Loading…
 
2023/03/02
 
 

3月1日(水)

卒業式を挙行しました。

校長式辞

 一雨ごとに木々の新芽が膨らみ、誰もが春を待ちわびる季節となりました。今日のこの佳き日に、京都府立桃山高等学校第七十五回卒業証書授与式を、御来賓の府会議員の皆さま方をはじめ、多くの関係者の皆さま方の御協力・御支援のもと、晴れやかに挙行できますことを、心より感謝申し上げます。また、保護者の皆さま方におかれましては、お子さまが、本校での教育課程を無事修了され、本日晴れの卒業の日を迎えられましたこと、さぞ、お喜びのことと存じます。これまでお子さまと共に歩んでこられた御労苦に敬意を表しますとともに、ここまで本校にお寄せいただいた御理解と御協力に対しまして、深く感謝を申し上げ、教職員を代表し、心よりお祝い申し上げます。
 さて、只今、342名の生徒の皆さんに、卒業証書を授与いたしました。卒業生の皆さん、御卒業おめでとうございます。
皆さんは令和2年の4月にこの桃山高校に入学し、3年間の高校生活を終えて、今日、旅立って行かれます。私も、3年前にこの桃山高校に着任して、今年度末に定年を迎えますので、皆さんとは同期というか同志のような気持ちでこの3年間を過ごしてきたつもりです。
 振り返ってみれば、皆さんの高校生活は、入学直後にコロナ対策のための学校臨時休業でスタートし、それが2 か月も続いた異例の学年です。そして、コロナの影響はその後卒業までの3年間、途切れなく続いて、教育活動に様々な影響を与え続けてきました。遠足の延期、球技大会の中止、文化祭・体育祭の制限実施、2年の文化祭も中止、研修旅行の国内行先変更など、これまで毎年のように当然あったはずの授業や行事が、一つ一つ実施できるかどうかの判断を必要とされて、計画的に高校生活を楽しめないままに、卒業までたどり着いてしまった感じなのかもしれません。
 加えて、皆さんの入学の前年から、令和の時代に突入し、社会が変わるだとか、第五次産業時代が来るだとか、人間はA I に仕事を取られるだとか言われるような、大きな社会の変革期に高校時代を過ごした皆さんは、まさに令和のパイオニア世代と言えるかもしれません。
 そんな皆さんとの思い出の中で、一年生の終わりのころ、学年の先生の特別の計らいにより、G S 探究Ⅰ の授業を終えてという名目で、20分ほどの特別授業を普通科各クラスで実施させてもらったことがありました。教壇で直接生徒の皆さんに教えることがなくなって1 0年が経っていましたので、このチャンスをいただいた時は本当にうれしかったです。「何のために学ぶのか」とか「成人の条件」とか「4つのハッピーワード」などのお題から、皆さんに一つ選んでもらってお話しするという趣向で、話したいことを好き勝手に話させてもらいました。皆さんはもう覚えていないかもしれませんが、私にとっては忘れられない思い出です。「4つのハッピーワード」とは「おはよう」「よろしく」「ありがとう」「さようなら」の4つで、この4つの言葉さえ心を込めて使えるようになれば、必ず幸せになれますよ、という単純なお話です。さしずめ、今日の卒業式は「ありがとう」と「さようなら」の溢れた場面になるのだと思います。
 それはさておき、こうした激動の高校時代を生き抜いた皆さんだからこそ、明るく前向きに主体性をもって育ってくれたのかなと思います。勉強はもちろんのこと、文化祭や体育祭にも全力で精力的に取り組んで、学校全体をさらに活気づけてくれましたし、進路実現に向けた各人の取組も、お互いを励ましあいながら着実に前進を続けてくれました。感染症に振り回される異例の事態が、卒業生の皆さんを、より強くたくましいリーダーに育ててくれたように思えてなりません。これからの未来社会は予測不能の社会がやってくると言われていますが、皆さんが身に付けた主体的なたくましさで、更なるリーダーシップを発揮して、次世代の担い手として存分に活躍してくれることを期待しています。
 予測不能の未来と言えば、今の時代はまさに情報化の時代です。必要とされる情報量は、加速度的に膨らんできています。データの的確な収集、蓄積、分析の点においては人工知能( AI ) にはおそらく人間はかなわないでしょう。ならばAIにできない人間の仕事は何なのか。それは「評価関数の設定」であると、脳科学者の茂木健一郎さんがおっしゃっています。つまり価値が何であるかは人間が決める、何に価値があるかは自分が決めるということです。あらかじめ自分で「評価関数」、つまり「何に価値を置くのか」を決めておかないと、たとえAIであってもどの方向にデータを活用したらいいのかわからないからです。だからこそ、貴重な高校時代に興味を持ったこと、面白く感じたことを独自の評価関数として設定し、これからの情報化時代を人間らしく生き抜いていくことが最も大切なことではないか、というメッセージを最後にみなさんに送りたいと思います。
 それでは、卒業生の新しい旅立ちを温かく見まもりつつ、卒業生の皆さんの今後ますますの御活躍と御多幸を心からお祈りいたしまして、式辞とさせていただきます。


令和五年三月一日
京都府立桃山高等学校 

校長 増田恒

 
 
 

桃山高等学校メニュー