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学校紹介

 

 皆さん、おはようございます。

今日は、私から皆さんへの最後のメッセージを送りたいと思います。

 本当は原稿も準備しているのですが、最後なので、原稿にとらわれず今私が感じていることを思いのままに話したいと思います。

 私は今から四十四年前にこの城陽高校に入学しました。当時は自分の住んでいる地域で入学する公立高校が決まっていました。だから私は公立高校を受験して合格したらたまたま入学したのが城陽高校だったというわけで、特に城陽高校に憧れて入学したわけではありませんでした。でも、ここでたまたま入ったラグビー部で恩師と出会い、その恩師の勧めで教員を目指すことになり、今こうやって皆さんの前で話をすることができています。私は教員という仕事を選んだおかげで今まで本当に幸せな人生を送ることができました。今の私があるのは、この城陽高校のおかげだと思っています。

私はこの城陽高校に入学した生徒が、城陽高校に入学して良かったと思える学校であってほしいと思っています。実際に、目の前の多くの生徒の皆さんは城陽高校で充実した高校生活を送ってくれていると思っています。でも、残念ながら、今の城陽高校に不満を持つ人や、後輩に城陽高校を勧めたくないと感じている生徒がいることも事実です。今年度実施した学校評価アンケートのコメント欄に「どうせ城陽高校やし」という記述があり、私は非常に悲しい気持ちになりました。この言葉の後には「いくら頑張っても無理」とか「どれだけ努力しても無駄」といったネガティブな言葉しか続かないからです。本当にそうなのでしょうか。実際に今そんな気持ちになっている人は、もう一度自分の周りの同級生や卒業していった先輩たちの姿をもう一度しっかりと思い浮かべてほしいと思います。城陽高校での高校生活を楽しんでいる人や、自分の夢に向かって日々努力している人、自分の進路希望を叶えた先輩たちがたくさんいると思います。

 今、城陽高校で居心地の悪さを感じている人がいるならば、何が嫌なのかを私たちに聞かせてください。理不尽なおかしなことがあるならば、学校として改善していきたいと思います。城陽高校は60周年に向けて「進化から深化へ」のスローガンの下に、どんどん変わっていきたいと思っています。

ただし、城陽高校は高等学校という教育機関です。高校卒業後の人生を幸せに送ることができる力、すなわち生きる力をつけることが高等学校の役割であり、我々教職員に課せられた使命であると思っています。そのために、学校としてどうあるべきなのか、皆さんが楽しく通えるのはどんな学校なのか、生徒の皆さん自身も我々と一緒に考えてほしいと思います。

 もう一つ皆さんにお願いしたいのは、「どうせ城陽高校やし」とそこで思考を止めてしまうのではなく、一度矢印を自分に向けて、自分でできることは何か、自分で改善すべきことはないか、今までと違う視点から状況を見つめなおしてほしいということです。そうすれば、自分のやるべきことが見えてきて、高校生活の過ごし方も変わるのではないかと思います。

 最後にもう一つ忘れてはいけないことがあります。それは、「どうせ自分にはできないし」といったネガティブな考えを持たないということです。皆さんには無限の可能性があります。たとえ失敗したとしても、いくらでもやり直すことができます。城陽高校の生徒全員が「自分にはできる」というポジティブな気持ちを持ち続け、それぞれの夢に向かってチャレンジを続けてくれることを祈っています。

 昨日は公立高校の合格発表の日でした。自分の番号を見つけて歓声をあげている中学生や、涙を流して喜んでいる中学生の姿を見ました。そんな人たちが、本当に城陽高校に入学して良かったと思えるような学校であり続けたいと思います。そうして、全ての生徒が自分の学校に愛情とプライドを持ち、かけがえのない高校生活を悔いなく送ることができる。卒業生全員が胸を張って城陽高校卒業ですと言える。私の母校、城陽高校がそんな学校であって欲しい。これが私の最後の願いです。

 私は生徒の皆さんがかわいくて仕方がありません。大好きです。愛しています。

 みんな本当にありがとう。

 
 

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 青谷の梅の花が見ごろを迎える季節となりました。春の訪れを感じられる今日の良き日、京都府立城陽高等学校 第50回卒業式を挙行するにあたり、京都府議会議員 園崎弘道様、山城教育局企画教育課長 加川智子様、管内各中学校長様をはじめ、多くの御来賓の御臨席を賜り、誠にありがとうございます。高段からではございますが厚く御礼申し上げます。また、保護者の皆様におかれましては、お子様が高等学校の課程を修了され、本校を卒業されます今日のこの日を、万感の思いで迎えられたことと存じます。教職員を代表いたしまして、心からお祝いを申し上げます。

 改めて、ただ今卒業証書を授与した194名の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは城陽高校の50期生として本校に入学し、本日、記念すべき50回目の卒業生として、本校を巣立っていくこととなります。本校を卒業した1万7千人余りの先輩たちは、現在、社会のさまざまな分野で活躍されています。ぜひ皆さん自身も、自分たちが目指す道で、先輩たちに負けない素晴らしい活躍をしてくれることを心より祈っています。 

 高校卒業は、人生における一つの大きな節目であると思います。私も42年前にこの城陽高校を卒業しました。実は、私が高校3年生になったばかりの4月に、父が癌で他界しました。5年間の闘病生活でした。私は四人きょうだいの長男で、一番下の弟はまだ中学1年生になったところでした。その後、母がたった一人で私たち四人を育ててくれました。母が私の卒業式で流した涙を私は今でも鮮明に覚えています。きっと、長男の高校卒業という出来事は、母にとっても大きな節目だったのでしょう。今日、卒業生の皆さんが、こうして晴れの日を迎えることができたのも、保護者の方々のさまざまな支援のお陰だと思います。普段は照れくさくて言えない感謝の言葉を、ぜひ今日は素直に保護者の方々に伝えましょう。

  卒業に際し、私からのメッセージを皆さんに贈りたいと思います。

 元日に発生した能登半島地震では200名を超える方が犠牲となり、被災地域の住宅やライフラインには甚大な被害が出ています。パレスチナのガザ地区における軍事衝突では、たった2か月半で2万人以上の尊い命が失われました。いつどこで起こるかわからない災害や戦争から、我々のかけがえのない命を守るためには何をすべきか。また、我々にできることは何か。先行き不透明な現代社会の中で我々はどのように生きるべきか。今、人類には数多くの課題が突きつけられています。今年度策定した城陽高校のスクールポリシーでは、「様々な課題や困難を克服しようとする強い意思を持ち、他者との協働をとおして地域社会に貢献できる人材を育成」することを目標として掲げています。今日城陽高校から巣立っていく皆さんが、これらの課題に一つ一つ向き合い、周りの人たちと力を合わせて困難を乗り越え、自分自身の幸せと、社会全体のWell-beingを実現できる人材として活躍してくれることを教職員一同心から願っています。

 皆さんへの餞(はなむけ)として私の好きな俳句を贈ります。

「春風や闘志抱きて丘に立つ」

 明治から昭和にかけて活躍した俳人高浜虚子の代表作で、教科書にも掲載されている有名な句です。新しいことに挑戦しようとする若者の清々しい意気込みや決意が感じられる春らしい爽やかな句であると思います。私が皆さんに抱いてほしい「闘志」は、「自分にはできる」というポジティブな思考と困難に負けない強い気持ちです。ぜひ皆さんも、4月から始まる新しい環境で、それぞれの「闘志」を抱き、夢の実現に向けて努力を続けてください。

 最後に私からもう一つだけ伝えたいことがあります。それは、「人生は捨てたもんじゃない」ということです。私もこれまで60年間生きてきました。悲しいことや辛いこと、苦しいこともありましたが、良き生徒、良き同僚、良き上司、良き家族に恵まれ、充実した教員生活を送ることができました。そうして今は、母校の校長として、はるか年下の後輩たちの門出をこうやって祝うことができる。私はつくづく幸せ者だと思います。

 皆さんのこれから先の人生は、全てが自分の思い通りにいくとは限りません。きっと逃げ出したくなるようなこともあるでしょう。そんな時は、「そう言えば高校の卒業式で、校長が人生は捨てたもんじゃないとか言ってたなあ」と思い出してもらって、目の前の困難から目を逸らすことなく、自分自身の人生に真摯に向き合っていってほしいと思います。

 皆さんの前には無限の可能性が広がっています。自分の可能性を信じ、自分の人生を主体的に創り上げてください。そうすれば、幸せは必ず向こうからやってきます。皆さん自身が「人生って捨てたもんじゃないな」と実感できる日々を送り、また、笑顔で母校を訪ねてくれるのを楽しみに待っています。

 終わりになりましたが、卒業式に御臨席いただきました来賓並びに保護者の皆様方には、これまでの間、本校の教育活動に多大なる御支援と御協力を賜り、心より感謝申し上げます。今後も引き続き、城陽高校発展のためにお力添えくださいますようお願い申し上げます。

 それでは、卒業生の皆さんの前途に幸多きことを心より祈念し、私の式辞といたします。

                             令和6年3月1日 

                   京都府立城陽高等学校 

                     校 長 畑中 正文 

 
 

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 まず、この度の能登半島地震でお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された地域の方々に心よりお見舞い申し上げます。

 また、城陽高校としても何らかの形で被災地への支援ができればと考えていますので、生徒の皆さんも学校としてどんなことができるか考えてほしいと思います。現在のところ、城陽高校の生徒、教職員、校舎等に被害は確認されていませんが、何か気になることがあれば先生に申し出てください。

 改めまして、生徒の皆さん明けましておめでとうございます。

 令和6年は元日に大災害が発生するという厳しいスタートとなりましたが、生徒の皆さんには、しっかりと自分のやるべきことに取り組んで、昨年よりもさらに成長できる1年にしてもらいたいと思います。

 今日は改めて「人の命の大切さ」ということについて話をしたいと思います。

 能登半島地震では、現時点で160名を超える犠牲者が出ており、また320名以上の安否不明の方がおられます。世界に目を向けてみると、パレスチナのガザ地区で起こった軍事衝突では2か月半の間に、パレスチナ側に21,000人、イスラエル側には1,200人以上の犠牲者が出ています。創立52年目の城陽高校がこれまでに送り出した卒業生は17,000人余りです。その数をはるかに超える大切な命が、たった2か月半で戦争により失われてしまったということを、皆さんにもしっかりと受け止めてほしいと思います。

 自分の愛する人、自分の大切な人が死んでしまう。人間の人生でこれ以上悲しい出来事はありません。地震や戦争などで自分の大切な人を一瞬のうちに失ってしまった人たちの悲しみや苦しみなどを皆さんは想像することができますか?さっきまで一緒にいた家族や、友人、恋人などが、次に出会ったときには冷たくなって二度と動かなくなっている。いくら話しかけても応えてくれません。これが人の死というものです。作家の養老孟司さんが、ある本で「なぜ人の命を奪ってはいけないのか」ということについて、「人の命は失われてしまったら絶対に元に戻せないから」ということを書かれていました。人間の生命の火は一度消えてしまうと、どんなことをしても二度と火をともすことはできません。そんなことは、今さら言われなくても当たり前のこととして分かっていると思う人も多いかもしれませんが、その本当の意味を思い知るのは、実際に自分の親しい人を失ってしまった時なのです。

 地球上では災害や戦争によって日々かけがえのない命が失われています。そんな現代に生きる我々には、いったい何ができるのか?災害や戦争からかけがえのない命を守るために我々は何をすべきか?皆さんにも自分事として考えてほしいと思います。

 私が皆さんに強く望むのは、何よりも第一に自分自身の命を大切にしてほしいということです。きっと自分自身の命を大切にできる人は、自分以外の他者の命も大切にできると思うからです。残念なことに、若くして自ら命を絶つ人が増えています。皆さんの中にも、生きているのが辛くて苦しくて死んでしまいたいと思っている人がいるかもしれません。そんな時はひとりで抱え込まずに、自分の周りに助けを求めてください。あなたのことを大切に思っている人はたくさんいます。あなたの命はあなただけのものではありません。あなたの周りにいる人たちにとって、かけがえのない命なのです。今は苦しくても、その苦しみはいつか必ず消え、なぜあんなことで悩んでいたのかと思える日が絶対にやってきます。本当にやってきます。私が約束します。また、自分の周りにしんどそうな人がいた場合は声をかけてあげてください。城陽高校の生徒全員がかけがえのない命を大切にする一年となってくれることを、心より願っています。

 皆さんに一つ嬉しい報告があります。本校の卒業生の方から寄付をいただきました。2003年に卒業された川上大輔さんという方です。川上さんはサッカー部のOBで、城陽高校卒業後大学に進学され、大学卒業後に自分で会社を立ち上げられたそうです。その会社で大きな成功を収められたので、母校の後輩たちのために寄付をしたいとご連絡をいただきました。今回は、以前から故障していた冷水機2台と、中庭や城陽ハワイなどにおけるベンチとテーブルを購入させていただきました。寄付していただいた品物が届き次第校内に設置しますので、皆さんでどんどん活用してください。使うときには先輩への感謝の気持ちを忘れないこと。そして大切に使いましょう。教え子が社会で活躍する姿を見ることは、教師という職業でしか味わえない大きな喜びの一つです。皆さんの中から、川上さんのような人がたくさん出てくれることを期待しています。

 最後になりますが、いよいよ今日から今年度最後の学期が始まります。

 まず、3年生にとっては、高校生活の締めくくりの学期となります。大学受験もこれからが山場です。最後まであきらめず、それぞれの進路希望を実現してください。既に進路が決定している人も、次のステージへの準備期間として自分自身に磨きをかけてください。また、1、2年生にとっては、進級に向けた大切な学期です。一日一日を大切にして充実した学期にしてください。

 皆さんが、明るく前向きに令和5年度の有終の美を飾ってくれることを祈っています。以上、始業式の式辞とします。


 
 

 みなさん、おはようございます。

 2学期の終業式を迎えることとなりました。

 さて、令和5年もあと少しで終わろうとしています。今年1年もいろんなことがありました。

 先日、流行語大賞2023が発表されましたが、皆さんは何が大賞に選ばれたか知っていますか。それは、阪神タイガース岡田監督の「アレ」でした。阪神ファンの皆さんにとっては本当に幸せな1年になりましたね。来年は「アレンパ」を目指すそうですので、ファンの皆さんは引き続き応援してあげてください。ちなみに私は巨人ファンです。皆さんにとっての「アレ」とは何でしょうか?3年生にとっての「アレ」は希望の進路を実現して無事卒業を迎えることではないかと思います。ぜひ自分にとって最高の「アレ」を達成できるように最後まで頑張ってください。1、2年生の皆さんの中で、未だに高校生活における明確な目標を持っていない人は、ぜひ来年の元旦までには自分にとっての「アレ」を決めて欲しいと思います。

 他には、「新しい学校のリーダーズ」「地球沸騰化」や「闇バイト」などが流行語大賞のトップテンに選ばれています。「新しい学校のリーダーズ」は娘が大好きでよく家でマネをして首を振っています。「地球沸騰化」は国連のグレーテス事務総長が「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と発言したことに由来しています。
 多くの人々がCO2の削減に取り組んではいますが、温暖化の加速度的な進行に追い付いていないのが現状です。私が出したSDGsに関する夏休みの課題にも多くの生徒が取り組んでくれましたが、城陽高校全体で何かの形でSDGsに取り組めないか考えているところです。みんなで良いアイデアを出し合って、地球沸騰化を食い止めましょう。「闇バイト」が流行語大賞に選ばれるような一年となってしまったことは、非常に残念でなりません。SNSで高額なアルバイトに応募したことによって特殊詐欺や強盗などの犯罪に加担させられ、最後には逮捕されて自分の人生を台無しにしてしまう。これが「闇バイト」の全てです。いつも逮捕されているのは実行犯役の十代後半から二十代前半の若者ばかりです。皆さんにも一歩間違えばそうなってしまう可能性があります。絶対に甘い言葉や誘いに乗らないように気を付けてください。冷静に考えれば、我々一般人が短時間で簡単に大金が稼げるようなまともな仕事などあるはずがありません。

 城陽高校の1年を振り返ってみると、ようやくコロナ禍から解放され、正常な学校生活を送ることができた1年だったのではないかと思います。先日行われた2年生の研修旅行では、コロナ禍で実施できなかった沖縄伊江島での民泊体験をようやく実現することができました。2年生にとっては一生の思い出となる行事ができたのではないかと思います。今後も皆さんが安心安全で充実した高校生活が送れることを心から願っています。

 今日は、城陽高校のスクールポリシーについて話をしたいと思います。スクールポリシーとは、各学校の教育方針を、①卒業までに生徒にどんな力をつけたいのか②どのようなカリキュラムでどのような学習を行うのか③どんな生徒に入学してもらいたいか、という三つの観点で整理し直して公表するように義務付けられているものです。城陽高校でも今までの教育方針を踏まえ、「進化から深化へ」という新しいスローガンにふさわしいスクールポリシーを先生方と一緒に創り上げました。今月中には府立高校全てのスクールポリシーが教育委員会から正式に発表される予定ですが、今日は皆さんに一部を紹介したいと思います。

 それは、卒業までに生徒にどんな力をつけたいのかという方針、別名グラデュエーションポリシーについてです。城陽高校に入学した生徒にはこんな力をつけて卒業していってほしいという本校の先生方の熱い思いが込められたグラデュエーションポリシーを紹介します。皆さんは今の自分の姿と照らし合わせてみて、そんな力がついているかどうか確かめながら聞いてください。

① 向上心を持って主体的に学ぶ姿勢と生涯にわたって成長し続けるための基盤となる確かな学力を持つ人材を育成します。

 一つ目の方針のキーワードは「主体的に学ぶ姿勢」と「確かな学力」です。「主体性」についてはこれまでに何度も話してきましたが、変化の激しい先行き不透明な社会でしっかり生きていくためには絶対に必要な資質です。「確かな学力を持つ」とは、高校で学ぶ基礎基本がしっかりと身についていて、さまざまな場面で学んだことを活用できる状態を指しています。

② 多様な価値観を認め自他を尊重できる寛容さと、自らを律し規範を守る意識を持ち合わせた人材を育成します。

 二つ目の方針のキーワードは「自他を尊重できる寛容さ」と「自らを律し規範を守る」です。「自他を尊重できる寛容さ」とは、自分や他人の価値観を、否定することなく広く受け止めて、自分自身も他人も大切にすることができる心の状態を指します。今の日本は「不寛容社会」とも言われ、SNSでは他人への誹謗中傷がやまず、失敗が許されない空気が蔓延している社会のようにも思えます。本校を卒業していく生徒には、他人の失敗を温かく見守ることができるような「寛容さ」を身につけてもらいたいと思います。また、「自らを律し規範を守る」ためには、自分自身の行動を第三者の立場から冷静に見ることができる力を養わなければなりません。その力は、「メタ認知能力」と呼ばれ、仕事や勉強など、さまざまな場面で役に立つ能力だと言われています。

③ 様々な課題や困難を克服しようとする強い意思を持ち、他者との協働をとおして地域社会に貢献できる人材を育成します。

 三つ目の方針のキーワードは、「課題や困難を克服しようとする強い意思」と「地域社会に貢献」です。「課題や困難を克服」するためには、目の前で起きている事象の何が課題なのかを見つける力、つまり課題発見能力が必要です。2年生で取り組んでいる「総合的な探究の時間」は、皆さんの課題発見能力を養うための絶好のトレーニングだと思います。また、課題や困難に負けない「強い意思」を持つためには、失敗を恐れずチャレンジする経験を積むことが必要です。少々の失敗ではへこたれない気持ちの強さを身につけるためには、失敗して、落ち込んで、そこから立ち上がるという経験を重ねることが必要だと思っています。また、自分の住む地域全体のWell-beingのために貢献できる人材を育成することは府立高校の大きな使命の一つであると考えています。

 以上が城陽高校のグラデュエーションポリシーです。皆さんの現状と比べてみていかがでしたか?もうすぐ卒業を迎える3年生の皆さんには既にこの三つの資質が備わっていることを願っています。1、2年生の皆さんは、今後の学校生活における目標として、常にこのグラデュエーションポリシーを意識してもらえれば嬉しいです。

 最後になりましたが、年末年始は家族と過ごす時間を大切にしてください。また、インフルエンザの流行も心配されるところです。それぞれが自覚を持って健康管理や感染防止対策にしっかりと取り組んでください。また、遅くなりましたが、私が出した夏休みの課題のまとめは本日Classiで配信しています。ぜひ後で目を通してください。

 来たる令和6年、2024年が皆さんにとって素晴らしい一年になることを願って、終業式の式辞とします。

 
 

 みなさん、おはようございます。

 本日から2学期が始まります。四十一日間に及ぶ長い夏休みでしたが、皆さんにとって有意義な期間となりましたか?

 今日は「失敗を恐れず挑戦を」というテーマで話をしたいと思います。

 「人生は敗者復活戦」。この言葉を皆さんはどこかで聞いたことはありませんか。実はこの言葉、先日行われた全国高校野球選手権大会決勝で慶応高校に敗れ、惜しくも連覇を逃した仙台育英高校の須江監督の座右の銘なのです。決勝戦後のインタビューでも「人生は敗者復活です。この経験を次に生かします」と答えてSNSなどでも話題になっていました。

 私は、甲子園の決勝の2日後、須江監督本人から直接この言葉を聞くという幸運に恵まれました。実は、8月24日、25日と宮城県仙台市でPTAの全国大会が開催され、その大会のメインイベントとして、須江監督の記念講演があり、その会場に私もいたのです。須江監督のお話には今の高校生にも聞いてもらいたい内容がたくさん含まれており、私も大変感銘を受けました。その講演の内容をここで詳しく伝えることはできませんが、少しだけ紹介させていただきます。昨年度、東北勢初の甲子園優勝という快挙を遂げた須江監督ですが、その野球人生は、高校で仙台育英の野球部に入部した時に大きな挫折を味わったところからのスタートだったそうです。その後も何かをやり遂げる前には必ず大きな失敗があり、その失敗と向き合ってその後の人生を少しずつ変えていったそうです。まさしく何度も「敗者復活」を成し遂げてきて今の自分があるとのことでした。また、須江監督は、「挫折のない人生なんて面白くない」ともおっしゃっていました。

 最近よく感じるのは、今どきの高校生は失敗を避けようとする傾向が非常に強いのではないかということです。失敗しないためにあらかじめ入念に情報を収集し、自分が進もうとしているルートの中に、自分がつまずきそうな障害物がある場合は、そこを避け、絶対につまずくことのない安全なルートを選択しようとします。これは非常にスマートなやり方だと言えますが、よくよく考えてみると、「本当に自分の行きたい方向に進んでいるのだろうか」ということが非常に気掛かりでなりません。

 皆さんはどうでしょうか?失敗するのが怖くて挑戦することをあきらめてはいませんか?今までに一度も転んだことのない人は、初めて転んだ時にどのような身のこなしをすればよいのか分からず、大ケガをしてしまう可能性があります。それまでに何度か転んでいる人は、たとえ転んでしまっても、ケガをしない身のこなしを覚えているので、最小限のダメージに留めることができるのです。人生100年時代と言われます。高校生の皆さんからすれば、後80年以上の人生が残されていることになります。失敗して挫折しても、そこから立ち上がってやり直す期間は十分に残されているのです。ぜひ、失敗を恐れず挑戦をし続けてほしいと思います。

 ただし、挑戦するときに大切なことが二つあります。

 一つ目は、目標設定を欲張らないことです。今の自分の能力からはるかにかけ離れている目標を設定しても、間違いなく失敗してしまうでしょう。それは「無謀な挑戦」であって、その失敗からは何も得られないと思います。まずは、自分よりも少し上のレベルに目標を設定し、それが達成できればさらに上の目標を設定するというふうに階段を一段ずつ上っていくようなイメージで挑戦を続けてもらいたいと思います。

 二つ目は、自分の失敗とどう向き合うかということです。人間は失敗したり、挫折したりすると、精神的なダメージを受けます。まずはそのダメージにどう向き合うかということが大切になってきます。どうすれば早く気持ちを切り替えて、前を向くことができるのか。これは各個人が試行錯誤して自分自身に合った最も良い方法を見つけるしかありません。ここを耐えることができれば、次のステップに進むことができるのです。

 次は、失敗の原因を分析しその改善策を実行するという段階に入りますが、大切なのは「人のせいにしない」ということです。仮に、自分以外の要因で失敗してしまったとしても、自分以外の要因は自分でコントロールすることはできません。まず、矢印を自分に向けて、自分をどう変えるかという視点で改善策を立ててください。また、人間にとってこれまでの生き方を大きく変えるということは至難の業であるということも頭にいれておいてください。仙台育英の須江監督の言葉を借りるならば「人生の角度を一度変える」くらいの方が、継続して自己変革に取り組めるのではないかと思います。

 今年の夏から秋にかけては、スポーツの大きなイベントが数多く開催されます。世界陸上では、やり投げの北口選手が日本人初の金メダルを獲得しました。バスケットボールのワールドカップでは、日本代表が格上のフィンランドから歴史的な勝利をあげることができました。また、9月8日からは、フランスでラグビーワールドカップが開催されます。4年前には史上初のベスト8入りを果たした日本代表の活躍がとても楽しみです。このように日本を代表して戦っているアスリートたちも、これまでに数多くの失敗や挫折を味わい、それとうまく向き合って乗り越えてきたからこそ、今の姿があるのだと思います。ぜひ皆さんも失敗を恐れず挑戦を続け、「面白い人生」を送ってください。

 私から出した夏休みの宿題には既に多くの人がアンケートに回答をしてくれています。今月末まではアンケートへの回答をできるようにしておきますので、夏休み中に何かSDGsに関する実践を行った人はぜひClassiから回答してください。皆さんがどんなことに取り組んだかについては、いずれ何らかの形で紹介したいと思っています。

 最後になりますが、どの学年にとっても、この二学期は大変重要な学期となります。一日一日を大切に過ごしてください。まずは文化祭です。みなさんの素晴らしい発表を見ることを大変楽しみにしています。  

以上、二学期始業式の式辞とします。

 
 

 みなさん、おはようございます。

 1学期の終業式を迎えることとなりました。

 今日は新しいテクノロジーとどう向き合っていくのかということについて話したいと思います。

 最近話題の最新テクノロジーと言えば、「チャット(Chat)GPT」が思い浮かぶ人も多いでしょう。皆さんは使ってみたことはありますか?「チャット(Chat)GPT」などの生成AI(人工知能)は、業務の効率化やさまざま分野での活用が期待されている反面、誤った情報の拡散や個人情報の漏洩、著作権の侵害等も心配されているところです。

 学校現場でどのように活用していくのかという点にも注目が集まっていて、先日、文部科学省から小中高校向けのガイドライン(指針)が出されました。適切な活用方法としてグループで行う討論などの学習活動で足りない視点を補うといった内容を示す一方で、不適切な例として定期テストや小テストなどの成績評価につながる場面や芸術活動での安易な使用などが示されています。

 また、夏休みの読書感想文などを生成AIによって作成するのは不正行為に該当する行為であり、何の学びも得られず自分の為にならないということも明記されています。皆さんも、便利だからと言って安易に使うのではなく、本当に自分の為になる使い方はどんな使い方かということを常に考えながら、生成AIと付き合っていくことが大切だと思います。

 私が好きな映画に「マトリックス」という作品があります。みなさんは観たことはありますか?自分たちがリアルな世界だと思い込んでいる目の前の出来事が、実はコンピュータが作り出したマトリックスという仮想現実であったというのがこの作品の重要な柱となっています。本当の世界では、我々人類は一人一人がプラグに繋がれて、電力を供給する電池として機械に支配されていたのです。

 人類が機械に支配されるという話は、古くからSF映画でよく取り上げられていたテーマでしたが、そんな話は映画の中だけの架空の世界と考えられてきました。しかし、ここ最近の科学技術の急速な発達の速度を考えると、いつか本当にそんな世界になってしまうのではないかという漠然とした不安を私は抱いてしまいます。皆さんが、一日中スマートフォンから目を離せないのは、実は知らない間にAIに操られコントロールされているのかもしれません。一度そういった視点で自分の生活を見直してみることも大切ではないかと思います。

 スウェーデンの発明家で実業家であったアルフレッド・ノーベルは、「ダイナマイト」を発明し、当時の土木工事技術に大きな進歩をもたらし巨万の富を築き上げました。その反面、「ダイナマイト」が戦争で武器として用いられるようになったため、彼は「死の商人」と呼ばれることもありました。そこで彼は自分に付いてしまった悪いイメージを払拭するために、自分の死後に人類に貢献した人に賞を与えるための基金を作るようにという遺言を残しました。それが、ノーベル賞設立の経緯です。ダイナマイトは人類に幸福をもたらす道具として発明されたはずでした。しかしながら、残念なことに、ダイナマイトは人々を不幸に陥れる道具にもなってしまったのです。このことは我々に重要な教訓を与えてくれています。

 変化が激しく急速に科学技術が進展していく時代を生きる私たちは、「次々と生み出される最新のテクノロジーとどのように向き合っていくのか」という課題を一つずつクリアしていかなければなりません。

 本校では、あらゆる教育活動を通じて「自分自身で主体的に考え、より良い選択と行動ができる生徒」の育成を重点目標に掲げています。最新のテクノロジーが全ての人類に「Well-Being」(社会全体の持続的な幸福)をもたらすものとなるためには、その技術と向き合う我々人類がいかに「より良い選択と行動」ができるかどうかにかかっていると思います。

 城陽高校を卒業していく皆さんが、全ての人類の「Well-Being」実現に貢献できる人材となってくれることを、私は心から願っています。そのためにも、日々の高校生活を通して自分自身の主体性を育み、「より良い選択と行動」ができる力を養ってほしいと思います。高校時代に自分自身の「芯」となる部分がしっかりと形成されていれば、これから先どんなテクノロジーと出会ったとしても、自分にとっても他の人々にとっても、最も良い付き合い方を選ぶことができると確信しています。

 ちなみに、この式辞は自分の頭で考えました。「チャット(Chat)GPT」などの生成AIには頼っていませんので、安心してください。

 最後に、私から夏休みの宿題を出したいと思います。

 まず、日本ユニセフ協会のホームページSDGs CLUB/SDGs17の目標」を見て、SDGsについて学んでください。このホームページではSDGs17の目標それぞれについて、動画や数値データなどを用いて大変わかりやすく説明されています。次に、SDGsが掲げる17の目標のうち、最も関心のあるものを一つ選び、その目標達成のために自分は何ができるかを考えて、夏休み中に実際に取り組んでみてください。

 そして、Classiで配信する報告用アンケートに、自分がどんな取り組みをしたか積極的に投稿してください。これで3年連続同じ内容の課題を出すことになります。これまでに取り組んでくれた人は、今までと違うテーマにチャレンジしてください。1・2年生の皆さんはタブレットを使ってこの宿題に取り組んでみましょう。多くの皆さんがこの宿題にチャレンジしてくれることを楽しみにしています。

 明日から40日を超える長い夏休みに入ります。感染症対策や熱中症予防などの体調管理には十分気をつけながら、学習はもちろん、部活動やボランティア活動等にも積極的に参加して、自分を鍛える夏にしてください。二学期の始業式に皆さんの成長した姿を見られることを楽しみにしています。

 以上、一学期終業式の式辞とします。

令和5年7月21日

 
 

 IMG_2199s.jpg春光うららかな今日のよき日、令和5年度京都府立城陽高等学校第52回入学式を挙行するに当たり、京都府議会議員酒井常雄様、山城教育局指導主事小林広和様、管内各中学校長様をはじめ、多くの御来賓の御臨席を賜り、誠にありがとうございます。高段からではございますが厚く御礼申し上げます。

 ただ今、入学を許可しました280名の新入生の皆さん、御入学おめでとうございます。

 在校生、教職員一同、皆さんの入学を心より歓迎いたします。また、保護者の皆様におかれましては、お子様が無事高校受験を終えられ、本校に入学されましたことを心よりお喜び申し上げます。

 城陽高校は、昭和47年に開校し、今年で創立52年目を迎えます。「知性を磨き 自らを律し たくましく行動する」という校是を掲げ、心身共に健康で、創造性と実践力に満ちた新しい社会の形成者を育てることを目指し、日々の教育活動を行ってきました。卒業生は1万7千人を超え、さまざまな分野の第一線で活躍されています。52期生として入学された新入生の皆さんと共に、これまでの先輩たちが築いてきた城陽高校の歴史の上に新たなページを作り上げていきたいと思います。

 さて、高校生活は、長い人生の中で、たった3年というほんのわずかな期間でしかありません。しかし、一度しかない人生の、たった一度きりの高校時代だと考えれば、今日から始まる3年間は何にも代えがたい本当に貴重な時間だと言えるのではないでしょうか。

 実は私自身も城陽高校の8期生としてここで3年間の高校生活を送りました。友人たちと軽い気持ちで入部したラグビー部で、今は亡き恩師と出会い、恩師の勧めに従って教員の道に進みました。私があの時にラグビー部に入っていなければ、今このように私が皆さんの前に立つことはなかったでしょう。城陽高校に入学し、ラグビー部に入り、恩師と出会ったおかげで、私はとても幸せな人生を送ることができています。ぜひ、私の後輩となる皆さんにも、この城陽高校で、将来、幸せな人生を送るための土台を築いてもらいたいと思います。

 そこで、私から皆さんに高校生活を送る上でのキーワードをお伝えします。それは、一言でいうならば「主体性」です。さらに具体的に言えば「自分自身の頭で主体的に考え、より良い選択と行動ができるようになる」ということです。

 現代社会は先行き不透明で、ついこの間まで世間の常識だと思っていたことが、あっというまに当たり前ではなくなってしまうような変化の激しい時代となっています。また、グローバル化が急速に進展する一方で、国際情勢は非常に不安定で、ロシアが突然ウクライナに侵攻したように、いつ我々の平和が脅かされる事態が起きるか分かりません。そんな「新時代」を皆さんがたくましく生き抜き幸せな人生を送るためには、どんな状況におかれても、自分の頭で主体的に考え、より良い選択と行動ができる力を備えておく必要があるのです。

 では主体性は何によって育まれるのでしょうか?もしかすると皆さんの中に、「主体性には生まれながらにして個人差があって、どれだけ頑張ってもその差は埋められないものだ」と思い込んでいる人がいるかもしれません。それは、大きな間違いです。私は、「主体性」というものは基礎的基本的な学力の定着によって、養われていくものだと思っています。「主体的」というのは誰からも強制されず「自分の意志・判断」に基づいて行動する状態を指します。つまり、「自分の意志・判断」がなければ、「主体的」に行動することができないとうことなのです。しっかりとした自分の意志を持ち、状況に応じた的確な判断ができるようになるためには、その土台となる基礎的基本的な学力がどれだけ身についているかということが鍵となってきます。

 先日開催されたWBCでは侍ジャパンが見事に優勝を遂げました。連日、WBCで活躍した選手たちのエピソードが報道されていましたが、私が最も印象に残っているのは、4番として優勝に大きく貢献した吉田正尚選手の高校時代のエピソードです。野球部の寮で吉田選手と一緒に生活していた友人によると、夜11時の消灯時間になって自分が寝ようとすると、必ず廊下を挟んだ向かい側の吉田選手の部屋からブンブンというバットを振る音が聞こえてきたそうです。他の部員は疲れて寝てしまっている間に、さらにそこから素振りという基本練習を毎日積み重ねていた吉田選手だからこそ、今の姿があるのではないか、とその友人は語っていました。吉田選手に限らず、大谷選手であっても、村上選手であっても、野球以外のどんなスポーツのスーパースターであっても、人には見えない地道な努力によって習得した基礎的基本的な技術が土台にあるからこそ、人を魅了するスーパープレーを生み出すことができるのだと思います。

 高等学校では、社会で生きていくための基礎基本となる内容を学びます。ぜひ、学習を高校生活の中心に据え、日々の授業に積極的に取り組み、「主体性」の土台となる基礎的基本的な学力を身につけてください。

 終わりになりましたが、保護者の皆様には改めまして、お子様の御入学おめでとうございます。

 皆様が手塩にかけて育ててこられたお子様を今日からお預かりすることになり、私たち教職員一同、身の引き締まる思いを持っております。

 保護者の皆様におかれましても、御家庭と学校でお子様をともに育んでいけますよう、本校の教育活動に御理解、御支援のほどよろしくお願い申し上げます。

 最後に、本日の入学式にあたり、新入生の皆さんが、この感激を胸に刻み、心身ともに健康で有意義な高校生活を送ることを心から祈念して、式辞といたします。

令和5年4月10日      
京都府立城陽高等学校    
校 長   畑中 正文  

 
 

 みなさん、おはようございます。

 本日から令和5年度が始まります。

 年度の始まりに際し、今年度の目標を皆さんに示したいと思います。それは「自分の頭で主体的に考え、より良い選択と行動ができるようになる」ということです。これは、昨年度と全く同じ目標です。皆さんの中には、学習や部活動などに主体的に取り組んで充実した高校生活を送っている人もいます。しかし、城陽高校という集団として見たときには、まだまだ主体性という面において課題のある生徒も少なくないと感じています。昨年度から新しく掲げているスローガン「進化から深化へ」が目指すところは、城陽高校の生徒全員が主体的に行動できる集団となることです。

 今日はまず根本に立ち返って「主体的」とはどのような状態を指すのかというところから考えてみたいと思います。広辞苑で「主体的」を調べてみると、次のような興味深い説明がなされていました。

 「他に強制されたり、盲従したり、また、衝動的に行ったりしないで、自分の意志・判断に基づいて行動するさま」

 この広辞苑の「主体的」という言葉の定義には二つのポイントがあると思います。まず一つ目のポイントは前半部分です。「主体的」というものが、「強制されるものでもなく、盲従(=何も分からないまま従うこと)するものでもなく、衝動的に行うものでもない」ということがはっきりと書かれています。自分がこれまでに主体的に取り組んできたと思っていたことが、実は誰かに強制されてやってきたのではないか。また、何も考えずに言われるがまま従ってきたのではないか。あるいは、その場その場の感情に任せて判断してきたのではないか。この点について、皆さんのこれまでの高校生活が本当に「主体的」であったのかどうか、改めて振り返ってみて欲しいと思います。

 もう一つのポイントは、後半の「自分の意志・判断に基づいて」という部分です。つまり、「主体的」に行動しようとすれば、そこには必ず「自分の意志・判断」が必要になってくるということです。言い換えるならば、「自分の意志・判断」がなければ、「主体的」に行動できないということなのです。では、「自分の意志・判断」は何によって生み出されるのでしょうか?

 先日開催されたWBCでは侍ジャパンが見事に優勝を遂げました。連日、WBCで活躍した選手たちのエピソードが報道されていましたが、私が最も印象に残っているのは、4番として優勝に大きく貢献した吉田正尚選手の高校時代のエピソードです。野球部の寮で吉田選手と一緒に生活していた友人によると、夜11時の消灯時間になって自分が寝ようとすると、必ず廊下を挟んだ向かい側の吉田選手の部屋からブンブンというバットを振る音が聞こえてきたそうです。他の部員は疲れて寝てしまっている間に、さらにそこから素振りという基本練習を毎日積み重ねていた吉田選手だからこそ、今の姿があるのではないか、とその友人は語っていました。吉田選手に限らず、大谷選手であっても、村上選手であっても、野球以外のどんなスポーツのスーパースターであっても、人には見えない地道な努力によって習得した基礎的基本的な技術が土台にあるからこそ、人を魅了するスーパープレーを生み出すことができるのだと思います。

 このエピソードから皆さんに何を伝えたいかと言うと、実は、主体性の根源となる「自分の意志・判断」も、基礎的基本的な学力から生み出されるということです。高校で学習する基礎基本をしっかりと習得することによって、状況に応じた適切な「自分の意志」を持ち、物事を正しく「判断」することができるようになるのです。つまり、「学力」と「主体性」には非常に強い相関関係があるのです。基礎的基本的な学力を身につけることによって「主体性」が育まれます。主体性がアップすれば、さらに学習にも積極的に取り組むことができるようになり、さらに学力もアップします。学力がアップすればまた主体性もアップするという好循環が生まれるのです。

 私は、城陽高校を卒業する生徒たちが、「自分の頭で主体的に考え、より良い選択と行動ができる力」をしっかりと身につけ、先行き不透明で変化の激しい「新時代」をたくましく生き抜き、幸せな人生を送ってくれることを心から願っています。そのためにも、日々の授業を大切にし、家庭学習にもしっかり取り組んで、基礎基本を徹底的に習得してください。

 最後になりますが、新型コロナウイルス感染症への対応に関して、この新学期から生徒・教職員ともにマスクの着用は求めないことが基本となります。ただし、さまざまな事情によりマスクを外せない人や着用できない人もいますので、くれぐれもマスク着用の有無によって、誹謗中傷やいじめの対象となることがないように心がけてほしいと思います。コロナ禍も新しい段階に入っていきますが、決して感染リスクが無くなった訳ではありません。引き続き感染対策に努めてもらいたいと思います。

 それでは、令和5年度が皆さんにとって素晴らしい一年となることを祈念して、一学期始業式の式辞とします。

 
 

 みなさん、おはようございます。

 3月9日に開幕したWBCでは侍ジャパンが連戦連勝を続け、準決勝進出を果たしました。私も、連日試合を観戦し、テレビの前で選手たちの活躍ぶりに熱狂しています。日系2世のヌートバー選手や大谷選手、ダルビッシュ選手などのメジャーリーガーに注目が集まっていますが、私が考える侍ジャパンの快進撃の最大の要因は、それぞれの選手がお互いの弱点をカバーしあいながら、自分の果たすべき役割をしっかりやり遂げていることではないかと思っています。

 例えば、ヌートバー選手と大谷選手の間を打つ近藤選手は、出塁率60%という驚異の数字を叩き出し、侍ジャパンの大きな得点源となっています。また、打撃力で劣る下位打線の選手たちが、粘りに粘って四球を選び上位打線につなげ、大量得点に結びつけたケースもよく見られました。これも、選手たちが自分の果たすべき役割をしっかり理解し、それを実行してくれたということだと思います。明日は準決勝がアメリカで行われますが、ぜひこのままの勢いで世界一になってほしいものです。

 ところで、皆さんは自分が果たすべき役割ということを考えたことはありますか?

 学校生活において自分の役割を意識するケースとしては、部活動でキャプテンになった場合やクラスの役員になった場合などが考えられます。では、そういった役職等がない人は何の役割も果たさなくていいのでしょうか?そんなことはありません。人間が集団の中で生きていく際、集団内の個々のメンバーには、必ず何らかの果たすべき役割が生まれます。そして、その集団内のメンバーがそれぞれ自分の役割をしっかり果たすことが、その集団に幸福をもたらすのです。

 私は、本校を卒業していく生徒たちが、将来、社会の中で自分の役割をしっかりと果たし、素晴らしい未来社会を築いてくれることを願っています。令和4年度の締めくくりにあたり、皆さんには「自分は社会の中でどんな役割を果たすことができるのか」ということをじっくり考えてみて欲しいと思います。

 そのために必要なのは、正しい自己分析(深い自己理解)です。自分の得意分野は何か?ストロングポイントは?逆に克服すべきウィークポイントは?正しい自己分析に不可欠なのは、どんなことであっても常に自分のベストを尽くすことです。手を抜かず全力で取り組まなければ見えてこない世界があります。自分が苦手だと思っていたことが、実は自分の力が一番発揮できる場所だったということもあります。一番ダメなのは、入り口の段階で無理だと思い込んで挑戦すらしないことです。自分が社会のためにできることを探すということは、将来の職業選択へと繋がっていきます。つまり、社会における自分の役割を考えることが進路選択へと繋がっていくのです。そのためにも、残された学校生活において、城陽高校という集団の中で、自分はどんな役割が果たせるのか、さまざまなことに積極的に挑戦して欲しいと思います。

 もう一つ、皆さんに改めて認識して欲しいことは、自分以外の人々も社会の中でさまざまな役割を果たしてくれているということです。そのおかげで、皆さんはこうやって無事に高校生活を送ることができているのです。皆さんの周囲で皆さんを支えてくれている方々への感謝の気持ちを忘れずに日々の生活を送って欲しいと思います。

 今日で令和4年度が終了します。今年は皆さんにとってどんな一年間だったでしょうか?

 今年度は「進化から深化へ」のスローガンのもとに、何事にも主体的に取り組むことを目標としてきました。皆さんは今年1年間の学校生活に主体的に取り組むことができたでしょうか?

 今年1年間の取り組み状況を示す重要な指標が通知表です。今年はどれぐらい主体的に学習に取り組むことができたのか。通知表で確かめてください。優秀な成績を収められた人は、気を抜くことなく来年度もこの調子でいきましょう。あまり思わしくない結果が出た人もいるでしょう。数字は嘘をつきません。この成績は紛れもなく自分自身で出した結果です。それをしっかり受け止めてください。人のせいにしている間は何の改善も見られません。原因は自分の中にあります。自分の弱さに向き合えたところから成長への一歩が始まります。来年度のリベンジを期待しています。

 4月から新型コロナウイルス感染症における学校での過ごし方が変わります。具体的にはHRで担任の先生から説明していただきますが、ポストコロナでの高校生活がより充実したものとなるように自覚ある行動をとってください。

 それでは4月に元気な皆さんと再会できることを楽しみにしています。

 以上、三学期終業式の式辞とします。

 
 

 青谷の梅の花が見ごろを迎える季節となりました。春の訪れを感じられる今日の良き日、京都府立城陽高等学校第49回卒業式を挙行するにあたり、京都府議会議員酒井常雄様、管内各中学校長様をはじめ、多くの御来賓の御臨席を賜り、誠にありがとうございます。高段からではございますが厚く御礼申し上げます。また、保護者の皆様におかれましてはお子様が、高等学校の課程を修了され、本校を卒業されます今日のこの日を、万感の思いで迎えられたことと存じます。教職員を代表いたしまして、心からお祝いを申し上げます。

 改めて、ただ今卒業証書を授与した255名の皆さん、卒業おめでとうございます。本日をもって、皆さんの城陽高校での学生生活は完結することとなります。皆さんの高校生活はコロナ禍によってこれまでに誰も経験したことがない三年間となりました。入学式を終えた直後から二ヶ月間の休校となり、その後も時差登校や短縮授業の実施、部活動への制限、行事の中止や延期などが続きました。そんな苦しい状況の中、皆さんは自分を見失うことなく、それぞれの目標に向かって努力を続け、そして今日、卒業の日を迎えました。このコロナ禍において高校生活を無事全うできたことは、皆さんにとって大きな糧となるはずです。ぜひ胸を張って前を向き、堂々と新しい社会への第一歩を踏み出してください。4月から学校生活におけるさまざまな制限が緩和される見通しとなり、ようやくコロナ禍のトンネルの出口が見えてきたようにも思えます。ただ、現時点では「我々人類はコロナウイルスとの戦いに勝ったのか」という問いに答えることはできません。その答えは、ポストコロナの社会で人類がどのような世界を作り出していくかによって、イエスにもノーにもなり得るのではないかと思います。皆さんが十年後、二十年後の同窓会で、「あのときはコロナで大変やったね」などと笑いながら話せる日がやってくることを心より願っています。

 卒業に際し、私からのメッセージを皆さんに贈りたいと思います。

 本校の教育方針には、「心身ともに健康で、創造性と実践力にみちた、新しい社会の形成者を育てる」とあります。私が強く願うのは、本校を卒業する皆さんが、これから先の新しい社会、すなわち「新時代」の当事者であるという自覚を持って、自分たち自身の手でより良い社会を築いていって欲しいということです。未知のウイルスによるパンデミックによって、世界中で多くの命が失われました。また、ロシアのウクライナ侵攻などの戦争による犠牲者も後を絶ちません。トルコ・シリアでは大地震が起こり、何万人もの尊い命が失われています。現在のような先行き不透明で予測困難な時代にあって、日本はどこに向かっていくのか。そして世界はどのように変化していくのか。その鍵を握っているのが、まさしく皆さん達の世代なのです。若い世代の人たちが、人類の直面する諸問題を自分自身の問題として捉え、その解決に向けて主体的に取り組むこと。それが、より良い社会の構築には欠かせない重要な要素であると思います。本校校歌の二番の歌詞に「若ものは真理(まこと)を求め あすの世の光に向かう」という一節があります。城陽高校での三年間の高校生活をとおして皆さんは社会でたくましく生きてい く基礎力を身につけることができました。ぜひ、自信を持って、「誰一人取り残されない」Well-Beingな社会の構築に貢献してください。 

 皆さんが築き上げる「新時代」が、愛と希望と夢に満ちた光り輝く未来となることを心から祈っています。

 皆さんは明日から城陽高校の卒業生となります。我々教職員にとって、教え子が社会で立派に活躍してくれることは、この上ない喜びです。

 皆さんへの餞(はなむけ)の言葉として私の好きな俳句を贈ります。

「春風に闘志抱きて丘に立つ」

 明治から昭和にかけて活躍した俳人高浜虚子の代表作で、教科書にも掲載されている有名な句です。新しいことに挑戦しようとする若者の清々しい意気込みや決意が感じられる春らしい爽やかな句であると思います。皆さんも、4月から始まる新しい環境でうまくやっていけるか不安を感じることもあるでしょう。そんな時はぜひこの句を思い出して自分を奮い立たせ、それぞれの夢に向かって果敢に挑戦し続けて欲しいと思います。

 また、民法の改正により、4月の新生活が始まる前には皆さん全員が成人年齢に達することになります。皆さんが成人としての自覚と責任を持って、新しい日本社会の担い手として活躍されることを期待しています。本校は次の60周年に向け新しい歴史を創るべくさらなる発展を目指します。皆さんも母校である城陽高校のこれからの姿を見守り続けてください。

 終わりになりましたが、卒業式に御臨席いただきました来賓並びに保護者の皆様方には、これまでの間、本校の教育活動に多大なる御支援と御協力を賜り、心より感謝申し上げます。今後も引き続き、城陽高校発展のためにお力添えくださいますようお願い申し上げます。

 それでは、卒業生の皆さんの前途に幸多きことを心より祈念し、私の式辞といたします。

令和5年3月1日      

京都府立城陽高等学校   

校 長  畑中 正文