突然ですがみなさんは画像①の植物を見たことがありますか?これはネジバナ Spiranthes sinensis という植物です。最大の特徴はネジバナという和名およびSpiranthes(spira 螺旋 + anthos 花)という属名の通り、まるで螺旋階段のように"ネジ"れながら咲く、小さくて可愛らしい"花"でしょう(画像②)。日本全国の日当たりの良い平地で見られる雑草で、桃山高校でも毎年6月下旬頃に正門前と食堂横の広場で一斉に花を咲かせます。このネジバナをよく観察してみると、非常に面白いことに気が付きます。
画像③~⑥は桃山高校の校内で撮影したネジバナの写真です。これらを見比べて、何か気が付くことはありませんか?さらに見比べやすくするために、特徴の異なる3つの個体を並べてみましょう(画像⑦)。花の色や数、ネジれの向きや強弱などに注目してみてください。
さて、いつものように自由に考えてみましょう。
花をネジりながら咲かせることで何か良いことがあるのでしょうか?ネジバナは昆虫に花粉を運ばせて受粉する「虫媒花」です。ということは......?
また、ネジバナにとってはどんなネジれ方が理想なのでしょうか?時計回りの方が良いのか、反時計回りの方が良いのか......。強くネジれた方が良いのか、あまりネジれない方が良いのか......。それともどのようにネジれてもあまり関係ないのでしょうか......?
ひょっとしたら周りの環境によって理想のネジれ方も違うかもしれません。みなさんも虫の気持ちになって考えてみてください。
この自然科学article、一番最初の記事では「春の中庭」を取り上げました。桜の花が咲き誇る3月末の中庭と緑が生い茂る4月末の中庭を比較しましたよね。
あれから2か月が経ち、中庭にはさらなる変化が。上の写真はそれぞれ4月末と6月末に同じアングルから中庭を撮影したものです。春から初夏にかけて、中庭にどんな変化が起こったのか、2枚の写真を見比べながらぜひ探してみてください。
すっかり暑くなりました。中庭も夏らしく緑に染まっています。そんな中庭に、一部教員の間で密かに話題になっている植物があるんです。それは画像①の木、ヤマモモ(山桃)です。"桃山"ではありませんよ、"山桃"です。「桃山の山桃」......早口言葉みたいですね。
このヤマモモ、今年はなんと実をつけました(画像②,③)。ヤマモモには隔年結果性という性質があり、果実が実る年とほとんど実らない年があるのだとか。桃山高校に赴任して3年目の筆者も、初めてヤマモモの結実を目の当たりにしました。ちなみにこの果実、熟すると真っ赤になりそれなりに美味しいのだとか。しかしインターネットで調べてみると「松ヤニの味がする。」という噂も。食べてみたいような食べたくないような......。
ところでこの世には「山桃」以外にも沢山の「〇桃」があります。皆さんは以下の「〇桃」が何のことだか分かりますか?また名前に「桃」と付くだけあってすべて桃の仲間なのでしょうか?ぜひ調べてみてください。
①酸桃 "酸"っぱい"桃"、そのまま読んでください。
②胡桃 女の子の名前に使われることがあります。
③桜桃 "桜"の"桃"といったらアレでしょう。
④唐桃 こちらは古来の読み方。別名の方が有名です。
⑤扁桃 英名があまりにも有名です。
⑥蔓苔桃 英名があまりにも有名です。
⑦蒲桃 知名度はありませんが面白い名前です。
⑧彌猴桃 これを読めたら自慢できますね。
今回のテーマは"桜"です。
・・・・・・「え?6月なのに桜?4月の記事を間違えて投稿したのかな?」というみなさんの声が聞こえてきます。確かに桜といえば、3~4月に見られる花満開の姿を想像する人がほとんどでしょう。しかし今日の主役は桜の花ではなく桜の葉です。
ここに3枚の桜の葉があります(画像①②)。これらの葉を見比べて、何か気付くことはありますか?〈左の葉〉は明らかに他と違うような気がしますね。では残りの〈真ん中の葉〉と〈右の葉〉はどうでしょうか。画像③④は〈真ん中の葉〉、画像⑤⑥は〈右の葉〉を拡大したものです。反り返り具合、表面の質感、細部の色......細かい違いがあるように見えませんか?
......しかし実は〈真ん中の葉〉と〈右の葉〉は同じ種、それも同じ一本の木から採取したものです。桃山高校の中庭には大きな桜の木があるのですが、日当たりの良い場所(画像⑦赤丸)で〈真ん中の葉〉、日当たりの悪い場所(画像⑦黄丸)で〈右の葉〉を採取しました。同じ木の中でも日当たりによって葉の特徴に違いがあるなんて不思議ですよね。何のためにこのような違いが生じるのでしょうか?
ところで〈左の葉〉は本当に桜の仲間なのでしょうか?〈真ん中の葉〉や〈右の葉〉と比較して共通点(桜の葉の特徴)を探してみましょう(画像①には桜の仲間の最大の特徴が写っています)。
花が散った途端急に注目されなくなる桜の木ですが、たまには2か月前を思い出して観察してみてください。意外と面白いことが見つかるかもしれません。
本日は桃山高校が行っている探究活動の鉄板ネタ、ペーパードロップを紹介します。普通科の生徒は「GS探究Ⅱ」、自然科学科の生徒は「GS探究Ⅰ」という科目の中でぺーパードロップに取り組みます。
ぺーパードロップとはその名の通り、2メートルの高さから紙が落ちる様子を探究する取り組みです。しかしただ紙を落とすだけではなく、とあるテーマの達成を目指さなければなりません。そのテーマとは「狙った位置に正確に、ゆっくり落とす」です。これは災害現場などにおいて、救援物資を上空から投下して届ける場面を想定したテーマとなっています。
ここで皆さんもぺーパードロップを体験してみましょう。
紙を用意したら、まずは「何も考えず」高いところから落としてみてください(目などに入らないように気を付けてください)。紙はどんな落ち方をしましたか?次は「狙った位置に正確に落とす」ために工夫してみましょう。その次は「ゆっくり落とす」ために工夫をしてみましょう。
......さて、ここまでの活動を通して「狙った位置に正確に、ゆっくり落とす」ことがどれだけ難しいか分かったのではないでしょうか?
桃山高校の生徒たちはぺーパードロップの探究活動を通して、テーマを達成するために試行錯誤する楽しさや実験の基礎を学んだ上で、各自のテーマに分かれて課題研究を行います。皆さんも桃山高校で探究活動に取り組んでみませんか?
前編ではオオカナダモという「水草」に注目しましたが、この世のほとんどの植物は陸上に生育しています。
ではオオカナダモは何のために水中にいるのでしょうか?反対に多くの植物は何のために陸上にいるのでしょうか?水中での暮らしと陸上での暮らし、それぞれどんなメリット・デメリットがあるか、植物の欲しがるものや嫌がるものに注目して考えてみてください。
ところで陸上に生育する植物-例えばタンポポ-をオオカナダモのように無理やり水中に沈めて育てることは可能でしょうか?オオカナダモをタンポポのように土の上で育てることは可能でしょうか?・・・・・・試したことがないので正確なことは分かりませんが、なんとなく無理な気がしますよね。
ではどうしてタンポポは水中、オオカナダモは陸上で生育できないのでしょうか?・・・・・・と言うよりは、どうしてタンポポは陸上、オオカナダモは水中で生育できるのでしょうか?それぞれ陸上や水中で生きていくためにどのような工夫を備えているのか考えてみましょう。
生き物や組織の名前を覚えるだけが生物の勉強ではありません。みなさんが普段目にしている生き物についても、その背景に潜んでいる理由や工夫について考えてみてください。キーワードは「What for?-なんのために?」「How?-どうやって?」です。
本日の記事ではとある日時だけお伝えします。
この30分間、南東の空に浮かぶ月の様子を観察してみてください。きっと面白い現象が見られるはずです。興味のある人は、上記の時間以外にも18:45頃から22:50頃まで定期的に観察してみましょう。さらに面白いことに気付けるかもしれません。注目すべきは月の「大きさ」、「色」、「形」です。
今はインターネットで検索すれば大抵のものは見ることができる便利な時代です。だからこそ実物を観てみませんか?実物に触れてみませんか?たとえ得られる知識は同じでも、桁違いの衝撃と感動を得ることができますよ。
※もちろん無理は禁物です。できる範囲で構いません。
参考文献
・沼澤茂美(2021)『月刊星ナビ 2021年6月号』5月26日 赤いスーパームーン,26-31
以前の記事で紹介した通り、桃山高校の1号館と3号館の間には大きな中庭があるのですが、実はこの中庭の一角には噴水付きの池があります(画像①)。決して大きくはありませんが、カラスやスズメがよく水を浴びるためにやってくる憩いの池です。
しかしこの池、最近少し様子がおかしいのです。異変に気が付いたのは5月11日。なんと小さな白い花が水面を覆っているではありませんか(画像②)。真っ白な花びらに黄檗色の花粉が映えていてとても美しいこの花(画像③)、その正体は一体何なのでしょうか。答えは水中を見てすぐに分かりました。この池に生育している水草、オオカナダモの花です。
オオカナダモ Egeria densa はオモダカ目トチカガミ科の水草で、1910年代に植物実験用として日本に持ち込まれたものが野生化した、アルゼンチン原産の帰化植物です(画像④)。その特徴は後ろの文字が透けるほど薄い半透明の葉です(画像⑤)。特別な処理をしなくても細胞や葉緑体の様子を観察できるため、現在でも理科の実験材料として重宝されています(もしかしたら中学校の教科書にも載っているかもしれません)。また見た目の美しさから、アクアリウムにもよく用いられています。
しかしこのオオカナダモ、日本生態学会が定めた「日本の侵略的外来種ワースト100」に指定されるほど、生態系や人間活動を脅かす存在としても知られています。オオカナダモが人間にどのような影響を与えうるのか、自由な発想で想像してみてください。
ところで"オオカナダモ"なのにカナダではなくアルゼンチン原産とは一体どういうことでしょうか?実は北アメリカ原産の植物が先に"カナダモ"と名付けられ、後からアルゼンチン原産で大型のカナダモの仲間が"オオカナダモ"と名付けられたそうです。ちなみにカナダモの仲間には小型のものや日本原産のものも存在するのですが、みなさんなら何と名付けますか?
さて、もうひとつ興味深い話をしましょう。本来オオカナダモには雄株と雌株があり、それぞれが雄花と雌花を咲かせ受粉を行うことで繁殖します。しかし日本で野生化しているオオカナダモは雄株だけだそうです。確かに桃山高校の池で見られるのも黄色い花粉が特徴的な雄花だけでした。雌花がなければ受粉は行えません。では日本に生育するオオカナダモはどうやって繁殖しているのでしょうか?植物には何か特別な繁殖方法があるのでしょうか?
後編へつづく(5月28日公開予定)
桃山高校では火・水・金曜日に清掃を行っています。不思議なことに火曜日に清掃した場所も、水曜日にまた掃いてみると意外とホコリが出てくるものです。ではこのホコリは一体どこからやってきたのでしょうか?そもそもホコリとは一体何なのでしょうか?なぜ決まって灰色なのでしょうか?なぜ決まってあの見た目になるのでしょうか?
実際にホコリを観察してみましょう。今回は化学実験室の箒から採取した画像①のホコリを観察することにします。実体顕微鏡を用いて拡大してみると、ホコリは主に複数の繊維や髪の毛が絡まってできていることが分かりました(画像②~⑤)。驚くべきことに、繊維のほとんどは白色や黒色であり、私たちがホコリと聞いて思い浮かべるような濃い灰色の繊維はまったく見つかりませんでした。灰色の繊維は含まれないのに灰色に見える......不思議ですね。キーワードは「並置混色」。画像⑥や画像⑦がヒントになりそうです。
さて、ホコリの正体が繊維だということが分かりましたが、そもそもこの繊維はどこからやってきたのでしょうか?服やカーテンに使われている繊維が少しずつ切れているのでしょうか?ひょっとしたら100年前のホコリは、今とは全く違う色や形をしていたのかもしれませんね。皆さんも掃除の時間にホコリに注目してみてはいかがでしょうか。
参考文献
・シーシーエス株式会社「第18回 混色(その 3 )」光と色の話 第一部<https://www.ccs-inc.co.jp/guide/column/light_color/vol18.html>(閲覧日: 2021年5月6日)
まだ寒さは残るものの、徐々に春らしい陽気になってきました。まるで春の訪れを祝福しているかのように、正門横のヒラドツツジも見事な咲きっぷりです(画像①)。白・赤紫・薄ピンクという色の美しさに加えて、甘い芳香も魅力的な花です(画像②~④)。
このヒラドツツジをよく観察してみましょう。基本的には同じ色の花がまとまって咲いていますが、所々異なる色の花が混ざっています(画像⑤)。不思議に思って花の根元を確認してみると、なんと一つの枝から異なる色の花が咲いていました(画像⑥)。
さらによく観察してみるとこんな変わった花も見つかりました。画像⑦,⑧の花は一見ただの白色の花に見えますが、よく見ると赤紫色の斑点やラインがはいっています。そしてさらに面白いのが画像⑨,⑩の花。まるで白色と赤紫色の花を切り貼りしてくっつけたように見えます。
さて、さらに科学を深めましょう。花びらの色だけでなく形、模様、大きさ、数に違いはあるでしょうか。雄しべや雌しべに違いはあるでしょうか。そして反対にすべてに共通している特徴はあるでしょうか。しっかり観察してみましょう。
ちなみにこのような現象が起こる植物はヒラドツツジ以外にもあります。もしかしたら皆さんの身の回りにある植物でも見つけられるかもしれません。ぜひ探してみてください。
参考文献
・有村源一郎・西原昌宏(2018)『植物のたくらみ 香りと色の植物学』ベレ出版
・柿本辰男(2010)「サツキ・ヒラドツツジの咲き分けについて」日本植物生理学会|みんなのひろば<https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2186>(閲覧日: 2021年4月22日)