一人で抱え込まず相談しましょう

校内委員会

 研究協力校の校内委員会で実際に行われてきた検討・協議内容や配慮点、成果等を紹介します。

実態把握・アセスメント

 担任やコーディネーターの先生によるチェックリストの結果や授業等の観察記録から実態を整理し、標準化されたアセスメントの必要性を検討したり、課題を明らかにしたりしていきます。
 注意したいことは、チェックリストや標準化されたアセスメントなどでの実態把握を必ず実施してから支援方法の検討を行わねばならないというわけではありません。授業中の様子から見て、簡単に実施できそうな支援グッズを使ってみる(例えば、行の読み飛ばしが多い児童生徒に定規をスライドさせてどの行かわかりやすくする)などを行い、その効果を見ていくことで支援が必要な状態かを判断していくことができます。

「チェックリスト、アセスメント、アセスメントの手段としての代替手段」のページに進む

支援方法(合理的配慮)の検討

 本研究では、機能代替アプローチとしてICTの活用に取り組んでいますが、読み書きに困難のあるすべての児童生徒に対してICTを使用するものではありませんし、機能代替アプローチか治療的アプローチかといった二者択一を迫るものではありません。ICT機器等と出会って自分の可能性に気付くことや、自分に合った学び方を身につけていく経験をしていく過程が重要であり、教職員が選択肢を狭めてしまうことは、児童生徒の可能性を制限することにつながります。適切なアセスメント(標準化された検査や学習の観察等)を行うことにより児童生徒の学び方の特徴を把握し、児童生徒本人のニーズや気持ちに寄り添いながら教職員と一緒に取り組み、変容の姿を記録し、指導の効果を振り返って、より適切なものが何かを考えていくことがとても大事です。

「ICTの活用」のページに進む

 一見同じような困難の状態であっても、違った支援方法や学びの方法になることがあります。また、複数の方法が必要なこともあります。いずれの場合も、できるだけ多くの方法を示しながら、自分に合ったものはどれか、どの組み合わせかなどを試し、調整していく姿勢で取り組んでいきましょう。
 なお、学びの方法を変更したことにより、本来持っている力がしっかり発揮できると、以前の状況と大きく変化することがあります。特にICT機器を使ったテストでは、導入前と比べ、テストの点数が大きく向上すると、「ずるいのでは」というような認識に陥ることがあります。校内の教職員や児童生徒の理解も一緒に進めていくことも併せて検討しましょう。

合理的配慮の提供に向けて (提案と試行錯誤、合意形成)

 児童生徒にあった学び方、合理的配慮をどう実施(提供)していくのかについて、校内委員会で検討し、本人・保護者の意向をしっかり聞き取りながら、以下のような内容について決定(合意形成)していきます。

  • 支援機器やグッズの使用に関する練習・習得する場が必要か。それはどこで、いつするか。
  • いつから、通常の授業において実施するか。
  • 全ての教科学習で実施するのか、一部なのか。
  • 周囲の理解はどう得ていくか。
  • 使用に関しての振り返り(本人の効果の実感、成果、さらに必要なこと)は、いつ、誰が行うか。
  • 評価(テスト)はどうするか。

などについて検討し実施していきます。これらの事項は一度決めたら終わりではなく、必要に応じて見直して、適宜変更を行います。

 ある研究協力校の校内委員会では下記のような合意形成を行っていきました。

  • 授業について
    • 「他の児童と同じように書く」ことにこだわらずに、代筆を認めたり、課題量の調整をする。
    • 「通常の学級でもタブレット端末の音声読み上げ機能を活用してみたい」という本児の意思表示を受け、通常の学級で使用が可能かどうかを検討した。
  • 通級指導教室
    • タブレット端末で教科書データを読み上げる操作方法について指導する。
  • テストについて
    • テストは、自教室で行う。(あるいは別室で行う。)
    • テストは、全教科で読み上げを実施する。
    • テスト時の代筆は、本人が申し出た部分について教員が行う。
    • 「読み上げのお願い」のルールに沿った依頼が本人からあれば、教員が読み上げる。
    • タブレット端末の音声読み上げ機能やVOCA–PEN(参考)を活用したり、特別支援教育支援員に読み上げてもらってテストを受ける。 
      • 参考 自由に録音や再生ができるコンパクトな読み上げペン
    • 周囲の児童に配慮して、イヤホンで音声を聞く。
  • 宿題について
    • 国語科の音読の宿題は、「読む」から「聞く」ことへと変更した。

 

(平成29年度研究)通常の学級でのICT活用に至った事例から、以下のようなポイントが明らかになっています。

  • ICTを活用することで学びやすくなったと児童生徒自身が感じている。
  • 上記のことを、児童生徒自身の言葉で周りの人に伝えている。
  • お互いに認め合える学級経営ができている。
  • 通級指導教室担当者と通常の学級の担任とが十分連携できている。
  • 児童生徒の学び方の特徴をアセスメント等により把握できている。
  • タブレット端末等を利用できる教育環境がある。

 児童生徒自身が自分に合った学び方を理解し、周りの環境(人や物)に自ら働きかけ学びや生活をより良くし、ひいては人生を豊かにしていこうとする意欲や態度が身に付いていくことがとても大事だと考えます。
 通常の学級でのICT活用に当たっては、各教科等(単元等)の目標や内容の本質的な変更に及ばないかどうか個別に検討し、必要かつ適当な変更・調整をすることが大切と考えます。
 また、合理的配慮の提供を行った場合の学習評価については、評価の対象から除外したり、差をつけたりすることがないように留意しなければいけません。

家庭や通常の学級、通級指導教室との連携のもと、合理的配慮の提供が適切になされ、児童生徒の意欲が向上や変化が起こっていくという循環を表現した図

個別の教育支援計画・個別の指導計画の作成と活用

 実施してきた指導や合理的配慮の内容について、個別の教育支援計画に記述し、翌年度の指導・支援や進学先への引継ぎの資料にします。進学先においても本人・保護者の申し出を基に合意形成され継続して支援が行われることにつながります。
 組織的に継続した支援の記録は、高校入試の際、合理的配慮の提供(試験時間の延長、問題文のルビうち、問題用紙や答案用紙の拡大、タブレット機器による音声読み上げ機能の使用等)の可否を判断する根拠ともなります。

「個別の教育支援計画、個別の指導計画」のページに進む

「国立特別支援教育総合研究所 特別支援教育リーフVol.7みんなの思いをことばにしよう!つなげよう!~個別の教育支援計画と個別の指導計画の作成と活用~」(外部サイト)に進む

 子どもたちへの支援を開始した後も、様々な課題が明らかになり、さらに校内委員会で検討していくことが必要となることがあります。

 研究の中で見えた課題と、その解決に向けた動きの中で生まれてきた成果を紹介します。

校内での支援の広がり(校内連携)

 校内委員会が積極的に動くことにより、教職員の理解が進み、支援を必要とする児童生徒のみならず、誰にとっても分かりやすい授業、学びやすい学級づくりへと着実な成果につながっていくことが、実践研究の中で見えています。

令和4年度研究

  • 児童生徒の実態や効果があった学び方等を担当者が積極的に校内に発信することで、当該児童生徒への理解や合理的配慮の考え方が一定広まり、他の児童生徒の困難さへの支援にもつながりました。
  • 高等学校においては、プリントのデータ配布、板書撮影、タブレット端末の使用等を教科担当者間で統一でき、生徒が自ら工夫して活用できるようになってきました。
  • 字形が整わず教職員が読めない場合は、評価が難しくなります。「あなたは書字が苦手だからICTを使ってみてはどうか?」ではなく、「正当に評価されるためにICTを使うのはどうか?」と視点を転換することで、本人と校内でICT活用の必然性を確認することができました。

管理職のリーダーシップ

令和3年度研究
 先生方の理解はあっても、なかなか実施に踏み出せないという状況になることがあります。そのような状況にあったある中学校では、校長先生の「人権を大切にする」「生徒に必要なことなら積極的にやろう」「大人が子どもの背中を押してあげることも必要ではないか」という言葉によって、実施に向けて進み始めました。 担当の先生は、校長先生の後押しに大変勇気づけられたそうです。

評価の本質

令和3年度研究
 変更・調整に向けた会議の中で、「機器を使用することで漢字の表記ミスがなくなるため、減点の可能性が下がり有利になるのではないか」という意見もありました。しかし、「正しい漢字を選べることも生徒の力として評価できる」と国語の教科担当者が判断しました。当たり前のことですが、それぞれの設問でどの観点を評価するのかを整理することは重要です。

合理的配慮を含む授業改善に向けて~対話を重ねる~

 ある小学校では、全教職員で支援が必要な児童の理解を図り、組織的、継続的な支援体制の構築を行いました。本人との対話を重ねて、合理的配慮としての音声教材(デイジー教科書)の活用や、音声化したテストの実施、代読等の本人の望みに基づいた個別最適な学び方を調整しました。
 紙媒体のテストの文字を音声化することは音韻処理に困難さがある児童にとって内容や意味を理解する一つの方法です。
 自己調整しながら学習できる良さを本児は実感することで学習意欲は向上しました。教師にとっては、児童の学習の理解度や状況を知る機会となり、授業改善へ生かすことができました。
 教師は、児童の言葉をよく聴き、児童をよく見て(実態把握)、機を逃さずに本人と一緒に試行錯誤を続けました。その積み重ねによって、児童が自分に合った学び方に出会い、取捨選択できる力が育っていきました。
 自己決定の経験を重ねて、本人が思いを表明できる(セルフアドボカシー)ような、本人を尊重した教育的支援が大切です。

教師と児童が話をしているイラスト。教師「読めないわけじゃないから、読んでやってみよう。」と言われたらどう?。児童「デジタルテストがないと、絶対困る!」って言う。何度でも、繰り返し聞くことができるから、便利。デジタルテストでしたいって自分で伝える。
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