令和4年度11月 学校長挨拶

職業体験で何を学んだか

1年後-95%  5年後-81%  10年後-70%   20年後-50%  

この数字が何を意味するのか知っていますか。

これは、少し古いデータですが、企業の生き残る割合「企業生存率」(中小企業庁2017)を表しています。つまり、わずか10年で30%の企業が倒産するということです。この数字を見ると、起業して20年後も維持し続けている会社がどれだけすごいのかが分かります。

コロナ禍の中、受け入れを快く承諾して頂いた18の事業所の皆様のおかげで、先日2年生の3日間の職業体験が無事終了しました。体験を終えての感想文には、「挨拶・コミュニケーションの大切さ」「一つ一つの仕事の重み」等が多く書かれていました。また、職場の方の話を聞いて、仕事のやりがいに感動した人や、「主体的に自分で考え行動しなければならない」「周りの人のことを思って働ける人になりたい」「状況や時代に合わせ常に変化していける人になりたい」との思いに至った人もありました。この体験が自身の生き方・考え方を見つめ直す機会になればいいなと思います。

以前、私は調理専門学校の実習室を見学させていただいたことがあります。その実習室には、次のようなニュアンスの言葉が大きく掲げられていました。

「人が嫌がる仕事を率先してやろう」

「何のための仕事かよく考え、分からなければ質問し、仕事を理解してから進めよう」

「周りに気を配り、人の動きも把握して、目の前の小さなゴミにも気づける人になろう」 

調理師を養成する学校の目標でありながら、料理の技術(やり方)について触れられたものは一つもなく、上記のような「仕事のあり方」が掲げられていました。

調理にたくさんの時間を費やせば料理の腕は確実に上がります。しかし、本物の職人になるためには、経験や技術よりも土台として一人の人間として身につけておくべき人間的な「あり方」が必要であるということ、「何のために」とか「どんな思いを持って」仕事をするのかが大切であるという専門学校の先生の話に感動し、仕事の奥深さを感じたことを記憶しています。

逆に言えば、土台ができていれば、どんな職業や職場でも、必要とされる社会人になれるということです。順番は人としての「あり方」(心・姿勢)が先です。その上で、「やり方」(技術)を積み上げていくことが大事なのだと思います。

部活動でもよくあることです。技術が優れているにも関わらず、本番では緊張に押しつぶされて力を発揮できず、気がついたら頭の中が真っ白になって終わっていたという人が結構います。だからこそ、これからの社会で大事なのは、強い意志、耐える力といった人間力、何事にも動じない心の強さなのだと思います。持って生まれた才能や、努力で身につけた知識・技術を活かすもダメにするのも、心の強さ次第なのかもしれません。

そういう意味では、先述の実習室に掲げられていた言葉のように、目の前の小さなゴミに気づくような注意力を身につければ、社会の変化はもちろんのこと、他者や相手の小さな変化にも気づけるようになるのではないでしょうか。ただし、逆に言えば、目の前の小さなゴミを拾わない人やチームには、自然もツキも運も、味方をしてくれることはないのかもしれません。                                                                      
                                   校 長  世木 佳文

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