サマーセミナー「原子核の世界~大阪大学核物理研究センター」

 8月2日(水)に、表題のサマーセミナーを実施し、40名の生徒が参加しました。

 午前中は、嵯峨野高校に大阪大学大学院理学研究科の川畑貴裕教授を講師にお招きし、「原子核の世界 ~フェムトワールドの探検~」という題で御講義を受けました。”フェムト”というのは 10-15 ,すなわち原子核の世界が非常に小さなスケール(fm;フェムトメートル)の世界であることを意味します。小さな原子核に秘められた大きなエネルギーと質量エネルギー等価則や4つの力との関係、宇宙に存在する原子核と宇宙のはじまりの関係、存在する 7Li の量が理論予測と合わない「宇宙リチウム問題」の謎、金やプラチナの原子核は如何にして生まれたのか etc.・・・。中身の詰まった約1時間40分の講義に生徒は好奇心を大きくかき立てられました。

 午後からはバスで大阪大学の核物理研究センターに向かいました。まず、大阪大学核物理研究センターの保坂教授からは物理学とはなにか、大阪大学と物理学研究の関わり、加速器がどのような役割を果たすのかについて御講義を受けました。続いて福田教授からは、加速器の原理と大阪大学の加速器詳細に関する説明、さらに、ガン治療に用いる α 線放出核種である 211At(アスタチン211)を、加速器を用いて大量に生成・供給する研究など、物理学のみならず医療面においても貢献していることなどについて御講義を受けました。

 いよいよ加速器(サイクロトロン)の見学です。核物理研究センターはAVFサイクロトロンとリングサイクロトロンを有しており、得られるビームの質や測定精度において世界に誇ることが出来る施設です。水素イオン(陽子)なら、光速の70%の速さまで加速することが可能です。厚さ3mにもおよぶ壁に覆われた建屋のなかには、施設の心臓部である、巨大な電磁石で構成されたリングサイクロトロンと、そこから放出される粒子ビームを様々な実験施設に誘導する迷路のようなビーム輸送路がはりめぐらされています。生徒達は福田教授と川畑教授に説明を受けながら案内され、スケールの大きさと複雑さに圧倒されました。

 これら施設は、なかなかじっくり見学することが出来ないため、生徒にとっては貴重な体験となりました。

(なお、本取組はSSH事業のひとつとして実施されました)