様々な表現方法
自分に合った方法を見つける
書くことが苦手な児童生徒が、ICTの導入により「入力する」という新たな手段が生まれ、自分の考えを文字に起こしやすくなりました。入力方法はタイピング、フリック、音声、手書きなど多様です。児童生徒が表現方法を自分で選ぶことは自分に合った学び方の選択であり、まさに「個別最適な学び」と言えます。
ここでは、「作文を書く」という学習を通して、自分に合った入力方法(表現方法)を見つけ定着させていった実践例、代替機能(タブレット端末)を使うことをきっかけとし、学習方法を自分で選択できることで学習への意欲が向上した実践例を紹介します。
通級指導教室での取組 フリック入力で作文ができた
児童生徒
文字を書くことに抵抗がある。
自分で書いた文字でも読むことが難しい。
書きの速度は同学年よりかなり遅い。
ねらい
タブレット端末を操作して、作文などの文章を作ることができる。
実践
フリック入力でタブレット端末に文字入力して文章を作る。
指導の結果
- タブレット端末の操作にも慣れ、卒業文集の作文を意欲的に取り組んだ。
- タブレット端末へのフリック入力が、自分に合った方法であると本人が気付くことができた(ローマ字入力は難しいことが分かった)。
- タブレット端末にフリック入力することにより、「書き」の負担が軽減され、作文の作成に意欲的に取り組むことができた。家庭のタブレット端末でもフリック入力の練習に取り組むことができた。
通級指導教室での取組 作文を自分で直して提出できた
児童生徒
漢字にルビがあると読めるが、たどたどしい。
読み・書きの速度は、学年相当である。
自読・代読とも、内容理解がかなり困難である。
本人は、代読の方が内容理解がしやすいと答えている。
ねらい
タブレット端末のフリック入力で文章を作成する。
作文をタブレット端末による代読で聞き返して校正することができる。
使用教材
国語科の教科書データ、読み上げ機能ソフト
実践
フリック入力でタブレット端末に文字入力して文章を作る。
作成した文章を音声読み上げ機能で聞き、文章を見直してから提出する。
指導の結果
- タブレット端末を活用して、自分で文章を作成、確認、見直してから提出することができた。
- 作成、見直し、提出という一連の流れがあることに本人が気付いた。
- 本人が、自分に合ったタブレット端末の活用方法が分かったことにより、「読み・書き」が楽になったと自覚できた。
- タブレット端末を活用した学習の方法を保護者に伝えることで、学校と同じ学び方で家庭学習に取り組むことができた。
代替機能を使って読み書きができた
児童生徒
文字の読み取りが苦手である。
簡単な文(振り返りや感想)が書けない。
書字が苦手で、自分の書いた文章が読み返せない。
簡単な質問にも「わからん」「ふつう」という答えで返し、会話が続かない。
学習意欲が低い。
宿題になかなか取り組めず、注意されることで母とぶつかってしまう。
ねらい
文章の内容を理解する。
簡単な文章が書ける。
使用した教材
教科書デジタルデータ、読み上げ機能ソフト
実践
文章の読み取りには、タブレット端末や指導者による代読を行う。
作文はタブレット端末で入力し、印刷する。
板書はカメラ機能で撮影し(本人や担任)、それをノートに貼付し学習を進める。
家庭学習においてもタブレット端末による代読の機会を設定する。
指導の結果
- タブレット端末による代読によって、文章の内容が理解でき、学習への意欲が見られるようになった。
- タブレット端末による代読での評価テストで得点が上がり、自分でICT機器を活用した学習の効果を実感することができた。
- 書くことに抵抗がなくなり、振り返りや感想が書けるようになった。また丁寧に書けるようになった。
- 通級指導時に設定している「お話タイム」での会話の時間が長く続くようになった。
- 会話のやり取りが増えたことで、自分の気持ちを伝えられるようになってきた。
- 家庭学習に自分から取り組めるようになった。
音声入力と補完
書くことに困難さのある児童生徒にとって、作文等長い文章を書く作業はとても大変です。「音声入力」をすることで書くことへの負担が軽減され、考えることにエネルギーを注ぐことができるようになります。
しかし、音声入力は声質や滑舌によっては正しく認識しないことがあるため、使いにくいという声がありました。
音声入力にエラーは付きものです。音声入力はあくまでも一次的な入力であり、おおよそ入力し終えると、二次的な入力としてフリック等の他の方法も活用しながら校正作業をする必要があります。
また、音声入力は全て漢字変換されてしまうため、入力した文章中に習っていない漢字が出てきます。そのため、せっかく入力しても本人が読み返せないことがあります。
その場合は、入力した文章にルビを振るウェブサイトを活用すると、該当学年より上の学年で習得する漢字がひらがなになります。
大切なことは、複数の機能・方法を組み合わせることです。
授業での活用による気付き
書くことに困難さのある中学生の例です。聴写や視写を手書きとキーボード入力の二通り行い比較したところ、明らかにキーボード入力の方が結果が良く、それが自分に向いている方法であることを知るきっかけになりました。授業においても日常的にタイピングする機会がありました。手書きと入力では明らかに文章量が違っていたため、本人の自己理解だけでなく、教職員の生徒理解にも繋がりました。

思考の整理
作文等においては、何を書いてよいのか分からない、思考が整理できない等、困っている児童生徒も多数います。そのような時は、一度書く内容を視覚化するとよいかもしれません。そのために、思考支援ソフトを活用している児童生徒もいます。

児童生徒の様子
- 小学校では、手書きに時間がかかり、自分の考えを書いたり話したりすることが苦手な児童が、タブレット端末にキーボード入力することで、文章で表現することへの苦手意識が軽減されました。また、その機会も増え、話し合いにも参加することが増えました。
- 高等学校では、感想文を書く際に学級全体でタブレット端末でキーボード入力をしてみたところ、複数の生徒が手書きよりもしっかりと文章が書けることが分かりました。
- ICT機器を使って入力した文章に対して、担任が「うまく書けたと思うんだけど、自分としてはどう思う?」と尋ねると、「これなら自分が読み直しても分かりやすい」と答えたり、分からないことに対して質問したりする等、学習に対して前向きな様子が見られるようになりました。
