司書教諭あや先生の「ほんのひとこと」 ~湯本香樹実・著『ポプラの秋』より~

 心配なことがあるとき、不安な気持ちが大きいときほど、口に出すことができないものです。誰かに言いたくてもうまく言葉にできないこともありますよね。

 この小説の主人公「私」は、小学一年生の時、突然父が亡くなり、失意の母とともに、あるアパートに引っ越します。その大家のおばあさんは天国の父に手紙を届けてくれると言い、「私」は毎日手紙を書きます。母を心配させたくない「私」にとって、宛先に「心配をかける」「叱られる」恐れのない手紙は、精神的に解放してくれるものでした。気持ちや言葉を外に 出せない心は、風通しの悪い部屋のようなものなのかも しれません。

「言葉を外に向かって発するようになると、外側からも、 いろいろなことが私に向かって流れ込んできはじめたように思う」

* 『ポプラの秋』は、学校図書館にあるので、読んでみてね!https://private.calil.jp/bib/gk-2003453-k4xas/4101315124