遠回りの価値
この夏、熊本地震、そして千葉豪雨や北陸3県での大雨により多くの方々が被災されましたことに心よりお見舞い申し上げますとともに、お亡くなりになられた方々に深い哀悼の意を表します。一日も早く安心できる日常が戻りますよう、心より願っております。
さて、学校に元気な子どもたちの姿が戻ってきました。子どもの姿があってこそ学校だと感じます。大きな事故やけがもなく過ごせたこと、多くの子どもたちが笑顔で2学期の始業式を迎えられたことを何よりうれしく思います。保護者の皆様をはじめ、地域の皆様が温かく支えてくださったおかげです。ありがとうございました。
子どもたちは長い夏休みをどのように過ごしたのでしょうか。家族とゆっくり過ごした子、地域の行事に参加した子、自分の好きなことにじっくり取り組んだ子、それぞれに普段学校では得られない出会いや経験があったことと思います。こうした経験は目に見えなくても子どもたちの心を豊かにし、新しい学びへの意欲とつながっていくことと思います。
この夏、私たち教職員は普段なかなかできない学びに多くの時間を使いました。専門的な知識や指導力を高める研修、自分自身の実践を振り返る自己研鑽、そして地域に出かけ、人や物と出会いながら京丹波の魅力や営みを体感する学び等です。7月には京都新聞でも紹介されましたが、竹野・丹波ひかり・下山小学校の先生方と町内各地を訪ねたり、地域の食材に触れたり、実際にお弁当づくりに挑戦したりしました。今の時代、調べれば多くのことが分かります。AIに尋ねれば瞬時に答えが返ってきます。しかし私たちは、あえて「自分の目で見る」「自分の手で触れる」「地域の人から直接話を聞く」ことを大切にしました。一見すると、とても非効率な学びです。けれども、人と出会い、対話し、実際にやってみる中でしか得られない発見や感動があります。そこで感じた空気や匂い、人の思いや願いは、検索だけでは得られないものです。
私自身も、この夏の研修で「非効率の効用」や「AI時代におけるエージェンシーの重要性」という話を聞く機会がありました。そして、これからの学校教育においてこそ、こうした一見遠回りに見える時間が大切になるのではないかと感じました。便利な社会になればなるほど、私たちは早く正解にたどり着くことに慣れていきます。しかし、子どもたちが未来を生きるために本当に必要なのは、最短距離で答えを見つける力だけではありません。「自分はどうしたいのか」 「なぜそう思うのか」 「誰のためにやりたいのか」そんな問いを自らもち、考え、試し、失敗しながらまた挑戦する力です。本校が大切にしている「エージェンシー」とは、まさにそのような力です。自分で問いをもち、自分で考え、仲間との対話を通してよりよい答えを生み出していく。そして、自分たちの力で未来を少しずつ創っていく。未来創造科「つばさ」は、正にそのための学びです。答えを教えてもらうのではなく、自分たちで問いを見つけ、地域や社会とつながりながら未来を創っていく。その過程そのものを大切にしたいと考えています。
2学期には運動会があります。運動会もまた、効率だけを求めるならば、大人が計画し、子どもたちがその通りに動けば円滑に進むでしょう。しかし私たちは、「どんな運動会にしたいか」「より工夫できることはないか」という子どもたち自身の思いを大切にしたいと考えています。時間がかかることもあるでしょう。遠回りをすることもあるでしょう。大人の考えとずれがおこることもあるでしょう。失敗することもあるかもしれません。それでも、その過程の中にこそ、自ら考え、仲間と協働し、未来を創る力が育つと信じています。
便利な時代だからこそ、遠回りを大切にする。 一人でもできる時代だからこそ、人とのつながりを大切にする。 答えがすぐ見つかる時代だからこそ、自分で問いを生み出す時間を大切にする。この夏、私たち教職員が学んだことを、2学期の子どもたちの学びへとつなげていきたいと思います。
「今を生きる 心をつなぐ 未来を創る」(学校教育目標)
2学期も本校教育活動へのご理解ご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。
校 長 中田 匡恵


