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京丹後ふるさと納税の商品「鹿の角」をPRしよう!~パッケージデザインを考える~

 

みなさんは、ふるさと納税の特設サイトをご覧になったことがあるだろうか?

そもそもふるさと納税制度は、自分が育ったふるさとに貢献したい、

自分と縁のあるまち、好きな地域を応援したい「思い」を「形」にするために設けられたものだ。

支援者は気持ちで寄付をし、その気持ちに対してまちはお礼をお返しする。


京丹後市が運営するサイトを覗いてみると、とても豪華な返礼品の数々が並ぶ。

かにや米、酒やフルーツといった特産品をはじめ、京丹後産の絹糸を使用したおしゃれなアクセサリーや

京丹後をぐるっとまるごと楽しめる旅行券など見ているだけでワクワクするもので溢れている。


そんな中、一風変わった商品があることに気がつく。

それは、「鹿の角」である。一瞬、戸惑う。鹿の角にどんな用途があるのだろう......。

置物にしてもただの棒きれのようにもとれるこれ、正直飾ってもあまり見栄えはしない。

鹿の角サンプル.jpg

だがその商品に今注目が集まっているという。一体、どういうことなのだろうか。

今回は、そんな「鹿の角」に着目し、それをより一層PRするための提案をしたいと

考えるグループの紹介をしようと思う。


始まりは言葉や絵によって思いを伝えるという表現のあり方に関心をもつ生徒たちが

集まったところから活動が開始した。

そんな中で、行き着いたのがデザインについて。

デザインは、発信者と受取手を繋ぐ架け橋の役割を担っている。

発信する側の思いや意図を受取手がイメージ出来るよう、視覚的に表現する。

そしてそのデザインが魅力的であればあるほど、私たちは発信者の思いに共感し、

応援したいと感じたり、どうしても手に入れたいと願ったりする。


そして彼女たちは、考えた。

「デザインを通して、地域に何かプラスな影響を与えられるような取組をしよう」と。


そこで目につけたのが、ふるさと納税。

例えば、今ある商品の見栄えを良くしたり、届ける側の思いが伝わるよう見せ方を工夫することで

地域に貢献できることがあるかもしれない。


まずは京丹後市のふるさと納税について現状を把握し、

これからどの商品を全面的にPRしていくのか検討するため、

京丹後市役所の職員、高倉遼さんにお話を伺うことに。

お話を聞く中で見えてきたのは、「鹿の角」が今犬を飼っている人々の間で

ブームになりつつある商品であるということ。


犬のおもちゃとしてよく見かける、骨の形状をしたもの。

これは犬のストレスや運動不足を解消する効果があるだけでなく、

噛むことで歯石や歯垢を取り除き口腔の健康を守る役目も果たしている。

だが、その多くは長持ちしないという弱点も抱えている。


その反面、鹿の角は丈夫で強く噛まれても削れにくく、長持ちする上、

鹿の角には犬が好物とする髄液が含まれているため、犬のおもちゃとしては最適なのだ。

そして京丹後市では、物流を全般としたサービスを提供している日本インパクト株式会社が

鹿の角を商品として扱ってる。


鹿の角が注目を集めている今、売れ行きは悪くないのだが何だかパッケージが味気ない。

透明の袋の中心に小ぶりなシールが貼ってあるだけで、

そのシールの表記も「京丹後ふるさと納税 鹿の角」とごくシンプル。

サンプル2.jpg

そこで彼女たちは、このシールのデザインを考えることに決めた。


まずは、そもそもデザインとはどういうものなのか知るため次にお話を聞いたのは、

京丹後市役所にインターンに来ていた京都工芸繊維大学の大学生。

彼女からは、マーケティングの視点から商品を売り出すための基本的なノウハウを教えてもらうことに。

武岡さんと初めまして.jpg

まずは「商品価値の創造」。

例えば「何だかよさそう」といった情緒的価値をパッケージに作り出すこと。

そして「コンセプトの伝達」。

今回の場合、WEBサイトの商品一覧の中に掲載されるため、流し見されることが想定される。

サイトで見られるその一瞬のうちに目にとめてもらう。

商品が伝えたいメッセージを形や見た目で情緒的に表現することも大切だ。

また「コミュニケーションの設計」をするのもパッケージデザインの役割だ。

広告やPR、WEBやSNSといったメディアにおいては、一貫して同じ情報を伝えていく必要がある。

それによって強く効率的なコミュニケーションが実現する。

届けるべき一貫したメッセージデザインを進めて行くことが求められるということ。

ターゲット層を絞って、その世代に受け入れられやすいデザインを考えることも必要だ。

中々複雑な話で簡単ではないけれど、専門的な話を聞くことによって、デザインの奥深さが分かってきた。

武岡さんよりアドバイス.jpg

ある程度デザインに関する基本的な知識が固まった上で、

今度は鹿の角を取り扱っている日本インパクト株式会社へ訪問。

お話をしてくださったのは、代表取締役の金志繁実さんと社員の小谷琢磨さん。

高校生たちは今までの経緯を話し、地域に何かしらの形で貢献したいこと、

その中でも「鹿の角」のパッケージシールのデザイン案を考えたい主旨を伝えた。

日本インパクト(話し合い).jpg

それを聞いた金志さんや小谷さんは大喜び。

鹿の角はもちろん、この会社ではジビエ商品の生産に力を入れている。

鹿や猪の皮や肉をできる限り有効利用していくための商品開発に力を入れる。

捨てられていくものに新たな価値を見いだし、生まれ変わって再び世に出ていく。


生き物と共存していくということ。そして豊かな大地を守っていくこと。

お二人の強い思いを聞き、彼女たちはイメージを組み立てていく。

「環境に配慮した」「再利用」「自然のもの」といったキーワードから、

"環境にやさしい"イメージを伝えるようなデザインにすることに決まった。

日本インパクトにて(二人).jpg

日本インパクトさんからは、こんなお願いも。

「実は、うちで作っているジビエ商品全体のロゴマークも良ければ考えてほしい。

今は何もない状態なので、何か提案していただければ嬉しい。良いものであれば採用するよ!」とのこと。


ひとまず今回は、鹿の角をPRするためのデザインをメインに考えることになるが、

企業からのミッションに応えるという目的で、後輩にバトンが繋がっていくと面白いことになりそうだ。

これからの探究活動が楽しみである。

 
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