チェックリスト
子どもの学習の困難さについて、客観的に把握できると適切な支援につなげることができます。学習のどのような場面で困難を示しているのかをチェックリストで確認してみるとよいでしょう。
アセスメント
学習障害における読み書きの困難さは、「読み書きの正確さと流暢さが困難」な状態であると考えることができます。知的な障害とは異なるため、文章の意味、内容を理解できないわけではありません。
例えば、
「文字を見て認識することは難しいけれども、音声を聞いて意味を理解することができる」
「文字を拡大したり、文章に区切り(スラッシュ)を入れたりする調整で、文字からの意味の理解が助けられる」
といった状態です。適切な支援につなげるためには、「読み」と「書き」に関するアセスメントが必要です。
平成28年度の研究から
平成28年度の研究では、東京大学先端科学技術研究センターから提供されたURAWSS(ウラウス)※参考1「小学生の読み書きの理解」と、標準読書力診断テスト※参考2を用いた検査を、4名の児童生徒に対して各通級指導教室で実施し、この検査結果を活用し、自分で文章を読んだ場合(自読)と読み上げられた文章を聞いた場合(代読)の差を東京大学先端科学技術研究センターに評価していただきました。
参考1 URAWSS(ウラウス)
評価内容
読み・書きの速度を評価することができる。速度を学年平均と比較することができる。
課題実施内容
「読み課題」文章を一定時間黙読し、次のページに書かれている内容理解を問う問題にマルやバツで解答する。その後1分間当たりの読み速度と内容理解の正答数を算出する。
「書き課題」文章を3分間視写し1分間当たりの書き速度を算出する。
参考2 標準読書力診断テスト(絶版)
評価内容
文章理解の正確性を評価することができる。理解度を学年平均と比較することができる。
課題実施内容
短文を読み、その意味内容に合うかどうか絵にマルやバツをつけたり、絵を線で結んだりする。普段通り自分で解く条件と、検査者が横で読み上げた音声を聞いて解く条件とに分けて正答数と時間を比較する。
上記2つのアセスメントツールを用いてアセスメントを行うことで、
- URAWSS(ウラウス)の内容理解にかかわるテストの得点から、4名とも自力で文章を読むことは、正しく内容を 理解するための手段となりにくい。
- 3名の児童については、標準読書力診断テストから代読による正答数の方が多い。
- 1名の生徒については、自読の得点のほうが高いものの、自読が正しく内容を理解する手段とはなりにくいことが分かるため、代読も含め文字の大きさやフォントの変更、コントラストの変更、スリットシートの使用等、より様々な個々の生徒にあった支援方法を探る必要がある。
- 自読、代読それぞれの取組に対する意識調査をしたところ、1名の児童については差がなく、3名の児童生徒については代読について肯定的な回答であった。
ということが分かりました。このような結果を基に、
- 教科書デジタルデータと読み上げソフトの使用
- 東京大学先端科学技術研究センター作成の漢字教材(PowerPoint)での学習
- キーボード入力
- 板書の撮影
など、一人一人に合った支援を本人とともに検討し、実施しました。
その他のアセスメントツール
URAWSSⅡ(ウラウスツー)
URAWSS(ウラウス)を改訂
対象を中学生まで拡大
「atacLab SHOP」のホームページ(外部サイト)に移動する
URAWSS‐English(ウラウスイングリッシュ)
英単語の読みとスペルの習得度を評価
中学1年生から3年生までの平均と比べることができる。
「atacLab SHOP」のホームページ(外部サイト)に移動する
STRAW-R (ストロウアール)改訂版 標準読み書きスクリーニング検査
小学1年生から高校3年生までの音読速度を調べることのできる速読課題や、漢字の音読年齢が算出できる漢字音読課題、中学生用の漢字単語課題等、ひらがな、カタカナ、漢字の3種類の表記について比較できる検査であり、どの表記から練習すればよいのかの指標が得られる。
日本版KABC‐Ⅱ(ケーエービーシーツー)
認知能力だけでなく基礎学力(習得度)を個別式で測定できる。
対象年齢は2歳6か月から18歳11か月
多層指導モデルMIM(ミム)、読みのアセスメント・指導パッケージ
初期の「読み」のアセスメントと指導を対象
「特殊音節」に焦点を当て、文字や語句を正しく読んだり、書いたり、なめらかに読んだりすることをめざす指導モデル
月1回の客観的なアセスメントテストと連動した指導法(トレーニング)を提供
アセスメントの手段としての代替手段
アセスメントの一つの方法として、代読・代筆等、読み書きの代替手段や、読みや書きをサポートする定規や鉛筆を差し込んで、正しく持つことを補助するグリップなどの支援グッズの試行を検討してみましょう。
支援グッズを使ってみる


『プニュグリップ』
自読 から、 「代読」に変更してみる

例:国語の問題を児童生徒自身が読んで解答する。次に、教師が文や設問を読み上げ、児童生徒が解答する。
自筆 から、 「代筆」に変更してみる

例:テストの解答用紙に児童生徒自身で解答を書く。次に、児童生徒が口頭で答えた回答を、教師が解答用紙に書く。
観察のポイント

読み書きの方法が変わることで子どもの学習面での変容(例:テストの点数等)があるかどうかを把握しましょう。
※すぐに成績に反映されないこともあります。
指導助言
特別支援教育を受ける児童生徒は、「所属学級」、「通級」、「家庭」、「進級・進学後の学校と学級」というように、異なる環境を行き来しながら学んでいます。それぞれの学びの場面で、その児童生徒の困難を関係者が共有することができる、共通した言語や物差しがないと、外見上からはっきりと見える障害があるわけではない児童生徒の、特異的な学習上の困難は見過ごされたり、軽視されたりしがちです。客観的なアセスメントの結果は、共通言語や物差しになることができます。また逆に、困難が特異的であることを示す客観的なアセスメント結果がないと、読むこと・書くこと等の特異的な困難以外の部分に、その児童生徒の独自の強みや才能があることもまた、見過ごされたり、忘れられたりすることもあります。アセスメントは児童生徒に「社会的烙印(スティグマ)」を押し付けることになるのではないか、と教員や保護者から危惧され、忌避されることもあるのは事実です。また過去の歴史では、制度的に、アセスメントの結果から、通常の学級で学びたいという強い希望を持つ本人や保護者の意思が否定されてきた経緯があるのも事実です。しかし、合理的配慮が制度化されたことで、アセスメントが、教育機会からの排除やスティグマの生産ではなく、学ぶ機会の保障を明らかにする意味が生まれてきました。
(平成30年度研究 東京大学先端科学技術研究センター 近藤 武夫 准教授)
