商業と情報の専門学科を設置する京都すばる高校は、規律ある授業と高い目標を持った特別活動を通じて、確かな学力と豊かな心を持った人材を育成します。
平成26年度・27年度
国立教育政策研究所教育課程研究センター
教育課程研究指定校事業
平成26年度・27年度の2年間,研究指定を受けました。
研究成果についての報告を掲載します。
各取組については,本校Webの「最近のトピック」にも掲載しています。
「倫理観あふれる情報のスペシャリスト育成を目指して」
未来の情報のスペシャリストを育てる専門学科として,情報に関する知識や技術を身に付けるとともに倫理感を持って情報産業と社会の発展に寄与できる態度を育成できる教育課程について研究する。
平成26年度
・ 講義「インターネットの光と影」
・ 講演「インターネットは善か悪か?ケータイ・スマホにまつわるトラブル」
・ 「情報モラル・セキュリティコンクール」応募
・ 講演「SEという仕事」
・ 講演・ワークショップ「情報科学科が考えるスマホとの付き合い方」
・ プレゼンテーション実習 テーマ「情報モラル」
・ 講演「LINE講演会 インターネットを使うときに気を付けること,考えること」
・ スマートフォン活用のガイドライン作成
平成27年度
・ CTF(Capture The Flag)セキュリティ競技会
・ 京(みやこ)サイバー犯罪対策シンポジウム(青少年編)参加
・ 情報モラル・セキュリティワークショップ
「今こそ解かりあおう!世代で考える情報モラル」
・ 情報クロスワードパズル作成
・ 講演『情報セキュリティ企業から「情報を学ぶ高校生に教えたいこと」』
・ グループワーキング ちょっと待って!ケータイ&スマホ新聞(文部科学省発行)より
今回の学習指導要領の改訂で,情報社会の諸課題を「倫理観を持って」解決することが示された。必履修科目である「情報産業と社会」を1年次に設置し,情報産業と社会との関わりについて,基礎的な知識と技術を習得させると共に,倫理観あふれる情報のスペシャリストとしての幅広い視野や情報活用能力を養い,情報産業の発展に寄与する人材の育成を目指す。
年間計画の作成にあたり,情報社会で生じる諸課題について進んで取り組み,科学的・論理的に解決できる能力の育成を図るため,講演やワークショップなどを各学期に設定した。 内容については,発達段階を考慮し,効果的な内容を扱うよう努めると共に,地域や産業界との連携を図り,外部人材を積極的に活用した。
(参考冊子「インターネット活用ハンドブック光と影」企画/編集メディア・サポート)
入学当初の意識を確認するとともに情報モラル・情報セキュリティの概要を理解させた。
講師 IPA技術本部セキュリティセンター
普及グループ 研究員 石田 淳一 様
身近な情報機器である携帯電話やスマートフォンについての使用について,留意すべき点や問題点等を学び,情報モラルや情報セキュリティ対策の必要性と重要性を考えさせる機会とした。
1学期のまとめの取組として,第1学年全員が「標語部門」に,各学年希望者が「ポスター部門」・「4コマ漫画部門」・「行動宣言」に応募した。
企業においてSEの経歴を持つ本校教諭による講演を実施した。情報産業における様々な実態を知らせる中で,情報社会に生き,社会的責任を担う職業人としての規範意識や倫理観を醸成し,豊かな人間性の涵養等に配慮した。
講師 京都府警察ネット安心アドバイザー・リーダー
兵庫県立大学ソーシャルメディア研究会・チーフ研究員 石川 千明 様
「スマートフォン,インターネットの危険性を知る」,「ワークショップを通して友達の考え方を知る」,「自分たちの使い方を考える」ことを目的とする。
ワークショップに於いては,1班7~8名のグループに分かれて,現状の課題を洗い出し,今後の対策を考えさせる。KJ法を用いる。各班においてスマートフォン,インターネット利用におけるキャッチコピーを決定し発表する。
情報モラルについてグループで討議し,生徒一人一人が主体的に考えた内容をまとめ発表する。プレゼンテーション技法について学習すると共に,情報モラルに関する意識を深化させることにより,情報活用の実践力を養う。
講師 LINE株式会社 高橋 誠 様
SNSに焦点を絞り,活用における利点と注意すべき点,活用方法等について学習する。
これまでの授業や講演,ワークショップ等の取組のまとめとしてスマートフォン活用のガイドラインを作成する。作成したガイドラインについては,学科から学校全体へ,またPTA等との連携を深め広げていきたい。
運営協力 京都府警サイバー犯罪対策課 株式会社ラック
CTFとはCapture The Flag(旗取り合戦)の略称。ここでいう旗とは「情報」のことで,出題される問題に隠された情報を探し出すハッキングの技術を競うゲーム(競技会)のこと。チームで競技し,各人のセキュリティに関する知識を総動員して,情報セキュリティ分野で技術を競う。
CTFは大きく分類して「jeopardy(ジェパディ)」と呼ばれるさまざまなジャンルの問題を解いていくクイズ形式のものと,「Attack-Defense(攻防戦)」と呼ばれるサーバの脆弱性を狙って情報の争奪戦を行う形式のものがある。今回は,「jeopardy(ジェパディ)」形式のものを実施。
具体的な問題としてはネットワークのパケット解析,SQLインジェクション,ディレクトリトラバーサル等の内容を扱った。
主催 京都府 京都市 京都府警察本部
コーディネーター 兵庫県立大学環境人間学部 竹内和雄准教授
青少年を巡るインターネットの利用に起因する各種問題について,社会全体で取り組む気運を高めるため,中高生が主体となって考えるグループワーキングの実施による情報発信等を目的としたシンポジウム。
事前のアンケート調査結果をもとにグループワーキングを実施,中高生と大人によるパネルディスカッションを経て,今年度の行動宣言を発表した。
京都府立高等学校情報教育研究会・京都すばる高校 コラボ企画
大人(教員)と高校生の相互理解を目的とした。「スマホの良いところ悪いところ」,「ソーシャルゲームの良いところ悪いところ」,「ネット社会になって便利になったこと,困ったこと」,「SNSの光と影」といったテーマを掲げ,高校生が主体となってグループワーキングを行った。世代を超えて情報モラルについて互いの考えを知り理解を深めて,一緒に問題解決を図った。
1グループ3・4人で情報モラル・セキュリティに関する用語を用いたクロスワードパズルを作成した。パズルを相互に解きあう中で,情報モラル・情報セキュリティに関する意識の向上を図った。
トレンドマイクロ株式会社 セキュリティエンジニア
情報セキュリティにおける最前線の状況を学ぶ機会とした。「守る側」としての視点を重視し,技術者倫理の意識向上を図った。
ケータイ&スマホ新聞を題材にグループワーキングを行った。自分たちの身の回りにある問題点について洗い出し,それらをまとめて新たな新聞をつくり発表した。
・情報社会において,適正な行動を行うための基となる考え方と態度の育成に主として取り組むことにより,多くの生徒が情報モラルの重要性について認識できた。
・情報セキュリティの第一線で活躍されている講師のお話を伺うことで,情報社会における最新の状況を知ることができ,情報セキュリティの必要性と重要性を考えさせる機会となった。
・情報技術者の業務内容や期待される役割などについて理解できた。
・外部機関と連携した講演やワークショップの実践により,情報社会の諸課題について倫理観を持って主体的に解決する方法を考え,話し合い,発表する力を身に付けさせることができた。
・将来のスペシャリストとなる自覚を高め,望ましい職業観,規範意識の育成を図れた。
・今回実践した様々な取組を整理し,年間指導計画に位置付け,継続的に取り組んでいく必要がある。
・外部機関との連携を継続するとともにさらに広げ,社会の動向を常に反映した取組が実践できる体制を整える必要がある。
今回の様々な取組を実践する中で,情報モラル・情報セキュリティの意識の向上,倫理観の定着は,継続的な取組の中で図ることができると感じている。生徒が主体となって実践する取組にその効果が大きい。大学や情報セキュリティ関連企業等との連携を図り,将来を担う情報技術者・開発者としての倫理観をより高められる取組を継続し,自らの資質向上はもとより,地域社会への理解と貢献の意識を持ったスペシャリスト育成を目指す。