京都国立博物館で府指定文化財が修理後初公開中です。

美術工芸・民俗・無形文化財

7月19日(水)から8月20日(日)まで京都国立博物館の名品ギャラリー内で一般社団法人京都當道会きょうととうどうかいが所有する京都府指定文化財《絹本著色日吉山王垂迹神曼荼羅図けんぽんちゃくしょくひえさんのうすいじゃくしんまんだらず》及び《絹本著色日吉山王本地仏曼荼羅図けんぽんちゃくしょくひえさんのうほんちぶつまんだらず》の2幅が修理後初めて展示されています。

修理は令和2年・3年度の2ヵ年にかけて行われました。修理前は劣化が進行し、本紙である料絹りょうけんにたくさんの横折よこおれが発生し、これ以上劣化が進行すればやまからどんどん表現が失われる危険性がありました。古い裏打うらうがみをすべて取り除き新しい裏打ちを施す完全解体修理を行うことで、後世に守り伝えることが可能となります。

京都當道会は中世の当道座とうどうざを前身としています。当道座では守護神として日吉山王社ひえさんのうしゃを尊崇しており、この2幅も制作当初は一具ではありませんが、江戸時代以来二幅一対にふくいっついで大切に伝えられてきました。どちらも14世紀に遡る古例の作であり、その伝来の由緒も含めて貴重であることから平成19年度に京都府指定文化財に指定されました。

文化財の修理には高度な技術と時間、厳選された材料を要するため高い費用が必要となり、十分な資金計画を組むことが肝要です。今回の修理では京都府の補助金とともに、朝日新聞文化財団あさひしんぶんぶんかざいだん川合京都仏教美術財団かわいきょうとぶっきょうびじゅつざいだんから助成金の採択が決定し、無事に修理を行うことができました。裏打ち紙を取り替えたことで画面が少し明るく鮮明になり、垂迹神の前方にいる猿たちの姿や本地仏の背障はいしょうに描かれた水墨画など細かい描写が楽しめるようになりました。修理後の様子をぜひ博物館でご覧ください。

絹本著色本地仏曼荼羅図の背障の水墨画

                        令和5年8月 美術工芸・民俗・無形文化財担当

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