テスト
テストにおける様々な活用
一般的に、テストは自分で問題文を読み、自分で書いて解答します。読み書きが苦手な児童生徒にとっては非常に厳しい方法であり、そのために正当な評価を得られません。
ICTを使うことによって正当な評価が得られることで、次への意欲、自分への自信に繋がることが期待できます。
実態を知る
右の図は、読み書きが苦手な児童生徒のテストにおける実態の一例です。このようなことを回避するための実践に取り組みました。

音声ペンと録音シールを活用したテスト~読むことが苦手な児童~
読むことが苦手な児童に音声教材(参考1)の1つである「ペンでタッチすると読める音声付き教科書」(参考2)のタッチペンと録音シールを活用し、テスト問題を音声化しました。
このツールを通級指導教室で初めて見た児童は、「すごい!欲しい!」と興味津々でした。実際にテストで使ってみると、50点前後だった点数が満点近くになり、担任に自分から手応えを報告しに行きました。

ロイロノート・スクールを活用したテスト~書くことが苦手な児童~
書くことが苦手な児童にタブレット端末のメモアプリ(又はファイルアプリ)でテスト用紙をスキャンし、ロイロノート(参考3)に貼り付け、テキスト入力することで筆記具で書かずに解答できるようにしました。
漢字50問テストでは、あらかじめ似た形や同音のものをいくつかテキスト入力しておき、選択式で実施しました(児童は正しいと思うものを解答の枠にドラッグするだけ)。1学期は1桁だった点数が、2学期は70点台でした。漢字を正確に書くことが難しくても、しっかりと理解していることが分かりました。また、本人も保護者もとても喜んでいました。
参考3 LoiLoが提供する授業支援ソフト

Pagesを活用したテスト~書くことが苦手な児童~
漢字50問テストにおいて教師が読み上げ、Pages(参考4)にフリック入力で解答する方法で実施した例です。手書きだと6割程度の正答が、入力ではほぼ満点でした。本人も喜び「次からもタブレット端末を使いたい」と意欲的になりましたが、熟語として入力すると解答のほとんどが予測変換で出てくるため、本当に理解しているのか判断が難しくなりました。
そこで、次は熟語を漢字1字ずつ入力させ(「きょうとのきょう」→「教?京?」)、送り仮名のある漢字については手書きで解答させました。結果は9割の正答でした。
参考4 Appleの文書作成ソフトで、iPad(アイパッド)には標準装備

中学校での定期考査~読むことが苦手な生徒~
小学生の時からタブレット端末を活用した学習やテストに取り組んでおり、進学の際は丁寧な移行支援を行いました。
入学後は本人からの要請もあり、別室受験、時間延長(それに伴う特別時間割の設定を含む。)、タブレットによる問題文の読み上げ(問題によっては監督者が代読)でテストを実施しました。
各教科担当者がWordで作成したテストデータは、Teams(参考5)経由でタブレットに移行し、Wordの読み上げ機能を活用しました。京都府学力診断テストも京都府教育委員会と連携し、同様に実施しました。
参考5 TeamsはMicrosoftのコミュニケーションツール
漢字学習と漢字テスト
読み書きの困難さの有無に関わらず、漢字の学習方法は漢字ドリルに代表されるような“たくさん書く”ことだけではありません。
漢字テストの方法も同様に、文字を書くだけが全てではありません。
ICTを活用することで、多様な学び方が可能になります。
PowerPointの活用(参考6)
アニメーション機能により、パーツが順に出てきます。動きがあることで記憶に留まりやすくなる可能性があります。
参考6 オリジナルで作成した学校もありましたが、Microsoftが無償で公開しています

参考6『特別支援教育でのPowerPoint 活用』(外部リンク)に進む
無料のアプリも活用できます。アプリ教材を京都府総合教育センターのホームページ(ITEC)に掲載しています。
合意形成に向けた取組
書くことに困難さのある中学3年生の事例です。書いた文字は判読が難しく、たくさんの量を書くことにも大変苦労します。医療機関とは連携しており、中学校においても通級指導教室で丁寧な指導を受けてきましたが、本人は人と違う学習方法に消極的でした。
これまでの定期考査では、各教科担当者が「恐らくこう書いてあるのだろう」という予測を基に採点することもありましたが、ICTを活用した高校入試を目指し、定期考査において「採点における配慮」ではなく「受験方法における配慮」にシフトチェンジしました。
スムーズな文字入力を含む機器操作が可能であったので、定期考査でのICT活用に向けては次の3点を中心に取組を進めました。
- 本人の意思(本人との合意形成)
合理的配慮は、本人の「この方法でやりたい」という思いから検討がスタートします。そのためには、自分のことを知り、本来の自分の力が発揮できる方法を実感する必要があります。 - 校内での共通理解
授業でのICT活用は進んできているものの、定期考査においては前例もなく、先生方の中には消極的な意見も多くありました。教員間で意見がなかなか一致しなかったので、管理職と一緒に合意形成を進めました。 - 具体的な検討
活用に当たっては、どの機器を使用するのか、どの教科で実施するのか、別室かどうか等、様々なことを決める必要があります。
その後、本人との合意形成に向けては、
- Step1:気付きへの仕掛け
聴写や視写を手書きとキーボード入力の二通り行い、その結果を比較させました。明らかにキーボード入力の方が結果が良く、それが自分に向いている方法であることを知るきっかけになりました。 - Step2:やってみる
実際に練習問題をパソコンで解答してみました。
記述問題:入力だと楽にできる。
記号を選ぶ形式の問題など:カーソルをその都度合わせる必要があるため、書いた方が速く解答できる。
このように、全ての問題をパソコンで解答することは、この生徒にとっては取り組みにくいことが分かりました。 - Step3:対話
取組の結果をこの生徒とフィードバックしながら時間を掛けて話し合うことで、やってみたいと思えるようになりました。同時に、活用場面や方法も明確になっていきました。
テストでの活用に向けた変更・調整
管理職を含む校内の関係者による会議が設定され、地域支援センターと総合教育センターも参加しました。
実施方法の変更点は、これまでの指導や本人との相談内容を踏まえ、国語の小論文のみで実施することを確認しました。
また、使用する端末はタブレット端末かパソコンか、予測変換をどう扱うかについても議論になりましたが、情報が少なく結論が出なかったため、総合教育センターから既にパソコンによる定期考査を実施している府立高等学校に情報提供を求めました。
その後、校内でさらに細かい調整が行われ、次のような形で実施しました。
- 【試験会場】 通級指導教室
- 【使用機器】 パソコン (インターネット未接続 予測変換あり)
- 【解答画面】 Word (原稿用紙設定)
実施したのは3学期の1回のみで、高校入試での活用にはつながりませんでしたが、本人は取組を通して「将来の目標がもてた」と話しており、保護者も喜んでおられました。高等学校でも継続して活用できるように引継ぎを行いました。
その他の事例から
何らかの支援を提供し、その効果を検証していくことにより、より適切な支援方法へと改善していくときに留意したいことは、子どもによってすぐにその効果が出る場合とそうでない場合があることです。検証するのに単元テストなどの点数を見ることが多いと思いますが、すぐには点数には反映されないこともあります。特にICT機器を活用する場合、その児童生徒が使いやすいようにカスタマイズしたり、児童生徒自身が使い方に慣れるまでの練習が必要であったりするなど時間が必要なことがあります。この時に大事に聴き取っていきたいのは、その方法を使うことで「楽になったかどうか」、つまりは読むことや書くことだけに使い果たしていたエネルギーを「考えること」、「課題に迫ること」に使うことができるようになっているかどうかということです。変容の姿を記録し、指導の効果を児童生徒とともに振り返っていくことで、「自分は○○できない」との考えから脱出し、学習の意欲へとつながります。こういったプロセスを通して、より適切なものが何かを考えていくことがとても大事です。
