20220301_sotugyousiki  koutyou.jpg 3月1日(火)、第74回卒業証書授与式を講堂にて挙行しました。九条家ゆかりの御門を開放し、御来賓や保護者の皆様に御臨席いただく中、3年間の学びを通してたくましく成長した卒業生が、晴れやかな面持ちで思い出の学び舎を巣立ちました。

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「校長式辞」を掲載いたします。

 吹き渡る風にも早春の気配満ちゆく、今日の佳き日に、京都府立鴨沂高等学校 第七十四回卒業証書授与式を挙行するにあたり、本校PTA会長 井上武様をはじめ御来賓の方々並びに、保護者の皆様の御臨席を賜り、高壇からではございますが、卒業生、教職員一同とともに厚く御礼申し上げます。

 ただいま、卒業証書を授与しました皆さん、卒業おめでとうございます。思い起こせば三年前、皆さんは大きな希望を胸に本校に入学しました。そして本日、第七十四期生、前身の新英学校及び女紅場からでは第百四十七期生として卒業します。皆さんが今日の日を迎えることができましたのも、一人一人の精進努力の賜であるとともに、保護者の皆様の深い愛情と御支援、担任の先生方をはじめ本校教職員の熱心な指導の賜であると思います。

 私は昨年度の四月に皆さんと出会い、二年間一緒に過ごしてきました。2年生の四月から二ヶ月は臨時休校となり、六月に皆さんが登校してきたときの喜びは、今も鮮明に覚えています。この朝の登校時に、皆さんと「おはようございます。」と挨拶し合えること、何気ない日常の当たり前に、とても幸せを感じることができました。そして、「生徒の皆さんがいるからこそ学校であり、生徒が主人公」ということを改めて強く実感しました。

 大変な状況の中でも、皆さんにとっては、大切な高校生活の一日一日ですので、できる限りのことをしようと心に強く思いました。本校では、「今、できることは何か」を考え、生徒、保護者、教職員が協力して、さまざまなことを行なってきました。特に、八月からは大変でしたが、九月末に宣言が解除され、十月一日に体育祭が開催でき、そのときの皆さんの笑顔は最高でした。二度延期して開催した文化祭も、一人一人の協力と頑張りで最高の文化祭となりました。多くの鴨沂生が「最高に楽しかった。鴨沂最高!」と言ってくれました。その言葉に感動しました。まさに青春を謳歌する「いま、輝きの瞬間(とき)」だったのではないでしょうか。「チーム鴨沂」でしたし、私も皆さんのことを、共に頑張った同志のように思えます。

 皆さんは、始業式、終業式、学校行事といった限られた機会ではありましたが、私の話をいつも真剣に聞いてくれました。毎朝、昇降口でいつも元気な挨拶をしてくれました。そんな皆さんのやさしく、ひたむきな姿勢を校長として誇りに思っていました。皆さんが豊かな人間性を持った鴨沂生として、自他をリスペクトする校風をさらに高めてくれたと思います。本校で過ごした日々を振り返ってみて、何が印象に残っているでしょうか。授業、自学自習、部活動、学校行事、生徒会に、全力で取り組み、楽しむ姿を見せてくれました。その思い出は、十年後二十年後にふと思い出す心の宝物となっていると思います。こういった一つ一つが人生を豊かにするものだと思います。

 本校での思い出はつきませんが、本日は、皆さんの新たな船出を心から祝福したいと思います。本校卒業後、一人一人が、明日から人生の新たなステージに足を踏み出すことになります。その道は、さまざまだと思いますが、しかし、皆さんが、これからするべきこと、立ち向かうことの基本に大きな変わりはありません。つまり、これから、自分を社会でどう生かしていくかということです。卒業という機会に「自分の良さは何か」ということを改めて考えてほしいと思います。「自分は本当に何がしたいのか。世の中のために何ができるのか。」について、自分の「心の声」に耳を澄まし、自分の道を見つけてほしいと思います。

 その道中、さまざまなことを乗り越えていくためには、自分への信頼が大切になります。『ベルサイユのばら』の著者で、漫画家・声楽家の池田理代子さんは、本校特別顧問永田和宏先生との対談で、こう話されています。「あなたが生まれてきて、今、そこにいる、そのことだけで、とても尊いこと。そして、日々生きている、そのことだけでとてもすばらしいこと。自分が生きていて、ここに存在していることを肯定するところから人生をはじめて、これから社会に出ていってもらえたらきっと未来が開けます。」と。私も、この気持ちがとっても大切なのではないかと思います。大変な状況の中、鴨沂をリードしてきてくれた皆さんだから、絶対に大丈夫だと信じています。

 さて、『3月9日』という歌がありますが、その中に「上手くはいかぬこともあるけれど 天を仰げば それさえ小さくて」とあります。とても印象的な歌詞で、うまくいかないことはあっても、振り返りをしっかりすれば、それ以降はあまり引きずらず、前向きに生きていくことが大切だということでしょうか。これからの道中、いろいろなことに出会っても、根底には、「きっと、自分は大丈夫」という気持ちをもってほしいと思います。

 人は一人では生きていくことができません。多くの人々に支えられていることに今一度感謝すると共に、他者を支えていくということをこれからも大切にしてほしいと思います。皆さんには、仲間と協力して取り組み、人間的に優しく、また、磨けば光る素晴らしい個性や特性があることを確信しています。卒業後も、本校で出会った級友や先生方、また、これから出会う人々を大切にし、世のため人のため、そして「夢」に向けて、たのもしい人として活躍し、よき人生を歩んでゆかれますことを切に願っています。

 終わりになりましたが、保護者の皆様、お子様のご卒業本当におめでとうございます。今日まで育ててこられました数々の御苦労に、心から敬意を表します。また、この三年間本校の教育方針、教育活動に御理解をいただき、御協力・御支援下さいましたことに厚く御礼申し上げます。いつの時代も、子どもの幸福を願う親の心は変わりません。本日より子供たちの歩みを温かく見守りながら、彼ら一人一人の立派な自立を共に願いたいと思います。

 結びに当たり、卒業生の皆さんにとって、鴨沂高校がいつまでも「心の故郷(ふるさと)」であり続けますよう、また、皆さんの御活躍を心から願っています。そして、改めて卒業生の皆さん一人一人の御健康と何よりも幸福の実現を心より祈念し、式辞といたします。素晴らしき人生を!

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                        令和四年三月一日
                         京都府立鴨沂高等学校
                         校 長 吉 川  孝