20230301 koutyou.jpg 3月1日(水)、第75回卒業証書授与式を講堂にて挙行しました。九条家ゆかりの御門を開放し、御来賓や保護者の皆様に御臨席いただく中、3年間の学びを通してたくましく成長した卒業生が、晴れやかな面持ちで思い出の学び舎を巣立ちました。

_

「校長式辞」を掲載いたします。

 柔らかな日差しが春の訪れを感じさせる今日の佳き日に、京都府立鴨沂高等学校 第七十五回卒業証書授与式を挙行するにあたり、本校PTA会長 加納 万友美 様をはじめ御来賓の方々並びに、保護者の皆様の御臨席を賜り、高壇からではございますが、卒業生、教職員一同とともに厚く御礼申し上げます。日頃より本校の教育に深い御理解と御支援を賜り、誠にありがとうございます。保護者の皆様におかれましては、大切に育ててこられたお子様の成長された姿に、感慨も一入のことと存じます。御卒業をお慶び申し上げます。

 ただいま卒業証書を授与しました皆さん、卒業おめでとうございます。今日この日を迎え、卒業生の皆さんは今、どのような思いが胸に去来していますか。おそらく、在学中の印象深い場面が一人一人の脳裏に甦ってきているでしょう。楽しかったこと、うれしかったこと、あるいは辛く苦しんだこともあったかもしれません。しかし、そこには必ず苦楽をともにした仲間の存在があったのではないでしょうか。学校は、人が集まり、人との「絆」をつくる場所です。鴨沂の学びの場で育んだ「絆」をこれからも大切にしてもらいたいと思います。

 皆さんは、世界がコロナウイルス感染症と戦った日々と高校生活3年間が重なる学年となりました。入学当初に約2カ月の臨時休業となり、本来ならば新クラスや部活動で、新しい人間関係を築くための大切な時期に登校できない日々が続きました。ようやく6月に登校できたものの、まだまだ教育活動の制限が続きました。それでも、最初の年には、まさかこのような状況がここまで長引くとはあまり予想できず、私自身も1年程度で元に戻るのではと楽観視していた者のひとりです。しかし、その後も繰り返す感染拡大の波に飲み込まれ、何度も何度も教育活動が制限されてきました。常時マスクを着用し、昼食時も黙食を推奨され、顔の表情がわかりづらい状態で、密を避ける、不要不急は控えるなどの感染防止対策を常に求められてきた3年間でした。

 そのような中で、鴨沂高校では大切なことを見失わないように努めてきました。学校では教科等の学びが重要であることは言うまでもありませんが、学校行事などの特別活動も人間関係形成、社会参画、自己実現を図る上で、非常に重要です。不要不急と言って取りやめるのではなく、皆さんと教職員が一緒になって「今、何ができるか」を常に考え、時期を変え、形を変えながらも、ほぼすべての行事を実施してきたことは、何よりも鴨沂生として誇りに思えることではないでしょうか。遠足は今年度のみでしたが、文化祭、体育祭はこの3年間毎年実施、そして一番の思い出となったであろう北海道への研修旅行も実施できました。このような取り組みを通じて、物理的な密を避けながらも、人間関係は密にできたからこそ、本年度「笑顔満祭」の文化祭、体育祭が成功したのだと確信しています。また、厳しかった制限も徐々に緩和され、本年度は部活動の公式戦やコンクールも開催できるようになりました。高校生活最後の大会は、声援はなくとも、友からの心のこもったメッセージが書かれた旗を掲げて臨み、持てる力を発揮して大きな成果を残してくれました。校長として大変誇らしく思っています。

 この3年間、社会は様々に大きく変革していきました。その一つとして、昨年4月1日より成年年齢が18歳に引き下げられたことが挙げられます。4月の始業式で、皆さんに話したことを覚えていてくれていますか。「成人になるとは、自分の船に乗り込み、自分の力で漕ぎ出すようなイメージで、自分でオールを動かさなければ前に進みません。ただ、まだそこは学校という大きな港の中、皆さんが進むべき航路へと、水先案内人として先生方が導きます。」と伝えました。今、ここにいる皆さんは3月末までに全員18歳成人となります。今日、鴨沂高校という港を離れ、いよいよ大海原に漕ぎ出す日を迎えました。前途洋々、自分のコンパスを信じ、前へ進んできましょう。大きな帆を上げれば、皆さんを支援してくれる風が吹くでしょう。時には、逆風が吹いたり嵐に巻き込まれたりすることもあるかもしれません。しかし、鴨沂高校で培った「今、何ができるか」を考えて、困難に立ち向う精神を発揮し、仲間とともに乗り越えてください。また、大海原ではたくさんの新たな出会いがあるでしょう。思わぬところで、鴨沂高校の大先輩である同窓生の方々に出会えるかもしれません。そんな時、自分たちは150周年記念式典に出席した学年だと高校時代を話してみてください。同窓生として同じ学年の横の繋がりだけでなく、150年を超える歴史を持ち、多くの優れた人材を輩出してきた鴨沂高校だからこそ、大先輩との縦の繋がりは、みなさんの人生に深みを与えることになるのではないかと思います。大先輩だけでなく、いろんな人と出会い、互いを理解し、そして互いを尊重することで創る「絆」は、人生の宝物となるでしょう。希望と勇気をもって、「絆」という宝探しの航海に出かけてください。

 多くの多様な人と互いに理解し尊重して「絆」を深めることは、教育目標に掲げる「世界平和を希求し、すべての人々が幸福となる社会を目指す」ための礎となります。未だ世界には紛争が絶えず、悲しい出来事も溢れていて、大人たちが全力で取り組んでいても解決に至っていません。そんな甘いことでは到底無理だと思うかもしれませんが、「平和」と「幸福」の追及を諦めてはいけません。一番若い大人であるみなさんを含め、すべての大人たちが手をたずさえて、「絆」のネットワークをどんどんと広げることで、「平和」で「幸福」な社会の礎を築いていきたいと願っています。

 最後に、みなさんが母港(校)に立ち寄りたいと思ったときは、いつでも歓迎いたします。先日の150周年記念式典には府立第一高等女学校卒業の同窓生の方もお越しいただいていました。いつの日か、みなさんが中心となって200周年記念事業を行っていただく日がくるかもしれません。卒業生一人一人の御活躍と御健康を、そして何よりもみなさんの「幸福」を心より祈念し、式辞といたします。

 

                                令和五年三月一日

                                京都府立鴨沂高等学校

                                校長 松井 佳代美