実践例を見てみましょう

テストのデジタル化

A小学校の学校図書館の取組

 デジタル化された教材はとても効果的ですが、学習に使用する教材全てがデジタル化されているものではありません。教員が作成しているプリント教材などは、作成の過程で一人一人の児童生徒のニーズに合わせて加工していくことが比較的容易ですが、市販の教材・テストや各自治体で作成の副読本などでデジタル化されていないものをニーズに合わせていくことは困難です。
 そこで、令和4年度の研究において、読むことに困難のある児童生徒へ、アクセシブルな教材を効率的に製作・提供(著作権法第37条)するため、学校図書館×総合教育センター×京都教育大学学びサポート室(複製ボランティア)が連携し、小学校における児童の学びを支える環境整備を行いました。

 学校図書館では、著作権法第37条第3項を遵守した図書資料を、読みに関する特別支援教育ニーズのある児童生徒へ提供できます。(参考1)
 A小学校の学校図書館では、対象児童へ音声化したテストを用いた学びの保障をする教育環境づくりを実施しました。
 校内の特別支援教育ニーズを把握した上で、①大学への複製依頼(参考2)、②単元まとめテストをPDF形式のファイルに変換し大学へ送付、③図書館目禄・複製図書教材の管理、④該当児童の個別の教育支援計画等の明記をしました。
 複製作業は、教員を目指す大学生ボランティアが行い、児童の学びを支える連携を図りました。

複製の依頼から該当児童への提供までの流れ。この図は、紙面の単元テストを複製して対象児童に提供するまでの流れを示している。A小学校の学校図書館から複製依頼があり、京都府総合教育センターが連絡・調整役となって大学と連携し、大学が読み上げ音声を添付したPowerPoint形式のデータとして複製した。そのデータを用いて、A小学校の対象児童がデジタル化されたテストを実施した関係性を図示している。
該当児童への提供・実施における学校での主な取組。校内の特別支援教育ニーズのある児童への支援体制を示している。アセスメントや校内委員会での検討・情報共有、教材複製の依頼文書やPDFファイルの送付、図書目録による複製教材の管理、研究時にはTeamsを用いたファイル受け渡し、ならびに個別の教育支援計画等の明記が含まれている。

 読み書きに困難のある児童生徒にとって、問題文を読み、紙と鉛筆でテストを受けること自体、とてもエネルギーが必要です。
 この対象児童は、これまで代読でテストを実施していましたが、今回、紙媒体ではない、「音声化」した単元毎のまとめテストを受けることで、問題文の読み取りにかかる時間が半分になりました。本人の疲労感も減少し、「ひとりでやりきった!」「できた!」という自信がもてるようになりました。
 「次は、イヤフォンで音声を聞きながら、クラスのみんなと同じ教室でテストを受けたい」という意欲が生まれました。

『こうじゅんかんを生み出す』と題した図。テキスト化・音声化したテストを実施し、読みの困難さがある児童がタブレットで問題文の読み上げを聞きながら、テスト用紙に書き込んで解答する様子が示されている。その結果、疲労感の減少、学習への自信や学びの意欲の向上につながり、問題を解くという学習の本質に力を注げるようになるという好循環が図示されている。

指導助言

 対象児童の使いやすさを大切にして

 対象児童が音声教材に取り組む様子を、担当の先生からフィードバックしていただいておりました。対象児童が利用しやすいように、アイコンの色や形を変更することや、読み上げのスピードを調整するなど、個々に合わせて音声教材のカスタマイズを行うことを(学生が)学びました。また、音声教材の使用により、テストに要する時間が半減し、見直しができるようになるなど、心の余裕につながったという報告は、私たちも喜びを共有することができました。
 対象となった児童は、徐々に全ての読み上げ機能を使用するのではなく、自分が困りそうなところだけ使用するようになってきたという報告をいただきました。児童自身が必要なものとそうでないものの選択ができるようになったことは、自己理解につながったエピソードととらえられました。また、教員側としては、読み取りの困難が軽減されたことから、児童の理解できている部分、そうでない部分がはっきりし、授業改善や新たな支援方法を考えていくことに繋がったということでした。
 テストの要する時間の短縮や、一人で音声教材を操作できたことが自信につながったのでしょうか、別室でテストを受けていた児童が、教室でみんなと一緒にテストをやってみたいという前向きな気持ちの変化が表れてきたとのことです。
(中略)
 Special Needs Educationは特別支援教育と邦訳されます。「特別」なことを、と考えますと敷居が高くなりますね。しかし「特別」なことではなく、一人ひとりの個別のニーズに気づき、理解し、その児童生徒に何が必要なのかを考えていくことではないかと思っています。
(令和5年度研究 京都教育大学 相澤 雅文 教授

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