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「地域の人たちを巻き込んで一緒にアート作品を作りたい!vol.4~丹後万博編~」

 

みなさん、こんにちは!

 

さぁ、アートチームの物語もいよいよ佳境に入ります。

これまで様々な人たちの協力のもと、作品作り本番まで

着々と準備を進めて来ましたが、

ここからはついに作品が完成に至るまでをご覧ください。


※前の記事は以下からお読み下さい。

vol.1

vol.2

vol.3

***

この取組を始めた当初からアートチームのメンバー達が

口を揃えて言っていたこと。

それは「世代を問わず色々な人たちと一緒に一つの作品を作ってみたい」

ということ。

 

メンバー達が、最後に相談したのはデザイナー兼アーティストの

余根田直樹さん。

余根田さんは前回の記事でも紹介した三津漁港の

アートプロジェクトメンバーの一人でもあり、

「虹色のタペストリー」作りのワークショップで講師役を務めておられます。

それ以外にも海に流れ着いた流木を使ったアート作品作りに挑戦したり、

美しいシーグラスを使った絵を描くワークショップを主催されています。


正にワークショップのプロ!

本番までの最終の段取りをどのように組むのか、

またワークショップの進行について実現可能な形を

考えるのにアドバイスをいただきました。

yoneda.png


「みんなは作品のモチーフとして、お祭りの様子を

描こうとしているんだよね。

メインの御神輿とそれを担ぐ人々だけど、

この細かい絵を全て海洋ゴミで作るのは正直難しいと思うんだよね。」

と余根田さん。

 

高校生達が考えていた絵の構図は、

海を背景にその中心で御神輿を担いだ人々が

賑やかにしている様子を描いたもの。

モザイクアートは基本的に壁一面といった大きな規模での作品には

向いているようですが、高校生達が考えている作品の規模感では

細かい表現が難しいようです。

 

その代案として余根田さんが教えてくれた手法が

「コラージュ」と「シャドーボックス」

コラージュとは、もともと「coller」というフランス語から

由来する言葉で、「のりで貼る」という意味。

写真や絵、文字などを新聞や雑誌などから切り抜いて、

これを画用紙や台詞に貼って一つの作品にするというものです。

 

シャドーボックスは、17世紀ヨーロッパで流行した

コラージュの技法の一つで、その後アメリカに渡り、

立体的に発展して出来たハンドクラフトのこと。

絵に描かれた模様や絵の切り抜きを貼って物の表面を飾り、

コーティング剤を塗り重ねていく工芸。

何層にも重ねるのでそのパーツは立体的に浮き上がって見えるのが特徴。

 

余根田さん曰く、作品の中心、つまりキーになる重要なパーツ

(ここでは神輿や人々)はコラージュやシャドーボックスのような形で

作成し、背景を海洋ゴミで埋めていくのが最も現実的で

きれいに仕上がるだろう、とのこと。

 

よし、これで作り方の方向性は決まりました。

 

次に一緒に考えたのはワークショップの方法。

色々な案が出てきたのですが、最終的に最も良さそうと判断したのが、

ライブパフォーマンス形式にするといったもの。


メインの部分は予めこちらで作っておくが、

あえて背景は空白のままにしておく。

その未完成の状態の作品を当日丹後万博の会場に持ちこんで、

参加者や見学者に完成までを手伝ってもらう。

 

このやり方であれば、色々な人を巻き込めるし、

コミュニケーションも生まれやすい。

手伝ってもらう中で自分達が見てきた海の現状や

出会ってきた素敵な地域の人々のことなどについても紹介できる。

これはすごく良いアイディアです。

 

***

 

そして来る1030日。

丹後万博へいざ、出陣!!

丹後万博アート②.JPG

朝早くから作品を搬入し、最終チェック。

参加者の貼る作業をやりやすくするため海洋ゴミは色分けをして並べます。

掲示準備.jpg 海洋ゴミの説明.jpg

背景白.jpg

作品はご覧の通り、朝の時点では真ん中以外は

ほぼ何も埋まっていない状態。

果たして丹後万博が閉会するまでに

無事に完成までもっていくことができるのでしょうか。

 

少し不安そうな表情を浮かべつつも、

ここまで来たらもうやるしかありません。

高校生達は自分達でも背景を埋める作業を行いつつ、

人が通ったら勇気を出して声をかけます。

 

「私達は今海ごみを使ってアート作品を作っています! 

ぜひみなさんと一緒に作りたたいと考えています。

ご協力お願いいたします!!」

 

そうこうしているうちに一人、また一人と人が集まってきました。

「この子たちは一体何をしているんじゃ...?」という風に

興味を引かれて見に来られたのです。

これがライブパフォーマンスの効果...!!

始めのお客さま.jpg 第2のお客様.jpg


ですが一つ問題がありました。

それは、会場の場所があまり良くないということ。

 

始めアートチームの出展場所として決められていた場所は屋内スペースで、建物自体もメインストリートからは少し離れた奥まったところにあり、そこまで足を運ぼうとする来場者が少ない傾向にあったのです。

 

そこでもう少し人通りのある場所まで作品を持っていって、そこでライブパフォーマンスをやってみよう!ということに。

 

移動先は、中央広場とメインストリートが結ばれる地点、

つまり最も目立つ場所です。

そこで来場者の方に声をかけつつ、

自分たちで海洋ゴミを貼り付ける作業を続けていると

「何をしているの?」「あ、これは海洋ゴミ?」「何だかきれいな色ねぇ」と興味深そうに足を止めて見てくれる人がどんどんと増えていきます。

丹後万博アート⑥.JPG 高校生もペタ.jpg

余根さん親子も2.jpg

親子で一緒に。

高校生たち。

海外の方。

おばあさん達。

これまでにお世話になった地域の方も見に来てくださりました!

 

あるときはこんな会話が交わされていました。

「このゴミは自分らで拾ってきたんか?」

「はい。ビーチクリーンに参加しました。

あと、一部はビーチクリーンをしている人たちから譲り受けたものもあります」

「ほお、すごいねぇ」

 

またあるときはこんな会話も。

「醤油さしもあるよ!」

「こっちは何か分からんけど大きい物体やなぁ」

「このキャップ、外国語が書いてある!」

「海は繋がっているから、海外で捨てられたゴミは海を渡って

日本にも流れつくんだよ」

 

万博開幕時にはほぼ真っ白だった背景が、

みるみるうちにカラフルな色で埋めつくされていく...。

海外の方も1.jpg 地域のおばあさまも1.jpg

目の前で繰り広げられるそんな光景を眺めながら、

思い出したのはアートチームのメンバーたちが活動を始めた当初に

口にしていたこと。

 

「老若男女問わず、色々な人たちと一緒に作品作りがしたい」

「アート作品を作ることを通して、

身近な社会問題に関心を持つ入り口にしてもらいたい」

 

今起こっているこの光景こそ、見たかった景色。

紆余曲折ありながらも沢山の人たちの協力を得て、

どうにかここまで走ってきた高校生たち。

言葉にならない感動が全身を駆け巡り、熱くなる。

 

そして完成した作品。

タイトルは「祭り」

丹後万博アート⑭.jpg

何と鮮やかなことでしょう。

総勢100名近くの人々の手で作り上げた作品。

 

改めて関わっていただいた全ての人に感謝の気持ちを。

本当にありがとうございました。

最後にみんなで完成1.jpg

そしてアートチームのみなさん。

本当にお疲れ様でした。

 

***

 

ここで一旦、作品が完成するまでの物語は終了します。

ここに至るまで記事をお読みいただいたみなさん、ありがとうございました。

 

アートチームの物語は完結しますが、高校生たちのこれからは続いていきます。

きっとこれまでにしんどいと感じたこと、できないと思ったこともあったと思います。

それでも彼・彼女達は途中で投げだしませんでした。

限られた時間の中で、何とかできることを形にしました。

 

取組を通して得た経験は、彼・彼女達の未来を照らしてくれるでしょう。

 

高校生たちの未来のキャンパスに、これからどんな絵が描かれるのでしょうか。

ワクワクしながら、それを見守っていきたいと思います。

 
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