(1) 「背のびしているよい子」からのサイン

 日本の社会では、はっきりと個人としての自己主張を明確にするよりも、周囲の状況を察して、自分を抑えてその場に合わせて振る舞うことを美徳としてきた風土があります。

「謙譲の美徳」という言葉があるように、対人関係を最優先し、人と人との関係を円満に維持することは、それ自体に極めて高い価値があるとみなされる傾向があります。

日本人に対人恐怖をともなう神経症例が多く見られるのは、こういった島国日本的な風土も影響していると考えられています。

他者に不快感を与えるほど、あまりにも強く自己主張することは、確かに周囲に対する配慮のない「我儘(わがまま)」と見られかねない危険をはらんでいます。

その意味において、自分の気持ちを押し殺して人の気持ちに合わせ、「我慢(がまん)」することは善として評価されてきた面があります。

日本人は、国家としての独自の考えがなく他国に追従する傾向が強い国であると諸外国から批判されることもあります。他者に合わせようとしすぎ、疲れてしまう「よい子」を多く生み出すその本質は、どこかでそのような社会的な問題とも通じるところがあるのではないかと考られます。

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