部活動
 フィールド探究部の大手川探検隊です。大手川を宮津の人に好きになってもらうことを目標に、日々親水公園を作ったり、川で魚を獲ったりしています。私たちの研究について紹介します。

 私たちが生まれた平成16年。台風23号が宮津を襲いました。宮津を走る大手川の氾濫が大きな水害をもたらしたとされています。覚えていらっしゃる方も多いかもしれません。その後行政による護岸工事で安全にはなりました。しかし、高い堤防に囲まれた川に地域住民の意識は離れていったのではないか、と私たちは考えています。現に、物心ついてから川で遊んだことはありません。自然と触れ合う場所というより用水路としての印象が強く、管理するのは行政や大人だと思っていました。
 しかしそれでいいのでしょうか。川の自然を知らないのはもったいないし、危険性を知っておかないといざという時に逃げられません。普段、見向きもせずにいた川を調べてみたら知らない魅力に気づくかもしれない。そんな思いから活動を始めました。

大きな柱は3つ。
1.行政が作りかけていた親水公園を再生させること。
(生き物の多様性と住民の安全を両立できる川にする)
2.生息する生き物を調べてお魚図鑑などを作り宮津の人にPRすること。
3.住民アンケートを実施、過去の人と川の関係を調べること。


1.行政が作りかけていた親水公園を再生させる
 現在の福田橋付近には丹後土木事務所と住民が一緒に考えて作った親水公園があります。
  子供副読本「大手川改修」(HTML版)/京都府HP(pref.kyoto.jp)より
 しかし、長年管理されていなかったことによって、背丈を越えるような草が生え、ごみが流れ着き、子供が遊べる場所どころか入りづらい場所になってしまいました。
 そこで、私たちはこの場所を再生させ、色々な世代の人が川の自然と触れ合えるような公園を企画しました(下図)。デザイン案には住民の方のアイデアを取り入れました。


 実際に令和3年8月11日に親水公園近くにお住いの14名の方と草刈りをして親水公園の対岸をきれいにしました。刈払機を使って1日だけで草を刈り取っていただきました。鎌を使って手動で地道に草を刈っていた私たちにとって本当にありがたかったです。この場をお借りして感謝申し上げます。

 また、興味を持って話しかけて下さったり、時には、ジュースをいただいたりしたこともありました。私たちのような人が増え、地域住民の川へ関心が呼び戻されるよう活動していきたいです。

 コロナ禍のため、地域の方と協力して活動できたのは、8月11日の一度きりでしたが、これからも協力していただけるように私たち高校生も考えていきたいです。
 大学の先生や学生の方に7月31日から8月1日にかけて、池づくりの活動に参加していただきました。
 池づくりの方法ですが、まず上流側から下流側まで溝を掘ります。次に土のうに掘った土を入れ、主流の流れをせき止めます。すると溝の上流側と下流側で水位差ができ、水の浸食作用により削られた土砂が運ばれ、自分たちで掘らなくても溝が広く深くなっていきます。堰き止めて水位が上がった川の上にずっと浮かんでいたのはいい思い出です。
 さらに、土のうや小石には環境を変える力があります。専門用語ではバーブ工といいますが川の流れに逆らうように並べると、付け根付近では渦を巻いた流れができ砂がつもります。先端部分の流れは速くなり、砂が削れていきます。設置場所の少し下流では速い流れとゆっくりした流れが混在し、複雑な環境が生まれました。後にも書きますが大手川は護岸工事後、瀬がなくなったと考えられます。この方法で瀬を作り、減少した生き物を呼び戻すことができるかもしれません。もともと川の中にあったものを使っていますし、流水量が上がれば、埋もれたり流れたりするので、環境にやさしく安全です。
 大学の先生にこれらの知恵をいただいたとき、私たちは半信半疑でした。しかし、実際は自分の想像と異なりいとも簡単に変化をつけることができました。驚きと同時に、考え方次第で効率よく仕事ができることに面白さを感じました。



2.生息する生き物を調べてお魚図鑑などを作り宮津の人にPRする
 活動を始めるにあたり宮津の人に川をPRするにはまず自分たちが川について詳しくないといけないと感じました。また、護岸工事によって大手川の生態系が変化したという私たちの仮説の検証も兼ねて生物調査を行いました。調査は上流から下流にかけて実施し、上流や中流ではタモや投網、下流では刺し網やもんどりなどを使いました。
 私たちの調査と行政が行ったものを比較すると、今まで確認されていたフナが捕獲できなかったことやハゼの割合が増えていること、カワムツの割合が減っていることなどが挙げられました。この変化は、護岸工事後川底に砂地が増えたことや川の中に瀬がなくなっているためだと考えられます。

 夏調査、秋調査を終え、現在は冬調査を残すのみとなりました。12月下旬に冬調査を終えた後、大手川のお魚図鑑作りを始めます。計画としては私たちが捕獲した魚の生態を載せた図鑑を手作りで制作したいと思っています。完成した図鑑を地域の保育所などに配り、川に興味を持ってもらうことが目的です。


3.住民アンケートを実施、過去の人と川の関係を調べる
 私たち高校生は川で遊んだことがなく、川に遊び場を作ろうにも、どんな魚がいてどのように遊ぶのかがわかりません。そこで私たちは住民アンケートで実際に遊んだことのある方の声を聞こうと考えました。まず上で紹介した親水公園の近くの住民の方にアンケートを実施し、約60世帯中41世帯の方々に返答をいただきました。捕まえた魚の名前や捕まえ方など多くの情報をいただきました。
 特にアンケートの最後の『子供たちに伝えたいこと、行政に伝えたいこと』という質問では多くの思いや考えを知ることができました。そこでは行政がもっと仕事をすべきだという旨の意見が多く、地域住民の川に対する意識は決して低くはないことがわかりました。関心は低いだろうと考えていた私たちにとって意外な結果でした。同時に川の管理は行政がするものだという意識が強いことも感じられました。


 行政の考えを知りたかった私たちは、川の管理を行っている丹後土木事務所の方にお話を伺いました。分かったことは治水管理をするお金があまりないことでした。住民の理想をすべてかなえられるほど、余裕はなかったのです。人口の減りが著しい宮津市ではそのお金もどんどん少なくなっていくでしょう。また、護岸工事をしても川は溢れてしまうということもわかりました。気候変動の起こる現在、これまで以上の水害が起こることは避けられません。地域住民の声と行政の抱える実情とのずれは、いただいたアンケートの回答に表れていると感じました。


最後に
 私たちは行政に頼りきるのではなく、自分たちにできることから川を管理し、安全を保ちながら豊かな自然を守っていきたいと考えています。草刈りや池づくりはおばあちゃんより高校生の方が早くできますが、高校生に昔の大手川の記憶はありません。地域に住む人がそれぞれの得意分野で川と付き合っていけば、行政の負担は減らせると考えます。実際に住民の方に昔の大手川について聞くと、皆さん喜んでお話していただきました。バーブ工を教えていただいた大学の先生には今後もサポートしていただけます。丹後土木事務所の方のお話はとても熱心で、専門的なことまで事細かに教えていただきました。一緒に活動をしている同級生は嬉々として川に飛び込み、魚を捕まえています。はじめは無関心だった自分たちのように川に興味がない人も多くいると思います。そんな人たちを振り向かせられるまで、私たちの冒険は続きます。

 
COPYRIGHT (C) 京都府立宮津天橋高等学校