」
新しい工房の目と鼻の先には丹後の美しい海が広がる。
大自然の中に佇む工房は、元機織り工場の建物。
扉を開けると自然の竹の良い香りがふわっと漂う。
そして目を引くのは、天井の高さと何の仕切りもない、
広い空間。解放感のあるその空間で、小嶋さんや奥さん、
そしてご近所のお母さんたちや若手の移住者などが
提灯を作るのに必要な部品をそれぞれ作る作業をしている。
その横では、子供たちがワイワイキャーキャーしながら
遊んでいて。
「ダイバーシティ」ってきっとこういうことを言うんだろうなぁ、
というような光景が広がっている。
「僕はこの空間を色々な人の集まる場に
したいと思っているんです。」
そう話す小嶋さん。
近所の子どもたちが「何やってるんかな」
「今日もおっちゃん、提灯つくってるんやろか?」って
気軽にぱっと入って来れるような開けた場所にしたい。
どんな人でも入れるように門を開けておく。
例えば、今ここで一緒に働いてくださる人たちは、
生まれも育ちもここ、網野町の若手のお母さん。
小さなお子さんもいて、工房に赤ちゃんも一緒に連れて来られる。
「子ども同伴OKにしていたり、赤ちゃんがぐずったら
今日はここまでにしましょう、なんて臨機応変に働いてもらっています。
こういう風にしているのも今後一緒に提灯を作れる人を
育成したいと考えているから。新たな職人を育てるのも
僕の仕事だと思っています。」
フレンドリーに話してくださる小嶋さんに
すっかり魅了された様子の高校生たち。
小嶋さんの工房では、ミニ提灯を作る体験ができる
ワークショップも企画されており、せっかくなので
高校生たちもオリジナルの提灯作りにチャレンジ★
提灯のベースになる竹の型に糊をぬり...
そこに貼り付ける紙を準備する。
表にくる紙はとても薄いので、裏側に台紙となる紙をもう一枚
貼り付けて補強。
それを先ほど糊を縫った型にペタペタ貼っていく。
一周ぐるっと紙を貼り付けて、乾かせば...
じゃーん♪
オリジナル提灯の完成!!
最後に彼女たちは、こんな質問を投げかけた。
「小嶋さんにとって"伝統継承"とはどういうことだと思いますか?」
「僕にとって伝統継承とは"時代の流れにあった方法で、
昔から受け継がれてきた素材を使って、
今目の前にいる人をワクワクさせること。
そのままの形や型を守ることだけが、決して継承だとは
思いません。まず人々の興味関心をそそらないことには
扱っているもの自体を知ってもらうことすらできませんから。」
ワクワクさせるものを作り出すこと。
面白いと興味を持ってもらうこと。
そのたの手段は多様であっていいということ。
伝統=形・型(昔ながらのもの)を守ること
と考えてきた高校生らにとっては、この答えは斬新で
とても新鮮だった。
「伝統継承」は自分たちが思っていたよりも
もっと寛容であっても良いのかもしれない。
先の甲斐さんとの交流の時もそうだったが、
まずは人々に興味を持ってもらうことから全てが始まる。
それはどうしたらいいのかな。
定義の揺らぎは、探究の学びがぐっと深まる瞬間でもある。
これから自分たちなりの「伝統継承」を形にしていくための
アクションをそれぞれが考えていってくれるだろう。
こんにちは!
地域コーディネーターの能勢です。
さてこちらの記事は前回の1年生の交流会の記事の
続き(後半)になります。
地域から各分野の専門家にお越し頂き、
お話しをお聞かせいただいたり、対話を行ったり
した時の様子をレポート。
***
こちらの教室は「気候変動に具体的な対策を」を
テーマにしている高校生らが集まりました。
ゲストは、1学期の講演会の際にも来ていただいた
野口さん。
野口さんは、現在久美浜1区で
地域おこし協力隊として活動中。
海外旅行に行った際に感じた環境に対する
意識の違いが、今の活動に繋がっているといいます。
環境に負荷をかけすぎない生活は、
ちょっとしたことを意識するだけで
誰にでもできる。
ゴミを出さない工夫、
環境をクリーンにする&それを面白がる活動、
環境に配慮したお店の話...。
生徒たちからも沢山発言があって、
とても良い雰囲気でした!!
「安全な水」では、久美浜1区の区長、谷口さん。
数年前、美しかったはずの久美浜湾の水が
汚染されいることに気がつき、それを綺麗な状態に
戻す取り組みをされています。
久美浜に住んでいるという高校生もいて、
身近なところに目を向けるきっかけに
なったようです。
丹後では代表的な大きな企業、日進製作所からは
舘さんにお話をしていただきました。
テーマは「産業と技術革新の基盤を作ろう」
「みんなはそもそも何に関心があって、
このテーマを選んだの?」
という舘さんの問いかけに
「特にインフラに興味があるんです」と答えた高校生。
日々の生活の基盤、所謂社会資本といわれる
とっても大切なもの。産業発展のためには
欠かせない分野です。
ものづくりや商品開発に関する現場の人の声を
直に聞けたことは、きっと刺激になったのでは
ないでしょうか。
この教室は「質の高い教育を」がテーマ。
京丹後市では小中学校で「丹後学」という、
探究型の授業が存在していますが、
この9年間をどのようなカリキュラムにするのか
によって、高校での探究の質ももっとぐんと上がる
可能性があるといいます。
さらに最近ではICTを活用したデザイン思考の
新しい形の教育や海外との交流にも力を入れている
という京丹後市。教育の分野においても
ワクワクするようなことが起こっていそうですね♪
さぁ、こちらは「すべての人に健康と福祉を」の教室。
担当はみねやま福祉会が運営している福祉施設さつき園
からお越し頂いた松本さんと藤本さん。
人が幸せに生活を送ること、その全てに関わる「福祉」
福祉という視点から、今地域に必要な仕組み、
コミュニティの在り方、多様な支援の形について
お話しをしていただきました。
「『福祉』のイメージが変わった!」
「今京丹後市の福祉会での課題が社会資源だと初めて知れた」
などの声が生徒たちから上がっていました。
福祉の新しい在り方が地域の課題解決にも繋がる可能性が
あることに気づいてくれていたらいいなぁと願います。
この教室は網野町に建築事務所を構える
設計士の大垣さんに担当していただきました!
テーマは「住み続けられるまちづくり」
新しいものだけではなく、古きものを大切にする精神や
新しきものと古きもの融合、町の景観、
そしてその家に住む人々の人生に及ぶところまで
とことん一緒に考える、というお話をお聞かせいただきました。
まちづくりの話のみならず、
人生において「探究する」とはどういうことか、
豊かに生きること、学ぶことの意味、といった
これからの進路選びにも役立つようなお話も
していただきました。
やっぱり何をするにおいても
"ワクワクすること"
"情熱を捧げられるものと出会うこと"
これがすごく大切だよなぁ、と改めて。
だからこそ高校生たちには外に向けて
アンテナを張っておいてほしい。
「おもしろいこと」は日常にたくさん転がっている。
そして最後の教室は「陸の豊かさを守ろう」
ゲストには、土壌医の佐藤さん。
丹後の森林、自然環境の現状はどうなっているのか。
また今問題になっている陸の課題とはどんなものか。
といった話題に触れていただき、みんなで考える時間に。
その他にも、何かの分野に徹底的に向き合うためには
専門的な知識が必ず必要になり、その基礎となるのが
高校での学び(国語や数学、物理といった専門科目)だと
いうお話もしていただきました。
この科目の内容が社会のどんな場面で役立つのかが
分からない。多くの人がそう感じているでしょう。
だけど意味のないことなんて絶対ないんです。
必ずある場面において必要な知識だからこそ、
今学校で学んでいます。
でもその繋がりが見えないと、モチベーションも
保てませんよね。
だからこそ、こうして社会に出て実際に
何かの課題に取り組まれている人との出会いは
大切なんだ、とつくづく感じます。
こうして人生の先輩が懸命に道を拓いていって
くれているから、夢や目標を持てる。
学ぶ意味が具体的になる。
できる限り、高校を卒業するまでの間に
色々な生き方、考え方に出会って欲しくて
こうした授業を作っています。
何だか面白そうだな。
そんな仕事もあるんだな。
探究って実は人生そのものなんだ。
勇気を持って、新たなチャレンジをしてみようかな。
そう感じ取ってくれる高校生が
一人でも増えるように探究の授業も模索中です。
大人も一緒に試行錯誤しながら、よりよい教育の場を
作ろう、とあがいています。
みんなのこれからの人生が、豊かであるように。
幸福になるための"選択"を自分でできるように。
"おもしろい"が学びにつながるように。
いつかここで聞いた話が、みんなの人生のどこかで
糧になったらいいなぁ。
よし、探究の授業づくりも
また頑張るぞ!
こんにちは!
地域コーディネーターの能勢です。
峰山高校では、探究のメインとなる学年は2年生。
2年生では、自分の興味関心のある
テーマについて問いを立て、
それを検証したり、自分なりの答えを
導き出すための取り組みを学校内に限らず、
地域を活用しながら行います。
つまり、自ら「地域に出る」という選択を取っていい、
ということですね。
自ら地域、社会と出会いに行く、
という積極性が試されるわけです。
では1年生は探究の授業で何をしているのか、というと
「地域と出会う」ということをテーマにしています。
何か初めてのチャレンジをするとき、
例えばスポーツでも音楽でも、
どんな分野でもそうだと思いますが、
まずはその分野のことについて
知る必要があります。
そして、だんだんと上手くできるようにするためには
やり方について学び、練習をすること。
1年生では、2年生の探究活動で自ら考え、
積極的な行動をとれるように
その方法や考え方を学びます。
そのファーストステップとして「地域と出会う」
つまり地域を知る、という時間を設けています。
地域から、様々な分野でご活躍されている方々をお招きし、
今地域で起こっている問題(現状と課題)について
シャアしていただいたり、
それに対してどんな取り組みがなされているのか、
どんな想いをもってそこに向き合われているのか、
などについてお話しを伺いました。
そしてその話を聞いた生徒たちは
そこから浮かびあがる新たな疑問点や、
これまで自分が調べてきたことに対して
より深く追求するための質問を投げかけます。
地域を知ることは、今起こっている問題に対して
自分はどう向き合うべきなのかを考えるヒントに繋がる。
地域交流会では、何と15名の方々に
講師としてお越しいただきました!
「つくる責任 つかう責任」のテーマは、
網野町で地域おこし協力隊をしながら、
丹後エクスペリエンスという
会社を起ち上げた八隅さんにお越しいただきました。
生徒たちも楽しそうに話しを聞いています!
ここでは、海ゴミをテーマに
丹後の海岸の現状についての話を皮切りに、
今私たちが向き合うべき
"より良い社会を築いていくためには
どいういったところに着目すべきなのか"
について検討する時間になりました。
漁師でもあり、猟師でもある山中さん。
今回は「海の豊かさを守る」の文脈から
お話していただきました。
命をかけて自然と対峙することの
難しさや尊さのお話しをしていただきました。
探究すること=本気で生きることには
「情熱」を持つことが、いかに重要なことなのかについて
気づくことができたのではないか、と思います。
「ジェンダー平等」では、京丹後市市民課から稲川さんに。
学校生活の中では、あまり感じることのない男女差の問題。
ですが、社会にはまだまだ根強くこの問題ははびこっています。
改めて「平等とは何か」について考えるきっかけになりました。
「不平等をなくそう」のテーマでは、
国際交流協会の麻田さんに
お話ししていただきました。
そもそも丹後で不平等って起こってるの?と
最初は疑問を持っていた生徒たちでしたが、
実は身近なところにもたくさんの種類の"不平等"が
起こっていることが分かります。
物事が複雑に絡みあって起こっているので、
何か一つのことをすれば解決できる、
というような単純な話しではありませんが、
誰かがそこに関心を持って向き合わなければ
何も変わりません。
どんなに小さなことでも、
より良い結果を生むために起こした行動は
立派な一歩。
生徒たちは悶々と悩みながらも、
今できることについて懸命に考えます。
こちらは「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の教室。
講師はエコネット丹後の川内さん。
自然エネルギーを一通りご自身で試している川内さんの
お話しはものすごく説得力がある。
情報収集をするだけでは、何の解決策にもならない、
実践こそ、価値のあるものだ、と説く川内さんの話を聞いて
生徒たちは深く共感している様子でした。
京丹後市の「寄り添い支援総合サポートセンター」から中村さん。
「貧困をなくそう」のテーマからお話しをしていただきました。
この施設では、市民のみなさんの生活に関する
様々な困りごとについての相談を聞き、
解決策を一緒に考える取り組みをしています。
「貧困」についてのの捉え方が変わったと
話す生徒たちもいました。
ここは「飢餓をゼロに」の教室。
担当していただいたのは、
京丹後市社会福祉協議会のみなさん。
社会福祉協議会で取り組まれている
フードバンクについてや、
学校ではあまり触れられない
お金の使い方・管理の仕方についても
お伝えいただきました。
「不自由なく生活を送る」って、
実はかなり自分でコントロールしないと難しいし、
ちょっとしたトラブルが原因で
これまで当たり前に送ってきた
"日常"が一変することもある。
そもそも社会の福祉の仕組みが
整備されていないと
「不自由なく生活する」ことは難しい。
"当たり前"を見直すことに繋がっていればいいなぁ。
このように1年生の授業では、
地域に出会う機会を作っています。
この記事は、地域交流会の前半について
紹介させていただきました!
後半については、また別の記事で綴りたいと思います。
それではまた次回の記事をお楽しみに(@^^)/~~~
峰高生ら(当時1年生)の発案により生まれた「丹後万博」が
昨年開催の実現を果たし、大いに盛り上がりを見せたが、
それに引き続いて、今年も10月末に第2回目となる
この大イベントが実施されました。
今年のテーマは
「~守ろうで、丹後のええもん~ ー自然・人・伝統・食・産業ー」
というもので、丹後内の3つの高校の
実行委員会メンバーを中心に
プログラムを練り上げてきました。
今年もイベント当日を迎えるまでの間に
本当に沢山のドラマがありました。
当日の様子と合わせて、コーディネーターの視点から捉えた
嬉しかったこと、感動したことを中心に紹介しましょう。
***
昨年、丹後万博開催に当たって、
全体を統率してくれていた先輩(現3年生)が
大切にしてきた想いも受け継ぎながらも、
今年現役世代として先頭を走らなければいけない
高校生たち(現2年生)が大切にしたいこと、
そしてやってみたい、チャレンジしてみたいと
思うことを実現させていくことにもまた意味がある。
一度、先輩とそのバトンを受け継ぐ後輩とで
ミーティングが行われたのだが、
その白熱した空気感は未だに
忘れることができません。
受け継ぐ者も受け取る側もそこにかける
大きな想いを持っていたからこそ、
あの緊張感が生まれたのだ。
その時はまだ今年の万博がどんな風なものになるのか、
アイディアを出す段階であったため、
まだまだコンテンツを
固めていく必要もあり、
先輩と後輩がそれぞれの想いをぶつけ、
伝え合うのにとてもよい機会となったのではないでしょうか。
ミーティングを終え、より気合いの入った高校生たちは、
それぞれの役割を果たすべく、動き始めました。
(※当日までの間にどんな物語があったのかについては、
既に上がっている記事や、これからもまた更新していく予定なので
詳しくはぜひそちらも合わせてお読みください)
これまでの記事↓
ではここからは万博の当日の記録を。
写真でこの空気感がどこまで伝わるか分かりませんが、
とにかく今年も熱かった!!
人の購買意欲の心理について探究するため、
異なるパッケージをデザインし、事業者さんと協働で
考案したコロッケを販売するチーム。
購入してくださった方々になぜ購入を決めたのか、
その理由についてアンケートも取りました。
こちらは「地産地消を推進していくためには?」という
テーマで探究活動をしているチーム。
地元の農家さんでロスになってしまうさつまいもを加工し、
無農薬の拘りを持つ峰山にある米農家さんの米粉を使った
ドーナツを販売。
丹後の特産物を使用して
焼き菓子を中心に作られている地域の方のご協力を得て、
一緒に考えたレシピをもとに作ったドーナツは
大人気! 「素材の味をしっかり味わえて、
ボリュームもあって美味しい」との声を
たくさんいただきました♪
こちらは国際交流関係のブース。
去年に引き続きワールドカフェの開催に加えて、
海外のゲームを楽しめるコーナーや、
JICAの活動について紹介をする
ブースも登場。人の流れも多く、
とっても盛り上がっていました\(^o^)/
eスポーツの会場も楽しそう♪
機材の不調からか、急遽配信を取りやめたり、
途中で電源が落ちてしまったりと、
小さなトラブルが起こりつつも
その都度、今何をすべきか、どこを優先して、
何をしないか、などその場の状況に合わせた判断を瞬時にし、
進行している姿がとても印象的でした。
臨機応変な対応を求められた難しい企画をやり遂げた高校生らは
この1日できっと驚くほど成長を遂げたでしょう。
小さな子どもさんの参加も多く、年齢層の違う人たちと
一緒に楽しみたい、という夢が叶って良かったね。
アイスチームもとっても頑張った!!
この日、最初から最後まで声を出していたのは
間違いなく彼女達でしょう。
肌寒く、アイスを売るには難しい状況の中、
このブースの前で足を止める人が多かったのは、
彼女達が楽しそうにしている姿が
目を引いたからだと思います。
地元の農家さんのお手伝いに行って、
自分たちで収穫してきた
さつまいもと梨のアイスは、
「最高に美味しい!!」
と多くの人の感動を集めていました。
各ブースの魅力紹介や来場者の方にインタビューする
取材班も高校生が担当★
リポーターやラジオパーソナリティを夢みる高校生たちが
インタビューに挑戦!!
ちょっと変わり種のブースも登場。
物価の上昇や環境負荷が叫ばれる昨今、
新たな選択として
注目を浴び始めている昆虫食。
昆虫食の可能性について伝えたい、と
昆虫好きの高校生たちが
コオロギパウダーを使用したマドレーヌを用意。
「え、美味しいの??!」
「それが案外いけるんです!」
昆虫食の今後が楽しみです。
国際バンドも♪
人種も文化も異なるもの同士で組んで、スペシャルバンドを。
会場は最高潮の盛り上がりを見せました。
限られた時間の中、それぞれが不安感を持って
取り組んでいたと思います。
それでもあの日、あの場所に関わっていた全ての高校生、
地域の人々、来場してくださった人々が
本当に"いい顔"をしていて。
一人一人が今自分にできること、すべきこと、その役割を
瞬時に判断し、行動に移した結果が、
あの盛り上がりと感動を生んだのです。
終了後、みんなが口を揃えて
「楽しかった!」「やりきった!」と達成感に
満ちあふれた表情を見せてくれました。
こんな風にできたのは、関わったみんなが本気だったから。
本気の「やってみたい」は人を熱くする。
「こんなことできたらいいな」「挑戦してみたいな」と
最初に種を蒔いてくれたのは高校生たち。
そしてそこに共感し、面白みを見いだして一緒に育ててくれた
地域の人々。ちゃんとそこに「誰かの想い」がのっていたから、
それがいつの間にか「みんなの想い」に変わっていったんだ。
本気でぶつかれば、関わる相手も本気で返してくれる。
その姿に影響されて、もっと頑張ろうと立ち上がる。
互いが刺激しあって、良いものを創りだそうと必死になる。
そこに年齢の差や立場の違いは関係ない。
ただ一丸となって、真っ直ぐ突き進む。
高校生と地域の人との間にそういう関係性が生まれていたこと、
ドラマが起こっていた事に私は胸を熱くした。
開催するまでは、大変なことも沢山あったけど
やっぱりこういうことを経験できるって、最高だな、と。
みんな、本当にお疲れ様でした。
素敵な時間をありがとう。
あの日関わっていた全ての人に感謝と拍手を。
ここで得た経験や繋がり、学びを糧にこれからも
しなやかに生きていってくださいね。