卒業生は宝物

高校で担任をしてきて、つくづく思うこと。卒業生は学校にとっての宝物です。今年4月の新聞に、ある卒業生が取り上げられていました。彼女は現在在学中の生徒たちと同じように、あの頃、誠実に前を見て、ある時は壁にぶつかりながらも、精一杯の高校生活を送っていました。そして卒業後も前をのみ見つめ、自分の道を切り拓いてきた”先輩”です。そんな彼女から在校生にメッセージを送っていただきました。2回に分けて紹介します。

こんにちは。
京都こすもす科4期生、2002年卒業の丹所千佳と申します。
PHP研究所という会社で編集の仕事をしています。2002年に東京大学に進学し、美術史を選びました。

受験のときから美術史や芸術学を学びたいと思っていて、院への進学を考えたこともありましたが、「自分には向いていないかも」「とりあえず社会に出て働こうかな」という気持ちになり、普通に就活をしました。 


2006年卒は、就職氷河期と呼ばれる就職難時代が束の間やわらいだときのようで、新卒採用の数自体はけっこう多かったと思います。それもあって、あまり業種などにこだわらず、メーカーや金融、都市開発やデベロッパーなど、いろいろ受けてみました。
しかし結局、選考が進んだ会社の多くが出版関係でした(金融あたりはすぐ落ちました)。 


最初は絵本の編集者になりたいと思っていました。
学生時代にアルバイトをしていた紅茶店のオーナーが絵本作家でもあったこと、お店のすぐ隣に絵本屋さん兼ギャラリーがあったことなどから、絵本を編集するという仕事に興味を持ちました。絵本や児童書を数多く出している出版社を第一志望群として、ほかにも新卒の募集がある出版社をいろいろ受けました。 


ただ、大手の出版社は受けませんでした。

編集者を志している人の大半は受けるようなのですが(記念受験も含め)、私は、いわゆるゴシップ記事などを扱う週刊誌を出している会社は避けたかったのです。

「そんなものを出すなんてけしからん」という潔癖さではなく、もしも自分が入社したとして(皮算用ですが)、週刊誌の編集部に配属されたら嫌だなと思ったからです(新入社員は週刊誌に配属されることが多いと聞いていたので)。

今思えば若さゆえの短絡さなのですが、いたしかたありません。

ちなみに、それらの出版社の本や雑誌にはもちろんいいものも多いですし、私も好きな本がたくさんあります。念のため…。

(つづく)