スーパーサイエンスハイスクールでは、指定から3年目に、その時点における研究開発等の内容を見直し、事業の効果的な実施を図ることを目的として、外部の有識者による研究開発の進捗状況等の評価が行われます。
令和4年度に実施された中間評価の結果、本校は全6段階中上から2番目という高い評価を頂きました。
中間評価講評(抜粋)
① 研究開発計画の進捗と管理体制、成果の分析に関する評価
【研究開発のねらいの実現にあたり、評価項目の内容が十分達成されている】
〇生徒の変容について、アンケートの結果のみならず厳密な方法で評価が行われることが、今後求められる。
〇コロナ禍であっても、プログラムを工夫することで、ほぼすべての行事を計画通り実施していることは評価できる。
〇在校生や教師のみならず卒業生へのアンケートも実施しており、大学院進学や研究者・技術者への就職率が高い等を把握することで、科学技術人材育成に大きな貢献をしていることは評価できる。今後も、卒業生への追跡調査の結果を検証することが期待される。
〇ルーブリックを利用したパフォーマンス評価は評価できる。
〇会議内容は連絡や協議だけでなく、教師同士の交流や研修を重視する等、全校で取り組む体制になっていることは評価できる。
〇授業、行事、部活動を有機的に連動させて人材育成を図っていることは評価できる。
② 教育内容等に関する評価
【研究開発のねらいの実現にあたり、評価項目の内容が十分達成されている】
〇能力目標として5Cを定め、またそれを授業・行事・部活動で獲得するという戦略を明確にしている。パフォーマンス課題の成果と評価を行い、更にそれを題材に教師研修を行う等、高校全体の教育改善につなげていることは評価できる。
〇「GS科目」における探究学習のテーマを「GS探究」と連動させて5Cを3年間をかけて体系的に育成するカリキュラムを実施している。
〇「GS探究」に代表される探究型授業について、一般教科のように型にはまったものになっていないか、生徒の主体的な取組になっているのかどうか、検討することが必要である。
③ 指導体制等に関する評価
【研究開発のねらいの実現にあたり、評価項目の内容が十分達成されている】
〇「GS探究」は全教科の教師が指導を担当しており、教科間で連携することで3年間の体系的な探究型学習が実現している。また、SSH推進担当主導で担当者会議を運営することで、教師が一丸となって課題研究を推進する指導体制を構築している。
〇普通科の生徒が課題設定をする際、生徒が主体的に取り組むことができるようにするために、どう指導するかの検討が必要である。
④ 外部連携・国際性・部活動等の取組に関する評価
【研究開発のねらいの実現にあたり、評価項目の内容が十分達成されている】
〇大学等との外部連携は順調に実施している。
〇生徒のキャリア形成を意識した取組により、具体的なキャリアイメージを生徒自身が持つことに成功していることは評価できる。
〇今後、グローバルな視点を取り入れることが望まれる。
〇大学や研究機関、企業等との連携はコロナ禍でも各学年で工夫して実施している。
〇「グローバルサイエンス部」は、毎年複数の研究が外部コンテストで受賞する等、活発な活動が行われており評価できる。今後は、学校の課題研究を引っ張るリーダーとして活躍することができるよう育成を図っていく等、学校側としての支援が期待される。
⑤ 成果の普及等に関する評価
【研究開発のねらいの実現にあたり、評価項目の内容がおおむね達成されている】
〇研究成果の普及・発信はしっかりと行っているが、他校が自校のどのような点を評価しているのか交流を通じて確認することが望まれる。また、そのためにはこれまでの取組をより客観的に評価し、整理していくことが強く求められる。
〇他校からの多くの訪問を受けていることからも高く評価されていることがわかるが、今後は、市内からの受け入れのみならず、他校の理数探究基礎を開設するための支援をする等、研究成果を全国的に発信することが望まれる。
【卒業生追跡調査の概要】
※ 詳細は上記PDFファイルを参照してください。
SSH3期2年目の取組として、これまで卒業した桃山高校SSHの対象生徒全員に、卒業生追跡調査を実施した。設問の内容はJSTが実施している卒業生追跡調査を参考にした。今回の調査結果から、桃山高校のSSHが「国際的に活躍し得る科学技術系人材の育成」という点で有効であることを確認した。
1.対象: SSH1期、SSH2期のSSH対象卒業生全員(計1,840名)
※ 比較対象としてSSH以前の自然科学科生徒(計320名)も調査対象とした。
2.調査方法:
依頼文: 封書郵送
回答方法: WEBアンケート
※ 依頼文にMicrosoft Formsで作成したWEBアンケートのQRコードを記載。
※ 依頼文に該当学年の担任団の写真を掲載し、先生方へのメッセージを募ることで回収率の向上を図った。
3.実施日: 依頼文の郵送: 令和3年8月7日
回答期間: 令和3年8月7日~9月30日
※ 卒業生の住所は桃山高校同窓会の協力を得た。
※ 依頼文はお盆帰省の時期に合わせて卒業生の実家に郵送した。
4.回答数: 有効回答数 n = 380(回答率 17.6%)
5.検証: 対象卒業生を下記①~⑤の「指定期・学科別」に分類し、比較検証を行った。
① SSH以前 自然科学科(平成20年度~平成23年度卒業)4年間計320名
② SSH1期 自然科学科(平成24年度~平成28年度卒業)5年間計400名
③ SSH2期 自然科学科(平成29年度~令和2年度卒業) 4年間計320名
④ SSH2期 普通科理系(平成29年度~令和2年度卒業) 4年間計680名
⑤ SSH2期 普通科文系(平成29年度~令和2年度卒業) 4年間計440名
また、本校SSHが力を入れているグローバルサイエンス部(科学部)の効果を把握するために「科学部への所属別」に
ついて比較検証を行った。さらに、理系分野における女性の活躍について傾向を把握するために「理系卒業の男女別」に
ついても比較検証を行った。
6.結果:
【成果】
以下の結果から、本校SSHの有効性を確認した。
・SSH実施前と比較して、SSH実施後に「大学院への進学率」「推薦入試の合格者数」
「企業の研究者・技術者への就職」が向上している。
・SSH校での経験は、卒業後の進路選択に大きな影響を与えている。
・SSH校での在学中、科学に対する興味関心が大きく向上している。
・SSH校での在学中、科学技術に関する資質能力が大きく向上している。
・科学部所属者のSSHに対する評価が高く、科学部は効果的である。
・理系卒業男女別のSSHに対する評価に差は無く、男女同様に効果的である。
【課題】
・SSH対象者の規模拡大に伴い、SSH事業の質の低下が一部で見られた。
・国際性の評価が他項目と比較して低い。
● 文部科学省スーパーサイエンスハイスクールのホームページ
https://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/gakkou/1309941.htm
● 京都府立桃山高等学校の実践事例
https://www.mext.go.jp/content/20201228-mxt_kyoiku02-100000331_2.pdf
〇 実践事例の掲載内容
探究型学習、人材育成プログラム、科学部の取組を通して、次世代社会を創造し牽引するグローバルサイエンス人材を育成することを目的とする。
世界では、人、物、情報が国境を越えて行き交うグローバル化が急激に進み、様々な分野において世界を巻き込んだ競争が激化している。また、日本でもAIやロボティクス、ビッグデータ、IoTといった情報や技術の急速な発展に伴い、Society5.0と言われる超スマート社会が到来する。このようなグローバル化とサイエンスの発展が進んだ次世代社会において、国際的に活躍し得る科学技術人材(グローバルサイエンス人材)の育成が急務である。次世代のグローバルサイエンス人材には以下の資質・能力「5C」が必要だと考える。
① Critical thinking and problem solving(批判的思考力と問題解決)
② Creativity and innovation(創造力と革新)
③ Collaboration(協働力)
④ Communication(コミュニケーション力)
⑤ Challenge(挑戦力)
上記の資質・能力「5C」は、アメリカ合衆国教育省や米アップル、米マイクロソフトなど20以上の組織や教育専門家(Partnership for 21st Century Skills (P21))(2002)によって「21世紀型スキル」として提唱されている「4C」に、桃山高校独自で困難や対立を克服する力「挑戦力」を追加したものである。これらの「5C」は、OECDのEducation2030(2019)で述べられている、これからの時代に求められる3つのコンピテンシーにも以下のように対応している。
① 新たな価値を創造する力 = 創造力と革新 + 協働力 + 挑戦力
② 対立やジレンマを克服する力= 批判的思考力と問題解決 + コミュニケーション力
③ 責任ある行動をとる力 = 批判的思考力と問題解決 + 協働力
桃山高校のSSHでは探究型学習、人材育成プログラム、科学部の取組を通して生徒の資質・能力「5C」を育成する。「5C」の資質・能力は新たな価値の創造や社会的課題の解決に必須であり、これらの力を身に付けたグローバルサイエンス人材が次世代社会を創造し牽引し得ることを期待している。
目的の達成に向けて以下の目標【1】【2】【3】を設定する。なお、各目標は独立したものではなく相互に関連しながら相乗効果を発揮するものと考える。
第1期、第2期では探究力を「自分の考えや心理を論理的に追及する能力」と定義し、探究力を育成するための探究型融合教科「グローバルサイエンス」(以下GS)を開発した。その結果、教科GSにおける探究の過程を通して、批判的思考力や協働力、コミュニケーション力等の資質・能力「5C」の向上に一定の成果が見られた。第3期では教科GSの指導評価方法と連動型カリキュラムを開発することで教科GSをさらに深化させ、より効果的で確実な資質・能力「5C」の育成を目指す。
指導評価方法の開発では、これまで主に課題研究で実施していたパフォーマンス課題とパフォーマンス評価を教科GSの科目(以下GS科目)全てで実施し、学力の三要素の観点から探究的な学びを深化させる。連動型カリキュラムの開発では、各GS科目の内容を課題研究に係る科目「GS探究Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」と連動させたカリキュラムを開発し、3年間を通した体系的な探究型学習を確立させる。
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グローバルサイエンス人材を育てるためには、グローバルとサイエンスの視点に加えて、キャリア形成の視点から人材を育成することが重要である。第3期ではこれまでの取組の充実を図るとともに、授業の中で自身のキャリアについて考える「キャリア探究」や、大学教員や社会人、大学生等からキャリアを聴く講演会や交流会、京都の企業や大学での実習を行う等、キャリア形成の取組を実施する。グローバル、サイエンス、キャリアの取組を授業と連携しながら3年間体系的に実施することでグローバルサイエンス人材に必要な資質・能力「5C」を育成する。
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次世代社会を創造し牽引するトップレベル人材を育成するためには、カリキュラム開発や人材育成プログラムの実施等、全校生徒が共通して行う取組だけではなく、これらの取組の枠を超えて新しいことに柔軟な発想で継続的に取り組むことが重要である。桃山高校ではこれらの取組を行う場として、グローバルサイエンス部(科学部)による活発な研究活動を行っている。第3期ではグローバルサイエンス部の活動をより発展させ、研究活動の場を海外に広げるGS海外研修や、科学オリンピック・科学の甲子園等での活躍を目標にした新たな桃山サイエンスゼミを実施する。