学校生活

 

 センサーカメラを使った動物調査というのは、カメラの前を通りかかった動物の写真を撮るという手法なわけですが、現在の主流は写真ではなく動画撮影(ビデオ撮影)だったりします。瞬間を捉える写真では何が撮影されているのか分からないことも多いのですが、動画で見ると、動物の種類まで特定できたりします。

 カメラの設定により写真と動画を同時に撮影することもできるため、学校林の調査ではどちらも撮影できるようにしています。このとき、動画撮影時間をあまり長くしてしまうと、データ容量が非常に大きくなっていまいます。しかし、時間が短いと何が撮影されているのかよく分からない動画になってしまう危険性があります。学校林の調査では撮影時間を30秒に設定しているのですが、ここの塩梅は難しいところです。

 動画撮影だと動物の行動を見ることができるので、データとしては写真以上に面白いものになります。ただし、確認するための時間が長くなるので、記録するときがすごく大変です。科学部では現在、データ記録用のパソコンを増やして対応していますが、やはり時間がかかります。もっとも、こうやって大量のデータを見ていくのは、調査・研究の楽しいところではありますけどね。

 

 センサーカメラによる動物調査は「カメラトラップ」と呼ばれています。罠のようにカメラを仕掛けて動物を撮影するからですね。確実に生息している証拠が手に入るわけですから、様々な場所の動物調査で使用されています。しかし、実際に動物の生息調査をするとき、学校林のようにずっとカメラを仕掛けておくことができるとは限りません。そこで、短期間で効率的にどんな動物がいるか確認したいときは、餌(ベイト)を使用するのが一般的です。撒き餌を使うなんて、ますます「トラップ」って感じですよね。

 学校林のセンサーカメラ調査では、普段このような餌は使っていません。動物が誘引されるため、撮影頻度や時間帯に影響が出て、結果が不自然になってしまうからです。しかし今回、たまたま手に入ったある動物の肉を、餌として1台のカメラの前に埋めてみました。すると、その餌にひかれてテン、タヌキ、キツネ、ハクビシン、カラスなどが何度も撮影されることになりました。

 餌の種類によって誘引される動物の種類は変わりますが、肉を埋めた場合は、やはり肉食傾向のある動物がたくさん撮影されることになります。いきなり手に入った餌に興奮しているのか、普段は見せないようなはしゃいでる姿も見ることができます。こういうのも、たまには面白いですよね。

 

 2学期も終業式を迎え、そろそろ年末年始、そして3学期になってきます。学校林のセンサーカメラ調査では、毎年3学期になるとキツネが撮影されています。おそらく冬になって活動範囲の広がったキツネが学校林にやってきているということだと思います。そんなキツネが今年は、少しフライング気味に2学期から撮影されています。

 キツネは草原性の動物ということもあって、学校林ではほとんど撮影されることがありません。また、同じイヌ科の動物でも、タヌキに比べて肉食性が強いハンターであるため、狩り場から離れることが少ないというのも理由かも知れません。決して数の少ない動物というわけではないのですが、学校林の調査では普段姿を見ないので、撮影されるとありがたい動物です。

 最近は少し回復傾向にあるとはいえ、タヌキの撮影数も一時期ほとんどなくなっていたので、キツネやタヌキという里山の代表みたいな動物があまり撮影されないというのは、この学校林の面白いところなのかも知れません。まぁ、ただニホンジカが多いだけとも言えますが。

 冬休み中も学校林ではセンサーカメラが動物を狙っています。来年も引き続き調査をしていき、学校林の動物についてもっと知りたいと思っています。

 

 期末考査期間が終わり、2学期もあと少しで終業式を迎えます。学校林ではテスト期間中も変わらずセンサーカメラが作動しているわけですが、冬に入るタイミングであるこの時期は、撮影される動物の種類もバリエーションに富んでいます。

 今回はまるまると太ったアナグマが撮影されました。アナグマは冬になると「冬ごもり」をする動物なので、秋の間に餌をたくさん食べて、栄養をつけておく必要があります。だから、冬ごもり直前のアナグマというのは、まるまる太った状態になるんですね。

 さて、ここまで「冬ごもり」という言葉を使っていますが、これは「冬眠」と違うのかと思う人もいるでしょう。「冬眠」と「冬ごもり」は、同じように見えて別なんです。冬眠はヘビやカエルなどの変温動物がしてるように、体温を極限まで下げて、春になるまで死んだように眠っている状態です。それに対して冬ごもりは、冬の間じっとして引きこもっている、という状態でしょうか。気温が上がった日は水を飲んだりするために外へ出ることもあるぐらいですし、ツキノワグマにいたっては冬ごもり中に子どもまで産みます。

 日本の哺乳類で「冬眠」をする動物はほとんどいません。冬に姿を消す哺乳類は、ほとんどが「冬ごもり」をしているんですね。アナグマも今後は冬ごもりに入って撮影されなくなり、そしてまた来年の春に姿を見せてくれるでしょう。こういった動物の変化を見るのも、この調査の楽しいところです。

 

ハゼ科魚類の場合、骨に年輪が入ります。その年輪を調べることにより、年齢と成長を知ることができます。宇治川で採集したヌマチチブを解剖し、年齢を調べました。

宇治川のヌマチチブは、琵琶湖に持ち込まれた個体が広がったものです。すなわち、国内外来種です。なぜ、琵琶湖や宇治川で増えることができるようになったのでしょうか。

今回年齢を調べた結果、宇治川のヌマチチブはほかより成長がよいようです。
もしかすると、琵琶湖や宇治川にはヌマチチブにとってより良い餌があるのかもしれません。

次はドジョウを調べる予定です。


 

 サツマイモは加熱によって糖度が変化することが知られています。そこで、科学部の畑で収穫したサツマイモを使って、それを確かめる実験を行いました。

 今回は加熱装置として、水蒸気を利用した加熱ができるマルチロースターを利用しました。部員達は初めて使用する装置にとまどいながらも、上手く加熱することができました。加熱後の観察では色の変化も確認され、糖度の高まりを感じることができました。

 また、このサツマイモを小さく切った後、小麦粉などを含んだ混合液に入れて、ジュール熱を使って加熱する実験も行いました。その結果、混合液は加熱により変性し、中に入れたサツマイモも合わせて、部員の気分が高まったことが確認できました。

 今年はニホンジカによる食害もあって、十分な量のサツマイモが収穫できませんでした。それでも、収穫できたサツマイモは有意義に利用することができたと思います。

 

 秋も深まってきて、季節は段々と冬になっていこうとしています。この季節、学校林はドングリなどの餌が豊富になり、冬に備えて活発化している哺乳類がたくさんやってくるようになります。今回も、ニホンジカ、イノシシ、タヌキ、テンなど、多くの動物が撮影されていました。いつもはシカばかりの学校林ですが、この時期は生物多様性が高くなっているのを感じます。

 特に、イノシシやタヌキが撮影されているのは嬉しいですね。学校林でこのセンサーカメラ調査を始めた最初の頃は、ニホンジカと並んでイノシシやタヌキの撮影数が多かったのですが、近年はめっきり数を減らしています。イノシシは豚熱という感染症で個体数が激減していましたし、タヌキも行動範囲の広い動物ですので、学校林に来なくなることもあるのでしょう。そんな動物達の変遷を見ていくのも、この調査の面白いところです。

 現在、科学部ではデータ処理用のパソコンを増やし、みんなで撮影データの記録を頑張っています。林内には複数台のカメラが設置してあり、毎回大量の撮影データが回収されるため、記録するだけで一大事なのです。昨年より、カメラの設置場所を固定して、場所ごとに撮影される動物に違いがあるのかを検証しています。1年が経って大量のデータが集まっていますが、これらを集計したとき、何か面白い結果が見えてくると思うので、とても楽しみです。

 

 1年次の「化学基礎」では、元素の確認方法として炎色反応を学びます。特定の元素が含まれている物質を炎に入れると、炎の色が変化するという現象ですが、実際にやって見てみました。

 ニクロム線に炎色反応が出る元素を含んだ化合物の水溶液をつけて、ガスバーナーの炎(青色)に近づけます。すると、赤色や黄色といった炎色反応を観察するすることができました。部員達は「リアカーなきK村・・・・・・」と語呂合わせを唱えながら、何の炎色反応なのか考えていました。

 花火などにも利用される炎色反応ですが、実際に見てみると、なかなか幻想的できれいですよ。

 

 11月に入り、秋も深まってきましたので、科学部の畑で育てていたサツマイモを収穫しました。

 実は今年の夏、畑を囲っていたネットがシカに突破され、サツマイモの葉が食害にあっていました。ネットが緩んでいた隙をつき、強行突破をされたようです。それで、正直なところ今年の収穫は絶望的だと思われていました。しかし、ネットの緩みを直して様子を見ていたところ、何とか再び葉をつけはじめ、それなりの大きさのイモにまで成長してくれました。

 収穫量としては昨年の3分の1以下ですが、手頃で扱いやすい大きさのイモになってくれたとも言えます。このまましばらく放置してイモの糖度を高めたら、何らかの形で利用していきたいと考えています。

 

 これまで、市販のイーストを使い実験をしていましたが、メーカの違い、製品の違いによって発酵の仕方が違うようです。また、基質(砂糖やブドウ糖、人工甘味料)の違いにより発酵の様子も異なるようです。発酵の実験にもちいられるキューネの発酵管を使用し、発酵の様子を詳しく調べてみました。

 今後、今回の実験結果を基に、甘いパン作りをしてみたいと思います。

 

 10月31日(日)に、京都市にある「京都学・歴彩館」にて、令和4年度京都府高等学校総合文化祭自然科学部門が実施されました。

 莵道高校の科学部は「そうだ、骨格標本をつくろう。」というタイトルの研究発表を行いました。みんなで骨格標本作製をしようという、啓発を目的とした発表でしたが、内容のインパクトもあり面白い発表になったと思います。発表後の質疑応答も非常に良かったです。また、学校から持って行ったイノシシの頭骨や、アライグマのなめし皮を通じて、他校生徒との交流も活発に行えました。

 下のリンクに今回の発表論文(PDF)がありますので、内容が気になる方はご覧ください。発表に協力してくれた生徒の皆さん、応援してくださった皆さん、ありがとうございました。

 
 

ファイル名:kagakubu_kyosobun_2022_ronbun.pdf

PDFファイル容量:【279.7KB】

※PDFを開くには下記「京総文で骨格標本の啓発をしました」をクリックして下さい。

発表論文「そうだ、骨格標本をつくろう。」
 

 1学期の話です。莵道高校の生物実験室にある冷凍庫に入っていたニホンジカの頭部(2頭分)が冷凍庫内を圧迫しはじめたので、頭骨標本をつくることになりました。最初は鍋で煮て除肉するつもりだったのですが、別の方法も試してみようということで、一つは科学部の畑に埋め、もう一つはバケツの水に浸けて放置することで、自然に肉を腐らせていく方法をやってみました。

 3ヶ月ほど経って2学期になり、土を掘り返したり、水から出してみると、見事に肉が腐り果てており、白骨となっていました。すごい臭いの中、まだ残っている肉を取り除いてきれいにし、最後に過酸化水素水で漂白して完成です。骨の一部が損傷したり、何だか変色したりしていましたが、初めて試した方法にしてはそれなりの形になったと思います。

 さて、現在科学部では、10月30日にある京都府高等学校総合文化祭自然科学部門に向けて、研究発表の準備をしているところです。今年の発表テーマは「そうだ、骨格標本をつくろう。」で、これまでに科学部で行ってきた骨格標本作製を元にした発表をしてきます。応援よろしくお願います。

 

 秋という季節は、哺乳類が冬に向けた準備で活発に行動するようになる季節です。学校林でも多くの動物が姿を見せるようになり、生物多様性が高くなる時期です。そんな季節だからなのか、今回、1年ぶりにムササビが撮影されていました。

 学校林でムササビが初めて撮影されたのは昨年の10月です。大量の撮影データに埋もれていて、写真を確認したのは今年に入ってからですが。ムササビは樹上性の動物なので、地上に仕掛けているセンサーカメラで撮影されることは基本的にありません。前に撮影されたときは、たまたま地上に降りてきたのだろうと考えていましたが、今回、同じ時期に複数回撮影されていました。

 撮影場所は、昨年と同じく水場の前です。つまり、水を飲むために降りてきているという可能性があります。学校林の水場は、ニホンジカがヌタ場として利用していることばかりに注目してしまいますが、実はムササビを含め、たくさんの動物の給水ポイントになっているようですね。今後も撮影されて欲しいものです。

 

 季節は秋となり、寒さも感じるようになってきました。この時期になると、学校林内のある場所には水がたまるようになってきて、動物が集まる水場となっていきます。センサーカメラの1台はこの水場の前に設置しているのですが、水がかれている春から夏にかけてと比べ、今の時期は様々な動物が撮影されるようになります。

 そして、この水場はニホンジカのヌタ場にもなっています。ニホンジカの雄は、水場で体中に泥を浴びる習性があり、その泥浴びに使われる場所を「ヌタ場」と呼びます。これは、体に寄生虫などがつかないようにするためと言われていますが、雄ジカは泥浴びをした勢いで、近くの木に体を擦りつけてにおいをつけます。いわゆるマーキングですが、ダイナミックな泥浴びからのにおいつけは、見ていてとても面白い行動です。また、この時期の雄ジカは角研ぎもするので、とにかく行動が派手になります。

 ニホンジカに限らず、秋は哺乳類が活発になる季節です。撮影される種数も増える傾向にありますし、学校林の生物多様性が高まるので、センサーカメラの撮影結果を見るのが楽しみになる季節ですね。

 

だいぶ同定ができるようになりました。これからは水路の底生魚を調査する予定です。

10/15(土)・16(日)は、巨椋池の干拓田の水路を調査しました。

意外に魚種は多く、十数種類を確認した(下記)。

特定外来魚は適宜処分し、同定の困難なものは持ち帰り詳しく調べます。

確認魚種
 ドンコ   カワヨシノボリ ミナミメダカ ナマズ  タウナギ
 タモロコ  モツゴ     カマツカ   フナ類  オイカワ
 カワムツ  ニゴイ類

 コイ   タイリクバラタナゴ ドジョウ類 
 カダヤシ ブルーギル     オオクチバス

 

 10月1日(土)に莵道高校の学校説明会が実施されました。その体験授業の一つ、理科講座「ゲームで学ぶ!莵道高校学校林の動物」では、『学校林調査カードゲーム』というオリジナルのカードゲームが使用されました。

 これは莵道高校の学校林で撮影される動物を題材にしたゲームで、その制作には科学部がしっかり関わっています。使用される写真やデータは当然センサーカメラ調査のものですし、何より部員達によるテストプレイが何度も行われ、ルールやバランス調整をしています。そのお陰で、ゲームとしての完成度はなかなか高く、学校林の動物について学べるだけでなく、対戦ゲームとして白熱できるものとなりました。体験授業では、中学生は勿論のこと、保護者の方も楽しくプレイしていました。

 はっきり言って、体験授業で使用するだけでは勿体ないゲームです。莵道高校の生徒で(先生でも)、もし遊んでみたい方がいれば、科学部まで声をかけてください。

 

 学校林に仕掛けているセンサーカメラは、赤外線センサーを使用しているため、哺乳類だけでなく鳥類も撮影されます。最も撮影数が多いのはキジバトですが、ハシブトガラス、シロハラ、トラツグミ、イカルなども撮影されます。過去にはキジやコジュケイ、フクロウなんかも撮影されたことがあり、ちゃんと調べたわけではありませんが、哺乳類と同様に鳥類もたくさんの種類が学校林を利用していることが分かります。

 今回、キツツキの一種であるアオゲラが撮影されました。アオゲラの撮影は、この調査を始めてから初になると思うのですが、まだまだ新しい種が撮影されるのは嬉しいものです。撮影されたのは水場の前に仕掛けていたカメラです。普段は樹上にいる動物も、水を飲むためには降りてくる必要があるわけで、そんな瞬間を撮影できたようです。

 

 9月も後半となり、夏の暑さも感じなくなってきました。哺乳類にとっては、これからが活発に動く季節になってきますので、センサーカメラ調査の結果も楽しみになってきます。

 今回は久しぶりにニホンザルが撮影されました。莵道高校の周辺では目撃情報が多いと聞くニホンザルですが、学校林で撮影されることはほとんどありません。撮影される場所はいつも同じですし、学校林の一部が移動ルートになっている程度なのかも知れません。

 しかし、ニホンジカのように校舎側にサルがやってくるようになったら、それはそれでちょっと怖いので、今のように「たまに撮影される」くらいの関係性が一番いいような気もします。

 

 琵琶湖にて、外来魚の採集をしました。強風のため、思ったほどの釣果を上げることができませんでしたが、外来魚対策についての滋賀県の取り組みを知ることができました。
 ブラックバスやブルーギル以外にも、思いのほか、外来魚は多いようです。現在、研究を行っているヌマチチブも琵琶湖淀川水系のものは国内外来魚ですし、身近なタナゴ類やコイも外来魚が含まれるようです。今後は、身近な外来魚についても調べていく予定です。

 

 9月9日に実施された莵道祭において、科学部は展示発表と実験教室を行いました。

 生物講義室での展示発表では、この1年間の科学部の活動をまとめたポスターや、学校林の動物をピックアップしたポスター、3月に日本森林学会大会高校生ポスター発表で発表したポスターを展示しました。また、科学部がこれまでにつくってきた骨格標本など、生物標本の展示もしました。見学に来た生徒は「これ本物?」と驚いていました。

 昼休みの時間には実験教室を開催し、液体窒素を使った実験をいくつか行いました。液体窒素を初めて見る生徒も多く、花が一瞬で冷凍されて粉々に砕ける様子や、一瞬で気体となってビニール手袋を膨らませる様子など、たくさんの現象を楽しんでいました。

 ここ数年は感染症防止のため莵道祭での発表はできませんでしたが、今年は久しぶりに実施することができて良かったです。