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 冬休み、本校図書館の学習支援に端を発する職員によるボランティア活動「ウィキペディアタウン」の丹後地域を中心とした取組についての書籍『ウィキペディアでまちおこし みんなでつくろう地域の百科事典』が、紀伊國屋書店から刊行されました。ウィキペディアタウンは、2013年に横浜市で開催されて以来、日本全国に普及した官民協働型市民ワークショップの代表例ですが、その詳細を解説した専門書は国内初と(世界初とも?!)言われています。

 本書では、丹後地方の様々な歴史や文化とその継承に人生をかける人々とともに、2019年には本校の前身・久美浜高校の生徒や教職員が、2020年・2021年にも丹後緑風高校の両学舎の生徒が参加している企画についても詳しく紹介しました。

 今年度には、京都市内の府立清明高校も授業に導入しているウィキペディアタウン。高校生の学びと地域振興、自治体や地域の図書館や博物館との連携について、足し算ではなく累乗の効果をもたらす学びのコミュイニティづくりを、生徒のみなさん自身でも考えるきっかけにしてください。

 本書はこれまでに、以下の様々なメディアで紹介されています。学校図書館にももちろんありますが、お近くの公共図書館、あるいは書店等にても、手に取ってみてください。

〈出版記念イベントの一覧〉

〈おもな掲載メディアの一覧〉

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【書誌情報】

  • 書名:ウィキペディアでまちおこし
  • 著者:伊達深雪
  • ISBN:9784314012027
  • 出版社:紀伊國屋書店
  • 判型:(紙)4-6(電子)Kinoppy, KinoDen
  • ページ数:326ページ
  • 発行年月日:2023年12月
  • 発売日:2023年12月26日

 7月25日(日)、丹後町を流れる宇川に生息するアユについて、上宇川漁協の網漁を見学し、20年にわたって生態調査を続けられた瀬川信一氏の講演を聴き、その内容を文献調査と紐付けてオンライン百科事典Wikipediaに新項目「宇川のアユ」を作成するという地域探究活動ウィキペディアタウンが開催されました。丹後町東部の宇川地域の活性化に取り組む龍谷大学ら「宇川スマート定住促進会議」が企画したもので、本校の学校図書館司書がWikipedia編集講師として継続的に参画しています。

 今回は、学校での探究授業で環境問題をテーマとしていた3年次生の安達雄馬さん、中江絵里香さんが参加し、龍谷大学生5名や地域のみなさんとともに、アユの生態研究地として国際的に知られる河川の環境と、国営農地やダム建設などの地域開発との関連などについて学びました。

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 イベントでは、午前中にまず丹後町平にある宇川親水公園に集合、宇川スマート定住促進会議代表の小倉伸氏、上宇川漁業協同組合長の酒井満雄氏から宇川のアユ漁について紹介いただき、熟練の漁師の方2名が実際にアユを漁獲する様子を見学しました。また、集落に水を引く用水路や、堰に設けられた魚道などについて解説をいただきました。獲れたアユの写真を撮ったり、触ってみたりと、最近ではなかなか機会のない体験ができました。

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 午後は丹後町久憎にある宇川アクティブライフハウスに移動し、京都大学の研究に引き続き、アユの研究を20年にわたって続けてこられた地元の研究者・瀬川信一氏に、宇川のアユについて講演いただきました。宇川上流での国営農地開発やダム建設の関連や、いま計画されている大規模な風力発電施設建設などについても紹介があり、地域の環境問題をテーマに探究学習を進めている生徒達は、真剣に聞き入っていました。

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 フィールドワークと講演で予備知識を得た後は、京都府立図書館や京丹後市立図書館、本校の学校図書館などで集めた図書資料をベースに、オンライン百科事典Wikipediaに「宇川のアユ」という新しい項目を作成しました。まず、宇川のアユを構成する要素にはなにがあるか、全員で意見を出しあい、図書の十進分類法に照らして集めた情報を整理しました。その後、各自が興味のある観点から宇川のアユについてさらに調査し、Wikipediaを編集しました。

 龍谷大学生とペアを組んで文献調査し、「宇川のアユ生息環境」節の執筆に参加した安達さんは、「こうした学習は大学でもやっていくことになると思うので、高校生のうちに体験することができて良かった。」と語り、秋以降に峰山町で開催される予定のウィキペディアタウンにも関心を高めていました。

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 この取組の様子は、8月1日発行の読売新聞の折り込み「読売たんごニュース」や、8月28日から9月3日にかけて放送された京丹後市ケーブルテレビの「週間!ニュース」でも紹介されました。また、当日Wikipedia編集の助言者として参加していたAsturio Cantabrio氏のレポートでも詳しく紹介されています。Asturio氏には、Wikipediaのアカウント作成など基本的なWikipedia編集の準備に関して、初参加の久美浜高校生達をサポートしていただきました。ありがとうございました。

 2019年526日(日)、琴引浜鳴き砂文化館で開催された、地域のことを本で調べてオンライン百科事典wikipediaで発信するオープンデータ企画「3Qタウン Wikipedia town in 琴引浜」に、2年生の生徒8名と先生2名が参加しました。地域情報をwikipediaで発信する取組は、社会にイノベーションを起こす地域リーダーの育成をめざす福井県の丸岡高等学校が、クラブ活動「地域協働部」の活動の柱とするなど、いま全国の学校現場に広まりつつあります。3Qタウンには、久美浜高校生8名のほか、網野高校生1名、丹後地域の高校6校の教職員を含む26名が一般参加し、東京・愛知・大阪・静岡など全国各地から集結したボランティアのwikipedia編集経験者の助言と、主催である琴引浜ガイドシンクロと久美浜高校から持ち込んだ図書資料のほか、京都府立図書館、京丹後市立図書館の資料協力を得て、総勢37名で開催されました。
 鳴き砂の音は摩擦音なので、乾いていないと「鳴く」ことはありません。連日好天に恵まれたイベント当日のコンディションは素晴らしく、「鳴き砂を笑わせる」達人ガイド・岡田氏の実演では歓声があがりました。


 午後からのwikipedia編集では、日本のウィキペディアタウンを先導してきた代表的な人物の1人でもあるwikipedia編集者・日下九八氏から、高校生にもわかりやすい言葉でwikipediaの仕組みと著作権や検証可能性など、インターネットで情報発信をしていくなかで留意すべき注意事項と図書資料の活用の大切さを講習いただいてから、編集作業に入りました。


 久美高生8名は、5名が「はだしのコンサート」の新規記事作成に、3名が「鳴き砂」の既存記事の加筆に挑戦しました。
 
「鳴き砂」の3人は、すでに作られていたwikipediaの記事から抜けている、日本全国の鳴き砂の浜を図書資料を基に加筆。東日本大震災が鳴き砂に与えた影響なども調査し、自分達がwikipediaに書いたことを、それを読んだ第三者も調べることができるように、出典を付けて投稿しました。
 ゼロからの記事作成となった「はだしのコンサート」の5人は、題材の性質が近い「サマーソニック」のwikipedia記事を参考に、題材の解説に必要な情報をピックアップし、出典を付けてまとめました。書籍資料が見当たらず、まとまっている情報源が少ない「はだしのコンサート」では、最初は何を書くべきなのか戸惑いが見られましたが、生徒の1人が携帯電話に残していた昨年のはだしのコンサートの写真を掲載すると、戸惑いが晴れたように一気に編集が進みました。
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新規作成記事「はだしのコンサート」
 ・加筆編集記事「鳴き砂」

 イベント後の感想文には、「初めての体験で楽しかった!」「勉強になった!」と「!」が17個も飛び交う満足度の高さが窺われ、「こういう学習に参加することの大切さを感じた」「知識の幅が広がった」「これからの探究活動に活かしていきます」と、これからの学校生活への意気込みも新たにしたようでした。

 この取組について紹介したレポートは、『図書館雑誌』2019年12月号に、特集「情報リテラシーを巡って 学校図書館を核に」で紹介されました。