学校生活

 

 1学期の話です。莵道高校の生物実験室にある冷凍庫に入っていたニホンジカの頭部(2頭分)が冷凍庫内を圧迫しはじめたので、頭骨標本をつくることになりました。最初は鍋で煮て除肉するつもりだったのですが、別の方法も試してみようということで、一つは科学部の畑に埋め、もう一つはバケツの水に浸けて放置することで、自然に肉を腐らせていく方法をやってみました。

 3ヶ月ほど経って2学期になり、土を掘り返したり、水から出してみると、見事に肉が腐り果てており、白骨となっていました。すごい臭いの中、まだ残っている肉を取り除いてきれいにし、最後に過酸化水素水で漂白して完成です。骨の一部が損傷したり、何だか変色したりしていましたが、初めて試した方法にしてはそれなりの形になったと思います。

 さて、現在科学部では、10月30日にある京都府高等学校総合文化祭自然科学部門に向けて、研究発表の準備をしているところです。今年の発表テーマは「そうだ、骨格標本をつくろう。」で、これまでに科学部で行ってきた骨格標本作製を元にした発表をしてきます。応援よろしくお願います。

 

 秋という季節は、哺乳類が冬に向けた準備で活発に行動するようになる季節です。学校林でも多くの動物が姿を見せるようになり、生物多様性が高くなる時期です。そんな季節だからなのか、今回、1年ぶりにムササビが撮影されていました。

 学校林でムササビが初めて撮影されたのは昨年の10月です。大量の撮影データに埋もれていて、写真を確認したのは今年に入ってからですが。ムササビは樹上性の動物なので、地上に仕掛けているセンサーカメラで撮影されることは基本的にありません。前に撮影されたときは、たまたま地上に降りてきたのだろうと考えていましたが、今回、同じ時期に複数回撮影されていました。

 撮影場所は、昨年と同じく水場の前です。つまり、水を飲むために降りてきているという可能性があります。学校林の水場は、ニホンジカがヌタ場として利用していることばかりに注目してしまいますが、実はムササビを含め、たくさんの動物の給水ポイントになっているようですね。今後も撮影されて欲しいものです。

 

 季節は秋となり、寒さも感じるようになってきました。この時期になると、学校林内のある場所には水がたまるようになってきて、動物が集まる水場となっていきます。センサーカメラの1台はこの水場の前に設置しているのですが、水がかれている春から夏にかけてと比べ、今の時期は様々な動物が撮影されるようになります。

 そして、この水場はニホンジカのヌタ場にもなっています。ニホンジカの雄は、水場で体中に泥を浴びる習性があり、その泥浴びに使われる場所を「ヌタ場」と呼びます。これは、体に寄生虫などがつかないようにするためと言われていますが、雄ジカは泥浴びをした勢いで、近くの木に体を擦りつけてにおいをつけます。いわゆるマーキングですが、ダイナミックな泥浴びからのにおいつけは、見ていてとても面白い行動です。また、この時期の雄ジカは角研ぎもするので、とにかく行動が派手になります。

 ニホンジカに限らず、秋は哺乳類が活発になる季節です。撮影される種数も増える傾向にありますし、学校林の生物多様性が高まるので、センサーカメラの撮影結果を見るのが楽しみになる季節ですね。

 

だいぶ同定ができるようになりました。これからは水路の底生魚を調査する予定です。

10/15(土)・16(日)は、巨椋池の干拓田の水路を調査しました。

意外に魚種は多く、十数種類を確認した(下記)。

特定外来魚は適宜処分し、同定の困難なものは持ち帰り詳しく調べます。

確認魚種
 ドンコ   カワヨシノボリ ミナミメダカ ナマズ  タウナギ
 タモロコ  モツゴ     カマツカ   フナ類  オイカワ
 カワムツ  ニゴイ類

 コイ   タイリクバラタナゴ ドジョウ類 
 カダヤシ ブルーギル     オオクチバス

 

 10月1日(土)に莵道高校の学校説明会が実施されました。その体験授業の一つ、理科講座「ゲームで学ぶ!莵道高校学校林の動物」では、『学校林調査カードゲーム』というオリジナルのカードゲームが使用されました。

 これは莵道高校の学校林で撮影される動物を題材にしたゲームで、その制作には科学部がしっかり関わっています。使用される写真やデータは当然センサーカメラ調査のものですし、何より部員達によるテストプレイが何度も行われ、ルールやバランス調整をしています。そのお陰で、ゲームとしての完成度はなかなか高く、学校林の動物について学べるだけでなく、対戦ゲームとして白熱できるものとなりました。体験授業では、中学生は勿論のこと、保護者の方も楽しくプレイしていました。

 はっきり言って、体験授業で使用するだけでは勿体ないゲームです。莵道高校の生徒で(先生でも)、もし遊んでみたい方がいれば、科学部まで声をかけてください。

 

 学校林に仕掛けているセンサーカメラは、赤外線センサーを使用しているため、哺乳類だけでなく鳥類も撮影されます。最も撮影数が多いのはキジバトですが、ハシブトガラス、シロハラ、トラツグミ、イカルなども撮影されます。過去にはキジやコジュケイ、フクロウなんかも撮影されたことがあり、ちゃんと調べたわけではありませんが、哺乳類と同様に鳥類もたくさんの種類が学校林を利用していることが分かります。

 今回、キツツキの一種であるアオゲラが撮影されました。アオゲラの撮影は、この調査を始めてから初になると思うのですが、まだまだ新しい種が撮影されるのは嬉しいものです。撮影されたのは水場の前に仕掛けていたカメラです。普段は樹上にいる動物も、水を飲むためには降りてくる必要があるわけで、そんな瞬間を撮影できたようです。

 

 9月も後半となり、夏の暑さも感じなくなってきました。哺乳類にとっては、これからが活発に動く季節になってきますので、センサーカメラ調査の結果も楽しみになってきます。

 今回は久しぶりにニホンザルが撮影されました。莵道高校の周辺では目撃情報が多いと聞くニホンザルですが、学校林で撮影されることはほとんどありません。撮影される場所はいつも同じですし、学校林の一部が移動ルートになっている程度なのかも知れません。

 しかし、ニホンジカのように校舎側にサルがやってくるようになったら、それはそれでちょっと怖いので、今のように「たまに撮影される」くらいの関係性が一番いいような気もします。

 

 琵琶湖にて、外来魚の採集をしました。強風のため、思ったほどの釣果を上げることができませんでしたが、外来魚対策についての滋賀県の取り組みを知ることができました。
 ブラックバスやブルーギル以外にも、思いのほか、外来魚は多いようです。現在、研究を行っているヌマチチブも琵琶湖淀川水系のものは国内外来魚ですし、身近なタナゴ類やコイも外来魚が含まれるようです。今後は、身近な外来魚についても調べていく予定です。

 

 9月9日に実施された莵道祭において、科学部は展示発表と実験教室を行いました。

 生物講義室での展示発表では、この1年間の科学部の活動をまとめたポスターや、学校林の動物をピックアップしたポスター、3月に日本森林学会大会高校生ポスター発表で発表したポスターを展示しました。また、科学部がこれまでにつくってきた骨格標本など、生物標本の展示もしました。見学に来た生徒は「これ本物?」と驚いていました。

 昼休みの時間には実験教室を開催し、液体窒素を使った実験をいくつか行いました。液体窒素を初めて見る生徒も多く、花が一瞬で冷凍されて粉々に砕ける様子や、一瞬で気体となってビニール手袋を膨らませる様子など、たくさんの現象を楽しんでいました。

 ここ数年は感染症防止のため莵道祭での発表はできませんでしたが、今年は久しぶりに実施することができて良かったです。

 

 2学期に入り、科学部では9月9日(金)の莵道祭に向けた展示の準備をしてます。科学部の展示では、様々な活動をまとめたポスターと、これまでに作製してきた骨格標本の展示を行う予定です。3月に日本森林学会大会高校生ポスター発表で優秀賞をもらったポスターも展示します。

 そんな準備をしている中でも、学校林ではセンサーカメラが作動しています。準備と並行してデータの回収もしています。今回は夏休み中に撮影された写真がメインになりますが、設置期間が長かったこともあり、シカ、テン、アライグマ、アナグマ、イタチなど、たくさんの動物が写っていました。

 特にアナグマは一時期姿を消していたのですが、昨年あたりからまた撮影されるようになり、今年は安定して撮影されています。莵道祭の展示ではアナグマやテンなど、学校林で撮影される動物をピックアップしたポスターも作っているので、よろしくお願いします。

 

 8月9日、10日にアクトパル宇治で1泊2日の合宿を実施しました。天体観測、渓流での水質調査、中庭の畑で収穫したジャガイモを使ったカレー作りなど、普段できない活動をすることができました。

 水質調査ではサワガニ、カゲロウ類、カワゲラ類などの指標生物だけでなく、カワヨシノボリ、カワムツ、タカハヤといった魚類を採集することができました。他にも、森林内でトノサマガエル、アマガエル、ノコギリカミキリなどを観察しました。

 感染症拡大防止に配慮しながらの実施となりましたが、貴重な体験ができた合宿になったと思います。

 

 夏休みに入っていますが、学校林に仕掛けられたセンサーカメラは常に稼働中です。電池は1ヶ月くらい持ちますので、長期休暇の間も休まず動物を見張ることができるんです。

 今回は少し面白いものが写っていました。1枚目の写真で、イタチの親子です。

 京都にはニホンイタチとチョウセンイタチ、2種類のイタチが分布しているのですが、センサーカメラの写真では判別が難しいので、科学部ではイタチ類として記録しています。そんなイタチですが、5~6月頃に仔を産み、その後しばらくは雌が一緒に行動して仔を育てます。一緒に撮影できた動画では、親が仔をくわえて走っていく姿も撮影されていました。

 学校林では、テンやアナグマといったイタチのなかま(イタチ科)はよく撮影されるのですが、イタチ自体はあまり撮影されません。しかし、今年は例年に比べてイタチの撮影が多いように思います。こうやって、年ごとの変化を見ていくのが、この調査の面白いところの一つです。

 

 8月2日~4日に東京都(東京富士大学、文京学院大学)で開催された第46回全国高等学校総合文化祭の自然科学部門で、科学部が研究発表をしてきました。

 発表テーマは「シカがくる学校 ~莵道高校とニホンジカの記録~」です。昨年度の京都総合文化祭で優秀賞に選ばれた研究をブラッシュアップし、より分かりやすくして発表しました。質疑応答でも他県の高校生から質問を受けるなど、インパクトのある発表になったと思います。詳しくは下の発表論文(PDF)をご覧ください。

 当日は校長先生も応援に駆けつけていただき、研究発表終了後は一緒に東京都美術館へ行って、本校美術部の出展作品を見学したりもしました。 

 全国総合文化祭に出場するにあたり、保護者・後援会の皆様、多くの先生方に応援していただき、ありがとうございました。

 
 

ファイル名:kagakubu_zensobun_2022_ronbun.pdf

PDFファイル容量:【827.4KB】

※PDFを開くには下記「第46回全国高等学校総合文化祭(東京大会...」をクリックして下さい。

研究発表論文「シカがくる学校~莵道高校とニホンジカの記録~」
 

山城教育局主催のサイエンスラリー事業に参加し、小学生向けの実験講座を開きました。

莵道高校キッチンサイエンス班が中心となり、パン作りとイーストを使った発酵の実験を行いました。

家でもできる実験です。夏休みの自由研究にしてもらいたいです。

 

気温が上がってきましたので、ゼリーの実験は一休み。
夏は酵母の発酵の実験を行っていきます。

パン作りに必要な材料は、小麦粉・塩・水・砂糖、そして酵母です。
酵母に発酵させることにより、パンを膨らませます。砂糖は酵母の栄養になります。

ドライイースト(酵母)を水に溶かし、砂糖、人工甘味料、牛乳などを混ぜてふたをし、しばらく放置します。

砂糖をつかうともちろん発酵しました。驚いたことに、人工甘味料をつかっても発酵するようです。

もう少し、方法を変えながら、調べてみます。

 

宇治川のヌマチチブは、比較的容易に採集できる国内外来種です。

現在は、Tridentiger brevispinisという学名ですが、以前は Tridentiger obscurus とされていました。
オブスキュラス、岩陰からちょこっと顔を出す黒いやつという意味でしょうか。

魚類の習性を考えながら、採集用具を準備し、採集を行いました。
たくさん採集できましたので、ヌマチチブの特徴を調べてみる予定です。

 

宇治川にはヌマチチブ、カワヨシノボリ、トウヨシノボリ、ウキゴリ、ドンコの
4種類のハゼがいます。まずは、最も釣りやすいヌマチチブの調査をします。

調査をするにあたり、採集道具の準備をしました。釣り糸の結び方を練習し、
竿の扱い方を皆で確認しました。

 

 1学期の期末考査が終了したので、考査期間中に設置していたセンサーカメラのデータを回収してきました。梅雨が明け、本格的な夏になって、学校林の動物はどのような姿を見せてくれるのでしょうか。

 最近、よく撮影されると感じるのがアナグマです。今回も明るい時間に撮影されていますし、学校林に頻繁に訪れていることが分かります。アナグマは見た目こそタヌキのようですが、分類はイタチ科(タヌキはイヌ科)なので、別のグループの哺乳類です。しかし、タヌキとは縁の深い動物でもあり、アナグマが掘った巣穴をタヌキが利用することがあることから、「同じ穴の狢」という言葉が生まれたほどです。狢(むじな)というのは、タヌキとアナグマを混同した呼び方なんですね。

 しかし、見た目が似ているといっても別の動物ですから、見比べれば違うことが分かります。顔や尾などのパーツで見分けることもできますが、慣れてくるとシルエットで分かるようになってきます。科学部の部員たちは、センサーカメラ写真の記録を通して、動物を見分けるコツを覚えていくのです。

 

ゼリーの実験結果

・パイナップルは、ゼリーができないのでタンパク質分解酵素が含まれる。
・イチゴは、ゼリーができるのでタンパク質分解酵素が含まれない。
・胃薬の中にはタンパク質分解酵素の入っているものと入っていないものがある。
・キーウィーフルーツについては、緑色のものにはタンパク質分解酵素が入っているようですが、

黄色ものにはタンパク質分解酵素は入っていない。

暑くなってきましたので、ゼリーを固めるのが難しくなってきました。
次は発酵の実験をしたいと思います。

 

 莵道高校科学部と京都光華女子大学および京都大学との高大連携として「芦生の森ツアー」を実施し、南丹市美山町にある「京都大学芦生研究林」を見学してきました。なお、科学部の生徒だけでなく、保護者の方も参加していただきました。

 この芦生研究林は「京都府最大の秘境」とまで呼ばれる原生林が残った場所で、普段は関係者しか入ることができません。そんな場所を京都大学の先生に案内してもらいながら散策、研究林で実際に行われている研究や調査について説明をしてもらいました。京都で最も自然が残っている場所の一つだけあり、宇治市では見られないような多くの植物と共に、モリアオガエル、アカハライモリ、カジカガエルなど、学校の周辺にはいない動物もたくさん観察することができました。

 普通なら絶対に入れない芦生研究林の見学は、生徒にとって非常に貴重な体験になったと思います。