210301 koutyou3.jpg 3月1日(月)、第73回卒業証書授与式を講堂にて挙行しました。九条家ゆかりの御門を開放し、御来賓や保護者の皆様に御臨席いただく中、3年間の学びを通してたくましく成長した卒業生が、晴れやかな面持ちで思い出の学び舎を巣立ちました。

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「校長式辞」を掲載いたします。

 吹き渡る風にも早春の気配満ちゆく、今日の佳き日に、京都府立鴨沂高等学校 第七十三回卒業証書授与式を挙行するにあたり、本校PTA会長山中歌織様をはじめ御来賓の方々並びに、保護者の皆様の御臨席を賜り、高壇からではございますが、卒業生、教職員一同とともに厚く御礼申し上げます。

 ただいま、卒業証書を授与しました皆さん、卒業おめでとうございます。思い起こせば三年前、皆さんは大きな希望を胸に本校に入学しました。そして本日、第七十三期生、前身の新英学校及び女紅場からでは第百四十六期生として卒業します。皆さんが今日の日を迎えることができましたのも、一人一人の精進努力の賜であるとともに、保護者の皆様の深い愛情と御支援、担任の先生方をはじめ本校教職員の熱心な指導の賜であると思います。

 さて、私は四月に皆さんと出会い、一年間一緒に過ごしてきました。六月の学校再開時に、皆さんが登校し、「おはようございます!」と元気よく言ってくれた時の喜びは、忘れることができません。学校の主役は皆さんであると、改めて強く感じた瞬間でした。鴨沂が再び動き出しました。さまざまな制約がある中、鴨沂では『今、何が出来るか』を考え、学習、部活動、学校行事をよりよい形で行うために、生徒、保護者、教職員の『チーム鴨沂』で協力して進めてきました。誠実な皆さんだからこそ、ここまで来ることができました。

 今、世界中が誰も経験したことのない困難に直面しています。京都大学山極前総長は、著書でこう書かれています。「アフリカの人々はよく"There is no problem. There is a solution."と言います。どんな困難に直面しようとも、必ず解決策がある。」と。人生では困難に出会うこともあると思いますが、無我夢中に取り組めば、ある日、虹が見え、晴れ上がる日がくるのです。この一年も実り多く、みんなでいくつもの虹を見ることができました。その中心には、いつも明るく、和気靄々とした雰囲気でリードしてくれた三年生がいました。だからこそ、鴨沂が活気ある学校であり続けることができたのだと思います。これからも、この困難を乗り越えていくことができればと思います。

 皆さんは、始業式、終業式、学校行事といった限られた機会ではありましたが、私の話をいつも真剣に聞いてくれました。また、毎朝、昇降口前で、元気な挨拶をしてくれました。皆さんのやさしく、ひたむきな姿勢は校長として誇りでしたし、自他をリスペクトする本校のすばらしい校風をさらに高めてくれたと思います。そして、皆さんの前でお話をするのも今日が最後です。

 皆さんにとって、鴨沂での三年間はどのような毎日だったでしょうか。本校での日々を振り返って、何が印象に残っているでしょうか。皆さんは一年生の八月にこの校舎にやって来ました。その時の感動を鮮明に覚えている人も多いと思います。文化祭アンケートには「きれいな校舎を保ち続けたい」という回答が多くありました。皆さんは大切に使ってくれましたし、その姿勢が伝統にもなりました。

 皆さんは、何事にも、いつも全力で取り組み、楽しむ姿を見せてくれました。文化祭では、みんなで作り上げ、個性溢れる見事な演劇を披露してくれました。各部の発表もみんなの思いがこもったとても素晴らしいものでした。体育祭は澄み切った青空の下、各団が全力で競技・応援し、笑顔一杯の体育祭になりました。多くの鴨沂生が「最高に楽しかった。鴨沂最高!」と言ってくれました。その言葉に感動しました。まさに青春を謳歌する「いま、輝きの瞬間(とき)」だったのではないでしょうか。その思い出は、十年後二十年後にふと思い出す心の宝物になっているでしょう。私はこういった一つ一つの積み重ねが人生を豊かにするものだと思います。そして、今年度は、各自の希望進路に向けて、日々真摯に取り組んできました。努力し、苦労した経験は必ずこれからの人生の力となります。

 本校での思い出はつきませんが、本日は、皆さんの人生への船出を心から祝福したいと思います。道はさまざまだと思いますが、これからすべきこと、立ち向かうことの基本に大きな変わりはありません。それは、これから自分を社会でどう生かしていくかということです。卒業という機会に「自分の良さは何か」ということを改めて考えてほしいと思います。司馬遼太郎の『龍馬がゆく』に「人間というものは、いかなる場合でも好きな道を捨ててはならない」とあります。自分の良い所を伸ばし、そうでないと思う所は勇気をもって変えていく努力をし、「どうしたら社会の役に立てるか」を考えてほしいと思います。

 先日、『魔女の宅急便』の作者、現在八十五歳の角野栄子さんがこのような話をされていました。「誰でも一つ『魔法』を持っている。どういうものかというと好きなこと、飽きないこと。自分にはそれが書くことだった。」と。人生で大事なことは夢中になれることを見いだし、それに対してどれだけ真摯に打ち込めるかではないでしょうか。皆さんには、磨けば光る素晴らしい個性や特性があることを信じています。

 人は一人では生きていくことができません。多くの人々に支えられていることに今一度感謝すると共に、他者を支えていくということをこれからも大切にしてほしいと思います。卒業後も、本校で出会った級友や先生方、また、これから出会う人々を大切にし、世のため人のため、そして「夢」に向けて、たのもしい人として活躍し、よき人生を歩んでゆかれますことを切に願っています。

 終わりになりましたが、保護者の皆様、お子様のご卒業本当におめでとうございます。今日まで育ててこられました数々の御苦労に、心から敬意を表します。また、この三年間本校の教育方針、教育活動に御理解をいただき、御協力・御支援下さいましたことに厚く御礼申し上げます。いつの時代も、子どもの幸福を願う親の心は変わりません。本日より子供たちの歩みを温かく見守りながら、彼ら一人一人の立派な自立を共に願いたいと思います。

 結びに当たり、卒業生の皆さんにとって、鴨沂高校がいつまでも「心の故郷」であり続けますよう、また、皆さんの御活躍を心から願っています。そして、改めて卒業生の皆さん一人一人の御健康と何よりも幸福の実現を心より祈念し、式辞といたします。素晴らしき人生を!

おっきー短足(HP用).jpg                      令和三年三月一日

                          京都府立鴨沂高等学校
                          校 長 吉 川  孝