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フードロスについて調べていたら「丹後ってすごい!!」と気づいたんだ~0円食堂〈2年生探究:フィールドワーク編〉~

 


その相談は突然舞い込んだのだ。


「『ザ!鉄腕!!DASH!!!』っていう番組の中に

「0円食堂」という企画があるじゃないですか?

あれを丹後でできないか、と思ったのですが

農家さんなどと繋いでもらうことって出来ますか?」


日本テレビが放送している番組に「0円食堂」という企画が

あったのをご存じだろうか。


日本全国の地方でロスになっている食材を集め、

その「0円食材」を使って真心込めて料理を作る、という

内容なのだが、どうやら食材が豊かである丹後なら

0円食堂の実現が可能なのではないか、と考えたようだ。


これは面白い!

繋ぐ先ならいくらでもある。

相談に来た高校生たちの様子を見ても、

「あれこれ考えるより先にまずは動いてみよう!」と

フットワークの軽さを感じたので、取り急ぎまずはrootsへ

行ってきな、と促す。


rootsに行けば、地域の情報はある程度手に入る上、

現在、農家さんで働いている相談員もいる。

手っ取り早く当事者から話しを聞くのが良いだろう。


rootsへと足を運んだ高校生たちは、

0円食堂が丹後でできるのではないか、という仮説をもとに

どんなものがこの地域で作られているのかを相談員の方から

情報収集していく。


すると驚くべき事が発覚!!

何と多様な食材だけにとどまらず、塩や味噌、醤油といった

調味料類まで作られていることが分かったのだ。


「これって、絶対できるやん!!」


そう確信した彼らは、次にrootsで得た情報をもとに

実際に作り手さんのところへ足を運んでみることに。

今回ご協力いただいたのは、

てんとうむしばたけのオーガニックおやさい梅本農場さん と

さつまいも農家の 竹田農園さん。


梅本農場では、季節ごとに様々な有機野菜が栽培される。

「美味しい野菜は、良い土から」という考えから、

何と土を作るところから始まったというのだから

この拘りようからどれだけ品質に力を注いでいるのかが分かるだろう。


畑も広大で、全国各地から研修生を募り、農業についての

ノウハウを伝えている。

この時期はキャベツやレタス、にんじん、小松菜、大根等が

獲れるということで、収穫のお手伝いをするため畑へと出向く。

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スタッフさんに収穫の仕方を伝授してもらって、早速チャレンジ!

土に埋まっているものは想像以上に深いところにあって

掘り起こすのに一苦労。野菜たちはずっしりと重く、それら1つ1つを

掘り出してから丁寧にかごに入れていく作業も自分たちが考えていたよりも

ずっと時間がかかる。


実際に自らの手で収穫の体験をすることで、普段の生活の中で

当たり前のように食卓に並んでいる食材たちは、こうして

1つ1つ手間暇かけて作られたこと、農業に携わる人々の重労働の上に

届けられたものである、ということ肌で知ることになった。

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また梅本農場で働いているスタッフさんたちにもインタビューを実施。

どのような想いで仕事に向き合われているのか、

またフードロスなどに関する課題についてのご意見を聞いた。


「自然の恵みは全て土に凝縮されています。

豊かな土はどこから作られるのかを辿っていくと森の落ち葉から

生まれるんです。雨や風を受けて森に溜まった落ち葉は、

虫や微生物たちによってゆっくり時間をかけながら分解され、

やがて栄養素をたっぷり含んだ土へと生まれ変わります。

これらの豊かな土が1センチできるのに、

何と100年かかると言われているんですよ」


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話しを聞いていた高校生たちの顔に驚きの表情が浮かぶ。

改めて自然の偉大さや、それを守らねばならない理由について

気がついたようであった。


「うちの農場では、その森の豊かな土をこの畑で再現しているんです」


豊かな土の中には多様な種類の落ち葉や虫、微生物の栄養が

豊富に満ちていて、野菜たちのエネルギーになる。

土においしさの秘訣あり。


ここでフードロスに関する話題についても尋ねてみる。


「フードロスの問題、確かに難しいですよね。

でも実はうちの農場では、そんなにロスが出ていないんですよ。

ロスがなるべく出ないようにする仕組みを考えている、と言えば

分かりやすいかな。例えば、うちの野菜が欲しい人に直接売るのも1つ。

スーパーなどで不特定多数の商品を卸すのではなく、必要な人へ必要な分だけ

届ける。するとロスは出にくくなります。

また形が悪くて、商品にできないものについてはうちの畑のスタッフ内で

分けたり、収穫が忙しい時期などに地域から畑体験も兼ねたお手伝いで

関わってくださる方を募って、その対価に持ち帰っていただくといった

工夫もしています。さらにカフェも運営していて、ここで獲れた旬のものを

使用したメニューを提供し、いつでも新鮮な状態で食べてもらえるような

仕組みも作りました。なので、この農場内で循環ができていて、

皆さんが想像しているよりもうちではロスが少ないかもしれません」

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食品ロスという問題に対して、どうすれば課題を軽減できるのか、

について、様々な手段を駆使しながら仕組化する努力を重ねる

梅本農場さんの取り組みには感服する。


高校生たちは、農家さんの想いやこういった裏側の取り組みについても

ぜひ沢山の人たちに知ってもらいたい、と意気込んでいた。


続いて足を運んだのは、峰山町の五箇にある竹田農園さん。

ここではさつまいもを中心にキャベツやさといもなど

季節ごとに数種類の野菜を育てている。


高校生らが畑を訪れた際には、ちょうど数種類のさつまいもが

旬を迎える時期であり、とくに「紅いもはるか」が良い感じに

出来上がっているという。


では早速、収穫のお手伝いに行こうではないか!

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畑はかなり広大な範囲に広がっていて、

全て人力で掘り起こすのは非効率かつ重労働のため、

トラクターのような機械を使って地表に出していく。


でもこれがまたすごい量で。

今度はこれらのさつまいもをツタから切り離し、

大きさが同じくらいのものを集めて、それぞれのかごに回収していく。

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初めは意気揚々と作業に取り組んでいた高校生たちも

段々と疲れを見せ始める。

さつまいもをツタから切り離すのに想像以上に力が必要なこと。

常にしゃがんでの作業となるので足腰に痛みが出てくること。

収穫したさつまいもでいっぱいになったかごの運搬は

体力を大きく消耗する作業であること。

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こうして実際に体験することで、身にしみて分かる

農作業の厳しさ。

そして同時に自分たちが毎日享受している恵みは

美味しいものを人々に食べてもらいたい、と

懸命に大変な仕事に向き合う人々の想いの上に成り立っているのだ、

ということに気がつく。

自然に湧き上がってくる感謝の思い。


「実際にこうしてお手伝いをさせていただいて、気づくことが

たくさんありました。ぜひ農家さんたちの想いも僕たちの企画の中で

伝えられるような取り組みにしたいと思います!」


そして竹田さんにもフードロスに関する考えを聞いてみる。


「うーん。それは本当に難しい問題ですよね。

確かにうちでも全てのさつまいもが売れるわけではありません。

形の悪いものや傷んでいるもの、商品としての基準を

満たしておらず、どうしてもいくらかはロスになってしまいます。

うちはそういったものを少しでも減らしていくために、

最近無人販売所を設置しました。

形などが悪くとも、味は確かであるので、そういうものを

安価で買える仕組みを導入したんです。

また加工して新たな商品として世に送り出す、という企業さんも

あるので、そういったところとの連携を取っていくといったことも

今後できたらいいな、と思ってます」

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こうして生産者さんのお話をお聞かせいただくことで、

見えてきた現実や今後の展望のお話しなど

全てをまるっとひっくるめて自分たちなりの「0円食堂」を

実現したいと、高校生達は改めて胸に決めたのであった。


このあとの展開はまた次回へと続く...。







 
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