学校生活School Life

「地域の人たちを巻き込んで一緒にアート作品を作りたい!vol.3~作品ができるまで~」

 

みなさん、こんにちは!

地域コーディネーターの能勢です。


アートチームの探究活動について連続投稿しておりますが、もうしばらく

お付き合いいただきますようお願いいたします。

※過去の記事は以下のリンクからご覧ください!

Vol.1

Vol.2


今回の記事は、作品を丹後万博に出展するまでの出来事を綴っています。


******

夏休み期間、アートについてやイベントの企画・運営のやり方を学ぶために

あしたの畑の主催イベント「ECHO」にスタッフとして参加してくれていた高校生たち。


その体験と並行して進めていたのは、自分たちの作品について考えること。

休みの間にチームのみんなで集まって作戦会議を行いました。

夏休み作戦会議②.jpg


「地域の人たちにはどんな体験をしてほしいのか」

「作品のコンセプトは何か」

「何を使って作るのか」

「予算はどれほどなのか」

「ワークショップはいつごろ実施するのか」

「誰に協力してもらうのか」

など話し合うべきことは沢山あります。


引き続きアートマネージャーの甲斐さんとroots相談員の稲本さんに

お世話になりながら、丹後万博までにやるべきことを洗い出し、段取りを組んでいきます。

夏休み作戦会議④.jpg

話し合いの結果、「京丹後の祭り」をモチーフに作品を作ることになりました。

丹後万博のコンセプトは「つながり、つなげる」

過去から現在、そして未来へも繋いでいきたい私たちの地域が誇れるもの。

高校生たちが選んだのは、自然豊かな海と伝統あるお祭りでした。


では何を使って作品を作るのか。

それについては海洋ゴミを使いたい、という意見が出ました。

海水浴の季節になると、京丹後の美しい海が取り上げられて全国各地から多くの人が訪れます。

しかし夏が過ぎ去った後の海岸に行ってみると荒れ放題。

海岸には大量のごみが打ち上げられ、環境に大きな負荷を与えている光景が目前に広がっている。


今私たちができることは丹後の自然豊かな海の環境、美しい景観を守りそれを未来へと

手渡していくこと。


まずは自分たちで海へ足を運んで、現状を知ろう。

そしてゴミを拾い集めてこよう! 

拾ったゴミをワークショップに使おうよ。

夏休み作戦会議⑤.jpg

こんな風に話し合いは進んでいきました。

そして肝心の作品ですが、これはモザイクアートで表現することに。

拾ってきた海洋ゴミを大きめの板に貼り付けていき、遠くから見たときに一つの絵に

見える、という作品です。


そうと決まれば、早速材料を揃えよう!

ここで甲斐さんが耳よりの情報を教えてくださいました。

地域でこれから行われるビーチクリーンイベントやアートに関わるワークショップのスケジュールです。


メンバーそれぞれが都合の合う日程でイベントなどに参加し、必要なものを仕入れる段取りを

組みます。ここで甲斐さんや稲本さんから一つ提案が。


「せっかくビーチクリーンなどに参加するのであれば、そういった活動に力をいれている

地域の方々に直接お話を聞いたら良いんじゃないかな。

自分たちで活動することも大切だけど、地域には色々な課題意識をもって取組に励んでいる人々が

たくさんいる。例えば海洋ゴミの使い道を模索するためのビジネスを構築しようと奔走している人や

海洋ゴミ問題の現状を知ってもらうきっかけとしてのワークショップを企画している人など。

丹後万博の主旨は"持続可能な地域社会の在り方を考えるきっかけ"を提供したり、

変わりゆくものもある中で"残したいものたちをいかに次の世代に受け渡していくのかを

一緒に考えるための機会とする"ことだったよね。

作品作りを通して、みんなが学んできたことや地域の人々の取組について知ったことなんかを

伝えていくことができれば、その作品が持つ意味も違ってくる。

作品にメッセージ性を載せることで価値も生まれるよね。」


探究活動において大切なことは、「何のための活動か」を常に念頭に置いておくことです。

作品作りは手段であって、その体験を通して何を深めたいのか、どんなことを提供したいのか

目的をはっきりさせておく必要があります。


助言をもらったアートチームのメンバーたちは、八丁浜で実施されるビーチクリーンに参加するとともに

主催者である八隅 孝治さんにお話を伺うことにしました。


八隅さんは、海が大好きでお子さんと一緒によく海へと出かけているそうです。

日本海の美しさに感動した一方でゴミのあふれかえった海岸の風景に衝撃を受けたといいます。

その体験をきっかけに現在は、網野町中心にビーチクリーンの企画を立て、多くの地域住民を

巻き込みながらの環境保全活動に力を入れています。

八丁浜ビーチクリーン①.jpg 八丁浜ビーチクリーン③.jpg

八隅さんの企画するビーチクリーンの特徴は、必ず参加している子どもたち(とその保護者)に

向けて、海ゴミに関するお話をされることです。

この日も沢山の子どもたちが八隅さんの周りに集まり、身を乗り出しながらお話を聞いている姿を

見ることができました。

八丁浜ビーチクリーン④.jpg

「ゴミを拾っておしまい、ではなくてどうしてこんなにゴミが流れついているのかであったり、

そのゴミ問題が今社会にどんな影響を与えているのか、もしそのまま放置していたらこの先

地球がどうなってしまうのか、などを知ってもらう、その輪を少しずつ広げていくことに

力を入れています。そうすることで、例えば今後子どもたちがプラスチック製品を購入する際に

これは本当に必要であるのか、であったり長持ちするのか、というようなことを考えて選択できる

きっかけになるかもしれない。日常生活の延長に自分ごととして社会課題を考えられる環境が

できると良いなぁ、と思いながら活動しています!」


また八隅さんは海ゴミの再利用化をビジネスとして体系づけることにもチャレンジしています。

「ビーチクリーンをし始めてから気づいたんですけど、新たな問題としてゴミの集積所のことが

あるんですね。拾ったはいいけれど、処分できる場所がない。

最近は環境問題などに関心のある高校生にも関わってもらいながら、海ゴミを再利用した

製品作りなどにも励んでいます。」


八隅さんの話を聞かせていただき、高校生たちは自分達が想定していた以上にゴミの問題は

根深く、また解決策は一つではない、その問題をどんな切り口で捉えるかによって

多様な関わり方があることに気がつきました。


「関わり方は色々あって良いんですよね。正解は一つではない。

あなたがその問題とどう向き合いたいのかが重要です。海ゴミ問題一つとっても

ゴミを拾うことも大事。現状を誰かに伝えることも大事。ゴミの再利用化を考えることも大事。

ビーチクリーンなどの企画を継続していくための地盤作りも大事。

またやっぱり資金作りの面も切り離せないんですよね。資金があれば継続もしやすいし、

できることの選択肢が広がる。今はビーチクリーンについては基本的にボランティア活動として

実施していますが、それをビジネスに変えていくことが今後の目標です。」

八丁浜ビーチクリーン⑥.jpg


八隅さんのお話を聞かせていただいた後、次に向かったのは三津漁港。

三津漁港においても海ゴミ問題に課題意識をもって活動している人たちがいます。

ここで出会ったのは、澤 佳奈枝さんと奥野 由希さん。

お二人は、海洋ゴミを使ったアートプロジェクトやアートのワークショップの企画に携わっています。

この日は、最近三津で行われたという「三津のちいさな芸術祭 織りかえす波の音」というイベントに

ついてお話をお聞かせ頂きました。今回はイベントを開催するに当たって良かった体験のことを中心に

聞いていきます。


このイベントの中で実施されたアートのワークショップは「虹色のタペストリー」を作るというもの。

三津漁港に落ちているカラフルなゴミを拾い集めて、それらを虹色のグラデーションになるように

台紙に取り付けてタペストリーにします。

タペストリー.jpg

※これがそのワークショップで作ったという虹色のタペストリー


「今回ワークショップで使用する虹色のプラスチックゴミを集めるために参加者と一緒に

ビーチクリーンにも取り組んだのですが、清掃に入る前に色ごとにチームに分かれて

ゴミを拾ってもらったんです。赤、青、緑、紫、黄......といったように虹の7色で分かれていて、

自分のチームの色のゴミを拾ってもらいます。するとゴミ拾いにゲーム要素が加わって、

何だか宝探しみたい!と参加者が盛り上がっていたり、自分のチームとは異なる色のゴミを

見つけた時に○○色チームさん、見つけましたよ~!というように参加者同士のコミュニケーションが

生まれます。普段のビーチクリーンに異なる要素を少し加えるだけで、新しい動きが起こるということが

分かりました。何事においても楽しんでできることって大切ですよね。」


またワークショップについては、プラスチックゴミを貼り付ける台紙として、織物を生産する際に

使用する紋紙を用いたそう。これもまた新たな発見があったといいます。


「三津は実は織物産業も盛んであった地域。昔に比べると縮小してしまっていますが、

今でも機屋さんが残っていたりします。このワークショップで紋紙を用いたことで、

地域特有のものに触れてもらうことで、地域理解にも繋がっていく。これはとても良かったな、と

感じています。」


やはり作品作りにおいて何を使うのか、という点はとても重要そうです。

体験談は、とても参考になります。

高校生達は自分達がワークショップをする際にそこでどんな体験をしてもらいたいのかを

具体的にイメージすることができたようです。

三津漁港にてⅡ.jpg

そして今回三津まで訪れた理由がもう一つあります。

それは海洋ゴミを分けていただくということ。

アートチームの高校生たちが、地域の方達と一緒に海洋ゴミを使ったアート作品を作りたい、

という話を伝えたところ、何と三津のイベントで余った海洋ゴミを譲っていただけることになったのです。


モザイクアートということで、ある程度大きさのある作品になりそうで

材料となる海洋ゴミを必要な分だけ集められるのかどうか、少し懸念してたのですが

その心配が吹き飛ぶほどのゴミを譲っていただくことができました。

しかも虹色のワークショップ用に集めていたということなので、色もカラフルできれいなものが多く

高校生達が考えている作品にも十分に活かせそうです。

三津漁港にてⅠ.jpg

感謝の気持ちと、最後に作品作りに対する意気込みを述べて本日の任務は無事に終了。

本当にお疲れ様でした!


******

次回はいよいよ作品作りについての記事をアップする予定です。

もう少しだけお付き合いいただけますと幸いです!

 
COPYRIGHT (C) 京都府立峰山高等学校