研究主題表現活動を取り入れた主体的・対話的な授業の創造
ー表現しながら理解を深める学習者を育てるー
1 研究主題設定の理由
本校は開校以来、特別活動の研究を通して、あたたかい人間関係の醸成を目指 した取組を進めてきた。その研究過程において、互いの意見を尊重し違いを認め 合えるあたたかな学習集団の中で、安心して自分の意見を表現できることが学習 意欲を高め、学力向上に繋がるという実感を積み重ねてきた。
一方、実際の授業での児童の様子を観察し ていくと、学習意欲の低い児童や国語や表現 活動に意欲的でない児童も多く見受けられる。 平成 28 年度全国学力・学習状況調査の質問紙 調査では、「国語の勉強は好きですか」という 項目について、「当てはまる」「どちらかとい えば当てはまる」と回答した児童が 53.2%で あった。これは、京都府や全国と比較しても 低い結果であった。このことからも、新学習 指導要領改定案で示されている資質・能力で ある「学びに向かう力」に課題があると考えられる。高学年になるに従って、授業での発言に積極的になれない児童の姿も見 受けられ、表現することに積極的でないがゆえに、授業での練り合いが深まらず、 思考が変容するような質の高い学びに到達できないという課題を感じるように なった。
そこで、児童の主体的に学ぶ姿や自ら問いや課題を持って創造的に学ぶ姿を目 指し、『表現活動を取り入れた主体的・対話的な授業の創造~表現しながら理解 を深める学習者を育てる~』という研究主題を設定した。演劇的手法を中心とし た表現活動を取り入れることにより、学習への理解が深まり、自ら問いを持ち、 課題解決に向かおうとする意欲が喚起されることが期待できる。
新学習指導要領では「何を学ぶか」に加えて「どのように学ぶか」に大きな比 重が置かれることが示されている。そこで「書く」「話す」といった学び方に加 えて「何かになりきる」「表現する」といった学び方を身に付けることで、主体 的・対話的で深い学びに自ら取り組めるような学習者を育てることを目指したい。
2 研究内容と方法
平成29年度は、国語科・道徳を中心に、演劇的手法を活用した授業を開発していった。まず演劇的手法の概要について解説し、続いて具体的な授業事例を紹介したい。
(1)「演劇的手法」とはどのようなものか。
「演劇的手法」とは、全身の感覚や想像力を使った表現活動である。上演を目 的としたり、上手に演じたりするためのものではなく、「誰か・何かになってみ る、状況や立場に身をおいてみることを通して体験的に学ぶ学び方」を指す。「ロ ールプレイ」等の既に学校現場に馴染みのある手法も含まれる。
以下は、平成29年度に美濃山小学校で活用された演劇的手法の一覧である。美濃山小学校で独自に開発したり、アレンジしたりしたものも含まれる。
(2)「演劇的手法」を用いた授業の具体像
実際の授業の中では、数ある演劇的手法の中から、教材・資料や授業の展開、児童の発達等をふまえて選び、アレンジしながら活用したり、複数の手法を組み合わせたりしながら、授業を構成していく場合が多い。
事例(1)4年 国語科『一つの花』(今西祐行・作)
事例(2)4年 国語科『ごんぎつね』(新美南吉・作)
3 校内授業研究システムの改革
本校では、「教師の学び手としての感覚を生かした授業づくり」に取り組んで いる。特徴的なものとして、「活動試行」「模擬授業ワークショップ」「(事後研での)追体験」が挙げられる。
(1)活動試行 ー体を動かしながら、言語活動を“つくってみる”ー
活動試行とは、授業で行う 言語活動(演劇的手法)を、 実際に教師が学習者として体 験しながら考案していくもの である。教師自身の学習者と しての実感を生かして活動を つくることで、「この活動だと、 このような学びが起こる」「こ のしかけを入れることで、よ り気づきが生まれる」といっ たアイデアがどんどん生まれ てくる。それらのアイデアを もとに、さらに活動を練り上 げていく。言い換えるならば、教師の創造力や学習者としての実感を拠り所に、主体的・対話的で深い学びの生 まれる言語活動を創造していく取組である。
(2)模擬授業ワークショップ ーつくった言語活動を教師対象の模擬授業で“やってみる”ー
模擬授業ワークショップは、ブロックごとに、教員相手に言語活動を実施してみて、学習者としての実感を出し合い、活動を練り直していく活動である。ここであえて“ワークショップ”と名付けているのは、事前に指導案を作成し、それに沿って授業を模擬的にしてみる、というものではなく、指導案を作らず、その場で活動をどんどん生成していく過程を重視したものであるからである。
(3)授業の中心となる活動の追体験 ー教師が学習者に“なってみる”ー
「追体験」とは、校内研究授業の事後研究会において、授業者の教師が授業の 中心となる活動部分を参観していた教師を学習者として再現する、言わば教師が 学習者に“なってみる”活動である。参観者は、児童の学習活動を「追体験」す ることを通して、自分自身が学習者となり、そこで得られた感覚や学び手として の実感をもとに、事後研究会において授業で参観した児童の学びの意味を探究し ていくこととなる。追体験により、実際に参観時には見えてこなかった児童の姿 に気づいたり、活動の意味を掘り起こしたりすることが可能になる。
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