4月29日(水・祝)、地理・地図ラボ、地学ラボ、サイエンス部、校有林調査ラボの希望者を対象に、令和8年度地理地学丹後巡検を実施しました。教科・ラボを越えて、今後本格化する課題研究に向けた視点や知識を得ることを目的に、2年ぶりに実施しました。以下では主な巡検箇所と学習内容を紹介します。
⓪バス車内
丹後地域に向かうバスの車内では、亀岡以北の地域の地学的・地理的知見について、オンラインミーティングで資料を提示しながら、教員が講義を行いました。これがこの巡検の特色のひとつです。例えば、
「〇〇〇、△△△の道も遠ければ、まだふみもみず□□□」
この和歌から読み取れる丹後・中丹地域の位置や、亀岡の気象、保津峡の地形、城下町・宮津の空間構造、市町村合併や市庁舎の立地をめぐる行政の地理など、多様な視点から地域・空間を捉えるポイントを紹介しました。参加生徒はバスの車窓を観て、メモをとりながら、理解を深めました。
後述の「京都府立 丹後海と星の見える丘公園」に行く前には、嵯峨野高校がこれまで現地にて行ってきた調査について、校有林調査ラボ、サイエンス部の2年生がわかりやすく説明してくれました。
①天橋立
「三人寄れば文殊の知恵」で知られる知恩寺・文殊堂(南側)から、古代に丹後国の国府が設けられた府中側(北側)に向けて、松並木を歩きました。
松並木の入り口近くには廻旋橋があります。観光船やニューカレドニアからのニッケルを運ぶ艀(はしけ)船を通すため、一時的に歩行者などの通行を止めて、橋を廻旋させて航路を作る必要があります。
しばらく歩くと「磯清水」と呼ばれる真水が湧き出るポイントがあります。生徒は、「海水に挟まれた天橋立の砂州内で、なぜ青々とクロマツが生育するのか」について考えました。この仕組みは真水の地下水がレンズ状に砂州下に存在する「ガイベン・ヘルツベルクのレンズ」という現象で説明できます。参加生徒のレポートからは、この現象に特に興味をもったことがうかがえました。
②京都府立 丹後海と星の見える丘公園
宮津市里波見(さとはみ)に位置する、海と山に囲まれた自然豊かな公園施設です。嵯峨野高校では約10年に渡り、森林や土壌の調査地として訪問しています。ここでは、課題探究に向けたサンプリングを行ったり、山地での調査に向けた教員の講義を聴いたりしました。
ここでは昼食もとりました。参加生徒は天橋立を渡り切ったあとにある地元スーパーで購入したお弁当などを食べました。地域ならではの食を楽しんだ生徒もいたようです。
③伊根の舟屋
漁村として初めて重伝建(重要伝統的建造物群保全地区)に指定された「伊根の舟屋」を道の駅から見学しました。1階が船のガレージ、2階が居室になっている舟屋ですが、なぜこのような形態がみられるのか。主な理由として、伊根湾が日本海側に対して南を向いているため波が比較的穏やかであり、また、湾口に位置する青島が天然の防波堤として役割を果たしているため、このような空間利用が可能であったと考えられます。
伊根地域では伝統的に鰤(ぶり)漁が行われてきました。1階部分のガレージは主に鰤漁に出るための船を停留させておくために設けられました。現在は、農林水産業をめぐる変化や造船技術の進歩などを背景に、1階部分のコンクリートによる埋め立てや宿泊施設としての利用もみられます。社会環境の変化と景観の変化の関連について、学びを深めました。
④山陰海岸ジオパーク
日本で11か所指定されているユネスコ世界ジオパークのひとつです。ここでは、丹後半島海岸部の地形の多様性について確認しました。
丹後半島最北端の経ヶ岬灯台付近にみられる断崖絶壁。この一帯では海食崖という地形が見られます。西に進むと、この海食崖から一転、海岸段丘と呼ばれる、段々状になった海岸地形がみられる地域へと移り変わります。マグマが貫入した岩脈のひとつである「屏風岩」も車窓から確認しました。
さらに西に進んで旧網野町地域の「琴引浜」を訪問しました。海沿いの砂浜で砂を集め、両手でそれを擦るような動きをすると、「キュッキュッ」と音が鳴ります。鳴き砂です。このような体験ができる場所は国内でも限られています。丸く研磨された石英粒などの構成比率が大きいこと、冬の比較的大きな波によって砂が十分に洗浄されること、そして、砂浜が人為的に汚れないように保全や啓発活動を進めることなど、さまざまな条件が必要です。ガイドの方の説明に耳を傾けながら、体験的に自然を捉えることができました。
⑤郷村断層(小池地区)
最後に、京丹後市網野町郷(ごう)にある断層について学習しました。写真からは1927年北丹後地震の際にずれ動いたことがわかります。撮影者からみて奥側が左にずれていることから、左横ずれ型の地震に分類されます。
よく耳にする「活断層」という語句は、この北丹後地震とこの郷村断層(地震断層のひとつ)を背景に使用されるようになったとされています。教科書で出てくる語句の起源が、実は京都の地形にあるのです。参加生徒は、京都という地域について新たな視点を得ることができたようです。
さいごに
「地形・水・地質といった自然条件が人間の生活や社会制度、防災に大きく関わっていることを実感した。今後は、単に地形を知識として覚えるだけでなく、それが人間活動にどのような影響を及ぼすのかという視点を持って学習を深めていきたい。」
ある生徒が提出したレポートの一部です。
参加生徒は、地理や地学をはじめ、複数のレンズを使って事象を捉える重要性を感じてくれたようです。
今後本格化する課題探究にむけて、自ら現地を訪れ、様々な視点で物事を追究する、そしてその営みを楽しむという「ほんまもんの学び」を大事にしてほしいと思います。