将来を見据えて

高校入試に向けて

中学校での入試に向けた第一歩

 令和3年度の研究では、地域支援センターや総合教育センターと連携しながら、高校入試での合理的配慮の提供を見据えた取組を進めました。

 書くことに困難さのある3年生の生徒は、書いた文字は判読が難しく、たくさんの量を書くことにも大変苦労します。医療機関とは連携しており、中学校においても通級指導教室で丁寧な指導を受けてきましたが、本人は人と違う学習方法に消極的でした。
 これまでの定期考査では、各教科担当者が「恐らくこう書いてあるのだろう」という予測を基に採点することもありましたが、ICTを活用した高校入試を目指し、定期考査において「採点における配慮」ではなく「受験方法における配慮」にシフトチェンジしました。
 スムーズな文字入力を含む機器操作が可能であったので、定期考査でのICT活用に向けては次の3点を中心に取組を進めました。

  1. 本人の意思(本人との合意形成)
     合理的配慮は、本人の「この方法でやりたい」という思いから検討がスタートします。そのためには、自分のことを知り、本来の自分の力が発揮できる方法を実感する必要があります。
  2. 校内での共通理解
     授業でのICT活用は進んできているものの、定期考査においては前例もなく、先生方の中には消極的な意見も多くありました。教員間で意見がなかなか一致しなかったので、管理職と一緒に合意形成を進めました。
  3. 具体的な検討
     活用に当たっては、どの機器を使用するのか、どの教科で実施するのか、別室かどうか等、様々なことを決める必要があります。

本人との合意形成に向けて

 この研究協力校では、主に通級指導教室で行いました。

  • Step1:気付きへの仕掛け
     聴写や視写を手書きとキーボード入力の二通り行い、その結果を比較させました。
     明らかにキーボード入力の方が結果が良く、それが自分に向いている方法であることを知るきっかけになりました。
  • Step2:やってみる
     実際に練習問題をパソコンで解答してみました。
    (よかった)記述問題:入力だと楽にできる。
    (あまりよくない)記号問題等:カーソルをその都度合わせる必要があるため、書いた方が速く解答できる。

     このように、全ての問題をパソコンで解答することは、この生徒にとっては取り組みにくいことが分かりました。
  • Step3:対話
     取組の結果をこの生徒とフィードバックしながら時間を掛けて話し合うことで、やってみたいと思えるようになりました。同時に、活用場面や方法も明確になっていきました。

授業での活用による気づき

 授業においても日常的にタイピングする機会がありました。手書きと入力では明らかに文章量が違っていたため、本人の自己理解だけでなく、先生方の生徒理解にも繋がりました。

二枚の比較写真。
左の写真は、プリントに質問の考えを手書きで文字を書き込んだもの。2行で書かれており、ところどころ読みにくく赤字で添削が加えられている。
右の写真は、中学校の特徴や行事についての説明をキーボードのタイピングで入力したもの。19行入力されている。

管理職のリーダーシップ

 先生方の理解はあったものの、なかなか実施に踏み出せない状況でした。しかし、校長先生の「人権を大切にする」「生徒に必要なことなら積極的にやろう」「大人が子どもの背中を押してあげることも必要ではないか」という言葉によって、実施に向けて進み始めました。
 担当の先生は、校長先生の後押しに大変勇気付けられたそうです。

定期テストでの実施に向けて

 管理職を含む校内の関係者による会議が設定され、地域支援センターと総合教育センターも参加しました。
 実施方法の変更点は、これまでの指導や本人との相談内容を踏まえ、国語の小論文のみで実施することを確認しました。
 また、使用する端末はタブレット端末かパソコンか、予測変換をどう扱うかについても議論になりましたが、情報が少なく結論が出なかったため、総合教育センターから既にパソコンによる定期考査を実施している府立高等学校に情報提供を求めました。
 その後、校内でさらに細かい調整が行われ、次のような形で実施しました。

  • 【試験会場】通級指導教室
  • 【使用機器】パソコン ※インターネット未接続 ※予測変換あり
  • 【解答画面】Word ※原稿用紙設定

 実施したのは3学期の1回のみで、高校入試での活用には繋がりませんでしたが、本人は取組を通して「将来の目標がもてた」と話しており、保護者も喜んでおられました。高等学校でも継続して活用できるように引き継ぎを行いました。

評価の本質

 変更・調整に向けた会議の中で、「機器を使用することで漢字の表記ミスがなくなるため、減点の可能性が下がり有利になるのではないか」という意見もありました。しかし、「正しい漢字を選べることも生徒の力として評価できる」と国語の教科担当者が判断しました。
 当たり前のことですが、それぞれの設問でどの観点を評価するのかを整理することは重要です。

早期の対応を

 実施に向けた変更・調整には細かな合意形成がたくさん求められるため、かなりの時間を要することが分かりました。少しでも早い段階から始める必要があります。特に、小学校段階から取り組んでいると、中学校では格段に取り組みやすくなり、高等学校にも繋がりやすくなります。

平成30年度研究冊子から

※高校の入学選抜や大学入試センター試験については、最新の情報を御確認ください。

合理的配慮と評価・テストについて

 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の文部科学省管轄事業分野における対応指針では「合理的配慮の提供を受けたことを理由に、当該試験等の結果を学習評価の対象から除外したり、評価において差を付けたりすること」を不当な差別的取扱いとしています。
 つまり、問題用紙や答案用紙の拡大、時間延長などの合理的配慮の提供を受けて行った試験の結果を、評価対象から外したり、参考点として取り扱ったりせず、正規の点数として取り扱わなければならないということです。
 京都府立高等学校の入学者選抜や大学入試センター試験などでも、合理的配慮の提供が認められています。

京都府立高等学校入学者選抜における合理的配慮について(平成31年度選抜の場合)

申請方法 願書受付日よりもできるだけ早い時期から事前協議が必要です。

  1. 中学校長が志願先高等学校長とあらかじめ連絡・調整の上、
  2. 「学力検査等受検上の特例措置申請書A」を、願書受付日までのできるだけ早い時期に志願先高等学校長に提出

申請の際に必要な記入事項

  • 障害等の状況
  • 希望する配慮内容
  • 中学校における授業時や定期考査等における配慮内容

過去の配慮の例

  • 試験時間の延長
  • 別室による受検
  • 問題文のルビうち
  • 問題用紙や答案用紙の拡大
  • 作文の際のパソコン利用

大学入試センター試験における合理的配慮(平成31年度試験の場合)

申請方法
 事前相談の上、出願前若しくは出願時に「受験上の配慮申請書」「状況報告書」等の必要な書類を提出して申請(事前相談は随時行われているので、疑問点がある場合はできるだけ早めに問い合わせてください。)

申請の際に必要な書類等(申請の内容によって必要な提出書類が異なります。)

  • 受験上の配慮申請書
  • 状況報告書(必要な配慮事項や高等学校等で行った配慮の具体的内容等を記入)
  • 医師による診断書

過去の配慮の例(発達障害関係)

  • 試験時間の延長
  • 別室による受験
  • チェック回答  
  • 問題文の代読
  • 拡大文字問題冊子の配付   
  • 下書きや計算用の用紙の使用
  • 注意事項等の文書による伝達
  • 定規の持ち込み

中学校や高等学校等で合理的配慮の提供を受けた学習実績がポイントです。
大学入試センター試験以外の大学入試試験でも、様々な合理的配慮が認められています。

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