2月28日(金)、第77回卒業証書授与式を講堂にて挙行しました。九条家ゆかりの御門を開放し、御来賓や保護者の皆様に御臨席いただく中、3年間の学びを通してたくましく成長した卒業生が、晴れやかな面持ちで思い出の学び舎を巣立ちました。

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「校長式辞」を掲載いたします。

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 梅の花がほころび、日差しに春の気配を感じる今日の佳き日に、京都府立鴨沂高等学校 第七十七回卒業証書授与式を挙行するにあたり、本校PTA会長 小林 高大 様をはじめ御来賓の方々並びに、保護者の皆様の御臨席を賜り、高壇からではございますが、卒業生、教職員一同とともに厚く御礼申し上げます。日頃より本校の教育に深い御理解と御支援を賜り、誠にありがとうございます。保護者の皆様におかれましては、立派に成長されたお子様の姿に、感慨も一入のことと存じます。御卒業をお慶び申し上げます。

 ただいま卒業証書を授与しました皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんに「入学許可」を伝えたあの日から早3年が経ちました。緊張した面持ちをマスクで隠し、ソーシャルディスタンスの名のもと、人との関わりが希薄になりがちだった当時、鴨沂の御門をくぐると、そこには高校生活の賑わいと活気にあふれていたことに驚いたのではないでしょうか。マスクをしていても、感染防止には注意を払いながらも、新入生歓迎イベントを皮切りに、その後も文化祭、体育祭のみならず、七夕、ハロウィン、クリスマス、バレンタインと季節ごとに次々とイベントが開催されていて、その都度学校行事に全力で挑む先輩達の姿に憧れをいだいたのではないでしょうか。2年生の5月に教育活動の制限が撤廃され、先輩からのバトンを受け取り、自分たちが主役となって、行事に部活動に全力で挑む皆さんの姿を頼もしく見ておりました。3年生となって、その成果が花開き、中でも顕著な成績を収められた皆さんには、昨日鴨沂教育賞として表彰したところです。

 そして、高校生の本分である学習や探究活動にも常に真摯に励む姿を見せてもらいました。先輩から受け継いだ探究活動をまとめ、発表さらに学校ホームページへの掲載と情報発信に努めたり、自らの進路目標達成のため、自習室を活用して勉学に励む姿を見せてくれたりしたことは、後輩達の良き手本となっているところです。今日の卒業式の後に、受験を控えていたり、合否結果を待つ人もいたりします。ここで皆さんが2年生の時、2学期始業式で紹介したサッカー日本代表の森保監督の言葉をもう一度贈ります。「自分がどれだけ努力したのかを、自分自身が振り返って後悔なく納得できることと、結果を受け入れることはすごく大切です。」最後まで諦めずにがんばったことこそが、将来への糧となります。結果を受け入れ、この3年間の努力を誇りに前へと歩みを進めましょう。

 さて、鴨沂高校はスクール・ポリシーの中で「未来社会を生き抜くために必要な力を身に付け、自他を尊重し、学ぶ意欲とチャレンジ精神をもって成長しようとする、豊かな感性を持った生徒の育成」を掲げ、「育てたい生徒像」に近づくため、必要な資質・能力を育む取組を進めてきました。今、卒業する皆さんを目の前にして、「自他を尊重する」「学ぶ意欲とチャレンジ精神をもって成長しようとする」「豊かな感性をもつ」教育はできたのではないかと思っています。鴨沂高校が「自分らしくのびのびと高校生活を送ることができる」学校であることは、自他を尊重していることに他なりません。学ぶこと、チャレンジすることに真摯に取り組んできたことは、先ほど紹介したとおりです。校内の至る所に芸術作品が掲げられ、その中で生徒自ら主体的に学校行事に取り組むことで、豊かな感性も育まれてきたものと確信しています。

 しかしながら、「未来社会を生き抜くために必要な力を身に付ける」ことはできたのでしょうか。そもそも、「未来社会」とはどんな社会でしょうか。すでに現代社会においても、変化の激しさ、そのスピードには目がくらむほどです。一例を挙げれば、皆さんが1年生だった頃に、ChatGPTなるものが世に認知され始めたように思いますが、たった12年で生成AIは飛躍的な進化を遂げました。テキストデータだけでなく、画像そして動画ですら、生成AIによって作成することができるようになってきました。生成AIだけでなく、様々な分野でDX(デジタルトランスフォーメンション)が進み、便利になる一方で、それまで必要とされてきた仕事など、どんどんとデジタルに取って代わられています。このような大きな変革に取り残されないよう、先日「AIに潰されない」などと謳った本を読みました。「古い価値観に縛られず、変化を受け入れ、幸せに生きる術を身につけてほしい」と言う筆者は、「自分の個性となるものを打ち出していける人が残る時代だ」と語っていました。そして無限大に伸びしろを持つ要素として、「英語だけは国際人になれない時代に、自分のアイデェンティティについて述べることができるよう日本の文化や歴史を理解し、伝えられる」ことや「AIではカバーできない創造的な部分で、考える力を発揮できる」ことなどが挙げられていました。これは、本校の「はぐくむ資質・能力」と重なるものであり、「未来社会」を予測することは困難であるものの、「必要な力」と考えた方向性は正しいものではないかと改めて思った次第です。鴨沂高校で培った資質・能力を、皆さんが幸せに生きるために活かしてくれることを望みます。混沌とした世の中ですが、鴨沂の崇高な目標である「世界平和を希求し、すべての人が幸福となる社会」を目指し、未来を生き抜いていきましょう。

 最後になりますが、皆さんが母校を懐かしく思うときは、遠慮なく訪れてください。鴨沂高校は、これからもずっと皆さんが帰る場所であり続けられるよう、不断の努力を重ねて参ります。卒業生一人一人の御活躍と御健康を心より祈念し、式辞といたします。

                                           

                             令和七年二月二十八日

                             京都府立鴨沂高等学校

                             校長  松井 佳代美