司書教諭あや先生の「ほんのひとこと」 ~町田そのこ・著『52ヘルツのクジラたち』より~

 川のせせらぎ、海の波の音、鳥のさえずりなど、リラックスできる、あるいは癒やされる音楽とか音を聞く人がいます。中には火が燃える「パチパチ」という音が好きな人もいます。

 この小説は不幸な境遇に育ってきた主人公が、自分と似た境遇の子どもを救おうとするお話です。二人が心を通わせるきっかけが「52ヘルツ」の音で仲間を呼ぶクジラの声。この音は仲間にしか届かない声で、他の種類のクジラには決して届きません。二人がこの声に心を奪われたのは、二人の圧倒的な「孤独」が原因なのかもしれません。でも不幸な境遇の人だけでなく、誰もが時には「自分に気づいてほしい、わかってほしい」と願うはずです。自分があげたかすかな声を聞き取ってくれた人に感謝し、そして自分も誰かが振り絞って発している声を聞き取りたいと思い、相手に寄り添ったとき、自分もしあわせを手に入れるという予言が次の言葉です。  

  第二の人生では、キナコは魂の番と出会うよ。愛を注ぎ注がれるような、たった一人の魂の番のようなひとときっと出会える。 キナコはしあわせになれる。

* 『52ヘルツのクジラたち』は、学校図書館にあるので、読んでみてね!https://private.calil.jp/bib/gk-2003453-k4xas/4120052982