学校生活School Life
私の生まれ故郷は、兵庫県西宮市。
もし豊岡市や朝来市などが故郷であれば、
丹後という場所はもっと身近であったかもしれないが、当時の私に
丹後半島という地域が日本海側にあって、
且つ京都府に属していることを知ったのは
大学生のとき。
私の中の「京都」というのは、清水寺や伏見稲荷、八坂神社といっ
「京都にすごく面白いところがある!」
そう意気込んで話す友人の言葉に惹かれ、彼女についていったこと
神戸から高速バスに乗り込んで、向かった先で見た光景はまるで私
「京都」と違っていた。てっきり「京都」のちょっとしたディープ
目的地に近づくごとに車内
私の中の「ステレオタイプの京都」が崩れ去った瞬間と、あまりに
季節は、初夏。
一面に広がる田んぼから、緑色の真っすぐな稲穂が伸び、青空との
海辺では多くのサーファーが波と戯れており、頬に当たる潮風が心
キラキラした海と優しい風が丹後来訪を温かく迎え入れてくれてい
驚いたのは、夜ごはんのとき。
友人の知り合いだという人の家にお邪魔したのだが、次から次へと
もちろん、
あっという間に居間のテーブルは、様々な料理で埋め尽くされた。
「これ、○○農家さんでとれたての野菜やからうまいぞ~」
「この卵、朝うちの鶏が生んだやつ」
「ここの精肉店さんのコロッケは間違いない!」
「刺身と言ったら、ここのやつやな。今日一、新鮮なもの見繕って
目の前で地元の人々が交わす言葉たちが、信じられなかった。
地元と密接な関係にある食生活。
手の込んだ料理たちに使われているのは、ほとんどが丹後でとれた
都市部に住んでいると、食材はほとんどスーパーで買うのでそこに
やり取りは発生しない。また、スーパーは年がら年中同じ食材が手
「季節感がなくなってしまう」ということや「旬の食材を意識しな
もちろん、ここに限らず便利なスーパーの利用率は上がり続けてい
それでも、こうして地元の人々が集い地元の食材を使った料理を囲
この土地の豊かさを感じた。
食材そのものが美味しいのはもちろん、久しぶりに大勢でつついた
*****
この土地の自然の恵みを受けて育った子どもたちは、やはり「食文
探究学習におけるテーマを設定する際にも複数のグループが「食」
今回はその中の「丹後の伝統食」について調べているグループの紹
このグループも初めは「バラ寿司」から入った。
丹後の伝統食っていえば、やっぱりバラ寿司。お祭りや結婚式、お
驚いたのが、丹後のスーパーには280グラム
バラ寿司の伝統などを調べて、実際に自分たちで作ってみたりもし
そんな中で、ふと疑問が。
「丹後といえば、バラ寿司ってすぐ出てくるけどそれ以外の伝統料
チームのメンバーで考えてみたが、どうもぱっと浮かばない。
もしかしたら「伝統料理」にこだわるから
難しいのかも。「家庭で受け継がれている料理」にすれば何か出て
そんな風にして少し方向転換をし、
自分たちの家庭で慣れ親しんでいる料理についてご家族にお話を聞
他の地元の人にもお話を聞いてみると、面白いかもしれないという
お話を伺ったのは、峰山高校のほど近く。地元の人々から愛される
先ずは、食材の「旬」について教えて頂く。
「旬というのは、主に2つの点から考えられてて。1つは季節。
そ
もう一つは、人間が作った行事。
ひな祭りや入学式、卒業式...といったもの。そして、こういった季
"食べ物"だね。
その時期に最も美味しい、そしてその時期にしかとれない食材が所
春には山菜。夏は枝から成るもの。
秋はきのこ類。そして冬は根っこの食材。
都会に比べると、まだこの地域は生産者と消費者の距離が近いから
何気ない食生活の中で季節を感じることが多いと隅野さんは語る
確かに「蟹の解禁」など、丹後に来て初めて聞いた。
また日本海側と太平洋側で捕れる魚の種類が異なるため、呼び名は同じでも全国で一般的に知られている
丹後の人の認識にズレが生じることもあるという。
例えば、キス。
全国的には「シロギス」で有名なこの魚、
丹後(特に日本海側)では「オキギス」だったり、一般的には「初
丹後の本鰹は「
隅野さんも料理を勉強するため一度大阪に出ているが、
「これがキス。これが本鰹」と師匠に言われて初めて自分が今
違った種類の魚
種類が違うともちろん調理法も変わってくる。外に出て初めて自分
また、同じ料理でも使う食材は地方ならではのものであることも。
例えば恵方巻き。丹後ではかまぼこや竹輪を入れることが多いと聞
そう言われてみれば竹輪の入った恵方巻は、私の地元では見たこと
練物が有名なこの地域ならではなのかもしれない。
そして隅野さんには一つ懸念していることがあるという。
それが「人間が本当に季節に関係のない食材を食べることが良いこ
人類の祖先は、約200〜150万年前に進化をし始めたとされる
日本における最古の人類は、約3万8千年前から存在していたと
弥生時代の頃には現在の人間の体や暮しがほぼ定
人々はその時々に採れる食材を使った、
つまり自然の摂理に順応した食生活を送ってきた。
そして、時を経て現在。
私達は不自然の中で生きている。
スーパーに行けば、年がら年中同じ食材が手に入る。そして人工的
人類の歴史から見れば、こういった変化が生まれてきたのは、本当
こういう生活が当たり前になって、もっと年月が過ぎれば、いつか
でも今の段階では、やはりそれは違うのではないか。
都会に出て、日々の食生活が変わることで
健康を崩す人が多い、という話もよく耳にするので、変わってきた
本来の人間に合った食生活ができる丹後の環境は、実はとても貴重
「伝統や家庭で引継がれている料理を残していくために私達にでき
「伝統を守りたい、と考えてくれる君たちのような存在そのものが
後はやっぱり料理が好きだ、とか
食材に関心を持ち続けるのが大事なのではないかな」
最後に丹後の魅力を尋ねてみた。
「島じゃないところがここの魅力。日本の中心(子午線が通ってい
山があって、海もある。
ほどよく雪が降るから水不足にも悩まされない。山から海へ流れて
雪は害虫も退治してくれるしね」
そう言って笑った隅野さんからは、地元丹後に対する愛と誇りが真
料理することが好きだというメンバー達。
将来的にも何かしら食に関わる勉強や仕事をしたいと話す。
今後は丹後の恵まれた食材から伝統を守りつつ、また新しい時代に