「謙虚」「相手に想いを馳せる」そして「感謝」

猛暑と変則的な台風に振り回されましたが、それでも、セミの声を聞きながら遠い日本の夏に想いを馳せると、今の日本の平和を築いた先人たちに感謝の念が湧き、手を合わせたくなるいつもの8月でした。

8月15日のテレビで沖縄の観光ガイドさんのインタビューがあり、その内容は修学旅行で沖縄を訪れる学校のうち、ひめゆりの搭をはじめ戦跡を修学旅行コースから外す学校が年々増えているという寂しい話でした。私は中学生の時、社会科の恩師から「歴史を学ぶ意味は未来に生かすためだ。」と教わり、以後自分もその言葉を自分なりにかみ砕いて伝えてきたつもりですが、先人たちの想いを胸に、今後も歴史から謙虚に平和を学ぶ姿勢は忘れずにいたいと思います。

「謙虚」と言えば、日本人には謙虚さを尊ぶ国民性があります。先日も甲子園で優勝校が決定し、優勝インタビュー時に敗者チームの監督はじめ選手たちが優勝チームに笑顔で拍手を贈る姿がありました。また、かつて優勝して大喜びする選手に、「それくらいでやめておけ。それ以上は相手に失礼だ。」と選手をたしなめた監督もいましたが、まさにこの精神は武道に通じると思います。

日本の国技・大相撲で、勝利後にガッツポーズをする力士はいないし、勝利後も静かに土俵を去る姿に観客は魅了されます。柔道でも、「礼に始まり礼に終わる」の言葉通り、相手への敬意が根幹にあることは、皆さんもすでに学習済みのことだと思います。

武道の一つ弓道には8つの基本動作があり、1番目の型「足踏」から順に進み、7番目の「離れ」で矢を射る。ただし、矢を射って終わりでなく、何の動作もない最後の8番目の型「残心」が一番大切で、矢を放った後の射手から醸し出す品位、格調こそが弓道の本質だと聞いたことがあります。

武道だけでなく、日本には電話を切る時に相手が受話器を置いたことを確認して受話器をそっと置く、お客様の姿が見えなくなるまでお見送りする、災害後に食料品等の配給にきちんと列を成して並ぶ等、相手に想いを馳せる「残心」の精神や美しい所作・倫理観がたくさん残っています。

武道などの勝負事だけでなく、日常においても先人から伝わるその「相手を尊重する姿勢・国民性」を大切にして、相手を思いやる行動や自分たちにできるところから平和の取組を進めていけたらと思います。

ノーベル平和賞受賞のマザー・テレサの名言の一つにこんな言葉があります。

「家族に 『ありがとう。』 と言うことが世界平和の始まりです。」

校長  世木 佳文

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