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平成15年度
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児童の思考をていねいに見取ること

  ワークシートには自分の考えをしっかり書かせる。現時点で混沌としていてもそのまま
書くことができる指導を積み重ねる。このことが、この実践の背景にある。そして、児童
の書いていることをていねいに読み取ること、書かれていない部分まで受容的に受け止
めることを大切にしなければならない。児童Bの第2時では、鉄とアルミニウムがそのま
ま出てきたという考えを出している。ところが、指導者は「きちんと理論立てて考えてい
るので」と児童の考えをそのまま受け止め評価している。実は、このことが大切なので
ある。児童が自分の考えを実験・観察から組み立てられるよう、まず、児童の考えを知
り、受け止め、そして見守ること、これが思考を育てる第一歩となる。



学習指導要領の内容の記述を常に意識し、確実に身に付けさせること

  「水溶液には金属を変化させるものがあることが分かる」というのが、この学習のね
らいである。第1時から第6時まで、金属が水溶液の中で変化したこと、そのことを確
実に身に付けさせることが追究されている。指導者のワークシートを見る視点やコメン
トの入れ方は常に内容の記述が意識されている。児童Aの第2時では、児童は「全く違
う物質ができた」と一見ねらいに到達した考えを出す。しかし、児童は「どういう物質
か分からない」と疑問を投げかける。その疑問に着目することで児童の理解がより確実
になると判断した指導者は、引き続き追究することを促している。その指導者の考えの
根底には、指導計画の改善の部分での記述にあるように「時間とともに忘れてしまう」
程度の認識にしたくないというこだわりがある。学習指導要領の内容の記述は明快なも
のであるが、確実に身に付けさせるというこだわりは、常に持ち続けたい。



単元全体の評価の流れを大まかにつかむこと

  評価構想の表では、3次の8時間における科学的な思考の評価の観点は一つで記述
されている。実験技能も一つで記述されている。知識理解は同じ記述が2つの段階で出
ている。関心・意欲・態度にいたっては、単元を通じて一つの記述で整理されている。こ
のことが良いのかどうか分からないが、4観点ある単元の評価の記述で、単元全体で常
に意識できるのは、この程度ではないかと思える。児童の実際にある児童の思考の流
れを見ても、思考の深まりの過程は児童によって違う。また、確実に知識として身に付い
たと判断できる状況も同じ時ではない。関心・意欲・態度にいたっては、児童によってど
のような波があるか分からない。児童の進歩の状況が見えたときに、見えたことをとらえ
る評価の手法を確立していく必要がある。そのためにも、単元全体で大まかな指導の流
れをつかむことが大切となる。



予想し、実験し確かめ、考察するサイクルの質的高まりは、的確な評価から

  第3時の「蒸発させて出てきた物質の重さを比べる」ところの授業を参観した。児童は、
前時の振り返りから、塩酸に溶けている金属がどうなっているか自分の考えを出し合っ
た。その後、残った物の重さを比較するとどうなるか予想を自分の考えを交えて出し
合った。そして、実際に計測し結果について考察した。その後、重さが重くなったことで
違う物質ができたと言えるのかという疑問が出され、こんな確かめ方も必要ではないか
という意見が出された。そして、ワークシートにしっかり自分の考えを書く。この時間は、
蒸発させて出てきた物質の重さを比べるだけの実験である。しかし、1時間たっぷりか
かった。予想、実験、考察の一つ一つが大切にされ練り上げられている。この質的な高
まりを生むのが、指導者の的確な評価であることが十分うかがえる。的確とは、タイム
リーであること、適切な言葉かけであること、適切なワークシートへのコメントであること
などを含んでいる。指導者は実践を通して評価力を高めていかなくてはならない。



実践から得た知見を積み上げること

  金属を塩酸に溶かし、蒸発させると塩(しお)が出てくると考えた児童がいた。理由を聞
いてみると、塩酸の塩(えん)は塩(しお)だからという。また、蒸発させると再び溶かした金
属が出ると考える児童も多い。児童Aのように金属も蒸発すると考える児童もいる。塩
酸によって鉄とアルミニウムが溶けたという理由として児童Bは、溶けた金属の色に水
溶液が変わっていったことをあげている。自然事象を突きつけたとき児童がどのような
考えをもつかは、実際に実践の中でしかつかめないことが多くある。私たちの予想をは
るかに上回る考えが、児童から出されることは頻繁にある。また、この実践においては
第4時に指導計画の変更を迫られている。全員の児童が別の物質に変化するとワーク
シートに書いたにもかかわらず、その記述の様子から指導者は、質的変化の概念が理
解不十分だと判断したためである。このように、児童が出会った自然事象にどんな考え
をもつか、完全に予測することは不可能といってよい。だからこそ、児童の反応を確か
めながら授業を行う実践の蓄積が大切となる。これが実践から得た知見である。もちろ
ん、実践から知見を得る際には、評価の機能が働く。私たちは、この実践から得た知見
を積み上げることでより確かな評価と指導ができるようになる。



評価研究は授業を創ること、日々の授業をていねいに創ること

  この実践での指導者の児童へのかかわり方で分かるように、例えば科学的な思考を
高めようと思えば、身に付けさせたいねらいを設定し、児童の姿をていねいに見取り、評
価し、ねらいに近付ける手をうち続けることである。これは、私たちが日々の授業でいつ
もやろうとしていることであり、特別のことではない。授業を創ることに他ならない。その
過程を、評価研究として少していねいにやっていこうとしているだけである。




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