式 辞
寒さ厳しかった丹後の冬もようやく終わりを告げ、春の温かさが、心地よく感じられる本日、第七十六回京丹後市立峰山中学校卒業証書授与式を挙行致しましたところ、ご来賓として京丹後市教育委員会 教育委員 田村 浩章(ひろあき)様、本校PTA会長 荻野 啓介(おぎの・けいすけ)様、峰山学園学校運営協議会会長 森山 幸枝(もりやま ゆきえ)様、そして多くのご家族の皆様に御臨席を賜りましたこと、高段からではございますが、厚く御礼申し上げます。
保護者の皆様には、お子さまのご卒業、誠におめでとうございます。大切に慈(いつく)しみ、お育てになられ、今日の日を迎えられるまでには、数えきれない御苦労があったことと思います。いま、このように心も身体(からだ)も大きく成長し、新しい世界へと巣立ちゆくお子さまの立派な晴れ姿を前に、きっと感無量の思いでいらっしゃるのではないでしょうか。本当におめでとうございます。
さて、108名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。皆さんが入学してから三年が過ぎました。本当に早かったのではないでしょうか。特に皆さんは、新型コロナウイルス感染症対策としての臨時休校中に小学校を卒業し、中学校入学後も四月下旬より一か月以上の臨時休業となる等、中学校のスタートを不安の中で過ごした人も多かったと思います。そして、感染対策に気を配りながらの三年間であり、いろいろな行事や大会・体験活動の中止等、中学校生活の大半を感染対策に気を配っての生活を強いることとなりました。 本当に大変であったと思います。
それでも、ウィズコロナも広がる中で、昨年六月には三年ぶりに合唱祭を実施することができました。中学校生活、最初で最後の合唱祭となる中で、練習にも制限があり、どのような歌声になるのか不安もありましたが、皆さんの姿は、最上級生としての自覚と誇りに満ち溢れ、皆さんが六年生の時に聴いたであろう峰山中学校の伝統の合唱を引き継ぎ、後輩たちに伝える素晴らしい歌声を披露してくれました。前日リハーサルで聴いた1・2年生にとって、自分たちが目指す姿を記憶に焼き付けることができたことと思います。峰山中学校の素晴らしい合唱の伝統を引き継いでくれたことに本当に感謝しています。
そして、もう一つの大きな行事、体育祭でも、異年齢集団の活動を重視するブロック競技を取り入れ、集団演技の指導も含め、最上級生の在るべき姿をより多く示すことができました。
この他にも、仲間とともにつながりを大切に学び合った学習活動、日々の学校生活を質の高いものにするために取り組んだ生徒会活動、そして、仲間を信じ、感謝の気持ちを大切に、全力を尽くした部活動。コロナ禍で苦労することが多かったから、より深まった絆もあったことと思います。仲間と共に過ごした三年間を宝物に、新たな道へ力強く踏み出してください。
さて、今日は中学校、最後の日であると同時に、この三年間培ってきた力を土台にして、さらなる成長を目指すための旅立ちの日でもあります。その皆さんの旅立ちにあたり、それぞれの学級が合唱祭で選んだ合唱曲の歌詞の一節を借りて、三つのことを伝えたいと思います。
最初に三年二組が歌った『HEIWAの鐘(かね)』。作詞は仲里幸広(なかざとゆきひろ)さんです。
『ぼくらの生まれたこの地球(ほし)に 奇跡を起こしてみないか 拳(こぶし)をひろげてつなぎゆく 心はひとつになれるさ 平和の鐘(かね)は 君の胸に響くよ・・・』
修学旅行で広島を訪れ、原爆資料館で講話も聞かせて頂きました。折しも、ロシアによるウクライナ侵攻が毎日ニュースとなり、先の見えない不安定な世界情勢であるからこそ、皆さんが歌い上げた平和を願う心は観衆に感動を与え、心を揺さぶりました。日本を取り巻く環境も含め、究極の人権侵害である戦争への関心を常に持ち、自分にできることは何か、自分たちが作り出す未来に、強く心を寄せる生き方をしてほしいと願っています。
次に、三年一組が歌った『栄光の架橋』。作詞は、北川悠仁(きたがわゆうじん)さんです。
『いくつもの日々を超えて 辿(たど)り着いた 今がある
だからもう 迷わずに進めばいい 栄光の架橋へと』
皆さんはこの一年、夢に近づく希望進路実現という目標に向かって、みんなで励まし合いながら一生懸命学習してきました。進路実現というのは皆さんが初めて出会う大きな壁だったのかもしれません。そして、これから先も、辛いこと、悲しいこと、苦しいことは幾度となく訪れるでしょう。そんな時は、みんなで力強く歌った合唱曲を思い出し、今までのたくさんの支えに感謝しながら、まだ夢の途中であり、目標や希望を大切にして、決してあきらめることなく、挑戦し続けてほしいと願います。挑戦し続ける姿にこそ『栄光の架橋』はあるのだと思います。
そして、最後に三組が歌った『糸』。作詞は中島みゆきさんです。
『縦の糸はあなた 横の糸は私 逢うべき糸に 出逢えることを 人は 仕合わせと呼びます』
この歌詞に込められた、人と人との出逢い、めぐりあわせ・運命というものに感謝をし、これからも出会いを大切にしようという気持ちを暖かく歌い上げてくれました。今日は別れの日です。今まで紡いできた絆を大切にしながら、別れを惜しんでください。別れを大切にできる人が、次の出逢いを素晴らしいものにしようと生きていけるのだと思います。
みなさんが選んだ三曲の合唱曲から、『平和への願い』、『挑戦し続けることすばらしさ』、『人と人との繋がりの大切さ』を強く感じずにはいられませんでした。
卒業生の皆さん、いよいよお別れの時です。皆さんは峰山学園が小中一貫校としてスタートした年に、小学校へ入学した学年です。9年間という義務教育の中で、指導の一貫性・系統性、そして繋がりを大切にする教育を積み上げる中で、友達を大切にしてつながり、共に学ぶという姿を実現してくれた、峰山学園にとって、誇ることができる卒業生です。
歴史と伝統のあるこの学び舎から、多方面に分かれ巣立っていく皆さん、峰山中学校で過ごした三年間の想い出を、君たちの心のふるさととして愛し続けてください。将来、日本全国・世界へ羽ばたいたとしても、ふるさと京丹後を決して忘れず大切にしてください。本当に素晴らしい君たちの前途に、幸おおからんことをお祈りし、式辞と致します。
令和五年三月十四日
京丹後市立峰山中学校
校長 上田 隆嗣