東レ理科教育賞 文部科学大臣賞の受賞について

2003年度から取り組みを始めた、「DNA塩基配列解読を用いた植物系統分類」の授業も4年が経過しました。特に4年目には、phred phrap Biolignの導入がうまくできて、シーケンサーでの解読以外はすべて高等学校で実験ができるようになりました。それも、クラス単位の普通の授業形態で実施が可能となりました。

せっかく取り組んできたことなので、何らかの形でまとめをしておきたいと4年目の取り組みにかかる頃から考えていました。また、お世話になった徳岡先生は、日頃から植物系統分類学が高等学校で取り組まれることを期待されていたので、広くこの授業を全国の高等学校に知ってもらいたいとも考えていました。

そこで、平成18年度の東レ理科教育賞に応募することにしました。東レ理科教育賞は作品集が全国の中高等学校に配布されるので、広く知っていただくには一番効果のある方法です。しかし、それだけに全国の優れた作品がたくさん応募されるので、入選するのはかなり難しいということです。また、これまでの東レ理科教育賞の作品集を読ましていただくと、この取り組みは少し賞の趣旨にあっていないかもしれないという気もしました。したがって、多分無理かなという気持ちを持ちながらの応募となりました。

この4年間、取り組み費用を捻出するため、補助金等の申請文書や報告書をかなり作成してきました。また、このwebページを作成したりしてかなり文書の蓄積があったので、応募原稿を書くのはそんなに難しくはありませんでした。夏休み中にほぼ作成して、9月末の締め切りまではかなり余裕を持って応募しました。

この授業を多くの先生方に知っていただくために、教職員研修会も企画して実施しました。その準備や実施などで2学期があわただしく過ぎた頃に、東レから二次選考の知らせが来ました。10分間のプレゼンとその後の質疑があるという連絡でした。冬休みにプレゼンの原稿とスライド作りをしました。1年間を通した取り組みなので、これを10分間でいかにまとめるか、ポイントをどこにおくかをとても苦労しました。当日まで発表原稿を書き直しながら、千葉県の浦安市にある東レビルでプレゼンを行いました。

プレゼンの前に、控え室では同じ日にプレゼンを行なった先生方の工夫をされた実験器具を見ることができました。熱心な先生方の作品を前に、さすがにすごいなと思いました。同時に、これでは入選は無理そうだなあとも思いました。プレゼンは、かなり圧縮したつもりだったのですが、10分間にまとめるのは難しく、相当早口になってしまったと思います。審査委員長の太田先生から、普通の高校でよくこれだけのことができましたねと評価をしていただき、大変感激して帰りの新幹線に乗りました。

受賞の知らせを聞いたときは、正直なところとてもびっくりしました。すぐに徳岡先生に報告しましたが、後から先生に相当狼狽して電話していたことを聞かされました。また、今年度から文部科学大臣賞が設置されているのを知らずに通知を聞いたので、あわててどんな賞なのかを調べなおしたりしました。

受賞が決まってから、作品集の原稿を書き出しました。文章の蓄積はたくさんあったのですが、この時も、字数制限をどうクリアーするか、また、どの写真を使うか、どんな資料にするとわかりやすいかに悩みました。鮮明な図や写真がなくて東レ科学振興会の方にはいろいろご迷惑をかけたことと思います。何とか授賞式までに作品集の原稿ができました。

3月19日、東京丸の内にある日本工業倶楽部で授賞式がありました。授賞式は東レ科学振興会が行なっておられる各事業(東レ科学技術賞、東レ科学技術研究助成、東レ理科教育賞)の贈呈式として行なわれました。日本の最先端の研究に携わっておられる方々と同席しての授賞式です。また、会場にはノーベル賞を受賞された江崎玲於奈博士、小柴昌俊博士をはじめとした著名な先生方が列席しておられ、東レ理科教育賞の重み、そして大変な場所にいる自分を実感することになりました。

授賞式では、東レ理科教育賞受賞者を代表して、挨拶をしなければなリませんでした。こんなに緊張したスピーチはもう二度とないと思います。緊張でとても胃が痛かったです。式のあとはレセプションがあり、江崎玲於奈博士がノーベル賞にまつわる話をスピーチされ、大変楽しく聞かせていただきました。また、いろいろな方々にお声をかけていただき、本当に栄誉なことだと感激しました。

久御山高校に赴任してきて5年、何とか理系の学校への進学を志す生徒たちを増やしたいと、当時の教務部長であった冨永吉喜先生(現京都府立田辺高等学校副校長)の発案で取り組みを始めたサイエンスクエストが、こんな結末を迎えるとは思ってもみなかったことです。この授業は、このwebページの各所で紹介してありますが、いろんな方々の協力によって出来上がってきました。特に、京都大学の徳岡先生には大変お世話になりました。お世話になった方々、そして、この授業を受講して、粘り強く実験に取り組んでくれた、久御山高等学校の生徒諸君に、感謝をのべたいと思います。本当にありがとうございました。

京都府立久御山高等学校
化学科 藤谷 泰