9年 性についての講演会「あなたとみんなの生と性、もっと大切に、もっと幸せに」

  3月9日(月)に、卒業前の9年生への特別授業として、元京都教育大学教授で一般社団法人“人間と性”教育研究協議会幹事の関口様に来ていただき、性についての講演会を実施しました。

 この時間の目標は、「幸せな関係をつくるため、身近な性の人権侵害の可能性を知り、適切な対処方法を理解する。」でした。

 関口先生の教員としてのスタートは、京都市内の定時制高校でした。保健体育科で「教科書どおりの授業」をしていた時、生徒から、「もっとちゃんと教えてな。」と言われたことが大きな転機となったということです。人との付き合いの仕方、安全な避妊の仕方を教えないといけないと、その時思ったそうです。

 「セクシュアリティ(性の在り方)を学ぶということは、よりよい人間関係をつくり、みんなが幸せになることにつながるのです。」して、「こころもいのちもからだにある。からだは自分そのもの。だから、こころを含むからだを大切にされ、大事にする権利が、誰もみんなにある。」と、関口先生は、仰いました。

 思春期についての話をされ、思春期を「子どもと大人の間の時期で、始まりは人によって違いますが、大体10年くらい続きます。」「赤ちゃんは、頭が大きいけど、脳の成長がある程度完了し、からだの成長へ移行するのが思春期です。」と説明されました。そして、自立への準備の時期だから、親に依存するばかりではなく、支援する関係を作ってほしいと言われました。「レシピを見なくても、5品目くらいの食事を作れますか?」「下着は自分で洗っていますか?」と質問されました。これらは、生活の自立につながるので、是非やってみてほしいとのことでした。「料理を作れるのは、楽しいし、生活も豊かになります。また、自分の好きな物が食べられます。」「月経、射精が始まったら、下着は、自分で洗濯した方がよいです。」とアドバイスされました。

 今回の講演では、ペア学習の時間を何度か取られました。その一つに、次の文の間違い探しを出されました。

「思春期になれば、みんな性や恋愛に関心をもち、異性に好意が芽生え、交際し、幸せな気分になります。」

 皆さん、分かりますか?正解は、次のとおりです。思春期になれば、みんなが性や恋愛に「関心をもつ」とは限りません。好意が芽生えたとしても、その対象が「異性」とは限りません。同性であったり異性・同性両方であったり様々です。好意をもった相手と必ずしも「交際」する訳ではありません。そして、恋愛や交際によって、「幸せな気分」になるということも、その限りではありません。「辛い」「怖い」といった気持ちになることもあるのです。

 月経についても触れられました。月経痛で悩む人がいるので、パートナーとなる人は、そこでしっかり思いやりを発揮してほしいと言われました。ただし、月経痛に悩む人は、そっとしておいてほしい人、一緒にいてほしい人など様々なので、どのように接するのがよいかを聞いてみなさいと言われました。そして、パートナーだけでなく、家族にも同様の思いやりを発揮して、一言声をかけてほしいと言われました。

 思春期は、自分のからだのことなどで思い悩んだり、コンプレックスをもつことがありますが、みんな違って当たり前なのだと言われました。性情報の嘘を見抜き、正確な情報で判断したり、性の多様性・個別性・平等性を尊重したりすることが大切です。ただし、何か困った時には、学校や友達に「助けて。」と言え、助けてもらえるようになってほしいと言われました。それこそが「社会的自立」なのだ、と。

 性教育の目標は、幸せで心地良い人間関係を築く三原則「肯定」「科学」「多様性」です。「みんな違って、みんな平等で、みんなハッピー」となることを目指すことなのです。

 性的マイノリティの若年層、特に10代の自殺念慮(自殺を考えたこと)の高さは、同年代と比較して3.3倍、自殺未遂は3.6倍というデータがあります。生きづらさを抱えている若年層が多いという事実を認識し、社会全体で性の多様性についての理解を深めていくことが大切です。しかし、日本は、国際的に見て、ジェンダーの格差が大きい国です。「ジェンダーギャップ」を見ると、調査を開始した平成18(2006)年全148か国中80位だったのが、令和7(2025)年は118位となっています。

 また、「世界人口白書2025」によるジェンダー格差と性に関する調査では、およそ3人に一人が「望まない妊娠」を経験し、13%が意図しない妊娠と子どもを持つための障壁の両方を経験しています。ユニセフによると、推定6億5,000万人の女性が18歳の誕生日を迎える前に結婚しており、子どもで結婚する女子が、年間推定1,200万人もいるということです。

 日本も世界も、まだまだ「みんなハッピー」と言えない状況にあります。

 講演の後半では、性や恋愛の間違いについての興味深い話題が続きました。題して「関口の『恋愛』3原則」。

①「恋愛」をしていなくても人の価値は変わらない。…独りでも片思いでもOK。

②「恋愛」してもノーバイオレンス、ノーセックスで、互いの意思尊重で相互満足を得ることが大切です。嫌なことはしない、させない。…よい人間関係は、即席ではできない。手抜きはだめです。

③性的関係に進むなら、たとえ結婚していようが、相互の安心・安全・信頼が不可欠です。…そのための対等な話し合いで、避妊、性感染症予防、避妊、性感染症予防、ノーバイオレンスの実行が最低限必要です。

 ただ、現実には、「付き合っている相手に気に入られるために、本来の自分とは違うと思っても、合わせてしまうことがあるか」という調査(「性と恋愛ー日本の若者のSRHR意識調査ー」2023年)で、15~29歳の若者5,800人の71.4%が「よくある」「たまにある」と回答しています。交際経験のある中高生の約4割がデートDV(恋人やそれに近い関係の暴力)の被害に遭っているという報告もあります(「デートDV防止全国ネットワークの意識調査」2025年)。それは、殴る、蹴るなどの「身体的暴力」、言うことを聞くことの強要や無視、侮辱などの「精神的暴力」、デート代を払わない、共同生活費を渡さないなどの「経済的暴力」、無理にアダルト・コンテンツを見せる、性的なプライバシーをネットに流すなどの「性的暴力」、恋愛や性の悩み事相談をさせないなどの「社会的暴力」、メール等の制限や即答強制などの「デジタル暴力」を指します。

 暴力と愛とは違います。人と人の関係には、常に同意・合意が必要です。同意のポイントは、「非強制性」(ノーと言える環境が整っているか?)、「対等性」(お互いの立場が対等か?)、「非継続性」(毎回その行為ごとに同意があるか?)、「明確性」(心からの同意で合意できているか?)です。だから、交際やキス、セックスを申し込む時は、「~したい、我慢できない、してくれなきゃ別れる!」と言うのは大バツです。「~したいけど、嫌なら嫌と、無理しないで言って。心からいいよと言えるまで待てるから。」と言えると◎です。

 SNSで知り合った相手には、特に注意が必要です。自分のプライバシー情報は、かけらも渡してはいけません。会おうと言われても、会わないことが大原則です。それでも会う時は、リアルな関係以上に慎重に、親や友人と一緒に公共の場で会うなどの用心が必要です。そして、ネットでの性的要求には、絶対に応じないことが鉄則です。

 最後に関口先生は、「よい人間関係は別れのときに決まります。卒業を感謝と微笑みで再会を誓う別れにしてください。残り少ない中学校生活を大切に。また、機会があれば会いしましょう。」と仰いました。

 生徒代表からの「これまで性について学んだことが余りありませんでした。今日多くを学びました。印象に残ったのは、自分には『大切にされる権利がある。』という言葉です。これからは、自分も相手も大切にしていけるようになりたいと思いました。」という言葉に続いて、みんなで「ありがとうございました。」とお礼を伝えました。

 間もなく卒業を迎え、新しい生活に向かおうとする9年生にとって、今後の生き方に関わる貴重な1時間でした。関口様、お忙しい中、ありがとうございました。

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