俯瞰的な目

先輩からのメッセージ

高校時代は目に見えない何者かに押しつぶされそうになることも。誰もが感じる漠然とした不安です。今回寄稿いただいている先輩は高校時代の葛藤を俯瞰して、ほつれた糸を解きほぐすように一つ一つ丁寧に書いてくださっています。

9月30日からの続きです。
2016年京都こすもす科人文社会系統卒業 菊池凌央

オフィス(公式HPより) 働く場所が自由なのでほぼ出社していません…


「構造化して考える」
 悩まずに考えているけれども、答えが出ない。私が現在の会社に入社して最初の課題でした。

 簡単に戦略コンサルの仕事を紹介させていただくと、「企業の経営層が抱える問題を解決する」仕事です。問題の種類は、今後の経営方針策定からマーケティング戦略、新規事業立案、買収、コストカットなど多岐に渡り、1つの仕事の期間は3カ月ほどです。短い期間の中で如何に経営層に納得いただき、企業として動きだすことのできる戦略を立案できるかが肝要です。

 もちろん、企業の経営層は優秀な方が多く、その業界のエキスパートでもあるため、依頼される問題は自ずと難解なものばかりです。そうした中で戦略コンサルには、純粋な思考力が求められます。つまり業界の知識や企業特有の事情について経営層や社員へのインタビューなどを通して理解し、論理的に正しい答えを考えることがその提供価値です。

 このような仕事のため、何の経験もない新入社員はひたすらに手を動かしながら考え続けることが求められます。ただ、悩まずに考えているけれども、答えがでない。一方で期日は短いため、悠長に日を置いて考えることもできません。このようなときに、上司によく「ちゃんと構造化できていますか?」と聞かれます。

 構造化とは、「たまたま目についたことだけではなく、全体を見極め、要素間の関係を整理する」(『MBAクリティカル・シンキング』より引用)ことです。構造化することで、今まで見えていなかった問題に気付いたり、問題だと思っていたことが実は問題ではなかったと判明したりすることも多くあります。構造化は今でこそ一般的になりつつありますが、従来はコンサル特有のスキルで、明確な答えは出せなくとも、それだけで経営層に考える道筋が立ったと感謝されることもあります。
構造化を具体的にお伝えするために、受験勉強を振り返ってみます。

私は計画も立てずに闇雲に問題集の頭(たまたま目についたところ)から問題を解き、飽きたところで他の問題集に移る。模試で毎回同じような問題に躓く。そんなタイプでした。高校時代に戻れるなら、まず初めに問題集の目次をみて(全体を見極め)、各項目について「できるのか/できないのか」、できないのであれば「やったことがあるのか/ないのか」、やったことがあるのであれば「その項目のみを理解できていないのか/その項目の前提となる事項が理解できていないのか」、「その項目ができないことは他の項目に影響があるのか」整理し(要素間の関係を整理する)、優先順位を付けて効率的に取り組みたいです。 構造化することで、問題解決は効率的になりますし、具体的にもなります。模試でできた部分、できなかった部分を構造化して、ただ「英語を頑張ろう」ではなく、「英語の中でも、単語。その中でも動詞の多義語を身に付けよう」といった粒度で解決策を考えていくことが重要だと思います。

(構造化の勉強には「コンサル 構造化」と検索する他、数学の集合の分野が有効です。)

「論理と知識の前に感情」
 入社して1年ほどすると、構造化にも慣れ、それなりの答えを上司やお客さんに対して提示できるようになりました。その時に課題になったのが、「論理的に正しい答えのはずなのに、なかなか納得感が得られない」といったことでした。会議の中で、一つ一つ論理を説明しながら、「これしかない」といった答えをお客さんに提示してみても、暖簾に腕押しで納得している様子がありませんでした。

 企業というと「論理的に正しいと思うことのみを行う」ものであると思われる方もいるかもしれませんが、企業を動かすのは人であるため、結局は感情も重要です。(意外にも、日本企業だけでなく外資系といわれる企業でも…)

 自分が正しいと思う答えを受け入れてもらうためには、お客さんの何気ない一言や話していることの背景、社内での立ち位置など理解した上で、「どのように」伝えるか考える必要があります。時にはお客さんに頼んで個別に時間を取り、会議では言えなかった懸念や他に課題だと思っていることを丁寧にヒアリングします。

 “Think in their shoes“という言葉がありますが、人の気持ちに寄り添って考えるのもまた重要なものです。私の受験勉強を振り返ると、知識を詰め込むあまりに友人関係をないがしろにしたり、受け手にとってネガティブな態度をとったりと反省することが多々ありました。受験勉強に必死になると周りが見えなくなることもあるかと思いま

す。そんなときに人の気持ちを考えられることは重要なスキルの一つと踏ん張ってもらえたらと思います。

長々と書いてしまいましたが、少しでも皆さんの役に立つ文章になっていれば幸いです。今回書き切れなかった大学のことなど何か気になることがありましたら、気軽に(先生を通じて)御連絡ください。