令和5年度卒業証書授与式 式辞

式 辞

校舎、中庭に降り注ぐ陽光が、日増しに春の気配を感じさせる今日の佳き日、第七十七回京丹後市立峰山中学校卒業証書授与式を挙行致しましたところ、ご来賓として京丹後市教育委員会 教育委員 田村 浩章(ひろあき)様、本校PTA会長 田中 明夫(たなか・あきお)様をはじめ、多数のご来賓並びにご家族の皆様に御臨席を賜りましたこと、高段からではございますが、厚く御礼申し上げます。

保護者の皆様には、お子さまのご卒業、誠におめでとうございます。大切に慈(いつく)しみ、お育てになられ、今日の日を迎えられるまでには、数えきれない御苦労があったことと思います。いま、このように心も身体(からだ)も大きく成長し、新しい世界へと巣立ちゆくお子さまの立派な晴れ姿を前に、きっと感無量の思いでいらっしゃるのではないでしょうか。本当におめでとうございます。

さて、一〇九名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。皆さんが入学してから三年が過ぎました。本当に早かったのではないでしょうか。最初の二年間はまだまだ新型コロナウイルス感染症対策に気を遣わなくてはならない厳しさがあり、苦労も多かったことと思います。それでも本年度は活動の自由度が増し、広がりを見せました。まず、四月の東京方面への修学旅行。四年ぶりに公共交通機関を利用しての修学旅行でしたが、集団行動をしっかりと行い、班別行動を行った鎌倉や東京ディズニーランドでも、友達を思いやり優しい気づかいのできる人たちばかりで感心しました。鎌倉の大雨の中での集合も、誰一人不満を言うこともなく、友達の新たな一面をたくさん発見し、大都会東京を満喫できた本当に素晴らしい修学旅行でした。そしてその陰には、実行委員や班長の献身的な取組があったことが思い出されます。

そして六月には四年ぶりに全校生徒が一堂に会しての合唱祭を実施することができました。それぞれの学級の合唱もさすが三年生という素晴らしいものでしたが、なんといっても学年合唱『HEIWAの鐘(かね)』の迫力は、皆さんが築き上げた学年の力を全聴衆に示す、圧倒的な歌声でした。峰山中学校の素晴らしい合唱の伝統を後輩へ伝えていただきました。

そして、もう一つの大きな行事、体育祭でも、異年齢集団の活動を全員が心を一つにできるよう、悩み苦しみながらも、三年生の力を合わせやり切りました。久しぶりに声出しのできる集団演技の指導も含め、最上級生の在るべき姿をより多く示すことができました。本当に素晴らしかったです。

この他にも、各種体験活動の中で、校内だけではなく、地域でつながることの大切さ、すばらしさを感じた人も多かったのではないでしょうか。子ども園では、皆さんが十月の福祉体験の中で披露した「よさこい」を、園児たちが十二月まで一生懸命練習し、素晴らしい発表をしたと聞きました。体験活動からボランティア活動につながり、手話歌を披露する等、地域との交流を深められた人もいました。他にも、日々の学校生活を質の高いものにするために取り組んだ生徒会活動、仲間を信じ、諦めない気持ちを大切に、全力を尽くした部活動。そして、仲間とともに、希望進路実現、その先までも見通しながら大切に学び合った学習活動。どれも、三年前の入学式で伝えた「向上心」をもって学び続けること、「つながる力」を大切にすることを実践できた三年間でした。

そして先週、美術の授業で中学校三年間の最後の題材として取り組んだ『自画像』の作品を見せていただきました。十五歳の等身大の自分を、好きなもの・大切にしてきたものと共に、自分に合うイメージの色や技法を使い表現していました。中には今まで学校ではみせたことのない思い悩む姿を表現しているものもありました。こんなにもそれぞれ違った感性を持つ人たちが一つの学年を構成し、今日まで共に歩んできたことを改めて強く感じました。

そして、全員の自画像を見ながら、今年度の生徒会スローガン『PUZZLE』~みんなでつくる~。の提案文書を思い出し、改めて読み返しました。さまざまな人がいるけれど、それぞれに輝ける場所が必ずあると信じ、「全校がつながり、お互いを輝かせられる学校」というパズルを、みなさんは立派に完成させました。うまくいかないこともあったかもしれないけれど、多様性を認め、個性を大切に作り上げた集団に自信と誇りを持ってください。

さて、今日は中学校、最後の日であると同時に、この三年間培ってきた力を土台にして、さらなる成長を目指すための旅立ちの日でもあります。そんなお別れの日に、皆さんに二つの言葉を送りたいと思います。

一つ目は、三年間の学年便りの標題、『スタートライン』です。一年生の『スタートライン』はこれから始まる中学校生活のスタートを強く意識したことでしょう。それがいつからか、中学校を卒業し、次のステージを意識した『スタートライン』へと変わっていったことと思います。よく人生をマラソンに例えることもありますが、一人で走る駅伝に例えるとどうでしょう。今皆さんは中学校という区間を走り終え、次のステージの『スタートライン』にいます。襷渡しのコツは、ラストスパートとスタートダッシュです。『スタートライン』の手前で倒れ込んでも、スムーズなスタートは切れません。これからの人生、この襷渡し、新たなスタートが何度かあるでしょう。その回数、また1つの区間の距離も人それぞれ違います。でも、この襷渡し、そして新たな『スタートライン』をどう意識し準備をするのか、その区間をどのように走るのか、それを決めるのは自分自身です。今いくつ先の区間まで思い描けていますか。高校卒業後の次のステージでのスタート、社会人としてのスタート、家庭を持つことでのスタート。三年間、『スタートライン』という学年だよりを読ませて頂いて、これからやってくる一つ一つの節目の『スタートライン』が、皆さんにとって素晴らしいものであることを強く願っています。

二つ目の言葉は『感謝』です。皆さんにはいろいろな機会に「つながる力」の話をしました。授業の中、部活動の中、行事の取組の中、そして日常の何気ない生活の中で、お互いの良さを認め、相手の気持ちに寄り添いながら話を聞き、理解しようとする。そして、自分の考えを丁寧に伝えようとするなど、積極的にコミュニケーションを図り、多くの人とつながってください。『つながる力』は、困ったときに「助けてほしい」といえる力でもあります、と話しました。そして、この良好な関係を築き上げるキーワードが『感謝』です。日々の生活が「あたりまえ」だと思わず、そこに『感謝』を感じ取り、「ありがとう」と伝えることで、つながる力が強化されます。一緒に勉強や行事・部活動をしてくれてありがとう、わからないことを教えてくれてありがとう、笑顔で挨拶を返してくれてありがとう、という感謝。そして今日は、中学校の卒業を迎えさせてくれてありがとう、という家族への感謝。私も皆さんと出会えたことに本当に感謝しています。

誰かのおかげで今がある、日々の何気ない生活の中に『感謝』を見つけながら生きてみてください。きっと、素敵な人生につながると思います。

『スタートライン』と『感謝』、皆さんと三年間共に峰山中学校で生活し、強く感じた言葉でした。

卒業生の皆さん、いよいよお別れの時です。

まだまだ世界情勢は混とんとし、世の中の変化も大変激しい状況です。これから先、困難なこと、迷うことは幾度となく訪れるでしょう。そんな時は、峰山中学校校歌の最後の一節、「永劫(えいごう)の真理(まこと)求めて、いざ共に我等進まん」の通り、その時だけでなく、二十年先、三十年先でも正しいと言えるか考え、この中学校時代に一緒に歩んできた友を大切に、助けを求めることもしながら、人生を歩んでほしいと思います。

そして、歴史と伝統のあるこの学び舎、峰山中学校で過ごした三年間の想い出を、皆さんの心のふるさととして、いつまでも大切にしてください。将来、空高く飛ぶ鳥のように、全国・世界を翔けまわっても、ふるさと京丹後・峰山を決して忘れず愛し続けてください。本当に素晴らしい皆さんの前途に、幸おおからんことをお祈りし、式辞と致します。

 

令和六年三月十五日

京丹後市立峰山中学校

校長 上田 隆嗣

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