3月1日(水)に本校にて第74回卒業証書授与式を挙行いたしました。卒業生たちは入学当初から新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、教育活動における制限が多い高校3年間を過ごすこととなりましたが、勉強に、部活動に、学校行事に全力で取り組み、自主自律の精神で大きく成長した皆さんを心から祝福します。

以下に答辞を全文記載いたします。


答  辞

時と光の花束

吹く風は爽やかに巡り、降り注ぐ暖かな陽が春の訪れを告げる季節となりました。その眩い光を受けて、校庭の花々の蕾が美しく花開く、今日の善き日に、このような素晴らしい卒業式を迎えられることを心から嬉しく思います。挙行くださりました先生方、在校生の皆さん、ご多忙の中ご臨席賜りましたご来賓の皆様、保護者の皆様に私たち卒業生一同、感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます。

この場に立つと、懐かしく思い起こされるのは入学の日です。ふと時計をみると、今もその針は零(ゼロ)から十二までを一秒一秒刻み続けていて、入学からの時間(とき)の流れを感じます。そして、私たちの高校生活も時計の針が一周する動きと同じように零(ゼロ)からのスタートでした。

入学式、始まりはこの体育館から。真新しい制服に身を包み、期待と不安を胸に入学した1年生の4月、私たちの時間は動きはじめました。しかし、いざ授業を受けることができたのは6月です。新しい校舎と制服、新しい教科、そして新しい仲間たち。中学校までとは異なる高校での生活に戸惑うことも多く、それに加えて、未曾有の感染症の脅威に襲われた私たちは右も左もわからないでいました。

そんな中、慣れないクラスですぐにスタートしたのは文化祭の準備です。中学校までとは違い、企画からすべて自分たちで行うという難しさに悩みながらも、仲間と少しずつ打ち解け合い、協力していけるようになったと思います。仲間と共に成功と失敗をそれぞれ噛み締め、先輩方のパフォーマンスを観て、次の大きな目標を得ることができました。

2年生になり、間も無く実施された遠足。はじめて経験するカヤックでのレースは練習も当日、本番も当日でしたが、各クラスのチームワークで協力し合い、みるみる上達することができました。勝敗関係なく笑い合い、帰り道では次なる行事が楽しみで仕方なかったです。

そしていよいよ始まった文化祭準備。前年の経験もあり、ますます力を入れて夏休み前から準備を進めていました。しかし、二学期始業の直前に突然知らされた中止の一報。私たちの努力は、その先の成功は、一体どこへ消えてしまったのか。時計の針が丁度半周した2年生の9月、私たちの時間は止まりました。

落ち込んでいる暇もなく、日常の波は押し寄せます。各教科の授業内容は一層レベルアップしたものとなりました。得意だった科目が上手くいかなくなったり、模試での点数が伸び悩んだり、不安は募るばかりです。しかし、そんな中でも高い成績を維持する仲間の姿を見て刺激をもらい、頑張ろうと思うことができました。専門学科では基礎から発展した活動へと移り、積み上げた経験を糧に多種多様な研究を行うようになりました。そこで知ったのは興味を持つことの大切さと追求することの面白さです。各種大会やより専門的な分野へと世界を拡げ、精力的に取り組んで行きました。

年が明け、研修旅行が目の前となった3学期はじめ。感染症の影響は収まるところを知らず、実施の可否は直前まで定まらないものでした。ですが、123日、私たちは無事北海道の地に足を着きました。行きたいという強い思いと、それを実現するために3年生全員で感染対策を徹底した1月。強い信念を持った行動は必ず実ると体感し、止まっていた時間が再び動き出したように思えました。決行すると決断いただいた先生方には感謝してもしきれません。北海道の自然を一望し、スキーという非日常的なスポーツに触れ、京都とは違う文化を味わった4日間。仲間たちとの一生の思い出です。

気がつけば3年目の春。長く取り組んできた部活動やTAFS、生徒会活動もいよいよ大詰めです。新しく入ってきた一年生の姿を見ると私たちの今までが記憶に甦りました。ただひたすら先輩の背中を追い続け、努力し続けた日々。それがいつしか憧れを抱かれる立場となっていました。そして、最後の試合、研究、発表まで無事に走り抜くことができました。

9月、最後の学園祭。はじめて文化祭、体育祭ともに実施となり、私たちはまるで一年目のように新鮮でワクワクする気持ちを抱きました。そこから、未だかつてなかった燃えるような熱意と、成功と勝利への憧れが芽生えました。夏休み、放課後、授業の合間までをも使い準備した文化祭での演劇。魅せるための工夫と努力を重ねた練習、そこに込められた強いメッセージ、3年間の集大成とも言える演劇となりました。全学年が一つのグラウンドに集まり白熱した体育祭。団長の力強い選手宣誓で始まった一日は、学年の垣根を越えた協力と切磋琢磨し合う友情とで大きな感動を生みました。クラス、学年、桂高校全体での絆をまさに体現できたと思います。この学園祭は私たちの最高の青春です。

冬、冷たい風がどこか物悲しさを伝える季節。別れへのリミットを感じながらも私たちは戦いました。それぞれの進路、目標、夢に向けて。勉強もスポーツも芸術も、自分自身との勝負であると共にいつだって団体戦です。目を閉じると私たちの瞼の裏にはともに戦い応援してくれる仲間たちの姿が広がります。離れていても、道は違えど私たちの心は一つ。諦めずに立ち向かい続けました。

そして、ようやく戦(いくさ)を終え目を開けると、ここにあるのは仲間たちの姿です。3年間を終える今、時計の針は十二を、はじめと同じこの体育館を指します。私たちの時間は長いようで短く、しかしかけがえのないものでした。同じ方向を向き、一丸となり、様々なことに挑戦したこの3年間。私たちの時計の円盤にはまさにその軌跡を示すように、数え切れないほどの思い出が詰まっています。そして、そこに間違いなく刻まれているのは大切な人たちの姿です。

憧れであった先輩方、付いてきてくれた後輩たち。私たちがここまで諦めず前へ進むことができたのはその存在が励みになったからです。ありがとうございました。挫けそうになったとき、悩み、立ち止まったとき、手を差し伸べてくださった先生方。私たちのためを一番に思い、優しく、ときに厳しく、愛のあるご指導をしてくださりました。そのご恩はとても大きなものです。本当にありがとうございました。

そして、一番近くで私たちを支え、愛し、育ててくれた家族。身近であるからこそ、素直に接せず、酷い言葉をぶつけ、ときには反抗したこともありました。かけた心配は数え切れなかったと思います。それでも、朝早くに起きてお弁当を作り見送ってくれた。汗まみれの練習着も、泥まみれの実習服も、綺麗に洗ってくれた。帰りが遅くなる私たちを待ち「おかえり」という言葉をかけてくれた。家族はまさに私たちの原動力となった存在です。数多くの我儘を口にし、それでもお礼の言葉ひとつも言えない日々が続いても、変わらず見守り応援してくれたこと、すべてを受け入れてくれたこと。どんな言葉を並べてもその感謝は伝えきれないけれど、まずは一言、「本当に、本当に、ありがとう」。続きは私たちのこれからの人生で、貰った以上の愛で、恩返しさせてください。

最後に、一番強く刻まれている姿。今日まで共に笑って、泣いて、喜んで、悔しんで、戦って、歩んできた3年生の仲間たち。お互いの悩みを打ち明け合ったこと、譲れない考えをぶつけ合い喧嘩したこと、肩を組み手を取り合い喜びを分かち合ったこと。そんなささやかな幸せの一つ一つが今となっては大切な宝物です。別れの寂しさも募るばかりですが、記憶を辿ると甦るその笑顔を見ると、自然と元気が湧いてきます。いつだってそうでした、辛いことも乗り越えられた、高い壁にも恐れず挑めた、希望を持って成功を目指せた。いつでも側に仲間がいたからです。共に過ごした日々を決して忘れることはありません。心から、ありがとう。これからもかけがえのない仲間であってください。

さて、たくさんの人たちのお陰で、時間(とき)は今新たに刻まれ、私たちの針はこれからの未来を指し示します。いよいよ旅立ちのときが近づいてきました。指針の先を見れば、待っているのは期待や希望、そしてまた未知や不安が押し寄せる世界です。退くことのない感染症の流行、グローバル化する経済、インフレ進行と少子高齢化問題、AIの普及により高度化する職業。変化し続ける社会を目の前にして私たちはきっと幾度となく立ち止まり、昔を懐かしんでしまいます。しかし、時計の針を巻き戻して時間を振り返ることはできても、私たち自身は過去に遡ることはできません。ですが、私たちは間違いなく失うことのないものを3年間の高校生活で手にしました。

基盤の「基」という字に「土」が含まれるように、私たちの基盤となったこの桂高校はまさに其(そ)の土に例えられます。そこへ入学した私たちは言わば花の種であり、成長するため3年間をかけて努力し続けました。勉強、実習、部活動で得た学びの肥料。行事で仲間と切磋琢磨し、一喜一憂して得た学校生活の潤い。そして、支えてくれた大切な人たちの温かい光。それらを受けて私たちは様々に花開き、今この体育館で一つの花束となっています。互いの色を認め合い、協力し合って取り組むこと、その先に成功と大きな感動が待っているということを3年間で学びました。仲間とならこの先何度迷っても挫けても必ず立ち上がって進んで行(ゆ)ける。今の私たちの姿はその証明です。

そして、花が自らの輝きで人の心を癒し、元気付けるように、私たちは次世代を担うものとしてこの社会、日本、世界を照らす、光る花束であり続けたい。途絶えることのない時間の中を、私たちはその手にした色褪せない輝きでどこまでも前に突き進んでいきます。決して諦めず、努力を惜しまず、たくさんの思い出と溢れる感謝の気持ちを胸に。また、多くの人の助けとなれるようにと決意を込めて。私たちは今、桂高校を卒業します。

降り注ぐ暖かな陽が私たちを照らし、私たちが花開いたこの善き日に。次なる時間へ、行ってきます。

 

令和五年三月一日

卒業生代表

三年五組 西川春太郎

 
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